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2012年4月14日 (土)

バナジー&デュフロ『貧乏人の経済学』

07651_bigアビジット・V・バナジー&エスター・デュフロ著、山形浩生訳『貧乏人の経済学』(みすず書房)をお送りいただきました。わたくしのようなこの問題の門外漢にまで本書をお送りいただき、ありがとうございます。

http://www.msz.co.jp/book/detail/07651.html

本書の対象は、貧困問題といってもインドやとりわけアフリカなどの貧しい諸国の問題で、分野的にはいわゆる開発経済学といわれる分野で、私のやってることとはかなり離れているのですが、読んでいって、著者らのスタンスが実にぴたりぴたりと感覚に嵌る思いを何回もしました。

版元のサイトに、「はじめに」と「網羅的な結論に代えて」という最初と最後の文章がアップされていますので、それをちょっと引用しつつ、

http://www.msz.co.jp/book/pdf/07651_foreword.pdf

貧乏な人々を紋切り型の束に還元しようという衝動は、貧困が存在するのと同じくらい昔からあります。貧乏な人は、文学は言うにおよばず社会理論でも、ぐうたらだったり働き者だったり、高貴だったり泥棒だったり、怒っていたり無気力だったり、無力だったり自立していたりします。当然ながら、そうした貧乏人についての見方に対応した政策的な立場も、単純な図式におさまっています。「貧乏人に自由市場を」「人権を大幅に充実」「まずは紛争を解決すべき」「最貧者にもっとお金を」「外国援助が発展を潰す」等々。こうした発想はどれも、重要な真実を部分的に含んではいるのですが、希望と疑念、限界と野心、信念と混乱を抱いた実際の平均的な貧乏人にはほとんど出番がありません。貧乏人がたまに登場するのは、何やらいいお話や悲惨な話の盛り立て役としてであって、感心されたり哀れまれたりはしても、知識の源泉にはならず、何を考えたりほしがったり行なったりしているかについて、まともに話を聞いてはもらえません。

部分的に重要な真実を含んではいるが、現実の矛盾に満ちた人々を「紋切り型の束に還元」するようなたぐいの理論・・・本書の分野で言えば、援助さえすれば全て解決万万歳のサックス派や何やっても全て無駄の前面否定のイースタリー派・・・では掬いきれない現実の細かなひだに寄り添いながら、本当の意味の「実務」派の感覚でこう述べます。

貧困から抜け出すのは難しいけれど、可能性を感じさせて、ツボを押さえた手助け(ちょっとした情報やあと押し)をすると、時には驚くほどの成果が出ます。一方で、期待をはきちがえ、必要な信念が欠け、ごくわずかに見える障害があるだけで、ひどい結果になってしまいます。正しいレバーを押すだけで巨大なちがいが生じるけれど、そのレバーがどれかを見極めるのはむずかしい。何よりも、一本ですべての問題を解決するようなレバーがないのははっきりしています。

巻末の「網羅的な結論に代えて」でも、

http://www.msz.co.jp/book/pdf/07651_conclusion.pdf

貧困を削減する魔法の銃弾はありません。一発ですべて解決の秘法もありません。でも貧乏な人の生活を改善する方法については、まちがいなくいろいろわかっています。・・・

このセンスは、貧困問題だけではなく、他のあらゆる社会問題にも必要なのでしょう。

昨今の、一つ一つ問題を引き起こしているメカニズムを腑分けしてそれぞれにきちんとした対策を考えるというしちめんどくさいやり方が不人気で、全てに効く「一本ですべての問題を解決するようなレバー」やら「魔法の銃弾」やら「一発ですべて解決の秘法」やらを追い求めるたぐいの、あるいはそれを売ると称して人気を博そうとするたぐいの人々が、やたらにあちこちでうごめくこのご時世だからこそ。

ここにも、空疎な「総論」では何事も解決しない、「各論」こそが物事を解決するという、ある意味で当たり前の真実が顔を覗かせているのでしょう。

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コメント

訳者の山形氏は、金融緩和の主張でも有名なんだろうが、デュフロの本を紹介してくれたのはうれしい。
彼女は、俊英の若手経済学者しか受賞できない、ジョン・ベイツ・クラーク賞(メダル)をもらったはず。
アメリカの経済学の最先端は、日銀がお札をすればすべてがよくなるというような話でなく、このような実験手法が高く評価されているようだ。少しかんがえてみれば、当たり前のことかもしれないが。

連投となるが、政策研究大学院大学の安田准教授(ゲーム理論の新進気鋭の学者)のブログに紹介されている、以下のインタビューが興味深い。
「次世代のためのウェブサイト【ジセダイ】に「気鋭の経済学者・安田洋祐先生に、経済学の "本質"を学ぶ!【前編】」(リンク)と題するインタビュー記事が掲載されました.僕自身が経済学を学んだきっかけや,メディアと経済学の関係,おすすめの入門書など,幅広いトピックについて話させて頂きました.ぜひご覧頂ければ幸いです^^ (2012/4/11)」
メディアなどに頻出する日本の一部の「経済学者」を厳しく批判している、

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