EUの道路運送事業労働時間指令について
例のバス事故をめぐっていろいろ論じられているようですが、とりあえず関連するEU指令の条項を。
Directive 2002/15/EC of the European Parliament and of the Council of 11 March 2002 on the organisation of the working time of persons performing mobile road transport activities
Article 7 Night work
1. Member States shall take the measures necessary to ensure that:
- if night work is performed, the daily working time does not exceed ten hours in each 24 period,
移動型道路運送事業に従事する者の労働時間の編成に関わる欧州議会と閣僚理事会の指令(2002年3月11日)(2002/15/EC)
第7条 夜間労働
1 加盟国は以下を確保するのに必要な措置をとるものとする。
- 夜間労働が遂行される場合、毎日の労働時間は24時間につき10時間を超えないこと。
「超えないこと」ってのは、いうまでもなく、残業代を払おうが何しようが、とにかく物理的に超えてはいけないという意味であることは、もちろんです。
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連投失礼します。
先ず、私には、運転手やその会社を批判する資格がないことを自白します。理由は、小生オンコールワーカー(なお時々個人事業主でもあり、3時間かけて機材を運んで仕込みリハ本番(大抵は12時間以上)をこなし、その後また3時間かけて帰宅するので、運転中眠くなったり、ヒヤリ・ハットも経験します。幸い居眠り運転は未だありませんが、単価契約(1労働力の価格設定)なのでいたし方ありません。世間ではこれを“自己責任”と言うらしいです。もちろん正規労働者も最近は似たり寄ったりでしょうが・・。
その上で本題ですが、バスだけではなく、確かに長距離トラック運転手もかなり無理をしているようです。ところが、こちらの事故の方は車両台数に比べて少ないようです。そうだと仮定して、その理由を少し考えました(誤った妄想かもしれませんが・・)。
トラック運転手は疲れると休むことが出来ます。もちろん自覚があればの話。仮眠も取れます。一定範囲ではありますが、自己の判断で裁量があると言うわけです。むろん到着が遅れればその分自分に降りかかってはきますが。
さて、バスの運転手は如何でしょう。乗客が乗っており、運転手の挙動も見ている筈です。スピード、運転の質、運行時間なども常に監視されているでしょう(少なくとも心理的にその認識はあると思います)。
即ち、バスの運転は、場所的移動だけではなく、求められる労働の質が異なる、と言うことです。それが社会的交換価値(サービス生産の中身)だと言えます。“眠いので仮眠します”とは言えないでしょう。たぶん。
以上が、サービス部門の委託・請負業務の(再委託・復代理)の顧客と末端事業者(ないし末端労働者)との現場の闘い(異なる利害の対決)なのだろうと思います。
果たして、スミスの“見えざる神の手”が働くまでに、どれだけ犠牲が出ることとなるのでしょうか。
投稿: endou | 2012年5月 1日 (火) 02時32分