児美川孝一郎編『これが論点!就職問題』
児美川孝一郎編『これが論点!就職問題』をお送りいただきました。左の表紙写真のように「学生がダメなのか 企業がわかっていないのか」と帯にでかでかと書かれていますね。
http://www.nihontosho.co.jp/2012/04/post-278.html
既に本ブログで目次紹介はしていますが、改めて目次を載せておきます。
総論 就職問題で何が問われているのか?
児美川孝一郎
第1部 「就職問題」のどこが問題か?
・大卒就職問題を考える……児美川孝一郎
第2部 学生たちの就活の実態は?
・就活に追い詰められる学生たち-7人に1人がうつ状態-……川村遼平
・賢明な就職活動に向けて-業界・企業に関する情報収集が不可欠-……上西充子
第3部 就職の困難は、誰を直撃しているか?
・不況下の新卒就職の現状と対応……小杉礼子
・学卒未就職という不条理-大学教育の現場で今できること-……居神浩
・就職活動システムの現代的機能-「失敗」して「成功」する「再配置」- 今野晴貴
第4部 「就職問題」の原因はどこにあるのか?
・企業は新卒採用者を大幅減 焦る学生の「就活」奮闘記……石渡嶺司
・大激論-日本型雇用がダメなのか 大学生がダメなのか…海老原嗣生×城繁幸
・若者の就職難の原因は安定・大手志向なのか
根底にある「人の使い捨て経営」と非正規化……竹信三恵子
・終身雇用が若者の就職難を招く……八代尚宏
・「就職氷河期再来」の虚像を剥ぐ-新卒採用を自由化・透明化せよー…常見陽平
第5部 「就職問題」にどう対応するか?
・“適職という幻想”を捨て去る 仕事はただの糧と腹をくくれ……宮台真司
・<超・就職氷河期のウソ>四大卒も中小企業を目指せばいい……海老原嗣生
・大学「全入時代」の新卒者「就活市場のミスマッチ解消を」……太田聰一
・「新卒一括採用」という遺物……城 繁幸
・新卒一括採用はもう限界 二七歳まで採用延期しては……山田昌弘
・就活の早期化、長期化で学生、大学、企業をだめにする負のスパイラル転換を……辻太一朗
・大卒就職をめぐる最近の論点-活動開始後倒しと卒後三年新卒化-……大島真夫
・「ロスジェネ問題」の延長線では氷河期の歪みは解決しない
-「就職氷河期」が直撃したロストジェネレーション世代。四〇代にさしかかろうとしている彼らの現状から社会を考える。
……赤木智弘
・教育の職業的意義を問う-大学・企業はいま何をなすべきか-……本田由紀
・職務を定めた無期雇用契約をー「ジョブ型正社員制度」が二極化を防ぐ-……濱口桂一郎
付 論 学生たちは何を求めているのか?
・就活生からの就活改革・第一次提言……就活シンポジウム実行委員会
ここに収録されている私の「職務を定めた無期雇用契約を」(『改革者』2010年11月号より)は、児美川さんが冒頭の総論で言われているように「若者の就職問題を直接に論じたものではありませんが、濱口さんが他に書かれているものを見れば、濱口さん自身もこうした含意を込めた提案をされていることに間違いはありません」ということで、この文章が採用されたようです。
http://homepage3.nifty.com/hamachan/kaikakusha1011.html(職務を定めた無期雇用契約を― 「ジョブ型正社員制度」が二極化防ぐ)
児美川さんがあえて採らなかった若者雇用に関して書いたものは、ここにまとめてありますので、関心のある方はどうぞ。
http://homepage3.nifty.com/hamachan/jkoyou.html
やや長めの論文としては:
http://homepage3.nifty.com/hamachan/gendainoriron26.html(若者雇用と人材養成の戦後史(『現代の理論』2011年新春号))
http://homepage3.nifty.com/hamachan/shaminshinsotsu.html(新卒者就職難問題の構造的背景と今後の課題(『月刊社会民主』2011年5月号))
個人的には、このアンソロジーにはこちらの方が向いていた気もしないではありません。
・・・これに対する処方箋は、短期的に現実的なものと、中長期的に実現されるべきものに分けて書かれなければならない。短期的には、新卒一括採用システムを含めた日本企業の雇用行動様式が急激には変わらないことを前提に、かつての中卒・高卒採用のような保護主体の介在するマッチングを復活させることがもっとも効果的であろう。同世代人口に対する割合から考えても、現在の大卒者の相当部分はかつての中卒者と重なる。できるだけ高校・大学自身が、それが困難であれば公的機関が、責任を持って卒業までに就職先を見つけるのである。これはあまりにもアナクロであり、パターナリズムと見えるかも知れないが、目の前で矛盾に苦しむ若者を救うためには、ある種の逆戻りはやむを得ないと思われる。
しかしながら、成人に達した大学生を未成年の中卒・高卒と同じように扱うことが社会のあるべき姿とは言いがたい。中長期的には新卒一括採用システム自体を変えていく必要があろう。自由市場で求人と求職が結合するという本来のモデルが適切に作動するためには、ジョブとスキルでもってマッチングするためのインフラ整備が不可欠である。それがメンバーシップに基づく日本型雇用システムの中核的構成要素の全面的転換を意味する以上、かなり長い時間をかけたプロセスとならざるを得ない。
・・・やや皮肉な言い方をすれば、こういう教育と労働市場の在り方にもっとも消極的であるのは、「学問は実業に奉仕するものではない」と称して職業的意義の乏しい教育を行うことによって、暗黙裏に日本的企業の「素材」優先のメンバーシップ型雇用に役立っていた大学教授たちであろう。彼らの犠牲者が職業的意義の乏しい教育を受けさせられたまま労働市場に放り出される若者たちであることは、なお彼らの認識の範囲内には入ってきていないようである。
ごく短いエッセイとしては:
http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo0925.html(採用活動と大学教育の職業的レリバンス(『労基旬報』2009年9月25日号))
http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo1025.html(中教審の職業大学構想(『労基旬報』2009年10月25日号))
http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo0625.html(教育と労働の密接な無関係の行方(『労基旬報』2010年6月25日号))
http://homepage3.nifty.com/hamachan/roumujijo1001.html(大学と職業との接続(『労務事情』2010年10月1日号))
http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo111025.html(学習と労働の組み合わせ(『労基旬報』2011年10月25日号))
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