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2012年4月27日 (金)

村上潔『主婦と労働のもつれ』(洛北出版)

27156 村上潔さんより『主婦と労働のもつれ』(洛北出版)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.rakuhoku-pub.jp/book/27156.html

「働かざるをえない主婦」、そして「勤めていない主婦」は、戦後の日本社会において、どのように位置づけられてきたのか/こなかったのか? 当事者たちは、どのように応答し、運動してきたのか?

というわけで、私の関心と交叉するところの大きい著書です。

村上さんは、私は直接存じ上げないのですが、立岩真也さんの「生存学」研究グループの中で女性労働問題を追及してこられた方なのですね。

目次を見ると、

序 章
本書の問題意識と構成
   問題意識
   本書の構成

第1章 主婦は「働くべき」か? という問い――「主婦論争」再検討
   「主婦論争」の様相
   「主婦論争」の問題点
   「主婦論争」の新たな理解モデル
    論争以後の、当事者による諸実践の意味
    まとめにかえて

第2章 「主婦パート」は何が問題か――初期パート労働評価について
    高度成長期における「主婦」の「パートタイム労働」
   パート労働への評価
   論点の整理と問題の所在
   まとめにかえて

第3章 「主婦性」と格闘/葛藤する主婦―― 1970年代、東京都国立市公民館での実践
   「主婦的状況」の探求
   「主婦的状況」そのものの問題化
    その後の「主婦的状況」をめぐる問題提起
    まとめにかえて

第4章 「主婦的状況」を撃て!――〈主婦戦線〉の/という戦い
   〈主婦戦線〉の活動とその思想(1)
   〈主婦戦線〉の活動とその思想(2)
   〈主婦戦線〉の活動とその思想(3)
   〈主婦戦線〉の思想の特徴
    まとめにかえて

第5章 「パート主婦」は労働者である――〈主婦の立場から女解放を考える会〉・<パート・未組織労働者連絡会〉の奔走
   〈主婦戦線〉、〈主婦の立場から女解放を考える会〉、<パート・未組織労働者連絡会〉
   パート問題は「労働問題ではなく主婦問題」
   「働き続けるべき論」批判・「ひまつぶしパート」言説批判
   パート問題は「主婦問題ではなく労働問題」
   まとめにかえて

第6章 主婦だからできる「働き」?――ワーカーズ・コレクティブのアポリア
   主婦たちの労働実践としてのワーカーズ・コレクティブ
   日本の労働者協同組合が抱える問題
   ワーカーズ・コレクティブの現在的地平はどこにあるのか
   ワーカーズ・コレクティブの今後の展望
   まとめにかえて

終 章 働く/働かない/働けない、主婦と女性の行く末
   諸論点へのアプローチ
   いま、「主婦」を問題にすること
   おわりに

あとがき
文献一覧
索  引

「主婦」性と「労働者」性のはざまで「パート」認識が翻弄されてきた姿が描き出されています。

これは現在の議論されているパート法改正の根っこにもなお脈々とつながる問題であり、戦後労働法制度、社会法制度の暗黙の前提を蒸し返すという今日的課題と密接につながっていることは、ご案内の通りです。

ただ、労働社会保障系の議論では見えなくなりがちなもう一つの「主婦と労働のもつれ」が、冒頭の「主婦論争」のレビューを踏まえて、終わりの方で主婦だからできる「働き」としてのワーカーズコレクティブの問題として提示されているところは、大変面白く、いろんな意味で考えさせられました。

第6章のまとめのところから引用しますと、

改めて整理してみると、①成長経済対応型のワーカーズ・コレクティブでは専業主婦のみが主役であったのに対し、②経済・雇用危機対応型のワーカーズ・コレクティブでは、主婦以外のイレギュラーな労働力(予備軍)がクローズアップされてくる。そしてアンペイドワークやさしてお金にならない「地域の(ための)」・「非営利の」仕事が、主婦だけのものではなくなる。「オルタナティブな働き方」は、主婦の特権から、働けない者たちの「雇用の受け皿」へと意味を変えてきている。これは理念の問題ではなく、否応なく変わる労働環境に沿った変化である。したがって、これをワーカーズ・コレクティブの「発展」とポジティブに捉えることはできない。先に述べたように、そうした役割を果たしてしまうことによって、市場(男性企業社会)への対抗というスタンスはどうなるのか。むしろそれを下支えしてしまうのではないか。考えねばならないことは尽きない。・・・

1980年代には「社縁社会からの総撤退」が叫ばれ話題になったりもしたが、いうまでもなく、それでなにも変わることはなかった。男性中心の企業社会に揺さぶりをかけるなどということはたやすいことではなく、さらに、とりわけ主婦にあっては、理念的には男性企業社会を否定していても、当面、まったくその恩恵に被らないかたちで自らのオルタナティブな運動を展開することは、現実的に困難である。そうした中、主婦の主体的活動と働けない者たちの存在が図らずもオーバーラップしているこの状況は、-間違っても「希望」などとは単純にいえないが-未来の「労働」の見取り図を垣間見るようではある。

リアル社会のおかげでリアル社会から離れた形でできていた主婦空間がリアル社会の変貌の中でその意味が逆転してくるという姿は、様々な局面で露出しているようにも思われます。

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