マンマークさん(市役所職員の生活と意見)の拙著書評
大阪問題やそれ以前から公務員問題についていろいろと書かれているマンマークさんの「市役所職員の生活と意見」ブログで、拙著『日本の雇用と労働法』について書評されています。わたくしとしては、我が意を得たり的な大変嬉しい書評です。
http://manmark.blog34.fc2.com/blog-entry-628.html(歴史を知ることの大切さ。(濱口桂一郎『日本の雇用と労働法』))
今、私たちが目にしている物の形や仕組みは初めから今の姿だったわけではありません。
社会制度から妻の体型まで、何らかの過程を経て今の姿に至っているものがほとんどです。
しかし、「歴史」には目を向けず、自分の前にある物が最初から今の姿だったかのように批判している人たちや、そうした中身の薄っぺらさだけが印象に残るような批判を嬉々として受け入れている人たちをよく見かけます。
こうした傾向は、労働問題の分野でよく話題になる終身雇用、能力主義、同一労働同一賃金、職務給・職能給といったテーマについても言えるようです。
私は海老原嗣生&荻野進介著『名著で読み解く 日本人はどのように仕事をしてきたか』を読み、労働問題を語る時に過去の経緯を踏まえる事の重要性を認識しました。
しかし、海老原&荻野本は、戦後出版された人事や組織運営に関する13冊の本を取り上げ、その書評とともに当時の社会の姿を描いたもので、労働に関する諸問題の歴史を知るために作られた本ではありません。
その点、この『日本の雇用と労働法』では、労働分野の諸制度がどのような過程を経て今の姿になったかがコンパクトかつ丁寧に説明されています。
まあ、奥様の体型はともかく、歴史をわきまえずにあれこれ語る人々の姿が「薄っぺら」であることは確かです。
大阪市の橋下市長が要請した職員組合事務所の庁舎からの退出が話題になった時に、hamachanブログで解説されていた労働組合と従業員代表機関という2つの面が一体化している日本の労働組合の特徴についても、この本では説明されています。
また、安易に持ち出される同一労働同一賃金制度に関連して、職務給が配置転換との関係から職能給に落ち着いた経緯も解説されています。
その他、渡り職工から企業が囲い込む子飼い職工に中心が移る過程で定期昇給制度が現れてきたこと、終戦後の大規模な労働争議に疲れた労使で手厚い退職手当制度と一方的な解雇の見直しについて合意したことが長期雇用慣行の確立に繋がったこと、戦後賃金体系の原型となった電産型賃金体系で給与の約2割となっている能力給が実は初めから組合側が要求したものであり、しかも組合側の要求を会社側がかなり削減してこの数値になったことなど、もともと労働問題の基本的知識を欠いている私には目からウロコの話が満載の1冊でした。
この「目からウロコ」という表現は、特定社労士のしのづかさんも拙著への書評で使われた言葉でした。
http://sr-partners.net/archives/51785309.html(濱口桂一郎著「日本の雇用と労働法」(日経文庫)は目からうろこです)
最後はやや冗談ぽく、
なお、私のように労働問題に詳しくなくてもhamachanブログのファンだという方にはブログを見る時の参考書としても役立つ本だと思います。
もっとも、あのブログにはAKB48からももいろクローバーZまで出てきますから、この本だけで十分とは言いませんが…。(笑)
いや出てくると言っても、あくまで労働問題のネタとしてですけど・・・。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/by-z-a9e0.html(こちとら働いてなんぼだ by ももいろクローバーZ)
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ちょっと外れてますが職工・長期雇用関連でここに
http://h.hatena.ne.jp/yellowbell/299883515777440252
”長期安定雇用政策は日本経済の足を引っ張る!ってなことをおっしゃる経営者が整理解雇をやらずに退職勧奨なんてことをやってるのは、結局辞めてほしくない従業員がいるからでしょ。
熟練工の腕に相応のギャラを支払わずに済ませるには、雇用を自由化していい労働力を市場原理に晒して高値にするより、今の不完全な終身雇用の残骸で安値安定にしていた方がいいもんね。
いい労働力は安値で囲い込みたい、でもそうではない労働力はいつでも好きに切り捨てたい、それを流動化とか自由化とか真顔で言われると、臍で野点が始まりますよ。”
投稿: しゃくち | 2012年4月12日 (木) 00時18分
終身雇用について
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平林純@hirax.net エンジニアのための経済学最適インストール
ところでおカネって何なんでしたっけ?
http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=000833
平林:
その、フローとストックというのは、作業給と能力給との違いのようなものでしょうか?
松原:
そうですね。能力給の場合には、潜在能力に対して支払われる給料だったわけですよね。それはストックに対してお金が払われているのに近いと思います。例えば、終身雇用制が、企業が従業員の生涯を完全に縛りつけるというものだとしたら、その場合は古代の奴隷の構造に似ていますよね。 従業員の能力を全部売り出したことになりますからね。この従業員1人の値段のことを「生涯賃金」なんていったりするわけですが。
平林:
終身雇用制の能力給は現代の奴隷制度だったんですね(泣)。
松原:
確かに、「フローではなくストックでお金が払われる」という近似性が若干ある、と見ることもできますが……。でも、全体としては別物なので、そう悲観的になる必要はないでしょう。
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投稿: しゃくち | 2012年6月17日 (日) 12時05分