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2012年3月 3日 (土)

ロベール・カステル『社会問題の変容 賃金労働の年代記』

822翻訳者の前川真行さんより、名のみ高かったかのロベール・カステルの大著『社会問題の変容 賃金労働の年代記』(ナカニシヤ出版)をお送りいただきました。こんな分厚くて高価な本をお送りいただき、本当に有り難うございます。

さて、この本、フランスの社会学者の手になる労働史の大著ですが、労働法方面の方々には結構名の(但し名のみ)知られた本ではないかと思います。

というのは、水町勇一郎さんのフランス労働法についての名著『労働社会の変容と再生』で、カステルのこの本をかなりの分量で引用しているからです。

その当の本の邦訳がついに出たわけですが、566頁に及ぶこの分厚い本を目の前にすると、なかなか取り組むのは大変かも知れません。

http://www.nakanishiya.co.jp/modules/myalbum/photo.php?lid=822

失業、労働条件の不安定化、新たな貧困、
そして「負の個人主義」と社会的紐帯の喪失がもたらす社会の分断。
これら今日の社会的危機の根源は何か。
賃金労働の軌跡を14世紀から捉え返し、賃金労働社会と「社会的なもの」の成立の過程、
そして福祉国家「以後」の現在の危機の根源を明らかにするロベール・カステルの主著、待望の完訳。

というわけで、この労働史、賃金労働の歴史を遡って14世紀からおもむろに語り始めます。そして、下の目次を見ていただけばわかるように、賃金労働社会が揺らぐ現代(といっても本書が書かれた90年代半ば)に、ゆったりと語り進めていきます。

第一部 後見から契約へ
 
 第一章 近接性に基づく保護
       第一次社会関係
       福音の伝説
       隣人はわが家族なり
       扶助の体系

 第二章 土地に縛られた社会
       一三四九年
       封建社会の転換
       この世に用なき者
       浮浪者とプロレタリア
       鎮圧、抑止、予防

 第三章 名もなき賃金労働者
       同業組合的規範
       同業組合の刻印
       規制労働と強制労働
       地を這う人びと
       賦役労働というモデル

 第四章 自由主義的近代
       大衆的脆弱性
       労働の自由
       「神聖にして不可侵の責務」
       分裂した権利
       ユートピア的資本主義

第二部 契約から身分規定へ
 
 第五章 国家なき政治
       憐れむべき人びと
       後見関係の回帰
       パトロナージュと経営者
       転倒したユートピア

 第六章 社会的所有
       新たな前提
       義務・強制という問題
       財産か労働か
       移転所得

 第七章 賃金労働社会
       新たな賃労働関係
       工場労働者という境遇
       失われた地位
       賃金労働という境遇
       成長する国家

 第八章 新たな社会問題
       とぎれた軌道
       社会的余剰人員
       参入支援、あるいはシジフォスの神話
       未来の危機

 結 論 負の個人主義

賃金労働社会(ソシエテ・サラリアル)の説明はレギュラシオン派の影響を強く感じますが、全体の後見(テュテル)から契約へ、契約から身分(スタチュ)へ、そしていま身分から・・・という歴史認識枠組みは、同じく水町さんの本で引用されているフランスの労働法学者シュピオなどどともに、労働史の枠組みとしてとても有用です。

最後の「負の個人主義」って、この本では浮浪者(ヴァガボン)が例示されていますが、ふと思ったのは、昨日のエントリで「ドロサヨ」と名付けたある種の(新左翼的)感覚と通じるのかな、と。同書で引用されている五木寛之の「艶歌」から。

「キザな言い方をすればだな、艶歌は、未組織プロレタリアートのインターなんだよ。組織の中にいる人間でも、心情的に孤独な奴は、艶歌に引かれる。ありゃあ、孤立無援の人間の歌だ。言うなれば日本人のブルースと言えるかもしれん・・・」

あれを下品だというのは間違いじゃない。でもあの歌い方には、何かがあります。押さえつけられ、差別され、踏みつけられている人間が、その重さを歯を食いしばって全身ではねのけようとする唸り声みたいな感じです。大組織の組合にも属さない、宗教も持たない、仲間の連帯も見いだせない人間が、そんな、ばらばらでひとりぼっちで生きてる人間が、あの歌を必要としているんだ・・・。

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