海老原嗣生『偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部』
海老原嗣生さんから新著『偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部』(朝日新書)をお送りいただきました。
◎バブルの時代だって、「文学部は就職に不利」といわれていた。そして就職における学歴差別もあった。だが、学歴差別から解放し、あらゆる学生に門戸を開いたとされる就活ナビの登場以後も、形を変え、水面下でその差別は続いている。近年の慶應大学の内定の実態を調べたところ大手金融関係の内定者384名のうち、文学部は、わずかに3名。あとの381名は「商・経・法」だという。慶應ですら、学部によってこんなに差がつく。早慶以下の大学、いわんや、である。
◎海老原氏いわく「大学はもちろんのこと、学部によって行ける会社が明確に違うのは、差別ではなく、区別。それがいやなら、そんな大学・学部にいってはいけない」。このメッセージを、受験生の親世代に伝える一冊。
◎『「若者はかわいそう」論のウソ』では、ワーキングプアや日本型雇用における定説のウソを暴き、『学歴の耐えられない軽さ』では、学歴のインフレの実態をデータでもって暴いた海老原氏が、今度は、大学学部別と性別による就職力の実態を明らかにする!
いやぁ、ストレート直球も直球ど真ん中。朝日新聞の売らんかな精神も相俟って、まことにストレートなメッセージの本になっています。
まえがきの最後に曰く:
雇用のプロフェッショナルとして、新卒採用に長年携わってきた者として、「学歴差別」「就職差別」を俎上に載せるのは、正直、いささか勇気が必要だった。
企業、大学、在校生、その関係者全てに不快な思いをさせてしまう嫌いがあるからだ。
ただ、就活問題がこじれにこじれているから、知っていることを書いておかねば、という気持ちとなった。
まことに、もともとセグメント化されていた労働市場が、就職情報会社によってノンセグメント化されたかのごとき幻想を振りまいてしまったことが、今日の悲喜劇(喜劇の代表が例の岩波書店問題でしょうが)のもとになっていることを考えれば、海老原さんがこういう本を書かれるのはまことに理にかなったこととも言えましょう。
薄い本ですが、全編に亘ってこれでもかこれでもかと現実を突きつけ、浅薄な建前論を叩き潰していく爽快感に満ちています。
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>海老原嗣生
海老原氏の『「若者はかわいそう」論のウソ』は小林よしのり氏がデータの悪質な取り扱いを、ネット上だけでなく「SAPIO」の連載でも強く非難していますね。
『「若者はかわいそう」論のウソ』 のウソ
https://www.gosen-dojo.com/index.php?page_id=0&block_id=13&active_action=journal_view_main_detail&key=jo5ar1baj-13&post_id=354&comment_flag=1
『「若者はかわいそう」論のウソ』のウソ・パート2(一部訂正)
https://www.gosen-dojo.com/index.php?page_id=0&block_id=13&active_action=journal_view_main_detail&key=jogauhz3y-13&post_id=365&comment_flag=1
投稿: az | 2012年3月12日 (月) 18時30分
早速ありがとうございます。今回は朝日の強力な女性編集者の腕前で、私の原稿をバッサバッサ編み直しいただきました。海老原色というよりも、編集担当色がよく出ている気がします。
濱口さん同様、私もポジトークが嫌いなので、企業の知られたくない論理や、ナビサイトの問題点などにも、触れております。
投稿: 海老原嗣生 | 2012年3月13日 (火) 10時05分
海老原氏本人がhamachan先生のブログを見ていることはよく知っていたので書き込んだのですが、他人は名指しで批判するけれど、著名人に名指しで反論されてもやっぱりスルーなんですね。漫画家に反論される"雇用のプロフェッショナル"とは何なのか「学歴の耐えられない軽さ」ならぬ「肩書きや経歴の耐えられない軽さ」を痛感するとともに、金持ち喧嘩せずで販促がんばってください。
投稿: az | 2012年3月13日 (火) 16時10分
なるほど、あそこまでストレートな書きぶりは編集者の腕前でしたか。
爽快感あふれる記述になってますね。
投稿: hamachan | 2012年3月13日 (火) 19時38分
>就職情報会社によってノンセグメント化されたかのごとき幻想を振りまいてしまった
本当にそうなら就活状況に差が生じることはないでしょうし、学歴差別などという当たり前すぎて対象読者不明な話の再発見(W合格のデータを見れば、受験生本人なら東大に受かって早慶に行く人も、早慶の法政治経済に受かってマーチに行く人もいないし、親なら違うことは当然認識している)より、lessorさんの問題意識のほうがはるかに重要。
上位校の学生ほど就活に積極的――偏差値ランキング別の就活状況と学生意識(1)
http://www.toyokeizai.net/business/management_business/detail/AC/688e57b2cdb9e81f5f1d586fd3cd6512/
「フリーター予備校」でのモチベーション
http://d.hatena.ne.jp/lessor/20110221/1298319170
投稿: az | 2012年3月13日 (火) 20時55分