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萱野稔人・神里達博『没落する文明』

0630b 萱野稔人・神里達博『没落する文明』をお送りいただきました。萱野さんとは、一度『POSSE』のブラック企業論でご一緒させていただいただけなのに、こうしていつも御本をお送りいただき、感謝に堪えません。

http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0630-b/index.html

さて、今回の対談相手の神里さんは、科学史・科学論の方で、議論は

災害・テクノロジー・エネルギーと政治・経済との相互関係を人類史的に俯瞰!
文明の限界を見すえた文明論

になっています。

私がフォローしきれる範囲を超えておりますので、ここでは私の理解できる狭い範囲でのみ、頭に留めておくべき発言をいくつか引用しておきます。まず萱野さんの

3/11以降にこの社会で生じたのは、危機を乗り越えるために人々が統治権力のもとで結束するのではなく、逆に統治権力の足を引っ張るということでした。もちろん時の菅政権には震災対応や原発事故対応で至らないところも多々ありましたから、政権批判が出るのもある程度は仕方ないかも知れません。

しかし、「こういった危機的状況では誰が政権の座にいてもうまくできないのは同じだから、とにかくリーダーのもとで結束して危機を乗り越えよう」という声はほとんど出てきませんでした。・・・

これに対して今回の大震災では、「国難」などといわれながらも、人々は政権をサポートするどころか、政府への不信を露わにし、不平を述べ、足を引っ張ることばかりしていました。・・・

次に神里さんの

日本では実態はともかく、現場主義が称賛されることが多く、現場のことを分かっていないとか、現場を知らないからダメだ、などとよくいわれますね。しかし歴史的に見れば、現場主義の極端な例が、日本社会を破壊するトリガーを引いたケースも多いのではないか。関東軍の暴走だって、この間の大阪地検特捜部のフロッピー改ざんの不祥事だって、要するに現場主義の問題なんですから。「総論賛成、各論反対」が多発するのも、同じことでしょう。日本は案外、国家として一つに統合していく力が弱いので、一部の領域の暴走が起こりやすいのかも知れません。・・・

政府が強くて逆らえない、というのはほぼ、戦時動員に限った話ですよね。戦時動員体制みたいなものと中央官庁の強さを何か勘違いしているところがある。

これは本ブログでも何回か取りあげたテーマです。

とりわけ重要なのは、この言霊信仰の問題。

神里 ・・・こうしたリスクを見たがらない、忘れたいという心性には、ある種の呪術的な、言霊信仰みたいなものが影響しているんじゃないかとつくづく思うんですね。つまり、悪いことをいうと、実際に悪いことが起きるという考え方。

萱野 ・・・言霊信仰の危ないところは、富士山が噴火するかも知れない、原発事故が起きるかも知れないということを指摘すると、それがイデオロギーの問題に回収されてしまうというところです。あいつは反対だからそういっているだけだ、と。・・・

神里 極論すれば、事実は語れないということですね。すべては事実ではなくて意図であるということにされる。これはとても危ないことです。だって科学の基盤が成り立たないことになりますからね。・・・

萱野 人文思想の世界では特にそれが顕著です。・・・しかしその脱構築の概念は、日本の人文思想界に導入されると、広くイデオロギー批判の道具として利用されることになった。・・・結果、特定の事象や問題を正面から分析するようなまっとうな知的営みは、人文思想の世界では脇に追いやられることになりました。

神里 ・・・でも科学的態度がないところに、いきなりポストモダン的な思想を持ってくるのは非常に危うい。むしろ逆効果だと思いますよ。隠れた意図を議論する前に、隠れていない部分、建前の部分をしっかり見ないと、現実から遊離した自己満足的な議論になってしまう。

萱野 ・・・呪術とか言霊信仰そのものが悪いわけではないんですよね。そうではなく、実際には呪術とか言霊信仰に依拠しているのに、その自覚がないから、合理的にリスクをマネジメントすることができなくなっていることが問題なんですよね。宗教性と合理性をちゃんと分離することが必要です。

日本で流行する「言論」の質を見事に言い当てていますね。

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コメント

これもまた、【日本で流行する「言論」】の一つに過ぎないですね。
一切、科学的根拠を出してない。
感覚だけで話をしている。
外国との比較データもないのに、日本特有の問題としてしか語っていない。

投稿: ATM | 2012年3月21日 (水) 13時50分

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