2012年は欧州活力ある高齢化と世代間連帯年
本日、高齢者雇用安定法改正案が閣議決定され、国会に送られました。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/180-23.pdf
内容については既に本ブログをはじめあちこちで書いてきていますので、今回は省略します。わたくしの意見としては、転籍の範囲を資本関係で絞りすぎるのはいかがなものかと考えており、むしろ労使協定で広く認めた方がいいということですが、それもここでは論じません。
http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo120225.html(高齢者雇用に転籍や派遣の活用を)
例によって例の如く、ワカモノの味方と称して、ワカモノに高齢世代の世話をずっしりのしかからせるようなことを吹き上げている人々がいっぱいいるようですが、もちろん、高齢者にもっと働いてもらうというのが、今日世界の真っ当な人々の共通見解なので、その点だけは間違えないようにしたいものです。
というわけで、実は今年2012年はEUが定めたEuropean Year of Active Ageing and Solidarity between Generations(欧州活力ある高齢化と世代間連帯年)なんですね。
http://europa.eu/ey2012/ey2012main.jsp?catId=971&langId=en
- stay in the workforce and share their experience
- keep playing an active role in society
- live as healthy and fulfilling lives as possible.
労働力にとどまりその経験を共有する
社会で積極的な役割を維持する
できる限り健康で充実した生活を送る
EUで言う世代間の連帯とは、いうまでもなく、高齢者が働かずに下の世代の稼いだ資源の上で生きるのではなく、自ら社会の生産する側に回り社会を支えるということです。
(追記)
なお、高齢者雇用については、とりあえずわたしがNHK視点・論点でのべた
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-d59a.html(視点・論点「65歳雇用確保を考える」)
を参照のこと。
さらにきちんと考えたい方には、やや骨がありますがOECDのしっかりした報告書を読むことをおすすめします。
http://www.akashi.co.jp/book/b65312.html
世界の高齢化と雇用政策 エイジ・フレンドリーな政策による就業機会の拡大に向けて
OECD 編著 濱口 桂一郎 訳
高齢者の雇用問題は、世界的な課題となっている。本書は、OECD加盟各国の高齢者雇用の実態を詳査し、豊富なデータを多数のグラフ・表に明解に示し、使用者の態度と雇用慣行、労働者の就業能力、政策の実施など、さまざまな問題点と課題を提起する。
「新自由主義」経済学の立場からの最近の解説としては、八代尚宏さんのこれなども熟読に値します。
http://www.advance-news.co.jp/interview/2011/10/post-78.html(高齢者雇用の成功が日本を救う)
超高齢社会に向かう日本にとって、高齢労働者の有効活用は重大なテーマだが、後押しする政策は遅々として進まない。国際基督教大学の八代尚宏客員教授は9月21日、アデコが開いたメディア記者懇談会で「日本の高齢者雇用の現状と未来」と題して講演、問題提起した。
« 企業役員の10%「しか」女性じゃない・・・とOECDはいうけど | トップページ | ラスカルさんの拙著紹介 »
>高齢者が働かずに下の世代の稼いだ資源の上で生きるのではなく
現行の公的年金制度では繰り下げ受給と繰り上げ受給で期待受給総額をほぼ等しくしてあるはずです。また受給後に賃金所得を得ている場合でも賃金+年金が月48万(65歳以下は28万)を超えない限り年金の受給減額はありません。
このことは高齢者労働が現役の社会保障負担を軽くしていない(少なくとも公的年金では)ことを意味します。
一方高齢者労働の労働市場での現役世代クラウドアウトは残ったままです。
参考:国家公務員採用7割削減-岡田氏が指示
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&rel=j7&k=2012030901023
一種の“整理解雇法理”によってクラウドアウトがおきているともいえます。
世代間扶養を世代間連帯へと転換を促すための、高齢者労働周辺についての望ましい法制度、特に社会保障と労働法についてお聞かせください。外国の例でも結構です。
投稿: あいうえお | 2012年3月10日 (土) 02時01分
高齢者労働は労働市場にどのような影響をもたらすでしょうか。
まず高齢者を雇用した企業には助成金が支払われます。また現役世代と異なり高齢者は有期雇用が中心です。
したがって能力が同等ならば優先的に高齢者が採用され現役世代のクラウドアウトが起きます。
つぎに高齢者が減額されることのない年金を受け取るので賃金水準を低下させます。これはBIが賃金を捨て扶持にするのと同様です。
このような労働市場の悪化は誰に影響が及ぶでしょうか。
高齢者労働は有期雇用が中心なので高齢者労働の代替材は非正規雇用です。したがって現役世代のうち主に非正規雇用が悪影響を被ると考えられます。非正規雇用の待遇悪化は少子化と将来の低所得高齢者を生みだし社会保障の持続可能性を危うくします。
もっとも上記の記述は純粋に経済学的に考えた「ぼくのあたまのなかでかんがえた労働市場」にすぎません。
現実の労働市場はどうなっているのでしょうか。高齢者労働の上記の「経済学的な帰結」に「労働市場の現実」はどう反駁している(あるいはしていない)のでしょうか。お聞かせください。
投稿: あいうえお | 2012年3月10日 (土) 11時42分