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2012年2月29日 (水)

スターリンは「大衆の支持を得た権力」じゃなかったと思うけど

Img_month生活経済研究所から『生活経済政策』3月号が送られてきました。特集は「橋下政治にどう向き合うか」なんですが・・・。

http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/

明日への視角
•気づかされた忘れ物/臼杵博

連載 新たな回復に向けて[6](最終回)
•グローバル経済と持続可能性/田中洋子

特集 橋下政治にどう向き合うか
•ポピュリズム論から考える橋下政治/平井一臣
•橋下徹の「君主論」/村上信一郎
•先行する大阪市の府への解体/澤井勝
•橋下流教育改革で大阪の教育はよくなるのか?/広田照幸

書評
•ロナルド・ドーア著『金融が乗っ取る世界経済』/井上定彦

言いたいことは分からないわけではないのですが、たとえば平井さんの論文のこういう表現にはやはり引っかかるわけです。

ではポピュリズムの何が問題なのだろうか。政治史研究の観点から考えてみることにしよう。

これまでの政治史研究の関心の一つは、ファシズムやスターリニズム、あるいは戦前日本の軍国主義といった大衆の支持を得た権力が生み出した問題にあった。それはなぜか。これらの政治体制がもたらした被害や悲劇を明らかにするため、というだけではない。むしろ、現代史における権力の暴走が、一体いかなるメカニズムで作動していったのか、という問題意識が政治史研究者の関心を支えていた。

まさにそうだと思うのですが、とはいえ、スターリニズムが「大衆の支持を得た権力」だったと言われると、かつての左翼の言い方とはまったく逆の方向でですが、ヒトラーとスターリンを無造作に一緒にするなよ、といいたくなります。ヒトラーは間違いなく現代型大衆民主主義が産み出した鬼子ですが、スターリンはそうではないでしょう。

いや、このエントリで書いたことと要するに同じことなんですが。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-a4f1.html(スターリンになぞらえるのが不適切な理由)

我々の目の前にいるのは、「民意」を踏みにじって無慈悲な組織権力を行使する権力者ではなく、「民意」の上に乗って、「民意」を最大限に利用して、「民意」が敵と名指しした者を徹底的に叩き潰すというやり方を駆使する権力者であるとするならば、やはり不用意にスターリンなどという人名を持ち出すべきではなかろうと思うわけです。

さらに言えば、そういう「民意」絶対主義が横行するように仕向けた原因の一端は、この『生活経済政策』にもよく登場してきた政治学者の方々の活躍にもあるのではないか、などと皮肉を言いたくなる面もありますが、まあわたくしもこの雑誌に登場する筆者の末席に連なっていたりするので、あまり言わないでおきますけど。

(追記)

http://twitter.com/#!/kurokawashigeru/status/174865686798155776

民意はファシズムの方が上手に利用したとは思いますが、共産主義も、単なる強権・独裁ではなくて、民衆の敵、民主主義の敵という言葉を多用して、多数派の暴力を扇動してきた歴史もあります。

それはそうなんですが、歴史の正しい方向を知っているエリートが無知な大衆を指導する共産主義に対してはまだ「もっと民主主義的に!」というスローガンが有効であり得るのに対して、その大衆自身に依拠するナチスに対してはそういう方向がもはや役に立たない点が一番違うのではないでしょうか。

というか、正直言って今の日本にとってもはや知的エリート主導型の独裁は現実的脅威ではないけれども、大衆的情緒主導の「情治」独裁は目前の脅威ですから。

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