失敗した理念の勝利@欧州労研
欧州労連の研究機関である欧州労研が去る1月に刊行した「A triumph of failed ideas: European models of capitalism in the crisis」(失敗した理念の勝利:危機の中の欧州資本主義モデル)という本は、各国の資本主義モデルが現在のソブリン危機のさなかでどうなっているのかを様々な角度から抉り出そうとしている興味深い本ですが、
なにより、このタイトル(失敗した理念の勝利)が実にひねりがきいています。
これ、実はクルーグマンがニューヨークタイムズに書いたコラムの冒頭部分から引っ張り出してきたものなんですね。
http://www.nytimes.com/2010/12/20/opinion/20krugman.html(When Zombies Win)
When historians look back at 2008-10, what will puzzle them most, I believe, is the strange triumph of failed ideas. Free-market fundamentalists have been wrong about everything — yet they now dominate the political scene more thoroughly than ever.
歴史家が2008-2010年を振り返ったとき、一番不思議なのは、私が思うに、失敗した理念の奇妙な勝利だろう。自由市場原理主義はあらゆることについて間違ってきた--なのに、そいつらが今やかつてよりも全面的に政治の場を支配している。
と、もちろん、クルーグマンは米国のコンテキストでこの台詞を述べているのですが、それをちょうど現在の、金融危機がソブリン危機に転化することで、それまでの金融資本主義批判の雰囲気が一気に緊縮財政、公共サービス削減に転換してしまった現在のヨーロッパの政治状況を批判する台詞として使おうとしているわけです。
このあたりの、言葉の政治学のうまさは、日本の労働組合諸氏も見習う値打ちはあるような。
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