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岩崎馨・田口和雄編著『賃金・人事制度改革の軌跡』

94618 岩崎馨・田口和雄編著『賃金・人事制度改革の軌跡』(ミネルヴァ書房)をいただきました。お送りいただいたのではなく、著書の鈴木誠、前浦穂高さんから直接手渡しで頂きました。ありがとうございます。

http://www.minervashobo.co.jp/book/b94618.html

>本書は、主要産業における詳細な事例検証を行うことにより、賃金・人事制度がその再編の過程で、従来の構造のどの部分が、どのように変化しているのかを明らかにする。旧来の制度の比較と現在の実態を丁寧に比較分析することにより、現在も進行中の賃金・人事制度の再編について、さらなる深い議論の展開へ導く。

目次は以下の通りですが、

はしがき
序 章 賃金制度改革の再考  田口和雄
 第一部 人事・賃金制度の戦後50年の歩み
第1章 鉄鋼業における能力主義管理の形成 青木宏之
第2章 戦後型学歴身分制から能力主義的人事処遇制度へ 鈴木誠
第3章 外資系企業日本法人にみる「仕事」基準賃金 鬼丸朋子
第4章 能力・成果主義賃金への軌跡  田口和雄
 第二部 新時代における挑戦
第5章 年功序列型人事・賃金から成果主義的処遇への転換 岩崎馨
第6章 年功化した能力主義人事制度からの人事改革 木村琢磨
第7章 総額人件費管理の徹底を目指した人事制度改革 木村琢磨
第8章 地方自治体における能力・実績主義 前浦穂高
終 章 賃金・人事制度の行方 田口和雄
あとがき

各業種の典型的企業における賃金人事制度の変遷がくっきりと浮かび上がってきて、ここちよい興奮を覚える本です。

どの章も発見に満ちていますが、ここで紹介しておきたいのは前浦さんの第8章。A市役所という公共部門における能力・実績主義の実態を、労使双方に綿密に聞き取りをして明らかにしていて、近年の公務員問題を考える上でも(妙なアジビラ風のものを読むより遥かに)役に立ちます。

>・・・この事例から、給与構造改革という能力・実績主義を実施する制度改定の流れを受けるというベクトルと、その流れの中でそれまでの労使慣行や職員の生活水準を維持するという相矛盾するベクトルとの調整が労使によって図られたことが明らかになった。これが本章における一つのインプリケーションであるが、おそらく後者のベクトルを無視して、国家公務員と同じ制度改定を地方自治体に持ち込んでも、その内容は現場の実情を反映したものではないために現場の反発を招くか、仮にトップダウンで改革を進めても、職員のインセンティブが削がれ、モラールダウンを招く結果に終わる可能性が強い。重要なのは、制度改定に対する現場の納得性であり、それを制度改定の流れの中に組み込む役割を果たしたのが組合を中心としたA市役所の労使関係である。おそらく組合の取り組みがなければ、給与構造改革をソフトランディングさせることは非常に困難であったと言える。

>今後もA市役所の労使は、評価結果を人事全般に反映させることに伴う様々な課題について話し合うことを通じて解決していくことになるが、A市役所は労使関係が整備された自治体であるため、どの自治体においても、同様の取り組みが行われているとは限らない。しかし本章から得られた事実発見は、処遇の個別化が進む中で、それへの対応を迫られている多くの自治体にとって、一つのモデルケースになりうることを最後に書き添えておく。

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