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2012年2月17日 (金)

定年延長:高齢者は若者に道を譲るな@Economist

「ごち」さんという方から昨年9月のエントリにコメントがつけられました。左にも出ていますが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-4951.html#comment-88482541(労働のかたまりの誤謬@OECD)

おそらく自由主義系のメディアとしては世界で最もレベルが高いと思われるイギリスの「Economist」誌に、ちょうどこのエントリの内容に対応する記事が載ったようで、その邦訳がネット上のマガジンであるJBPressに載っているようです。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34558

改めて引用しておくと、

高齢者が若者に道を譲るべきでない理由
「こうした見解は、世の中には一定量の仕事しか存在しないという「労働塊」の誤謬に基づいているからだ。女性の社会進出を阻む動きがあった時にも、同様の主張が用いられた。また、国内の雇用に対する脅威は今でも、反移民を掲げる政治家の常套文句となっている。

 労働塊の誤謬の問題点は、そうした考えを葬り去ることがひどく難しいことだ。これはもう、常識のように思える。」

「もしかしたら読者の皆さんは、上記のどんな議論(またはデータ)にも納得しないかもしれない。それならば、思考実験をしてみるといい。もし年配の人たちが早期に退職すれば、彼らは生活するうえで若者に依存するようになる。

 これは明らかに、国の給付を受けている人に当てはまる。だが、民間年金基金の加入者にも当てはまる話だ。こうした基金は株式や債券で構成され、その配当金や金利の支払いに必要となる所得を労働者が生み出しているからだ。」

「より多くの市民を退職させて、給付を増やしていけば、社会は本当の意味で繁栄することなどできないのだ。

早期退職によって生活水準が本当に向上するのなら、どうして60歳で打ち止めにするのか? なぜ55歳ではいけないのか? もし各国政府が定年を40歳まで引き下げれば、すべての若者が職に就いて、誰もが贅沢三昧の生活を送れるはずだろう。」

「ごち」さんのコメントでは省略されている最後の1センテンスも。

悲しいかな、そんな逸楽の国は神話に過ぎない。さあ、職場に戻れ。

こういう、ものごとの分かった人々にとってはあまりにも当たり前のことを、一生懸命否定したがるある種の人々の底意って、一体何なのか、よく考える必要がありそうです。

なお、こういうマクロ経済的労働力需給の問題とミクロ的な企業レベルでの現実に合わせた修正が必要な問題については、去る2月2日のNHKで放映した「視点・論点」を参照のこと。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-d59a.html(視点・論点「65歳雇用確保を考える」)

上記Economist誌と全く同趣旨のパラグラフと併せ、再読いただければ幸いです。

年金支給開始年齢を引き上げるということをマクロ経済的にいえば、労働力として生産活動に従事する上限年齢をもっと高い年齢にまで引き上げるということです。働ける人々にはできるだけ長く働いてもらい、年金を貰う側ではなく保険料を払う側にまわってもらう。そのために、高齢者が働けるような社会的な仕組みをきちんと作っていく。これが少子高齢化時代の雇用政策の中軸です。新自由主義者から社会民主主義者まで、まっとうな研究者でこのことを否定する人はいません。ところが世の中には、高齢者の雇用を進めると若者の雇用が奪われるのではないかと恐れ、今回の建議に対して高齢者を優遇するものだと非難する人々がいます。高齢者に働く機会を与えないということは、その高齢者を若い世代が支えるということを意味します。主観的には若者の味方をしているつもりかも知れませんが、客観的には若い世代にますます重い負担を求めているのと同じです。こういう「若者の味方」は無責任だと思います

 ただ、マクロ経済的には正しくても、ミクロな企業レベルでは現実に合わせた修正が必要です。日本の企業の場合、若いときには働き以下の賃金しかもらわない代わりに、中高年になってから働き以上の賃金を受け取るという年功賃金制が一般的です。これは、若い頃は生活費があまりかからないが、中高年になると子どもの教育費などがかかることに対応した生活給としては合理的ですが、子どもが独立した後まで働き以上の高い賃金を払うのは不合理です。企業が定年を引き上げることに消極的なのはこのためです。多くの企業では、一旦定年退職してそれまでの高い賃金をチャラにした上で、改めて働きに見合った低めの賃金で再雇用するというやり方をとっています。今回の建議でも、65歳定年は時期尚早だとして、一旦定年退職した上での継続雇用を中心に据えています。これは、現在の賃金制度を前提とする限りやむを得ないでしょう。ただ、今後さらに70歳まで働ける社会を作っていこうとするならば、40代、50代といった中高年の相対的に高い賃金水準の見直しも必要になってくると思います。年齢にかかわらず働ける人にはいつまでも働いてもらう社会とは、年齢にかかわらず仕事の中身によって賃金を決める社会でなければなりません。

(追記)

こういうツイートを見つけたのですが、

http://twitter.com/#!/manga_koji/status/170495770078875650

「彼らは生活するうえで若者に依存するようになる。」もちろんその他の方法で譲るべきだと言ってるんだとおもうけどな。あの方法だよ。 / “定年延長:高齢者は若者に道を譲るな

若者に仕事を譲ってしかもいかなる形であれ若者の稼ぐ付加価値に依存しない「あの方法」って・・・、

もしかして楢山節考の世界ですか・・・。

(追記その2)

こちらにも無責任な「ワカモノの味方」が・・・。

高齢者を働かせずに若者の稼ぐ付加価値に依存させると景気が良くなるという素晴らしい経済学?

是非、「Economist」に書いて欲しいところです。参議院なんかじゃなくて。

http://twitter.com/#!/iida_yasuyuki/status/169443651225780224

さて明日は参院調査室の参考人招致.65歳雇用継続義務化断固阻止(実際そういうパワポつくってもう送っちゃった)という話から景気対策の必要性をしたいと思います

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