派遣先たる国の団交応諾義務
判決文そのものはまだないので、新聞報道だけによるコメントになりますが、この判決は論理的には今までの考え方の延長線上であっておかしなことではありませんが、実際にこういうことをやっている多くの国や地方自治体の機関にとっては結構インパクトが大きい可能性があります。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120118/trl12011822140003-n1.htm(刑務所の偽装請負認定、派遣労働者に対する国の団体交渉義務は認める 神戸地裁の国賠訴訟判決)
>神戸刑務所(兵庫県明石市)で管理栄養士として派遣され働いていた明石市の女性(48)が、雇用形態が偽装請負だった上、刑務所に団体交渉を拒否されたとして、所属する労働組合とともに、国に計880万円の国家賠償を求めた訴訟の判決が18日、神戸地裁であった。矢尾和子裁判長は、偽装請負があったと認める一方、女性の請求は退けた。団交拒否については「正当な理由がない」として、労組に対して33万円を支払うよう命じた。
原告側によると、国の偽装請負を認定し、派遣労働者の労働組合に対する国の団体交渉義務を認める司法判断は初めてという。
偽装請負も派遣であり、派遣先は派遣先が決めることについては団交応諾義務を負うというのは最高裁判例で確立していますし、
公務員法によって労働組合法の適用が排除されているのは公務員という身分にある労働者なので、公務員じゃない派遣労働者が労働組合法の適用を受ける=部分的に派遣先たる国・地方自治体に団交を要求できるというのも、理論的に当然です。
とはいえ、管理者側は、なんで身分の安定している公務員とは団交しなくてもいいのに、派遣労働者如きと団交しなくちゃいけないんだ、と思っているんでしょうね。それは、公務員という身分から排除しているから、民間の労働法が適用されるからなんですけど。
(参考)
実は、一昨年、『地方公務員月報』2010年10月号に「地方公務員と労働法」という文章を寄稿しておりまして、その中で、まさにこのことを指摘しております。
http://homepage3.nifty.com/hamachan/chihoukoumuin.html
>これよりもさらに深刻であり得る問題は、地方公共団体に派遣された派遣労働者の労働基本権である。派遣労働者は地方公務員ではないので団体交渉権も争議権も有している。法律上派遣労働者の団交応諾義務について規定した条文は存在しないが、最高裁の判例*11によれば、「雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて右事業主は同条の「使用者」に当たる」。従って、労働者派遣法に基づき派遣先に責任が分配されている事項については、地方公共団体は派遣労働者の加入する労働組合からの団体交渉に応じなければならず、拒否すれば不当労働行為になりうる。また、派遣労働者を大量に使用している職場で彼らが争議行為を行う可能性も考えておく必要がある。
今になって慌てたりしないように、公共部門の管理者諸氏におかれては、改めてこの拙文を読み返していただければ幸いです。
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