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« ミタさんは労働者ですよ | トップページ | 経団連経労委報告から »

2012年1月26日 (木)

善悪はともかく定期昇給しないことは賃下げであることについて

最近、日本経団連さんが経労委報告を目次しかアップしてくれなくなったので、早いとこ本屋に買いに行かなければならないのですが、経団連タイムスに要約版が乗っているので、とりあえず紹介。

http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2012/0126/01.html

マスコミで話題になっているところは、

>賃金の決定にあたっては、自社の支払能力に即して判断することが重要である。厳しい経営環境や収益の状況を踏まえれば、恒常的な総額人件費の増大を招くベースアップの実施は論外であり、雇用を優先した真摯な交渉・協議の結果、賃金改善の実施には至らない企業が大多数を占めると見込まれる。

さらに、大震災で被災し甚大な影響を受けた企業や、円高の影響などによって付加価値の下落が著しく定期昇給の負担がとりわけ重い企業では、定期昇給の延期・凍結も含め、厳しい交渉を行わざるを得ない可能性もある

連合が

http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/kenkai/2012/20120124_1327389876.html

>また、従前からの総額人件費抑制に拘泥し、定期昇給制度といった長年労使で積み上げてきた制度にまで踏み込んだ主張をしている。これは、労働条件の不安定化をもたらし、労使の信頼関係をも揺るがすものであり、断じて認められない

と言ってることもあり、マスコミもそこが焦点みたいに言ってますが、いささか問題認識が混乱していると思うのは、これは要するに経営状況が厳しいところは賃下げもありうべし、ということであって、それ自体は良いとか悪いとかではなく、まさにありうべきことでしょう。

年功賃金においては、(年齢構成が変わらない限り)定昇を毎年定常的に行うことが総額人件費を一定に維持することなのですから、定昇を止めるということは賃金を下げるということですね。これは労働屋なら誰でも知っていることですが、念のため:

学校型モデルで、労働者が3期就労するとした場合、純粋非年功型であれば第1期、第2期、第3期ともX円支払うところを、年功型では第1期にX-a円、第2期にX円、第3期にX+a円支払います。労働者から見れば3期を通算して1期当たりX円ですし、会社側から見れば、1期生にはX-a円、2期生にはX円、3期生にはX+a円支払うので、ある期に一人当たり支払う額は常に平均X円になります。

今までやってきた定昇をストップするということは、前期X-a円だった2期生にX円ではなくX-a円を、前期X円だった3期生にX+a円ではなくX円支払うことなので、新たに入った1期生にX+a円払うのでない限り、定義上総額人件費の引き下げになります。

いや、もちろん、「大震災で被災し甚大な影響を受けた企業や、円高の影響などによって付加価値の下落が著しく定期昇給の負担がとりわけ重い企業では」そういうことは充分ありうべしだと思います。ただ、それが賃下げであるということははっきりした上で、正直に交渉した方がいいと思います。

年功制を維持したまま定昇をストップすることが総額人件費の引下げという意味で賃下げであるのに対し、賃金制度論としての定昇の廃止というのは、総額人件費を一定に保ちつつ、第1期、第2期、第3期ともX円支払うということであって、そこのところをごっちゃにしてはいけません。

まあ、わざとごっちゃにして人を騙すのが商売の人もいるようですが。

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コメント

2010年の労働生産性(単位労働時間あたり名目GDP、PPP$換算)は39.4$であり、購買力平価は111円 / PPP$ だった。従って、単位労働時間あたり名目GDPは4388円である。

2007年のデータによると、賃金(Wages and salaries)は名目GDPの43.5%である(注1)。名目GDPに対する賃金のレートとして2007年のデータを当てはめると、2010年の単位労働時間あたりの賃金は1909円(=4388x0.435)となる。

2010年の年間労働時間は1733時間だったから、雇用者の平均年収(税込み)は331万円となる。

OECDの2010年の単位労働コストおよび労働生産性のデータから、マクロ経済的に賃金上昇(対前年度比)を評価する。詳しくは、“ほんとうの日本問題とは人口問題なんだよ@クルーグマン”のエントリーを参考にして下さい。以下すべての項目について対前年度比で評価する。賃金は労働単位コスト、労働生産性、および年間労働時間を使って次式で評価される。
平均年収=労働単位コスト*労働生産性*年間労働時間

2010年度において、対前年度比で単位労働コストは0.969、労働生産性は1.03、年間労働時間は1.011であった。従って2010年度のマクロ経済的な賃金(対前年度比)は1.009であり、賃上げ率は約0.9%となる。


(注1)雇用者報酬は賃金に会社側の社会保障費負担を加えた額であり、2007年の雇用者報酬はGDP比で50.8%である。データはAnnual National Accounts > Detailed Non-Finantial Sector Accountsによる。

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