仁平典宏・山下順子編『労働再審5 ケア・協働・アンペイドワーク』
仁平典宏・山下順子編『労働再審5 ケア・協働・アンペイドワーク』をお送りいただきました。このシリーズもはや5巻目。6巻目もそろそろ出るそうです。
http://www.otsukishoten.co.jp/book/b94526.html
さて、本巻は
>ケアワーク、ボランティア、コミュニケーション労働……「支払われるべき」労働の境界はどこにあるのか。ケア/再生産をめぐる社会変容、そして3.11以後の日本における「労働」概念の動揺と再編に気鋭の社会学者たちが迫る。
ということで、
序章 揺らぐ「労働」の輪郭―賃労働・アンペイドワーク・ケア労働の再編(仁平典宏)
第1章 原発事故と再生産領域の抑圧―開発の社会的費用(渋谷望)
第2章 家事労働の揺らぎと担い手(服部良子)
第3章 ケア労働の分業と階層性の再編―「関係的ケア」から周辺化される労働(山根純佳)
第4章 「新しい認知症ケア」時代のケア労働―全体的にかつ限定的に(井口高志)
第5章 介護サービス・労働市場の再編とNPO(山下順子)
第6章 労働/ケアの再編と「政治」の位置(田村哲樹)
第7章 雇用社会の変容と疑似自営化―利便性の追求と提供を下支えする働き手の記述を踏まえて(居郷至伸)
第8章 完全従事社会―働き方の多様性(福士正博)
第2章から第6章までが、ケアワークを中心にあれこれ考察している文章ですが、ざっといえば、いままでの市場経済で一人前の「労働」扱いされてこなかったケアワークが公的、市場的、非市場的なルートを経て「労働」化しつつある事態のさまざまな問題を取り上げているというところでしょうか。
仁平さんの序章では、「不払い労働の賃労働化」と「賃労働の不払い化」の二つのベクトルが「労働の再編」の二大柱として示されているのですが、本巻を読んだ印象では前者に強く重点が置かれていて、後者に関わるのは居郷さんのコンビニ論くらいという感じで、若干アンバランスな気もしましたが、そもそもタイトルが「ケア・協働・アンペイドワーク」なのだから、前者が中心なのは不思議でないのでしょうね。
も一つ言うと、コンビニ論は居郷さんのいままでの論文でも扱われていて、これはこれで面白いのですが、それは「賃労働の不払い化」なのかというと、だいぶ違うような気もします。
さらに、もうこれは余計なことなのですが、そもそもアンペイドワークのペイド化ってイメージ自体、産業社会以後の雇用契約を前提にしているように思われますが、産業化以前の社会における雇用契約ってのは主として家庭内の家事労務に従事するサーバントだったわけで、それこそが当時のペイドワークの中心で、産業化後の労働者につながる職人たちはむしろ請負で働いていたわけで、議論の構図自体がもう一回りぐるっと回転しているのじゃないかと思ったりするわけですが。
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