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労働法の判例

労働法の判例としてはおおむね妥当なラインというところでしょう。個々のケースの当てはめには議論はあるでしょうが、総体としての枠組みとしては。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120116162214.pdf

>・・・以上によれば,本件職務命令の違反を理由として,第1審原告らのうち過去に同種の行為による懲戒処分等の処分歴のない者に対し戒告処分をした都教委の判断は,社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず,上記戒告処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないと解するのが相当である。

>・・・そうすると,上記のように過去に入学式の際の服装等に係る職務命令違反による戒告1回の処分歴があることのみを理由に同第1審原告に対する懲戒処分として減給処分を選択した都教委の判断は,減給の期間の長短及び割合の多寡にかかわらず,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き,上記減給処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れないと解するのが相当である。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120116143405.pdf

>・・・そうすると,上記のように過去2年度の3回の卒業式等における不起立行為による懲戒処分を受けていることのみを理由に同上告人に対する懲戒処分として停職処分を選択した都教委の判断は,停職期間の長短にかかわらず,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き,上記停職処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れないと解するのが相当である。

>・・・そうすると,上記のように同種の問題に関して規律や秩序を害する程度の大きい積極的な妨害行為を非違行為とする複数の懲戒処分を含む懲戒処分5回及び上記内容の文書の配布等を非違行為とする文書訓告2回を受けていたことを踏まえて同上告人に対する懲戒処分において停職処分を選択した都教委の判断は,停職期間(3月)の点を含め,処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず,上記停職処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないと解するのが相当である。

労働法の判例としては、というのは、もちろん教育公務員といえどもれっきとした労働者であり、上司の業務命令に従う義務はあるとともに、均衡を失した過重な懲戒処分を受けるべきではない、という意味で民間労働者と同じ権利があるという意味です。

会社の従業員が会社の儀式で命じられたのに起立しなかったとしたらどうか、という話なわけで。

ところが、この事件に強い関心を持つような人々であればあるほど、この事件をそういう民間企業労働者と同じ労働者の権利と義務の問題として捉えることに忌避感を持つようなのですね。ある種の人々からすると、この原告たちは天地共に許さざる非国民なのでしょうし、別の種の人々からすると、彼らは悪の帝国と闘う偉大なる英雄なのでしょう。

世の中にはそういう観点からこの問題を捉える視座というものがあり、そういう(対極的ではあるが良く似通った)視座が大好きな方々からすると、教師は聖職であって労働者ではないんでしょうね。

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コメント

質問です。
「会社の儀式」も「業務」というときすべてそのうちに含まれるのでしょうか。
「会社の儀式」も「業務」に含まれる可能性があるとしても、「会社の儀式」の内容や性質によっては、業務に含まれない場合もあるのではないでしょうか、と、ちょっと思ったものですから。

投稿: yellowkitty | 2012年1月18日 (水) 10時55分

「会社の儀式」である以上当然業務でしょう。

問題があり得るのは、会社とは何の関係もない社長の親の葬式の手伝いをしろとかいうようなものでしょうが、現実にはそういうのはいっぱいありますけど。

教育訓練サービスを提供する事業体において、当該サービスの顧客のために行われる儀式は、いうまでもなく業務でしょうし、だから原告たちも出席していたわけです。「業務」でないなどと主張している人は居ないと思いますが。

投稿: hamachan | 2012年1月18日 (水) 11時17分

 ありがとうございました。

 挙げていただいた例はよくわかりました。
が、たとえば、工場新設の地鎮祭が予定されていて、そこに神主が来るとして、自分は神主の取り仕切る儀式に出たくないという場合、上司に理由を話しても欠席を認められなかった場合などは、どうでしょうか。
 たびたびすみません。

投稿: yellowkitty | 2012年1月18日 (水) 16時59分

私の知る限り、日本でそういう宗教的理由による業務命令拒否が労働法上の問題になった事例としては三重宇部生コンクリート工業事件(名古屋地1963年4月26日労働民例集14巻2号668頁/時報333号10頁)がありますが、

http://www.zenkiren.com/jinji/hannrei/shoshi/04623.html

>何人も信教の自由が保障されており会社の行なう宗教行事に出席する義務を従業員は負わないとされ各行事での言動を理由とする懲戒解雇が無効とされた事例


ただ、国旗国歌はいかなる意味でも宗教問題ではないので、やや設例が異なるように思われます。

投稿: hamachan | 2012年1月18日 (水) 17時35分

ありがとうございました。

投稿: yellowkitty | 2012年1月19日 (木) 06時02分

濱口 桂一郎様
この神戸刑務所管理栄養士交代要求事件の国賠訴訟の
もう一方の原告であります組合の担当者で 内藤進夫(すすむ)と言います。

簡単ながらも紹介・コメントいただき、ありがとうございます。
判決文は、原告個人名の問題などありますので、現時点で全てを公表出来ないですが、研究に供されるとか、原告(管理栄養士と「あぱけん労組」)にたいして感想や批評を直接してくださるのであれば、郵便で判決全文のコピーをお送りしたいと思います。

アルバイト・派遣・パート関西労働組合KOBE事務所
(略称: あぱけん
内藤 進夫(相談員)
http://ahp-kobe.web.infoseek.co.jp/

電話/Fax:078-360-0450
あぱけん神戸 メルアド. sodan-kobe@ahp-union.or.jp


投稿: 内藤 進夫 | 2012年1月23日 (月) 14時05分

コメント先の裁判例は、このエントリ(君が代不起立訴訟)ではなく、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-d973.html(派遣先たる国の団交応諾義務)

の方ですね。

はい、労働法の研究上、大変興味深い裁判例なので、もしいただけるのであれば、是非お送りいただければと存じます。


〒177-8502
東京都練馬区上石神井4-8-23
労働政策研究・研修機構
濱口宛

にお願いいたします。

投稿: hamachan | 2012年1月23日 (月) 14時44分

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