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2011年12月12日 (月)

ダメな雇用創出が震災復興を妨げる?@『POSSE』13号

Hyoshi13 『POSSE』13号が届きました。いつもありがとうございます。

http://www.npoposse.jp/magazine/no13.html

さて、表紙で一番でかい文字になっているのは今をときめく大野更紗さんと古市憲寿さんの対談ですが、まあ、本田由紀さんの怒りを買ったらしい古市さんの軽さが心地よいという人も結構いるような・・・。

そこらあたりは、別に評論する人もいるでしょうから、ここではやはり、本田由紀+永松伸吾+木下武男+今野晴貴による標記討論を。

「ダメな雇用創出が震災復興を妨げる?」

規制緩和、派遣会社、住民自治……雇用創出の課題とは?
戦後雇用政策のタブー「失業対策事業」の再生に迫る!

談会「キャッシュ・フォー・ワークが日本の失業を救う?
被災者支援は失業者対策になるのか」

永松伸吾(関西大学准教授)×本田由紀(東京大学大学院教授)
×木下武男(昭和女子大学特任教授)×今野晴貴(NPO法人POSSE代表)

この討論記録、内容もなかなかスリリングですが、それ以上にわたくしはびっくりしましたよ。だって、その場にいないわたくしを持ち出して、あれこれ論じられているのですから。

>本田:みなさんは日本の過去において存在した失対事業についてはどう評価されていますか?

今野:濱口桂一郎さんは過去の失対事業について、「労働行政にとりついた夢魔」とまで酷評されていますね。

木下:濱口さんは、必ずしも失対事業はなくてもよいという立場ではないと推測しますが。

永松:固有名詞としての「失対事業」は失敗だったけど、理念としてはありうると。

より正確に言えば、この後木下さんが言われているように、

>文字通り緊急で一時的には、失業者を公的な就労につなげていけるような失業対策事業はあるべき

だが、

>緊急で一時的な措置という趣旨から外れて、失業者の滞留、定職化、既得権化していったことは否めない

というのが適切な評価でしょう。

失対事業については、ここでも引用されている『季刊労働法』233号に書いた「公的雇用創出事業の80年」で、永松さんが提唱するCFWに触れつつ、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/cfw.html

>この議論が興味深いのは、これが雇用対策の歴史では戦前から戦後まで行われた経験のある失業対策事業と通じるものでありながら、それとはいったん切れた知的世界から提唱されており、それゆえに労働専門家が陥りがちな失業対策事業への偏見からも自由に議論が展開されているというところです

と述べたことがあります。

本誌にはこのほか、

政権交代から2年…雇用創出と職業訓練は
震災後にどのようなビジョンを描けるのか

「アクティベーションの困難と震災後の就労支援モデル」
宮本太郎(北海道大学大学院教授)


誠実な取り組みが悪用される? 曖昧にされる労働者性を問う

「キャッシュ・フォー・ワークを労働法から考える」
鴨田哲郎(弁護士)


官製ワーキングプアではなく、リビングウェィジをつくる自治体へ

「被災地に公契約条例の復興特区を!」
小畑精武(自治労公共サービス民間労組評議会アドバイザー)


震災復興で漁業者にはどのような雇用対策が必要なのか

「漁業再建と被災者雇用をどう考えるか」
加瀬和俊(東京大学大学院教授)


被災者と企業の「ミスマッチ」論?浮かび上がる「地方都市」の労働市場のゆくえ
「震災は「派遣村」を繰り返すのか 仙台市ハローワーク前調査報告」
今野晴貴(NPO法人POSSE代表)


持続的な被災者支援と事業運営を
仙台市のPOSSEスタッフからの報告

「非日常から日常へ 被災地での実践的取り組み」
渡辺寛人(NPO法人POSSE事務局)


復興事業で増えた野宿者、「コールセンター」の罠、
緊急雇用創出のその後…

「失業を解決しない?震災後の雇用創出」
本誌編集部


といった記事もあって、大変読み応えがあります。

個人的には、宮本太郎さんが

>では、その後の政権交代によって、アクティベーション政策は強まったと言えるか。私は率直に言って、停滞したと考えています。・・・実際は私の言う「小沢型ベーシックインカム」が中心になってしまいました。

とまで、ある時期までの民主党政権を否定的に総括しているのが印象的でした。

上記討論でも、永松さんが田中秀臣氏の「働いた人だけお金を与えるのはけちくさい」というCFW批判に対して、

>働いてそのお金をもらうということの満足度と、ボランティアで働く満足度はどこか違うと思います。こうしたベーシックインカムで生活を保障しながらボランティアで復興するという案についてはやや違和感があるのですが、あまり整理できていません

と述べるなど、BI的政策との距離感が、さまざまな領域に顔を出してきているという感じですね。

考えてみれば、『POSSE』が論壇時評に取り上げられたのも、BIをめぐる対立軸をくっきりと出した特集だったわけで、本誌の永遠のテーマなのかも知れません。

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コメント

http://guccipost.jp/cgi-bin/WebObjects/12336a3d498.woa/wa/read/sq_135fa61f22d/

"そして自分の力で稼ぐ10万円というお金は寄付の100万円をも超え得る力があるのです。"

http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/800/112997.html

" これは私のアイデアなのですが、といいながら私はその楽器店で小さなメロディカを買っただけですが、でもとにかく、ビジネスが必要なのです、復興には。材木屋さんが再開していました。あ、材木屋ではなく製紙工場です。製紙工場が再開していたのです。それが大切なのです。人が働くことを再開できるからです"

"だから、忘れないで下さい。それから、ビジネスも。モノを買ってください。どうせ何かを買うのですから、被災地の製品を買ってください。おカネが回るようにしてください。人は復活し、自分の脚で立ち、歩くことができるようになりますから。"


"シンディ:
人々は自分たちの足で立ち上がろうとしています。それには時間がかかります。「一年経ったのだから動き始めなければ」と言われる、というような新聞報道も読みますが、いったいどこに向かって動けばよいのか?と聞きたいです。仕事はあるんだろうか?と思うのです。2つのことが大切だと思います。ビジネスがないと。それから、がれき処理。埋め立てには莫大な費用がかかります"

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