職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告(案)
こちらは先週末ですが、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループの報告(案)がアップされています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001yzy9-att/2r9852000001yzzq.pdf
個人的には、職場のいじめ・嫌がらせを「パワーハラスメント」という言葉で集約することに、いささか違和感を感じています。
>パワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為6をいう。
「パワー」というと、企業組織における指揮命令関係を背景とした公式的な権力行使を主としてイメージさせますが、現実のいじめ・嫌がらせ事案には同僚や部下、顧客などさまざまないじめ主体がいるのです。
もちろん、この報告案には、
>「職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に」としているのは、パワーハラスメントには、上司から部下に対して行われるものに限らず、人間関係や専門知識など職場内の何らかの優位性を基にして同僚間や部下から上司に行われるものも含める趣旨である。また、顧客や取引先から従業員に対する行為は含まれないが、従業員の人格や尊厳が侵害されるおそれがあるものについては適正に対応すべきであることは言うまでもない
とありますが、もちろん、社会学的な「パワー」はフォーマルな組織上の権限行使に限らないのはよく分かるのですが、違和感が払拭されません。
一つには、以前本ブログでも取り上げた丸尾拓養弁護士の議論とも関わるのですが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-1c0d.html(パワハラは原則合法?)
>しかし、パワハラの“パワー”というのは、そもそも上司の権限です。上司として、その権限を行使していくのは責務です。それは、組織を維持していく上で、経営としては当然に必要なものであり、会社としては、現場の上司にむしろ行使してもらいたいものです。そして、上司というのは嫌なものであり、ハラスメントというのが「嫌がられる」という意味であるならば、パワハラは必然的であると思います。
パワハラが原則合法というのは言い過ぎですが、少なくともパワーの行使は本来職場にあるべきもので、それと、いじめ・嫌がらせ問題は絡み合いつつも、別のフェーズもあるわけで、その意味でも、「パワ」のみを看板に掲げるのはいかがなものか、という気がするのです。
この辺、もう少し丁寧な議論をした方がいいように思うのですが・・・。
« 心理的負荷による精神障害の認定基準 | トップページ | レモンをお金に換える法または労使関係のリアリティ »
これはきちっと線引きする必要はあるでしょうね
極端な例ですが
「熊本市職員 パワハラ2年以上」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111227/t10014930071000.html
投稿: Dursan | 2011年12月28日 (水) 10時47分
あくまで、パワーを利用した「ハラスメント」が対象ですが。
橋下なんかをみていると、実は区別できないものを無理矢理区別しているのかもしれない、と思わないわけでもないですね。
投稿: Executor | 2011年12月29日 (木) 13時41分