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2011年12月25日 (日)

小宮文人+島田陽一+加藤智章+菊池馨実編著『社会法の再構築』

12432小宮文人+島田陽一+加藤智章+菊池馨実編著『社会法の再構築』(旬報社)をお送りいただきました。

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/732?osCsid=122331e73327970ecbe2344941a9bb61

この本、編著者の名前から想像がつくように、北大道幸グループによる、「道幸先生退官記念論集」に当たるものですが、表紙にはその旨の記述はありません。

>いまこそ社会法の再構築を!
わが国が直面する労働法、社会保障法に関する基本的問題を考察。
第一線の労働法・社会保障法研究者による現代的課題への挑戦。

第Ⅰ部 労働法の課題
第1章 労働組合法上の労働者概念の歴史的形成(鎌田耕一)
第2章 労働協約と倒産法上の無償否認に関する一考察(島田陽一)
第3章 公務員の争議行為と「人勧前置主義」(渡辺 賢)
第4章 東亜ペイント最高裁判決の意義と今後の課題(小宮文人)
第5章 就業形態の多様化・非雇用化と労働契約の性質決定(國武英生)
第6章 労働時間管理義務に関する実務上の諸問題(淺野高宏)
第7章 日本の育児休業法・育児介護休業法制定過程にみる理念の変容(菅野淑子)
第8章 メンタル不調者をめぐる復職配慮義務の一考察(加藤智章)

第Ⅱ部 社会保障法の課題
第9章 傷病手当金制度の今日的課題(片桐由喜)
第10章 「高齢」保障と高齢者の功績(関ふ佐子)
第11章 社会保険財源における事業主負担の範囲(倉田賀世)
第12章 新しい社会保障法の構築に向けた一試論(菊池馨実)

労働法関係の論文も、いずれも興味深いトピックを扱っていて、クリスマスの読書には最適ですが、ここでは、社会保障法の方から関ふ佐子さんの論文を。

この論文、そもそも何で高齢、つまり一定年齢以上であるというだけで社会保障の対象にするのか?という根本問題を扱っています。

病気とか、労災とか、失業とか、介護とか、あるいは幼少とか障害とか、そもそも貧乏とか、社会保障の対象にする理由(ニーズ、必要性)というのはいろいろあるわけですが、なんである年齢を超えたら、それらのどれにも当てはまらなくても、自動的に社会保障の対象にしてもらえるの?

関さんが持ち出す理屈の一つは「功績」(メリット)です。

>「功績」に関する典型的な見解は、高齢者の功績を、退役軍人の功績を例に評価するものである。戦争において国家に奉仕した退役軍人に対して補償を行う場合と同様のアナロジーで、高齢者を公的に処遇すべきだと唱える。・・・

これはすごくもっともらしいのですが、そうすると、現役時代に仕事を通じて社会に奉仕しなかった人には、報いる必要はないということね・・・という結論が導き出されそうな気がします。退役軍人というアナロジーを採る以上。

「最後の晩餐」理論というのもあります。

>人生の最後において、美味しい食事を高齢者にご馳走する制度に異論を唱えるものは少ないであろう。これを理由に、高齢者には他の世代より優遇した保障を提供するわけである。

これまたもっともらしいのですが、最後の晩餐は、死の前夜の一晩だけだから値打ちがあるのであって、それが何日も、何ヶ月も、何年も延々と続くのが当たり前・・・ということになると、宴席を用意する側が、もういい加減にしてくれと言い出すかも知れません。実際、平均寿命が80歳を超えて延びた現在、65歳から20年近くも毎日最後の晩餐を続けるというのは、いささか若年層への説得力を欠く憾みがありましょう。

「指定席理論」というのもあります。

>加齢と共に、気が短くなる、頑張る気力がなくなる、新しい不安定なことに挑戦したくなくなる、といった心理的変化が生じうる。その結果、たとえば若い頃は新幹線の自由席に乗っていたものの、年をとると指定席を予約しないと安心できない場合がある。・・・こうした心理的変化を加味して高齢者を労りたいと思う生活実感を制度設計に生かし、高齢を保障する理論を「指定席理論」と呼ぶことにする。

一面もっともですが、それこそ「ワカモノ」からは猛烈な反発が噴き出るかも知れませんね。

私は結局、社会保障の理由付けは結局ニーズ、必要性に帰着すると思っていまして、逆に言えば、ニーズで説明できないような社会保障は、そもそもその必要性自体を見直すべきだと思うのですが。

何にせよ、こういう社会保障の根源に関わるような理屈の世界は、一度はきちんと議論されるべき世界なのでしょう。

この章は、関さんの未公開の博士論文の最終章の一部だそうです。彼女が博士課程におられた頃、当時わたくしが在勤していたブリュッセルを訪れたことがあります。そのころ書かれていたものなのでしょうね。

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