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2011年12月29日 (木)

継続雇用の対象外とは?

昨日まとまった高齢者雇用対策ですが、やはり継続雇用の対象基準の廃止後にまだ認められる「対象外」とは何か?という点が議論になっているようです。

元監督官の社労士の北岡大介さんが、ブログで疑問を呈しておられます。

http://kitasharo.blogspot.com/2011/12/blog-post_27.html

>2行目以降の文章をどのように読めば良いのか、理解に苦しむところです。そもそも選定基準廃止によって、再雇用制度導入企業は、60歳を超えて雇用継続を希望する労働者がいれば、会社側の承諾の意思表示を要せずとも、「再雇用契約」が成立するといえるのかどうか。また会社側が不承諾とした場合、これは「雇用契約成立」後における「解雇」の意思表示とみるのか、あるいは有期契約の雇い止めに係る判例法理と同様に「解雇権濫用法理の類推適用」の局面と見るべきかどうか。

 また同報告書素案において「継続雇用の対象外とすることもできるとすることが適当」と記載されていますが、これは立法によって、判例法理等を修正しようとする意図と見て良いのかどうか。そのような意図がなければ、当該記述は「解雇」又は「定年雇い止め」に対し、裁判所が解雇権濫用法理を適用する可能性が高い旨述べたものに過ぎません。「適当」云々は、今後の判例法理の展開を待つほかなく、同報告書素案において記述すべき事項ではないようにも思えるところです。

同様の疑問をお持ちの方も多いのでしょう。

わたくしはもちろん、答えるべき立場でも何でもないですが、自分なりに考えた筋道はこうではないかというのを書いてみたいと思います。

現在は、9条1項で継続雇用制度が義務づけられていますから、就業規則に、「別に労使協定で定める基準に従い、再雇用する」みたいな規定を設けているわけですね。

今回、現行9条2項が削除されるので、「別に労使協定で定める基準に従い」というのは削除しなければなりませんが、その代わり、「本規則第○○条各号に定める解雇事由又は退職事由に該当しない限り、再雇用する」というような規定にすることは許されますよ、という趣旨ではないでしょうか。

こういう規定を設けることで、定年に到達した時点で再雇用しないことが生じ得ますが、それが適法か違法かは、そのもとになった就業規則の解雇・退職規定の解釈として、当然裁判で争われうるわけでしょう。

この場合、法形式的には定年後再雇用拒否が正当かどうかが争われることになりますが、、実質的には解雇が正当かどうかが問題になるわけで、まさに解雇の類推適用ということになるのでしょう。これは昨日も引いたフジタ事件判決の考え方ですね。

フジタ事件は経営が苦しいときの整理解雇の類推適用ですが、能力不足による個別解雇に即した形では審議会で森戸さんがこういう風に述べています。10月25日の基本問題部会の議事録からですが、

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ya1b.html

>○森戸委員 使用者側の委員からたくさん発言をいただいて、現場の切実さは伝わってきまして、非常によくわかりました。私は現状を知らないので、理屈しか言えないのですが、いろいろ大変ではあるけれども、経営者側、使用者側として、定年制というものは維持したいというのはあると思うのです。つまり、アメリカのように年齢差別で定年のないような世界がいいということではないのだと思うのです。そうだとすると、定年というのは年齢を基準にして辞めてもらう制度なわけです。それなのに、この年齢で辞めさせていい、自動的に辞めてもいいというのが、年金をもらい始める年齢より低い、年金をもらい始める年齢と離れているというのは、理屈としておかしいと思います。国際的にどうだというつもりはありませんが、世界的に見てもおかしいと私は思います。

 先ほどから使用者側の皆さんから出ているいろいろな例は、考えてみると年齢で切りたいのではなくて、明らかに仕事ができないような人がいて、その人に本当は辞めてもらいたいのだということ、つまり年齢で解雇しようとしているわけではなくて、能力がない人には仕事をやってもらうのはおかしいと思うのだというご意見だと思うのです。

 そうだとすると、それは定年という節目で、あまりうるさいことは言われずに、年齢を理由に辞めていただけたのかもしれないのですが、それは正面から、年齢ではないけれども、あなたは全然仕事ができないという理由で辞めてもらえるような方向を考えなければいけないのではないかと思います。それは解雇規制が厳しいのだから困るとおっしゃるかもしれませんが、それは確かにそうなのかもしれませんが、私が思うに日本の現行法上も、少なくとも全然仕事ができない人も首にしてはいけないというルールではないと私は思いますし、解雇のルール、労働条件の変更のルールも、それなりに柔軟にはできていると思いますので、定年が変わったり、定年を延長する、再雇用を導入するということは、合理性の判断において非常に必要性が高いと判断されると思いますので、それなりにそこは柔軟な調整は可能にはなっていると思いますし、また制度が変われば、そこはある程度柔軟な判断ができるのではないかと思います。

 そうは言っても、これまでないことをやってもらうという意味では、使用者側に負担なのかもしれませんが、それが高齢化なり年金の年齢が後ろに下がっていくことの負担を均等にみんなが負担しなければいけないのだろうと思って、経営側が負担すべきことは、もしかしたらそれなのかなと。つまり、年齢を理由ではなく、能力を理由にして、正面から辞めてもらうというやり方を考えなければいけないのかもしれないという、それをやらなければいけないのかもしれないというのが、経営者側に今後課せられる負担なのかもしれないと私は思います。

 労働者側も、たぶん負担はあって、少なくとも現行法上というか、ここでわりと希望者全員の再雇用でという方向もあり得るという話になっていて、つまり定年延長ではなくて再雇用でも、何とか年金までつながればいいのだというのは、それはそれで、定年延長よりは経営者側に受け入れられやすいのではないかと思いますし、再雇用制度の中身自体には、あまり踏み込んでいない規制ですから、賃金を絶対に時給いくら以上にしなさいという規制には、少なくともいまはなっていないわけですから、そこは労使の労働契約、それこそ契約の自由で決めていいという建て前になっているわけですよね。

 それから、これは労働側は私法上の効力をもっとちゃんとしろというご意見があるのは知っていますが、少なくとも現行法は行政法規として、導入義務に留まるという規制になっていると。その辺りは、そこはある意味で、労働者側にも当然に65歳までフルの雇用が従来どおりに、右肩上がりで労働条件が上がっていくような雇用が続くわけではないという意味では、労働者側にも負担がかかっているのではないか、かかるのではないかと思います。
 それから、私は前にも申し上げましたが、本当は定年と年金の年齢が一致しているのがシンプルで、あるべき姿だと思っていて、「主な意見」には取り入れてもらえなかったのですが、本当はそう思っています。先ほどから細かい法律的な議論になりましたが、再雇用みたいな形にすることで、ものすごく技術的には考えなければいけないことがたくさんあって、いまも厚生労働省でQ&Aなどを出していますが、さらに今後非常にややこしい話になると思います。それは契約形態が1回変わる形を取る以上、非常に技術的には厄介な問題、解釈なり、いろいろな細かい規則などをどうするかという問題は考えなければいけないと思います。これは行政側の負担だと思います。それなので、高齢化、年金の問題のコストを、労側、使用者側、役所側も、それぞれそれなりに負担してやっていく方向で考えると、希望者全員という方向も、もう少し前向きに考えることができるのではないかと私は思っています。

定年という切れ目でなくても解雇が正当と認められるような場合にまで、絶対何が何でも再雇用しろなどという馬鹿なことを要求することはあり得ないのですから、少なくとも同じ程度の正当性の判断はされますよね、ということでしょう。

まあ、

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