日本の特殊な労働慣行の形成過程がわかる「日本の雇用と労働法」
拙著をぜひ書評していただきたいなと思っていたうちのお一人である「きょうも歩く」黒川滋さんに、嬉しい書評をいただきました。
http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2011/12/post-e3ca.html(日本の特殊な労働慣行の形成過程がわかる「日本の雇用と労働法」)
>選挙とその後処理で丸3ヵ月間、まともにじっくり本を読む機会を失ってしまいました。
市内に勤務地が移り、電車通勤がなくなって本を読むしかない時間がなくなった(札幌から帰ってくるとき、本を読める通勤電車ということで、混雑率が低い東上線の沿線の朝霞市に戻りました)ことも悪影響もあります。
ようやく読書再開というところですが、まず読まなくてはと思っていた本の一冊、濱口桂一郎さんの「日本の雇用と労働法」(日経文庫)を読みました。
選挙運動後の読書第1号に選んでいただいたようで、有り難いことです。
>職務にもとづく契約関係ではなく、身分丸ごと雇用する日本独特のメンバーシップ型雇用の形成過程を簡単にかつ丁寧に説明されていて、特に戦前から戦後の連続性についてわかりやすく書かれている新書としては唯一に近い存在です。とくに戦争直前から戦争中に関しての労働政策の変化、国民を国家に強烈に統合していく過程で、賃金統制ととにも、上からの労働者保護が行われ、日本的な労使協議制が敷かれ、それが戦後の労組結成のベースになったという話は興味深いものでした。・・・
というのは、まさに本書の狙いそのものですが、
>●小室直樹の「危機の構造」(中公文庫・絶版)もあわせ読むとよいように思います。
という一見思いがけない、実はなかなか核心を衝いた言葉も。
小室直樹氏といえば、ある時期以降の奇矯な言説と行動が異様なまでに印象的ではありますが、それ以前のまっとうな社会学の正道を歩んでいた頃の著作は、いま読み返しても大変役に立ちます。
黒川さんが紹介している『危機の構造』は、私が高校3年生の時にダイヤモンド社から出た本で、受験勉強の合間に読んで感激した記憶があります。
>●日本には能力主義がないからダメなんだと短絡的に思いこんでいる人に違和感を感じる人は必ず濱口先生の本をお読みになった方がよいと思います。明快にその違和感が正しいと教えてくれます。
これは、結構専門家づらをしている人ですら、いい加減な議論を展開することの多い領域です。職務給対年功給という軸と、査定ありと査定ありの軸を意識的にか無意識的にかごっちゃにして、今まで年功ベースの能力主義だった日本の賃金制度を、成果主義にしなければならないと主張しながら、肝心の成果を判断する基準は不明確なままというのが、現代日本の最大の問題であるわけです。
>●余談ですが、雇用がメンバーシップ型、小室直樹流に言えば企業がコミュニティーになってしまったがために、かつてはOL型女子労働者がいて社内結婚ができたが、今は難しくそれがそのまま未婚率の上昇と書かれているp191のコラムはおもしろい。今はそれが派遣労働者に置き換わって、下手にちょっかい出すと、地位利用のセクハラになります。そもそもコミュニティーの一員としてみなしていないから、よっぽど話好きな人でもなければ、お互いに品定めして決断する対象ではないのでしょう。個々人にとって職場以外のコミュニティーづくりが大事です。
このコラムはわりと気に入っています。
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