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2011年12月

日本の特殊な労働慣行の形成過程がわかる「日本の雇用と労働法」

拙著をぜひ書評していただきたいなと思っていたうちのお一人である「きょうも歩く」黒川滋さんに、嬉しい書評をいただきました。

http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2011/12/post-e3ca.html(日本の特殊な労働慣行の形成過程がわかる「日本の雇用と労働法」)

>選挙とその後処理で丸3ヵ月間、まともにじっくり本を読む機会を失ってしまいました。
市内に勤務地が移り、電車通勤がなくなって本を読むしかない時間がなくなった(札幌から帰ってくるとき、本を読める通勤電車ということで、混雑率が低い東上線の沿線の朝霞市に戻りました)ことも悪影響もあります。

ようやく読書再開というところですが、まず読まなくてはと思っていた本の一冊、濱口桂一郎さんの「日本の雇用と労働法」(日経文庫)を読みました。

選挙運動後の読書第1号に選んでいただいたようで、有り難いことです。

>職務にもとづく契約関係ではなく、身分丸ごと雇用する日本独特のメンバーシップ型雇用の形成過程を簡単にかつ丁寧に説明されていて、特に戦前から戦後の連続性についてわかりやすく書かれている新書としては唯一に近い存在です。とくに戦争直前から戦争中に関しての労働政策の変化、国民を国家に強烈に統合していく過程で、賃金統制ととにも、上からの労働者保護が行われ、日本的な労使協議制が敷かれ、それが戦後の労組結成のベースになったという話は興味深いものでした。・・・

というのは、まさに本書の狙いそのものですが、

>●小室直樹の「危機の構造」(中公文庫・絶版)もあわせ読むとよいように思います

という一見思いがけない、実はなかなか核心を衝いた言葉も。

小室直樹氏といえば、ある時期以降の奇矯な言説と行動が異様なまでに印象的ではありますが、それ以前のまっとうな社会学の正道を歩んでいた頃の著作は、いま読み返しても大変役に立ちます。

黒川さんが紹介している『危機の構造』は、私が高校3年生の時にダイヤモンド社から出た本で、受験勉強の合間に読んで感激した記憶があります。

>●日本には能力主義がないからダメなんだと短絡的に思いこんでいる人に違和感を感じる人は必ず濱口先生の本をお読みになった方がよいと思います。明快にその違和感が正しいと教えてくれます。

これは、結構専門家づらをしている人ですら、いい加減な議論を展開することの多い領域です。職務給対年功給という軸と、査定ありと査定ありの軸を意識的にか無意識的にかごっちゃにして、今まで年功ベースの能力主義だった日本の賃金制度を、成果主義にしなければならないと主張しながら、肝心の成果を判断する基準は不明確なままというのが、現代日本の最大の問題であるわけです。

>●余談ですが、雇用がメンバーシップ型、小室直樹流に言えば企業がコミュニティーになってしまったがために、かつてはOL型女子労働者がいて社内結婚ができたが、今は難しくそれがそのまま未婚率の上昇と書かれているp191のコラムはおもしろい。今はそれが派遣労働者に置き換わって、下手にちょっかい出すと、地位利用のセクハラになります。そもそもコミュニティーの一員としてみなしていないから、よっぽど話好きな人でもなければ、お互いに品定めして決断する対象ではないのでしょう。個々人にとって職場以外のコミュニティーづくりが大事です。

このコラムはわりと気に入っています。

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風呂敷が大きすぎるような気がする

一昨年の拙著『新しい労働社会』への、読書メーターでの書評です。評者は「soku」さん。

http://book.akahoshitakuya.com/cmt/15454233

>派遣、偽装請負、労働供給事業を対比させつつ、いずれも結局は似たようなもんで、むしろ、問題は他にあるという視点は実に新しく、伝統的な労働法の視点からは大きく外れている。しかしながら、実務者にとっては非常に頷ける点が多い。ただ論点が段々広がっていき、賃金構造、社会保障、最後には政策過程論にまで至るのを読むと、風呂敷が大きすぎるような気がする。でも、こういう独特で面白い視点をもった作者を独法で抱えていながら政府や厚労省のブレーンで有効活用できていない現状はもったいないと思う。    

「実務者にとっては非常に頷ける点が多い」と褒め上げておいて、その後「風呂敷が大きすぎるような気がする」とさりげにひっくり返す手際がなかなか・・・。

最後の「もったいない」も、皮肉な匂いが・・・。まあ「独特で面白い視点」は自認しています。

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無理せずに働ける社会という理想へ

「日本には過労死するほど仕事があり、自殺するほど仕事がない」という、まことによく言い得た台詞を冒頭に出しながら、そこから導き出される結論が、

http://d.hatena.ne.jp/skicco2/20111227/p1「無職は悪」という考え方が、働く人を死に追いやる

>なぜ死んでも働かなくてはならないのか。

なぜ仕事がなくて死ななければならないのか。

全ては、「無職は悪」とする意識、風潮、空気、コモンセンスに起因する。

何かの縁でこのページをご覧になった人は、ぜひ「無職は悪」という考えを捨てて欲しい。

より多くの人が「無職は悪」という考えを捨てることが、「無職の何が悪い」と堂々と言える世の中にすることが、人の命を救うことにつながる。

という、働かないことの礼讃になってしまうのか、ある種のベーシックインカム論の背景にある思想とも絡みつつ、

過労死するほど仕事をする・・・のはいやだから、仕事をしなくてもいい社会にしよう

という両極端しか選択肢がないような発想につながってしまうのか、

それこそ、無理せずに誰でも働ける社会にしようというような、あんまり人目を惹く奇矯さはないけれど、ごくふつうの人のごくふつうの感覚に根ざした発想はいつも無視されてしまうのか、

そのあたりに、現代日本の病理の一つの根源があるような気がしないでもありません。

Img_monthここでは、たまたま先日届いた『生活経済政策』2012年1月号から、田中洋子さんの「頑張り方の社会的調整」というエッセイを引いておきます。

http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/

>OECDの報告書は、一度心身の健康が損なわれた人々が、労働市場を去らざるを得なくなることを社会的・経済的悲劇と位置づけている。その上で、ダメージから回復しながら働いていけるように、がんばれる範囲で仕事の量を調整する働き方を広げていくことを提案している。・・・

>無理はしないが、できる範囲で頑張ることができるという、頑張り方を調整できるような働き方の仕組みを、社会や企業に根付かせることが必要だということである。

>企業は、競争での勝ち残りをかけて非効率的な部分を切り捨てるあまり、社会と経済を長期的に支える基盤である労働力を自ら傷める面を持ってきた。ただ「頑張れ」と尻を叩き、人がほんとうに自分の力を発揮できるような条件を提供するのでなければ、社会経済の持続可能性は損なわれることになる

上で引いた二極選択図式を所与の前提としつつ、死ぬほど働けないような人間は働かなくてもいいというような議論は、一見死ぬほど働けない人に優しい言葉をかけているようで、結局無理せずに働ける社会というまっとうな社会の姿を思い描かせないようにしている議論なのではないか、と疑ってみる必要もあるのでしょう。

>・・・柔軟な働き方と時間的寛容さをいかに現実の経済システムの中に組み込んでいけるのか、それが今後の社会に真剣に問われている。

そう、死ぬほどに働けない人間は捨て扶持をやるから働かなくてもいいよというような、一見優しげで実は冷酷な発想から、いかに脱却するかが問われているのだと思います。

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大石玄「アニメ《舞台探訪》成立史――いわゆる《聖地巡礼》の起源について」

大石玄さんは、連合総研の労働法改革の研究会でご一緒した仲ですが、現在は釧路工業高等専門学校に勤務しておられます。

一方で、以前からブログではアニメ等への深い造詣を示しておられましたが、そちらの方の研究成果の一端を、今回釧路高専の紀要に発表されたようです。

http://d.hatena.ne.jp/genesis/20111226/p1

http://kushiro.sociallaw.info/thesis/20111216_genoishi_historyofanimetourism.pdf

>・・・困ったことになったのは,その後のこと。論文は書き上がったものの掲載してもらえる媒体が見つからない――ということになってしまったのです。このテーマの先行研究は〈観光学〉もしくは〈社会学〉の領域で発表されているのに対し,私の出自は〈法律学〉と〈地域研究〉なもので,投稿を希望しても受けいれてもらえないという事態に……。発表媒体を探すのに1年ほどを費やしていたところで釧路高専への赴任が決まり,ようやく発表の運びとなったものです。

わたくしには到底中身について論評するだけの素養はありませんが、本ブログの読者の中には興味深く読んでいただける方々もおられるのではないかと思い、ここに紹介する次第です。

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年末最高ジョーク

https://twitter.com/#!/php_Voice/status/151237660034338817

>【お知らせ】高橋洋一さん()の『数学を知らずに経済を語るな』が弊社より刊行されました。「経済学者はじつは数学がよくわかっていない」という衝撃の事実!

http://twitter.com/#!/yoritakahayashi/status/151259940634370050

>まったくだ。私立文系が経済やるな。

http://twitter.com/#!/php_Voice/status/151508233973022720

>経済学“史”ならまた別かも…?

まあ、その数学がよく分かっている方の『正論』1月号でのタモガミ氏らとの鼎談をチラ見しただけで、数学科だとか私立文系だとか経済学史だとか、そういうことどもとは全く何の関係もなく、要するに世の中のことに関する議論の質というのは、その語る人間の「質」にのみ関わるということがよく分かります。

すばらしい年末最高のジョークでした。

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よくわからならないまま歳出削減を重視する主張をする学者や評論家の意見に頷きながら、勝手に社会保障費は聖域だと思い込んでいる多くの人

kechackさんの少し前のエントリ。

http://d.hatena.ne.jp/kechack/20111219なぜ「消費税を上げる前に、徹底した財出削減をしろ」と主張するのか

>「消費税を上げる前に、徹底した財出削減をしろ」と言っている人たちは何を考えてそれを言っているのであろうか?・・・

>後は、「歳出削減」部分を都合よく解釈している人たちである。どうも「公共事業」「公務員人件費」等は悪い歳出だから削減しろ、「社会保障」は削減するなといった具合に良い歳出と悪い歳出に自分流に色分けをしている人がいる。その線引きには明確な根拠がないので、その人の職業だったり、都市在住か地方在住かと言った生活環境による利害の差だったりする。しかし、学者や評論家の世界では、歳出削減を重視する人はあらゆる歳出削減を求め、特に伸び率の最も大きい社会保障費の抑制が本丸だと考えている人が多い。多くの人はよくわからならないまま歳出削減を重視する主張をする学者や評論家の意見に頷きながら、勝手に社会保障費は聖域だと思い込んでいるのではないか。(実際に小泉改革を支持しながら、社会保障費が削減されると知った途端怒り出す人は多かった。)

表層的なマスコミが読者視聴者に想定しているのは、まさにこういう人々なのでしょうね。

こういう意味からすると、池田信夫氏のように、社会保障こそがムダの根源、社会保障費こそをぶった切れ!と断言してくれる人の方が有り難い。どっちを採るかということが明確な形で示される。

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大阪府関係職員労働組合と自治労府職員関係労働組合の違い

ある程度通じている人なら分かっているけれども、ある程度以上通じていない人には・・・という話。

わざわざ指摘するのはめんどくさいけれども(妙な政治的対立構図に巻き込まれかねないので)、せっかくポテトニョッキさんがエントリを書いているので、それを紹介すれば楽できる、というわけで、

切込隊長の

http://kirik.tea-nifty.com/diary/2011/12/post-6d5c.html(大阪の労連って本当に凄いな)

に対して、ニョッキさんが、

http://d.hatena.ne.jp/potato_gnocchi/20111229/p1(地方自治体の労働組合のお話@大阪)

はい、お読みいただいた通りです。

確かに名称は紛らわしいのだけれど、言葉の用語法を見れば一目瞭然ではあるわけですが、それもまたある程度通じている人の話なのですな。

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神吉知郁子『最低賃金と最低生活保障の法規制』

41n43pby7nl__sl500_aa300_神吉知郁子さんより、『最低賃金と最低生活保障の法規制』(信山社)をお送りいただきました。ありがとうございます。この本は、彼女の博士論文『法定最低賃金の決定構造 日英仏の公的扶助、失業補償、給付付き税額控除制度を含めた比較法的研究』をもとにした初めての単著です。

目次は信山社のHPに載っていますので、コピペしますが、

第1章 序  論
 Ⅰ 問題の所在
 Ⅱ 検討方法
 Ⅲ 本書の構成

第2章 日  本
 Ⅰ 現行制度に至るまでの最低賃金規制
 Ⅱ 最低賃金法の成立から平成19年改正までの展開
 Ⅲ 平成19年改正による新たな最低賃金制度
 Ⅳ 最低賃金法制と社会保障各制度との関係
 Ⅴ 小括――日本の最低賃金制度と社会保障制度

第3章 イギリス
 Ⅰ 現行制度に至るまでの最低賃金規制
 Ⅱ 全国最低賃金制度
 Ⅲ 社会保障・税制度
 Ⅳ 小括――イギリスの最低賃金制度と社会保障・税制度

第4章 フランス
 Ⅰ 現行制度に至るまでの最低賃金規制
 Ⅱ 全職域成長最低賃金(SMIC)制度
 Ⅲ 社会保障・税制度
 Ⅳ 小括――フランスの最低賃金制度と社会保障・税制度

第5章 総  括
 Ⅰ イギリス
 Ⅱ フランス
 Ⅲ 英仏における法定最低賃金の役割
 Ⅳ 日本の課題に対する示唆

最低賃金制度自体、これまで労働法学ではあんまり本格的には取り扱われてこなかった領域ですが(まともな単著は役人の書いた名著が主)、それと失業補償、公的扶助、さらには税制まで視野を広げて、在職中から離職中までのセーフティネットのありようを法学的に考察した数少ない研究書と言えましょう。

数少ないのは、要するにこれまであんまり関心を持たれてこなかった領域だからなのでしょう。彼女が法学部を卒業して大学院に進学したのが2003年で、ちょうどその少し後あたりから、ワーキングプアとか、セーフティネットの欠落とかいった問題領域が、それまでの無関心から突如として世間的に騒がれ出した時期で、その時代の問題意識を受け止めて自らの研究対象にしていったことが、この本に結実したわけですね。

はしがきから、彼女のこの研究に寄せる思いを示す一節を:

>いわゆるロスト・ジェネレーション世代の筆者は、バブル経済の崩壊と就職氷河期の到来、非正規雇用の急増といった、労働と生活をめぐる問題を常に突きつけられてきた。労働とは何か、どうあるべきかという問いは、自らの人生前半における大問題であり、労働法の研究者を志した原点でもある。

>・・・そのような状況(東日本大震災)を受けて、大幅な加筆修正に取り組むうち、自分の問題意識の甘さや、この広大な問題に取り組むにはいかに非力であったかを思い知らされた。しかし、そのような状況でも、単なる金銭ではなく雇用こそが求められているという事実は、重要な気づきであった。労働の対価たる賃金によって生活を支えることが、持続可能な社会の基盤となっていることを再確認したことは、自らの研究の原点を振り返ることにつながった。

アカデミズムの中だけではなく、労働社会政策を広く考えようという人には不可欠な本だと思います。例によって、信山社の本は高いんですけど。





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取引先と性行為する業務命令に従う義務

芸能関係では有名な人らしいですが、こういう記事が

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111229-OYT1T00184.htm?from=tw(「取引先の相手を」部下女性にわいせつ行為命令)

>部下の女性に取引先とわいせつな行為をさせたとして、警視庁が音楽プロデューサーで会社経営の大沢伸一容疑者(44)を準強姦容疑で逮捕していたことが捜査関係者への取材でわかった。逮捕は14日。


 捜査関係者によると、大沢容疑者は11月、自らが経営する会社に勤務する女性に「取引先の男性の相手をしてほしい。そうしないと会社が潰れる」などと命令し、東京都内のホテルで男性とわいせつな行為をさせた疑い。

 同庁は、大沢容疑者が女性に対し、従わなければ解雇されると誤信させたことについて、準強姦罪の要件である抵抗不能な状態に陥らせたと判断した。会社の利益を図ろうとしたとみている。大沢容疑者は歌手の安室奈美恵さんらの作品を手がけていた。

こういうことが芸能界でよくあることなのかどうなのかもよく分かりませんが、興味深いのは「従わなければ解雇されると誤信させた」という表現です。

誤信」という言葉を素直にとると、大沢容疑者は当該女性が取引先の相手の相手をすることを拒否したときに解雇するつもりはなかったかのようですが、おそらくここでの表現はそういうことではなく、大沢容疑者が取引先の相手をすることを拒否した女性を解雇しても、それは解雇権濫用法理に基づいて違法無効なのだから、法律上は解雇されることはなく、だから「誤信」だといっているように思われます。

しかし、解雇権濫用法理はそんな事前に一義的明確に判断されるようなものではなく、裁判に訴えて判決を得ない限り、事前に一義的明確に無効と判断できるわけではないのですから、取引先と性行為する業務命令に従う義務があると信じたことを「誤信」とは言い切れないように思われます。

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継続雇用の対象外とは?

昨日まとまった高齢者雇用対策ですが、やはり継続雇用の対象基準の廃止後にまだ認められる「対象外」とは何か?という点が議論になっているようです。

元監督官の社労士の北岡大介さんが、ブログで疑問を呈しておられます。

http://kitasharo.blogspot.com/2011/12/blog-post_27.html

>2行目以降の文章をどのように読めば良いのか、理解に苦しむところです。そもそも選定基準廃止によって、再雇用制度導入企業は、60歳を超えて雇用継続を希望する労働者がいれば、会社側の承諾の意思表示を要せずとも、「再雇用契約」が成立するといえるのかどうか。また会社側が不承諾とした場合、これは「雇用契約成立」後における「解雇」の意思表示とみるのか、あるいは有期契約の雇い止めに係る判例法理と同様に「解雇権濫用法理の類推適用」の局面と見るべきかどうか。

 また同報告書素案において「継続雇用の対象外とすることもできるとすることが適当」と記載されていますが、これは立法によって、判例法理等を修正しようとする意図と見て良いのかどうか。そのような意図がなければ、当該記述は「解雇」又は「定年雇い止め」に対し、裁判所が解雇権濫用法理を適用する可能性が高い旨述べたものに過ぎません。「適当」云々は、今後の判例法理の展開を待つほかなく、同報告書素案において記述すべき事項ではないようにも思えるところです。

同様の疑問をお持ちの方も多いのでしょう。

わたくしはもちろん、答えるべき立場でも何でもないですが、自分なりに考えた筋道はこうではないかというのを書いてみたいと思います。

現在は、9条1項で継続雇用制度が義務づけられていますから、就業規則に、「別に労使協定で定める基準に従い、再雇用する」みたいな規定を設けているわけですね。

今回、現行9条2項が削除されるので、「別に労使協定で定める基準に従い」というのは削除しなければなりませんが、その代わり、「本規則第○○条各号に定める解雇事由又は退職事由に該当しない限り、再雇用する」というような規定にすることは許されますよ、という趣旨ではないでしょうか。

こういう規定を設けることで、定年に到達した時点で再雇用しないことが生じ得ますが、それが適法か違法かは、そのもとになった就業規則の解雇・退職規定の解釈として、当然裁判で争われうるわけでしょう。

この場合、法形式的には定年後再雇用拒否が正当かどうかが争われることになりますが、、実質的には解雇が正当かどうかが問題になるわけで、まさに解雇の類推適用ということになるのでしょう。これは昨日も引いたフジタ事件判決の考え方ですね。

フジタ事件は経営が苦しいときの整理解雇の類推適用ですが、能力不足による個別解雇に即した形では審議会で森戸さんがこういう風に述べています。10月25日の基本問題部会の議事録からですが、

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ya1b.html

>○森戸委員 使用者側の委員からたくさん発言をいただいて、現場の切実さは伝わってきまして、非常によくわかりました。私は現状を知らないので、理屈しか言えないのですが、いろいろ大変ではあるけれども、経営者側、使用者側として、定年制というものは維持したいというのはあると思うのです。つまり、アメリカのように年齢差別で定年のないような世界がいいということではないのだと思うのです。そうだとすると、定年というのは年齢を基準にして辞めてもらう制度なわけです。それなのに、この年齢で辞めさせていい、自動的に辞めてもいいというのが、年金をもらい始める年齢より低い、年金をもらい始める年齢と離れているというのは、理屈としておかしいと思います。国際的にどうだというつもりはありませんが、世界的に見てもおかしいと私は思います。

 先ほどから使用者側の皆さんから出ているいろいろな例は、考えてみると年齢で切りたいのではなくて、明らかに仕事ができないような人がいて、その人に本当は辞めてもらいたいのだということ、つまり年齢で解雇しようとしているわけではなくて、能力がない人には仕事をやってもらうのはおかしいと思うのだというご意見だと思うのです。

 そうだとすると、それは定年という節目で、あまりうるさいことは言われずに、年齢を理由に辞めていただけたのかもしれないのですが、それは正面から、年齢ではないけれども、あなたは全然仕事ができないという理由で辞めてもらえるような方向を考えなければいけないのではないかと思います。それは解雇規制が厳しいのだから困るとおっしゃるかもしれませんが、それは確かにそうなのかもしれませんが、私が思うに日本の現行法上も、少なくとも全然仕事ができない人も首にしてはいけないというルールではないと私は思いますし、解雇のルール、労働条件の変更のルールも、それなりに柔軟にはできていると思いますので、定年が変わったり、定年を延長する、再雇用を導入するということは、合理性の判断において非常に必要性が高いと判断されると思いますので、それなりにそこは柔軟な調整は可能にはなっていると思いますし、また制度が変われば、そこはある程度柔軟な判断ができるのではないかと思います。

 そうは言っても、これまでないことをやってもらうという意味では、使用者側に負担なのかもしれませんが、それが高齢化なり年金の年齢が後ろに下がっていくことの負担を均等にみんなが負担しなければいけないのだろうと思って、経営側が負担すべきことは、もしかしたらそれなのかなと。つまり、年齢を理由ではなく、能力を理由にして、正面から辞めてもらうというやり方を考えなければいけないのかもしれないという、それをやらなければいけないのかもしれないというのが、経営者側に今後課せられる負担なのかもしれないと私は思います。

 労働者側も、たぶん負担はあって、少なくとも現行法上というか、ここでわりと希望者全員の再雇用でという方向もあり得るという話になっていて、つまり定年延長ではなくて再雇用でも、何とか年金までつながればいいのだというのは、それはそれで、定年延長よりは経営者側に受け入れられやすいのではないかと思いますし、再雇用制度の中身自体には、あまり踏み込んでいない規制ですから、賃金を絶対に時給いくら以上にしなさいという規制には、少なくともいまはなっていないわけですから、そこは労使の労働契約、それこそ契約の自由で決めていいという建て前になっているわけですよね。

 それから、これは労働側は私法上の効力をもっとちゃんとしろというご意見があるのは知っていますが、少なくとも現行法は行政法規として、導入義務に留まるという規制になっていると。その辺りは、そこはある意味で、労働者側にも当然に65歳までフルの雇用が従来どおりに、右肩上がりで労働条件が上がっていくような雇用が続くわけではないという意味では、労働者側にも負担がかかっているのではないか、かかるのではないかと思います。
 それから、私は前にも申し上げましたが、本当は定年と年金の年齢が一致しているのがシンプルで、あるべき姿だと思っていて、「主な意見」には取り入れてもらえなかったのですが、本当はそう思っています。先ほどから細かい法律的な議論になりましたが、再雇用みたいな形にすることで、ものすごく技術的には考えなければいけないことがたくさんあって、いまも厚生労働省でQ&Aなどを出していますが、さらに今後非常にややこしい話になると思います。それは契約形態が1回変わる形を取る以上、非常に技術的には厄介な問題、解釈なり、いろいろな細かい規則などをどうするかという問題は考えなければいけないと思います。これは行政側の負担だと思います。それなので、高齢化、年金の問題のコストを、労側、使用者側、役所側も、それぞれそれなりに負担してやっていく方向で考えると、希望者全員という方向も、もう少し前向きに考えることができるのではないかと私は思っています。

定年という切れ目でなくても解雇が正当と認められるような場合にまで、絶対何が何でも再雇用しろなどという馬鹿なことを要求することはあり得ないのですから、少なくとも同じ程度の正当性の判断はされますよね、ということでしょう。

まあ、

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高齢者雇用対策の最終報告

ということで、本日の労政審雇用対策基本問題部会に提示された最終報告(案)ですが、この形で了承されたようです。

一昨日の報告案と違うのは、次の部分が付け加えられたところです。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001zfo5-att/2r9852000001zfrl.pdf

>(2)・・・・・・なお、使用者側委員から、①現行法9条2項に基づく継続雇用の対象者基準は、労使自治の観点から妥当な制度であり、企業の現場で安定的に運用されていることや、基準をなくした場合、若年者雇用に大きな影響を及ぼす懸念があることから、引き続き当該基準制度を維持する必要がある、②仮に、現行の基準制度の維持が困難な場合には新しい基準制度を認めるべき、との意見が出された。

(3)こうした事情に対する一つの方策として、老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢の段階的引き上げを勘案し、雇用と年金を確実に接続した以降は、できる限り長期間にわたり現行の9条2項に基づく対象者基準を利用できる特例を認める経過措置を設けることが適当である。

年金の支給開始年齢が1歳づつ引き上げられていくのにあわせて、まだ年金が出る部分は対象者を限定できる、と。

そうすると、わざといやらしいことをいうと、女性は対象者限定をも少し後までやっていいんでしょうか?というロジックになりそうな気もしますが、いやもちろん、男女均等法違反になりますけどね。

これはそもそも、年金法が堂々と男女(逆)差別をやっていることが原因なわけですが、高齢者雇用の枠では誰も敢えて言わないのですけど。

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本日、高齢者雇用で結論が出ました

本日、11:30-13:00の予定で、労働政策審議会の雇用対策基本問題部会が開かれ、うまくいけば一昨日示された報告(案)に一定の経過措置を加えて労使合意されたようですることになります

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001z3s5.html

1.日時平成23年12月28日(水) 11:30~13:00(変更後)

一昨日の資料は

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001z681-att/2r9852000001z6bm.pdf

>(2)しかし、現行制度では65 歳までの希望者全員の雇用を確保することとなっていない。これにより、2013 年度からの老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引上げに伴い、無年金・無収入となる者が生じることのないよう、意欲と能力に応じて働き続けることが可能となる環境整備が求められており、雇用と年金を確実に接続させるため、現行の継続雇用の対象となる高年齢者に係る基準は廃止することが適当である。

その際、就業規則における解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する者について継続雇用の対象外とすることもできるとすることが適当である(この場合、客観的合理性・社会的相当性が求められると考えられる)。

(3)また、継続雇用制度の基準を廃止する場合であっても、就労を希望する高齢労働者が増加していくことを考えると、同一の企業の中だけでの雇用の確保には限界があるため、①親会社、②子会社、③親会社の子会社(同一の親会社を持つ子会社間)、④関連会社など事業主としての責任を果たしていると言える範囲において、継続雇用における雇用確保先の対象拡大が必要である。

というわけで、9条2項の廃止と、現在Q&Aでやっている転籍による雇用確保の拡大というかたちです。

真ん中の「その際」は、定年でなくてもそこで雇用が終了できるような場合は、雇用終了してもいいよ、という当たり前といえば当たり前の話ですが、いままでほんとは解雇したいんだけど、もうすぐ定年だからそれまで我慢して待とう、という行動様式をとっていた使用者からすると必ずしも当たり前でないということだったわけでしょうか。

これは、議事録上では森戸さんが論じていたように思いますが、最近労経速に載ったフジタ事件判決が、整理解雇できるような状況下で定年後の継続雇用を拒否してもOKという判断を示していて、その場合は有期の反復更新とは違うけれども似たようなものとして解雇権濫用法理の類推適用でいくんだと言ってますね。

転籍の拡大については、詳しい別資料があって、

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001z681-att/2r9852000001z6bv.pdf

議決権20%以上の関連会社を新たに含めるということのようです。

本日、この通り決まるかどうか分かりませんが、結論が出ればまた改めて。

読売によると、経過措置は次のようなものだそうです。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111228-OYT1T00600.htm?from=main2

>「若年者雇用に大きな影響が出る」という企業側の反発を受け、特例的に一定期間、再雇用対象者を選別できる経過措置を認めることとした。

>基準を存続できる経過措置は、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が2013年4月から段階的に60歳から65歳に引き上げられることを考慮し、報酬比例部分が受け取れる年齢の従業員に関して認められる。経過措置の詳細やいつまで認めるかは今後、検討する。ただ、特例が適用されても「無年金・無収入」の高齢者は生まれないことになる

本日の資料がアップされたらまた改めて。

その前に、池田信夫氏のコメントを:

http://twitter.com/#!/ikedanob/status/151897494094233600

>自民党は反対しないんだね。日本の政党は「老人翼賛会」になったのかな。 RT : 65歳雇用義務化 法案提出へ

今更ながらですが、池田信夫氏の脳内では、老人翼賛会というのは、若者や現役世代が汗水垂らして働いて稼いだカネを働かない老人の生活につぎ込ませる政策を指すのではなく、現役世代にばかり負担をかけないように高齢者にもできるだけ働いて自分の生活を維持してもらう政策を指すようでありますな。

池田信夫氏とその周辺のイナゴ諸氏以外には、世界の先進国のどこでも通用しないロジックですが(「俺たち高齢者をいつまでも働かせようとするな」とデモするフランスの労働組合は涙を流して喜ぶかも知れませんが)、それがマスコミ人に結構通用してしまうのですから、まあ呆れたものではあります。

まあ、日本の労働者の大部分がそういう奇矯な議論に付き合わないお蔭で、昨年来たフランスの労働大臣は、日本の労働者をうらやましがるわけですが。

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レモンをお金に換える法または労使関係のリアリティ

24341 いまや朝霞市議になった黒川滋さんが、議会の質問で労働法教育を求め、

http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2011/12/1222-01dc.html

>③労働法教育について
Q労働三権を丸暗記させられて、労働法の基礎知識すらなく社会に放り出されて、つまづく若者も多い。市が推進するキャリア教育にあわせて、労働法の実践的な教育をすべきではないか。
A(学校教育部長、教育長)知識注入型の労働法教育にとどまっているので実践的な教育のあり方についてキャリア教育の充実とあわせて検討したい。
〈解説・感想〉とくに集団的な労使関係で、労使対等の交渉で職場のルールは形成されるんだ、という労使関係についてワークショップ等で学べるような仕組みを考えてもらいたいとお願いしました。教育委員会の関心は高いものの、こうした自らを守るための技術教育について学習指導要領にどう位置づけられるかが課題のようですが、すでに厚生労働省などは「今後の労働法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会」などで必要性を強く訴えているものです。

それに絡めて、『レモンをお金に換える法』という本を改めて紹介しています。

http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2011/12/1126-1bc0.html

>労働法教育を求めた議会質問でも、先日のブログでも、労使関係が市場にとって不可欠だということを説明しなくてはなりません。
資本主義社会に生きながらほとんど労使関係を知らないこの地域の多くの人にどうやって理解してもらうのか、と思い返したらこんな本を思い出しました(昔も紹介したような記憶があります)。

どういうところが労使関係の教育に役立つのかというと、

>主人公は、夏休みにレモネードをネタに金儲けを始め、徐々に成功し、従業員を雇ったら賃金に不満で、労使交渉を申し込まれ、交渉決裂、ストライキ、ロックアウト、仲裁、労使交渉が妥結、事業再開、そしてさらに商売は繁盛し、夏休みの終わりに成功したレモネード屋を売り払い商売は大成功、めでたしめでたし、という話の絵本です。

商売をやっていくといずれ労働力の購入が不可欠で、それはそれで市場原理が働き、売り手の主体として労働者があり労働組合があり、そことの交渉が不可欠という話が、金儲けのメカニズムを教える中に必ず入っています。アメリカらしいリアリティの持ち方です。

労働者を弾圧して貰うのでない限り、市場原理でものごとをやっていく以上、労使関係をどう扱うかという問題は必ずつきまとうわけで、それがまともな市場経済というものであるわけですが、どういうわけか、近年の日本で流行る民間ガーというのは、こういうまっとうな市場経済の原理が大嫌いでしょうがないのですね。資本主義社会の権利を持った労働者ではなく、奴隷がお好みのような匂いが・・・。

このあたり、いろいろ問題はあるにしても、アメリカという国の底抜けな素直さは評価するに足ります。

『レモンをお金に換える法』については、以下参照。

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309243412

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職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告(案)

こちらは先週末ですが、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループの報告(案)がアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001yzy9-att/2r9852000001yzzq.pdf

個人的には、職場のいじめ・嫌がらせを「パワーハラスメント」という言葉で集約することに、いささか違和感を感じています。

>パワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為6をいう。

「パワー」というと、企業組織における指揮命令関係を背景とした公式的な権力行使を主としてイメージさせますが、現実のいじめ・嫌がらせ事案には同僚や部下、顧客などさまざまないじめ主体がいるのです。

もちろん、この報告案には、

>「職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に」としているのは、パワーハラスメントには、上司から部下に対して行われるものに限らず、人間関係や専門知識など職場内の何らかの優位性を基にして同僚間や部下から上司に行われるものも含める趣旨である。また、顧客や取引先から従業員に対する行為は含まれないが、従業員の人格や尊厳が侵害されるおそれがあるものについては適正に対応すべきであることは言うまでもない

とありますが、もちろん、社会学的な「パワー」はフォーマルな組織上の権限行使に限らないのはよく分かるのですが、違和感が払拭されません。

一つには、以前本ブログでも取り上げた丸尾拓養弁護士の議論とも関わるのですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-1c0d.html(パワハラは原則合法?)

>しかし、パワハラの“パワー”というのは、そもそも上司の権限です。上司として、その権限を行使していくのは責務です。それは、組織を維持していく上で、経営としては当然に必要なものであり、会社としては、現場の上司にむしろ行使してもらいたいものです。そして、上司というのは嫌なものであり、ハラスメントというのが「嫌がられる」という意味であるならば、パワハラは必然的であると思います。

パワハラが原則合法というのは言い過ぎですが、少なくともパワーの行使は本来職場にあるべきもので、それと、いじめ・嫌がらせ問題は絡み合いつつも、別のフェーズもあるわけで、その意味でも、「パワ」のみを看板に掲げるのはいかがなものか、という気がするのです。

この辺、もう少し丁寧な議論をした方がいいように思うのですが・・・。

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心理的負荷による精神障害の認定基準

既に研究会報告で周知の通りですが、心理的負荷による精神障害の認定基準についての通達が昨日発せられました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj.html

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj-att/2r9852000001z43h.pdf

これにより、今後の労災認定はこの基準によって行われることになります。

その概要は

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj-att/2r9852000001z43b.pdf

のとおりで、「極度の長時間労働」を月160時間程度の時間外労働と明示し、「心理的負荷が極度のもの」に強姦やわいせつ行為等を例示したこと、強い心理的負荷となる時間外労働時間数として、発病直前の連続した2か月間に、1月当たり約120時間以上、発病直前の連続した3か月間に、1月当たり約100時間以上、「中」の出来事後に、月100時間程度等の具体的な数値を示しています。また、評価期間についても、セクシュアルハラスメントやいじめが長期間継続する場合には6か月を超えて評価するとしています。

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リフレ真理教

久しぶりに覗いて見たHALTAN氏のブログのタイトルが、いきなり、

http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20111227/p2

>リフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞリフレするぞ

となっていて、びっくらこいたぞなもし。

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有期労働で労政審建議

本日、労政審は「有期労働契約の在り方について」建議を行いました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z0zl.html

主なポイントは、

>・有期労働契約の長期にわたる反復・継続への対応
 有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合には、労働者の申出により期間の定めのない労働契約に転換させる仕組みを導入することが適当。
・「雇止め法理」の法定化
 「雇止め法理」の内容を制定法化し、明確化を図ることが適当。
・期間の定めを理由とする不合理な処遇の解消
 有期労働契約の内容である労働条件については、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、期間の定めを理由とする不合理なものと認められるものであってはならないこととすることが適当。

ですが、具体的な内容は、

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z0zl-att/2r9852000001z112.pdf

に書かれています。その中身は、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-768d.html

で紹介したものとほとんど同じですが、出口規制のところに具体的な数字が入っています。

>有期労働契約が、同一の労働者と使用者との間で5年を超えて反復更新された場合には、労働者の申出により、期間の定めのない労働契約に転換させる仕組み(転換に際し期間の定めを除く労働条件は従前と同一とする)を導入することが適当

クーリング期間は、6月(有期契約期間が1年未満の場合はその半分)とされています。

なお、利用可能期間到達前の雇止めの抑制策について「労使を含め十分に検討することが望まれる」とあり、さてどこで検討されることになるのでしょうか。

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パイを増やすことと分けることは矛盾しない

暴言日記さんが、「経済成長の前にまずパイを分けることを考えるべき 」と論じています。

http://blogs.yahoo.co.jp/zhang_r/29982716.html

実は、こういう形で経済成長そのものに対する否定的な議論が蔓延すること自体に、私はむしろ危惧を感じます。

いや、ここで暴言日記さんが

>だいたい、パイをどう分けるかというのをグダグダ考え続けるのが、自由で民主的な国家というものだろう。「パイを増やす」ことで、そういう困難な話から逃げ続けられるとでも思っているのだろうか。「パイを分けること」を、なんか汚らしい政治権力闘争みたいに思っている時点で、はっきり言って中二病である。おそらく、どうパイを分けようかということで、国民的な議論をあれこれと重ねていくことが、「めんどくさい」とか「綺麗事」だとか思っているのだろう。

と、パイの分け方論を忌避する手合いを批判していることには共感するのですが、それが

>「経済成長」を最初の一行に持ってくる人たちの冷徹さや無神経さには、正直憤りを禁じ得ない。

という言葉になって発せられると、やや問題が出てくるという気がします。

大事なのは、パイが焼けたら公平に分けようね、とみんなで合意してパイを焼き始めることで、パイの分け方論がパイを焼かない理屈になってしまうと、それもまたまずいわけです。

暴言日記さんがそうであるわけではないのですが、こういう「成長」を否定するかの如きものの言い方は、なまじ世の中に本気汁の反成長論者というのもいるために、パイの分け方が大事だと言ってる議論を、意識的にか無意識的にか、成長それ自体を根本的に否定している議論だと描き出す傾向にあるだけに、注意した方がいいと思われます。

このあたりは、実は昔懐かしい生産性向上運動の頃の議論の、やや別次元でのデジャブみたいなところもあるのですが、それはまた別の機会に。

(追記)

http://blogs.yahoo.co.jp/zhang_r/29994274.html(根っこは経済成長万歳)

>いや根っこでは「経済成長」万歳の単純人間なんですよ、私は。「成長社会ではなく共生社会」とかいう本を見ると反吐が出るタイプで、・・・もっと単純に人々の生活が「楽」になる話をしてほしいわけです。

>しかし、「経済成長」を積極的に掲げている人たちがそういう話をしているかというと、実はあまりしていない。生活が楽になる話よりも、日銀や財務省などの愚痴や悪口ばかりで、さらにみんなの党とか橋下市長とか、シバキ主義的な人たちの物言いに、意外なほど寛容なんですね。こういう人たちが「経済成長」という言葉を振り回している以上、この言葉を使わないわけです。

気持ちはまったくよく分かるのですが、そういう理由で「成長」という言葉を使わないでいると、「反吐の出る」「共生」バンザイの「反成長派」と一緒にされてしまうという危惧なわけで。

いや、「成長」を掲げてシバキ主義を振り回すたぐいの人々にどう思われるかなどどうでもよいのですが、世間一般の人々に反成長論者と一緒くたにされるのは、よろしくないと思うのですよ。

どちらかというと、暴言日記さんの

>成長と分配は話が別という人たちも、人々の生活を楽にしながら成長するというプロセスを真面目に考えなければ、また反経済成長論が盛り上がるだけなのか何でわからないのか叱り飛ばしたくなります。

というのが、シバキ系成長派の人々に向かっての言葉であるのに対して、私はあんまりそちら方面に語りかける気持ちはなくて、世間普通の生活を楽にしたいと思っている人向けに言葉が通ればそれでいいと思っているものですから・・・。

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民間ガーの理想の国は共産主義?

黒川滋さんが久しぶりに公務員賃金問題について述べています。

http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2011/12/1225-0af7.html(復興財源のための国家公務員の賃下げが進まないのは野田首相だけの責任か)

本論の後のこの一節が、近頃やたらに政界やマスコミ界に流行る「民間ガー」の精神的故郷のありかをよく示しています。

>グローバリゼーションに心酔している人ほど、公務員の賃金を政治的圧力で一方的に引き下げられると勘違いしている。しかしこうした方々は多くの国で公務員賃金は労使関係で決定されていることを認識していない。政治的に引き下げられるという誤解は共産国と日本だけの独特の発想である。
公務員賃金を下げたいということなら、労使の話し合いで合意していくしかない。そのためには彼らが最も忌み嫌う労働組合に交渉権を認めて、きちんと話し合っていくように制度改正すべきなのだ。

民間ガー諸氏の脳内で理想像とされているらしい法制度というのは、日本国も含めてまともな先進資本主義国では考えられないような代物で、たぶん一番それに近いのは、共産党独裁国家なのでしょうが、なぜか、そういう民間ガーに限って、自分の脳内では、自分の姿と一番よく似ている共産主義と英雄的に闘っているつもりになっているという不思議な状況。

まあ、世の中にはよく見られる現象といえましょうか。

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小宮文人+島田陽一+加藤智章+菊池馨実編著『社会法の再構築』

12432小宮文人+島田陽一+加藤智章+菊池馨実編著『社会法の再構築』(旬報社)をお送りいただきました。

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/732?osCsid=122331e73327970ecbe2344941a9bb61

この本、編著者の名前から想像がつくように、北大道幸グループによる、「道幸先生退官記念論集」に当たるものですが、表紙にはその旨の記述はありません。

>いまこそ社会法の再構築を!
わが国が直面する労働法、社会保障法に関する基本的問題を考察。
第一線の労働法・社会保障法研究者による現代的課題への挑戦。

第Ⅰ部 労働法の課題
第1章 労働組合法上の労働者概念の歴史的形成(鎌田耕一)
第2章 労働協約と倒産法上の無償否認に関する一考察(島田陽一)
第3章 公務員の争議行為と「人勧前置主義」(渡辺 賢)
第4章 東亜ペイント最高裁判決の意義と今後の課題(小宮文人)
第5章 就業形態の多様化・非雇用化と労働契約の性質決定(國武英生)
第6章 労働時間管理義務に関する実務上の諸問題(淺野高宏)
第7章 日本の育児休業法・育児介護休業法制定過程にみる理念の変容(菅野淑子)
第8章 メンタル不調者をめぐる復職配慮義務の一考察(加藤智章)

第Ⅱ部 社会保障法の課題
第9章 傷病手当金制度の今日的課題(片桐由喜)
第10章 「高齢」保障と高齢者の功績(関ふ佐子)
第11章 社会保険財源における事業主負担の範囲(倉田賀世)
第12章 新しい社会保障法の構築に向けた一試論(菊池馨実)

労働法関係の論文も、いずれも興味深いトピックを扱っていて、クリスマスの読書には最適ですが、ここでは、社会保障法の方から関ふ佐子さんの論文を。

この論文、そもそも何で高齢、つまり一定年齢以上であるというだけで社会保障の対象にするのか?という根本問題を扱っています。

病気とか、労災とか、失業とか、介護とか、あるいは幼少とか障害とか、そもそも貧乏とか、社会保障の対象にする理由(ニーズ、必要性)というのはいろいろあるわけですが、なんである年齢を超えたら、それらのどれにも当てはまらなくても、自動的に社会保障の対象にしてもらえるの?

関さんが持ち出す理屈の一つは「功績」(メリット)です。

>「功績」に関する典型的な見解は、高齢者の功績を、退役軍人の功績を例に評価するものである。戦争において国家に奉仕した退役軍人に対して補償を行う場合と同様のアナロジーで、高齢者を公的に処遇すべきだと唱える。・・・

これはすごくもっともらしいのですが、そうすると、現役時代に仕事を通じて社会に奉仕しなかった人には、報いる必要はないということね・・・という結論が導き出されそうな気がします。退役軍人というアナロジーを採る以上。

「最後の晩餐」理論というのもあります。

>人生の最後において、美味しい食事を高齢者にご馳走する制度に異論を唱えるものは少ないであろう。これを理由に、高齢者には他の世代より優遇した保障を提供するわけである。

これまたもっともらしいのですが、最後の晩餐は、死の前夜の一晩だけだから値打ちがあるのであって、それが何日も、何ヶ月も、何年も延々と続くのが当たり前・・・ということになると、宴席を用意する側が、もういい加減にしてくれと言い出すかも知れません。実際、平均寿命が80歳を超えて延びた現在、65歳から20年近くも毎日最後の晩餐を続けるというのは、いささか若年層への説得力を欠く憾みがありましょう。

「指定席理論」というのもあります。

>加齢と共に、気が短くなる、頑張る気力がなくなる、新しい不安定なことに挑戦したくなくなる、といった心理的変化が生じうる。その結果、たとえば若い頃は新幹線の自由席に乗っていたものの、年をとると指定席を予約しないと安心できない場合がある。・・・こうした心理的変化を加味して高齢者を労りたいと思う生活実感を制度設計に生かし、高齢を保障する理論を「指定席理論」と呼ぶことにする。

一面もっともですが、それこそ「ワカモノ」からは猛烈な反発が噴き出るかも知れませんね。

私は結局、社会保障の理由付けは結局ニーズ、必要性に帰着すると思っていまして、逆に言えば、ニーズで説明できないような社会保障は、そもそもその必要性自体を見直すべきだと思うのですが。

何にせよ、こういう社会保障の根源に関わるような理屈の世界は、一度はきちんと議論されるべき世界なのでしょう。

この章は、関さんの未公開の博士論文の最終章の一部だそうです。彼女が博士課程におられた頃、当時わたくしが在勤していたブリュッセルを訪れたことがあります。そのころ書かれていたものなのでしょうね。

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ラスカルさんの「今年の10冊」

ラスカルさんの「今年の10冊」のなかに、拙著も入れていただいているようです。

http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20111225/1324765673

拙著も含めた10冊のラインナップは以下の通り。

1.カーメン・ラインハート、ケネス・ロゴフ『国家は破綻する 金融危機の800年』

2.翁邦夫『ポスト・マネタリズムの金融政策』

.平井俊顕監修『危機の中で〈ケインズ〉から学ぶ 資本主義とヴィジョンの再生を目指して』

4.濱口桂一郎『日本の雇用と労働法』

5.水町勇一郎『労働法入門』

6.アルバート・ハーシュマン(佐々木毅、旦祐介訳)『情念の政治経済学』

7.ジョージ・アカロフ、レイチェル・クラントン(山形浩生、守岡桜訳)『アイデンティティ経済学』

8.山本周五郎『虚空遍歴』

9.杉原四郎編『河上肇評論集』

10.平木典子『カウンセリングとは何か』

必ずしも今年出た本というわけではなく、ラスカルさんが今年読んだ本のベストということのようです。

そういう意味からすると、やはりわたくしの観点からしても、ハーシュマンと河上肇は改めて読み直す価値のある本だと思います。

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『渡辺章先生古稀記念 労働法が目指すべきもの』信山社

20111202g065『渡辺章先生古稀記念 労働法が目指すべきもの』信山社をお送りいただきました。本当に有り難うございます。

この本、編者が菅野和夫、中島士元也、野川忍、山川隆一という錚々たる顔ぶれで、執筆者も冒頭宮里邦雄、中山慈夫という労使各側の長老弁護士から始まって、土田道夫、荒木尚志、中窪裕也等々とビッグネームが並びます。

目次は以下の通りですが、

http://www.shinzansha.co.jp/111201roudouhogamezasubekimono-contents.html

はしがきに代えて 〔中嶋士元也〕

1 労組法上の労働者について 〔宮里邦雄〕
 1 はじめに ―-本稿執筆の動機
 2 「請負型」就労者が増える背景とその影響
 3 労組法3条の労働者の定義規定の特色
 4 労組法3条の労働者性についての従来の判断基準とその問題点
 5 CBC放送管弦楽団労組事件・最高裁判決の意義とその射程
 6 三事件の東京高裁判決の検討
 7 判断基準を再構成したソクハイ事件・中労委命令の意義と評価
 8 労組法上の労働者概念 ―-何が判断基準とされるべきか
 9 労組法3条の「労働者」と7条2号の「雇用する労働者」の関係

2 高年法と再雇用制度における労働契約の成否 ―-最近の3つの裁判例を巡って 〔中山慈夫〕
 1 はじめに
 2 検討の視点と取り上げる裁判例
 3 京濱交通事件横浜地裁川崎支部判決 ―-高年法9条2項と労働契約の成否
 4 日本ニューホランド事件札幌地判決 ―-労働契約の成立要件である賃金合意の成否
 5 東京大学出版会事件東京地裁判決 ―-再雇用基準に該当する労働者と労働契約の成否
 6 最 後 に

3 私の実務手帳 ―-セクシュアル・ハラスメントの裁判例に関する一考察 〔野﨑薫子〕
 1 はじめに
 2 ハラスメントに対する実務の取り組み
 3 使用者の責任に関する裁判例
 4 セクシュアル・ハラスメントの行為者に対する懲戒処分の例
 5 まとめと今後の展望

4 アジアにおけるストライキ中の賃金問題 〔香川孝三〕
 1 はじめに
 2 法律によって解決している国
 3 判例法によって処理している国
 4 特別な事例としての中国
 5 まとめ

5 労働委員会の再構成の試み 〔籾山錚吾〕
 1 はじめに
 2 「労委2審制」の理論的根拠と動揺
 3 機関委任事務の自治事務化
 4 都道府県労委規則
 5 結  語

6 「労働契約上の使用者性」論の現状と展望
   ―-実質的同一性論と法人格否認法理の対比を中心に 
〔野田 進〕
 1 はじめに
 2 「労働契約上の使用者性」理論の現状
 3 権利の帰属主体としての企業・営業

7 労働法の解釈方法についての覚書 ―-労働者・使用者概念の解釈を素材として 〔土田道夫〕
 1 本稿の目的
 2 労働者・注文企業間の労働契約の成否 ―-労働契約法の解釈
 3 労働者・注文企業間の労働契約の成否 ―-立法政策
 4 労組法上の使用者・労働者 ―-労組法の解釈
 5 結  語

8 労働組合法上の労働者と独占禁止法上の事業者
   ―-労働法と経済法の交錯問題に関する一考察
 〔荒木尚志〕
 1 問題の所在
 2 アメリカおよびEUにおける競争法と労働法の関係
 3 日本における独禁法と労働法の関係
 4 むすびに代えて

9 戦前の労働組合法案に関する史料覚書 〔中窪裕也〕
 1 はじめに
 2 プロローグ(大正7年~8年)
 3 臨時産業調査会での検討とその後(大正9年~13年)
 4 行政調査会,政府案の作成,議会提出と審議(大正14年~昭和2年)
 5 社会政策審議会,新政府案の作成,議会提出と審議(昭和4年~昭和6年)
 6 その後の議会での動き(昭和11年~12年)
 7 おわりに

10 障害を持ちながら働く労働者の能力開発 〔小畑史子〕
 1 はじめに
 2 障害者雇用促進法の現状と課題
 3 障害者権利条約批准をめぐる議論のもたらすもの
 4 望ましいあり方と法的枠組み

11 不当労働行為救済申立事件の審査手続及び救済命令等取消訴訟を巡る問題 〔池田 稔〕
 1 本稿の目的
 2 不当労働行為救済申立事件における審査の対象
 3 再審査手続の法的性格及び再審査の対象
 4 再審査手続と救済命令等取消訴訟の関係
 5 結  語

12 中労委命令と行政訴訟 〔菅野和夫〕
 1 はじめに
 2 行政訴訟を意識すべきか
 3 どの程度取り消されているか
 4 組織的対応
 5 労働委員会らしい判断
 6 中労委の役割
 7 終わりに

13 変更解約告知法理の構造と展開 〔野川 忍〕
 1 序 ―-本稿の課題
 2 日本における変更解約告知法理の推移
 3 変更解約告知法理の展望

14 労災保険不支給決定の取消訴訟における要件事実 〔山川隆一〕
 1 はじめに
 2 概  観
 3 労災保険不支給決定取消訴訟の訴訟物
 4 請求原因
 5 抗弁等
 6 おわりに

渡辺章先生ご略歴・主要業績(巻末)

わたくしにとって一番興味深かったのは、労働法と経済法の交錯を取り上げた荒木論文でしたが、ここでは、各論文の中身ではなく、最初のはしがきで紹介されている渡辺章先生の若き日のエピソードを。

>・・・章先生が高校を出て川崎の製鉄工場に勤務していた時代のことである。社員寮では土曜の夕方、日曜の朝になると、地方の農山村から働きに来ている臨時工や期間工に会いに同郷の娘さんたちが彼らを訪ねてきているのを見かける。遠い故郷から出てきて、工員たちが早番や夜勤を終わって工場から帰るのを寮の玄関前で待ち受けているのだ。それから近くの板造りのラーメン小屋でラーメン(30円)や焼きそば(20円)を食べながらデートしていたという目撃談である。けなげで感動的な話はまだ続くのだが、エッセイは最後に述べる。「(この光景は)35年後のいまでも忘れられない。工場地帯の、働く人々の純朴な姿である。労働法はこういう人々の幸せのためにあると信じている」と。

「労働法が目指すべきもの」が何であるのかは、人によってさまざまな意見があるところでしょうが、「こういう人々の幸せのためにある」というのも、間違いなく一つの真理であろうと思います。

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日本再生の基本戦略

一昨日、国家戦略会議で決定された「日本再生の基本戦略」ですが、労働政策の観点から注目すべきは、「4.新成長戦略の実行加速と強化・再設計」の「(2)分厚い中間層の復活(社会のフロンティアの開拓)」のうち、「① すべての人々のための社会・生活基盤の構築」と「② 我が国経済社会を支える人材の育成」です。

基本的に、まさに自公政権末期と菅政権時の政策方向を受け継ぎ、「インクルーシブな成長」「全員参加型社会」をめざす路線です。

まず「すべての人々のための社会・生活基盤の構築」ですが、

>・・・若者が夢と希望を持って働くことができ、女性、高齢者が更に活躍できるよう、政労使の社会的合意を進め、非正規雇用と正規雇用の枠を超え、仕事の価値に見合った公正な処遇の確保に向けた雇用の在り方の実現を目指す。また、家族の在り方の変容や共働き世帯の増加等を踏まえた新たな社会モデルの構築を目指す。日本が誇るべき「人の力」と「勤勉さ」をないがしろにすることなく、チャンスに満ちあふれた社会を目指すべくフロンティアを提示していく。

この「当面、重点的に取り組む主な施策の冒頭に、

>○ 「若者雇用戦略(仮称)」の策定・実行

というのが載っています。

Goodstart若者雇用戦略といえば、やはり、今月刊行したばかりのOECD編著『世界の若者と雇用』(明石書店) をいの一番に参照して欲しいところです。

そのほかの項目は、

○ 就学支援の実施
○ 子ども・子育て新システムの実現
○ 女性の活躍の促進や仕事と家庭の両立支援等
○ 希望者全員の65 歳までの雇用確保のための法制上の措置等の検討
○ 非正規労働者に関する新たなルールづくり
○ 非正規雇用問題に横断的に取り組むための総合的ビジョンの取りまとめ
○ 地域における雇用創出の取組の推進
○ 社会的包摂政策の推進
○ 「生活支援戦略(仮称)」の策定

と、もうすぐ労政審で結論が出るはず(ですよね?)のものも含まれています。

最後の「生活支援戦略(仮称)」も興味深いです。

次に「我が国経済社会を支える人材の育成」を見ると、

>このような中で、大学卒の新規就職者の3年以内の離職割合は3割程度、高等学校卒の新規就職者の3年以内の離職割合は4割程度となり、大学・大学院卒のニートも増加傾向にある。また、大学等の教育面での力点と企業の大学等への期待にミスマッチが生じている部分がある。さらに、国際競争の激化や非正規雇用の増加が進む中で、これまでのように企業内教育に依存するだけでは、能力の蓄積の機会を得づらくなってきている。

という認識を踏まえて、

>このため、我が国経済のインクルーシブな成長を目指し、産学の連携・協力を図りながら、成長分野やものづくり分野における職業教育・職業訓練や、いわゆる「手に職を持つ」、「技術や専門性を有する」自営業者や個人事業主を育成するなど自立するための職業教育・職業訓練を強化し、実践的な職業能力評価の仕組みの導入を図る。また、若者の国際的視野を涵養する取組を推進し、語学力・コミュニケーション能力を含め、新たな価値やビジネスを創造できる能力を持つ人材を育成することが必要である。さらに、こうした方向に資する教育改革に取り組む。これらの取組を通じて、社会経済を支える人材の底上げやグローバルに通用する高度人材の育成・確保を図る。

で、「当面、重点的に取り組む主な施策」としては、

○ 社会を生き抜く力の養成
○ 教育と職業の円滑な接続
○ グローバル人材の育成
○ 企業の採用慣行改革の促進
○ 産学官が連携した職業教育や職業訓練の強化

こういう職業教育や職業訓練への重視という政策方向は、まさに民主党政権のもう一つの方向性において、(とりわけ鳩山内閣時の厚生労働行政で)ムダ排除という名の下に軽視されてきたものであるだけに、きちんと確立して欲しいものです。妙な連中の戯言に惑わされずに。

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二宮厚美・福祉国家構想研究会編『誰でも安心できる医療保障へ』

94889大月書店の角田三佳さんより、二宮厚美・福祉国家構想研究会編『誰でも安心できる医療保障へ』をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.otsukishoten.co.jp/book/b94889.html

>保険料の増額や窓口負担の重圧。3.11後、さらに勢いを増す医療の市場主義的改悪の動き――。暮らしと生存を支える医療制度の実現に向けて、現状を批判的に検討し、新たな福祉国家を展望する理論と対抗構想を提示する

目次は次の通りですが、

序章 医療保障をめぐる現代的対決点と新福祉国家(二宮厚美)
 1 医療保障と現物給付原則
 2 医療保障と保険原理の衝突関係
 3 国民皆保険をめぐる「人権原理vs.保険原理」の攻防ライン
 4 新自由主義的バックラッシュ期の医療政策
 5 本書の見通し

第1章 民主党政権と医療政策の新自由主義化(横山壽一)
 1 新自由主義的改革の基本的性格と民主党
 2 新自由主義的社会保障改革の構図
 3 民主党政権の社会保障改革
 4 民主党政権における医療政策の新自由主義化
 5 医療政策の市場化・分権化・保険主義に対抗する視点と課題

第2章 二一世紀の医療保障をめぐる争点と焦点
 1 国保の危機と曲がり角に立つ地域医療(芝田英昭)
 2 後期高齢者医療制度のねらいと構造(相野谷安孝)
 3 高齢者と地域医療の将来をめぐる争点――高齢者「新医療制度」のねらいと問題点(寺尾正之)

第3章 医療保障をめぐる対決点と国民皆保険体制の展望(久保佐世)
 1 医療保障をめぐる対決点とは
 2 医療制度構造改革は、いかに進められたか
 3 対抗の方向と具体的構想

第4章 社会保障・医療財政の現状と財政原則(高山一夫)
 1 社会保障財政の現状
 2 医療費の現状
 3 医療・社会保障の財政原則

序章の前に、「シリーズ刊行に当たって」というやや長めの文章があって、そこに福祉国家構想研究会共同代表の岡田知弘、後藤道夫、二宮厚美、渡辺治4氏が書かれている現状認識が、いささか引っかかるものがあったので、ちょっと引用しておきます。

>・・・第一に、2009年の総選挙で民主党が大勝し、民主党政権が誕生したことである。民主党政権の誕生自体が、構造改革政治を止めて欲しいという国民の期待の所産でった。元もと、急進構造改革の路線を掲げて自民党と政権の座を争うべく登場した民主党は、2007年の参議院議員選挙を境に構造改革に懐疑的な路線に転換し、国民はその民主党に期待し、政権を委ねた。鳩山政権は、期待に応えるべく構造改革の枠から踏み出したが、財界、マスコミの圧力のもと、動揺をはじめ、続く菅政権での構造改革回帰を踏まえて、野田政権では再び構造改革政策の強硬路線に立ち戻ることになったのである

こういう風な絵解きは、ある種の経済学派の政局論など世間でも結構見られるように思いますが、わたくしはかなり根本的なところで意見を異にしています。

むしろ、自公政権末期にはそれまでの新自由主義的構造改革路線から、西欧福祉国家型の構造改革路線(アクティベーション政策)に徐々に転換しつつあったのに、政権交代後の鳩山内閣時には、むしろその流れが断ち切られて、宮本太郎氏の言うところの「小沢型ベーシックインカム」的な無目的な金銭給付路線に堕してしまい、それが菅政権になってようやくまっとうな方向に向き出したというべきではないか、と考えているからです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-e2cd.html(ダメな雇用創出が震災復興を妨げる?@『POSSE』13号)

>個人的には、宮本太郎さんが

>>では、その後の政権交代によって、アクティベーション政策は強まったと言えるか。私は率直に言って、停滞したと考えています。・・・実際は私の言う「小沢型ベーシックインカム」が中心になってしまいました。

とまで、ある時期までの民主党政権を否定的に総括しているのが印象的でした。

本書自体について言えば、医療保障は現物給付原則が大事だという基本理念はよく同意できるところなのですが、その感覚と、社会保障改革全般についての認識枠組みとのずれをどう理解したらいいのか、よく分からないところです。

このシリーズ、このあと、

【続刊予定】
②世取山洋介・福祉国家構想研究会編『無償化を実現する教育制度への展望』(仮題)
③後藤道夫・福祉国家構想研究会編『失業しても暮らせる保障制度の構築』(仮題)

と、続々と出るようですが、とりわけ「失業しても暮らせる保障制度」というのが、単にカネさえ渡せばいいだろうという捨て扶持ベーシックインカムにならないような現物給付原則をどう確立していくかという観点から、どのような提言が示されるのか興味深いところです。

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ジュリエット・ショア『プレニテュード』

024668川人博弁護士より、川人さんも翻訳に加わったジュリエット・ショアの『プレニテュード 新しい<豊かさ>の経済学』(岩波書店)をお送りいただきました。

http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0246680/top.html

翻訳者は、監訳の森岡孝二さんをはじめ、青木圭介、成瀬龍夫、川人 博、肥田美佐子の各氏です。

>成長神話と大企業神話を覆す本書は,〔環境と経済の〕複合危機に立ち向かう新しい〈豊かさ〉の経済学からの有力なパラダイムの提示であるだけでなく,環境と経済の再生に向けての取組や運動の確かなロードマップでもある.それだけに,複合危機に無関心ではいられない社会科学の研究者だけでなく,私たちの時代の最大の挑戦課題を自らの問題と受け止めている一般の読者にも,さらには政策担当者,政治家,企業人,学生にも本書を読んでいただきたい.

 本書の翻訳を進めていた最中の2011年3月11日,東日本大震災と原発災害が発生した.二つの災害は,大企業中心,成長優先,原発依存,エネルギー多消費のゆえの日本経済の歪みを映し出し,脱大企業,脱成長,脱原発,地域再生の流れをかつてない規模で生み出した.その一方,民主党政権の「新成長戦略」に代表されるように,旧態依然とした市場経済にしがみつく流れも勢いを失っておらず,ショアに倣って言えば,日本でもBAU〔従来通りの経済〕戦略と〈豊かさ〉戦略のせめぎ合いが強まっている.今の日本では,多くの大企業が「地球にやさしい企業」を自称し,市場には環境(Environment)と地球(Earth)の「e」を記号化した「エコマーク」を表示した製品が溢れている.しかし,大企業サイドのそうした流れは,成長戦略の延長線上にあって,〈豊かさ〉戦略に合流するものではない.こうした点について日本の問題として考えるうえでも,ショアの新著は多くの示唆を与えてくれるだろう

目次は以下の通りですが、とりわけ川人さんが訳された(川人ゼミの学生たちが下訳したそうですが)第4章が、労働時間短縮を論じていて、かつて『働き過ぎのアメリカ人』で衝撃を与えたショアらしさを示しています。

第1章 環境と経済の危機から真の〈豊かさ〉へ
〈豊かさ〉の基本原理
経済的対話の方向を変える
前進への道――経済的パフォーマンス/2010-20年
本書のプラン
第2章 消費ブームから環境破綻へ
ファストファッション――衣料品の場合
典型例はファストファッション
廃棄する国民
消費の物質性パラドックス
物質の経済学
成長の限界はあるか
地球の環境破壊
人間のフットプリント
実績を調べる
第3章 経済学は地球と向き合う
資源,豊穣,および市場の奇跡論
トレードオフの経済学――自然に関する費用曲線の疑問
気候変動に関する打開策は?
技術はこの時代を救えるか
技術革新のリバウンドと逆効果
イギリスにおける技術的な楽観主義
オーバーシュートを認めること
持続可能性への道――人口,所得,および技術
第4章 困難を抱えた地球で豊かに暮らす
一つの警告――一度だけの人生
環境の現実に適応する――市場外の多様化という考え方
時間の富
実現可能な時短の推進――すべての人びとにとっての安全保障
なぜ,労働時間の短縮がグリーン・ソリューションなのか
21世紀における供給
家庭内生産のニューエコノミックス
〈豊かさ〉モデルの消費者
スロー消費の三原則
小さくても素晴らしい
共有(シェア)という解決策
社会の仕組みを変える――互恵の経済
第5章 〈豊かさ〉の経済学
地球にとってのスマートデザインと知識の経済学
小さいものは美しい.だが,その効率性は?
自然資産と共有制
仕事と労働時間――差し迫った時短の必要性
成長至上主義を超えて
〈豊かさ〉と幸福
わき上がる〈豊かさ〉

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柊木野さんの拙著書評@『経営法曹』

経営法曹会議より『経営法曹』171号をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

さて、今号の特集は何より、中山慈夫、角山一俊、加茂善仁、木下潮音、中町誠、松下守男、石井妙子という経営法曹ビッグネームが顔を揃えた座談会「労働組合法上の労働者性問題」ですし、

経営法曹会議の欧州視察団報告はデンマーク、オランダなどフレクシキュリティ系の国々で、労働弁護団との対比という意味でも興味深いのですが、これらについては、また改めてじっくりと紹介させていただくことにして、

ここでは巻末近くの「最新文献情報」で拙著『日本の雇用と労働法』を取り上げていただいている柊木野一紀さんによる書評を。

>本書では、労働省の行政官の経験を有する著者により、詳細な研究を元に、テーマごとにわが国の雇用社会の歴史とこれに労働法制・判例法理がいかに影響を受けてきたかを分かりやすく、また読みやすい分量で解説がなされている。労働法の教科書を読んでいるだけでは容易に理解できない過去及び現在の労働法制・判例法理をより深く理解することが出来る内容となっている。

以下、拙著の内容を順次解説され、最後に

>個人的な感想であるが、雇用社会の戦後の歴史を意識することはこれまでにも多々あったのだが、戦前の歴史まではほとんど意識することはなかった。しかし、本書では戦後はもちろん戦前の雇用社会の動向が具体的に述べられていることが、私にとっては新鮮であった。特に、労使関係に関する「戦後労働運動は戦時体制の嫡出子」との表現や、賃金制度を「戦時中の皇国勤労観に基づく政策方向が、戦後急進的な労働運動によってほとんどそのまま受け継がれていった典型的な領域」であるといった記述はインパクトがあり、この点でも本書を興味深く読むことができた。

との感想を示されています。こうした記述は、自分でも意識的に使ったものであるだけに、注目していただいているのは嬉しいことです。

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労働組合員ついに1000万人割れ

本日、労働組合基礎調査が公表されました。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/11/dl/gaikyou.pdf

例年、真っ先に報じられるのは組織率がどうなったかですが、残念ながら今年は東日本大震災のために岩手、宮城、福島の労働力調査が行われていないために、組織率の数字は載っていません(実は後ろの方に、この3県を除いた数字で18.4%という参考数字を示しては居ますが)。

で、その代わりに実数値を見ると、労働組合員数が昨年の1005.4万人から、996.1万人に93万人、0.9%減少しています。久しぶりの大きな減少幅です。

こういう風に全体の組合員数が減る中で、パート組合員が昨年の72.6万人から77.6万人に増加しているのは、一筋の希望ということでしょうか。

附表の団体ごとの増減状況を見ると、電機連合が65.9万人から64.1万人に大きく減らしているのが目に付きます。福島浜通りから北に連なる電機ベルト地帯が大震災と原発で大きな影響を受けたことを物語っていますね。

そして、全建総連がそれ以上に64.6万人から60.8万人に落ち込んでいるのも、建設業者の受けた打撃を示しています。

こういう中でUIゼンセンがそれでも105.8万人から106.9万人に増やしているのは、底力ですかね。

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キャリア教育で学ぶべき「世の中の実態や厳しさ」とは何か?

去る12月9日付で、文部科学省からキャリア教育に関する報告書「学校が社会と協働して一日も早くすべての児童生徒に充実したキャリア教育を行うために」が公表されたようです。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/12/__icsFiles/afieldfile/2011/12/09/1313996_01.pdf

いろいろと書かれているのですが、やはり気になったのは、

>一方、こうした知識の習得や意欲・態度の涵養と同時に、誤解を恐れずに分かりやすい言葉で言えば、“世の中の実態や厳しさ”を子どもたちに学ばせることも重要である。

というところです。この文書の全体にわたって、この「世の中の実態や厳しさ」という言葉が繰り返し繰り返し語られているのです。

いや、もちろん、無知が役に立った試しはないわけで、子どもたちに「世の中の実態や厳しさ」をきちんと教えることは極めて重要ですが、その教え方が、一つ間違うと、

>世の中はそんな甘いもんじゃねえ、労働法とかなんとか莫迦なこといわずに我慢しろ、それが大人ってもんだ

的メッセージとして語られてしまう恐れもないわけではありません。現場でキャリア教育の専門家という顔をしている人ほど、そういうことを口走りそうでもあります。

いやもちろん、

>このような“世の中の実態や厳しさ”を子どもたちに実感を伴う形で理解させた上で、これらを乗り越えていくために必要な知識や意欲・態度等を培っていくことが必要である。

の「必要な知識」には、

>中学校、高等学校におけるキャリア教育においては、生徒に、経済・社会・雇用等の基本的な仕組みについての知識や、税金・社会保険・年金や労働者としての権利・義務等についての知識等、社会人・職業人として必ず必要となる知識を得させるとともに、男女共同参画社会の意義や仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の重要性等について、自己の将来の在り方生き方に関わることとして考察を深めさせることが必要である。

が含まれているわけなのですが。

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2012年は「活力ある高齢化と世代間連帯年」です。ただし@EU

EUでは、来年2012年を「European Year for Active Ageing and Solidarity between Generations」(活力ある高齢化と世代間連帯年)として、さまざまな活動を繰り広げる予定です。

http://ec.europa.eu/social/ey2012.jsp?langId=en&catId=970

>stay in the workforce and share their experience
keep playing an active role in society
live as healthy and fulfilling lives as possible
.

職場に残ってその経験を分かち、

社会で積極的な役割を果たし、

できる限り健康で充実した生活を送る

まあ、世代間の連帯どころか、憎悪を煽ることを使命と心得る人々も、この国にはうようよしていますけれども・・・。

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彼が最もまとも

常見陽平さんのつぶやきから、

http://twitter.com/#!/yoheitsunemi/status/149144740619759617

>今日の取材対応でも、先日の雇用・労働系の先生との面談でも濱口桂一郎最強論が出た。彼が最もまとも、と。で、この10年の雇用論壇は光文社新書を中心に動いたとも。濱口桂一郎先生の本を始め、岩波新書頑張ってる。高校時代は授業中寝るか、図書館の岩波新書を右から左に読みあさる子だった。

はぁ、その先生がどなたであるかは存じませんが、「彼が最もまとも」との評語はありがたい限りであります。

まあ、この分野、まともでない議論が横行しすぎているから、相対的にそう見えているだけに過ぎないと、自らを戒めるべきではありましょうが。

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一知半解の高橋洋一氏

「りふれは」の代表的論者である高橋洋一氏が、自分のよく知らない領域にもいろいろとコメントをしているようで、今日は「“65歳再雇用”の義務化は必要か」を論じていますが、論じるために必要な基礎知識は必ずしも十分蓄えた上で書かれているわけでもなさそうです・

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20111221/plt1112210809000-n1.htm

>厚労省は企業に65歳までの再雇用を義務づける方針として、来年の通常国会に法案を提出すると報じられた。しかし、企業側には反対の声もある。

 まず、今の制度を見ておこう。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では定年を60歳以上としなければならない(第8条)。また、65歳までは、(1)再雇用(2)定年の引き上げ(3)定年の撤廃のいずれかにより働ける制度を導入することも義務付けられている(第9条)。

 ただ、再雇用については、労使で協定を結べば、企業は「働く意欲がある」「健康上の問題がない」などの条件を設定し対象者を限定することができる。

 厚労省は、今の制度を見直し、希望者全員の再雇用義務化を求めている。はたしてここまでする必要があるのか。

ここまでの現状認識は的確です。ただ、そのあとの議論の展開が・・・。

>こうした状況から、希望者全員の再雇用義務化を法律で強制するのがいいのだろうか。自由な交渉によって労使で契約関係を結ぶほうが柔軟な対応ができる。

 企業と労働者が条件について団体交渉するなどの方策も考えられないわけではないが、定年再雇用にあたっては、労使ともそれぞれ実力を熟知しているので、団体交渉には不向きであるし、従来の年功序列賃金の延長線でない柔軟な対応にしたほうが、労使ともに納得できるだろう。

はあ?再雇用義務から外すということは、自由な交渉もクソもないと言うことですよ。

再雇用は定年延長と違って、賃金や労働条件はゼロベースで決めることになるので、それが「柔軟な対応」であって、そこは労使ともその方がいいと言っているわけです。

それが団体ベースか個人ベースかということともまた別の話ですが、いずれにしても、現在の対象者を限定できるということは、その基準から外れてしまったら、そういう団体であれ個人であれ、定年後の労働条件をどうするかという議論自体がそもそもあり得ないということなんですが、どうもそのあたりの構図がよく分からないまま、何となく新聞報道レベルの知識だけで、思いこみの議論を展開しているようです。

>それぞれの生産性に見合った条件にすれば、本人の再雇用に支障が生ずることもなく、しかも若年層の雇用への悪影響も少ないだろう。高齢化が急速に進んでいく中で、真に経験・知識の豊富な高齢者の活用は企業に不可欠だ。

 一方、従来の年功序列賃金の延長で賃金と実力とのミスマッチが生じている場合もある。そうしたミスマッチを調整するためにも、一方的な法律による雇用の義務化を図るのではなく、労使の間の自由な交渉の中で、実質的に継続雇用を希望する者は65歳まで働ける環境整備が必要である。

まさに、希望するものは再雇用の機会があるが、その条件は「ミスマッチを調整」しようというのが、今回の話なのであってみれば、一体高橋氏が何を言いたくてこのコラムを書いているのかがよく分からなくなります。

何か、政府のやろうとしていることだからケチを付けておけば間違いがないだろうということならば、もう少し対象分野について勉強してからの方がいいでしょう。

いや、それこそ池田信夫氏のように、どんなものであれ高齢者の雇用自体が若者を追い出すと称して、有無を言わせず追い出すことを唱道するというのなら、それはそれで一つの見識(不見識?)でしょうが、高橋氏はそういう議論をしたいわけではなさそうですし。

(ついでに)

高橋氏はそこまで思いが及んでいないようですが、実は現在労使間で論点になっているのは、希望者は再雇用すると言っても、その「ミスマッチを調整」する上で同じ会社だけに限定すると難しいので、他社に転籍して雇用をつなぐというやり方もどこまで認めようか、という話なのです。まあ、そこまで雇用問題に詳しく頭を突っ込むことを期待しているわけでもありませんが。

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職場から始めよう運動@連合

連合が去る12月13日に、「職場から始めよう運動」シンポジウムを開催したそうです。

http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/rengonews/2011/20111220_1324372292.html

>非正規労働者の組織化や処遇改善などに、できることから一つずつ取り組んでいこうという「職場から始めよう運動」は、3年目を迎える。本シンポジウムは、その意義や課題を改めて確認し、取り組みを促進することを目的に開催した。

 開会に当たり主催者挨拶に立った南雲事務局長は、「非正規労働者の課題については、構成組織・単組が集団的労使関係にもとづいて地道に着実に成果をあげることを期待している。非正規労働者のために何かするというのではなく、自らの職場の問題として団結することが必要」と述べた。

こういう発想が徐々にでも浸透していくことを願いたいと思います。Shijoubannou

いまから4年前に、連合総研のシンポジウムでこういうことを語ったことを思うと、いろいろ思うところがあります。

http://rengo-soken.or.jp/report_db/file/1245640669_a.pdf

>濱口/私は徹底して世俗的にお話をしたいと思います。宮本さんからは、職場を超えたコミュニティというテーマをいただいたのですが、むしろ逆に、職場のコミュニティを再建すべきではないかというお話をしたいと思います。

なぜ世俗に徹するかというと、本日のような会合で、あまりにも高邁で美しい話を聞くと、これは徳の高い高僧のお説教を聞いているのと同じで、たいへん素晴らしい話を伺いました、ありがとうございました、では現実に返りましょうということになってしまうのですね。ですから、私はもっと現実的な、生々しい話をしたいと思います。

パートだから先にクビでいいのか これはフロアからいただいた質問ともかかわります。私が先ほど正社員の解雇規制の問題を取り上げたことについて、それは労働ビッグバン論者の言っていることと同じではないかという質問がおそらく出るだろうと思いましたが、案の定ご質問をいただきました。結論的には、私の主張は労働ビッグバン論者とかなり近いところにあります。

ただし、ここで考えていただきたいのは、職場のコミュニティ、職場の連帯というときに、それはどの範囲の労働者までを想定しているのか、ということなのです。解雇規制を議論するときにも、同じ職場にいるパートさんのクビのことまで考えてその議論をしているのでしょうか、ということです。この点を捨象して、どこか遠くにあるコミュニティの話̶本当はコミュニティというのは遠くにあるはずはないのですが̶にしてしまってはいけない。

いま必要なのは、むしろある意味で空洞化しつつある職場のコミュニティ感覚、連帯感覚をもう一度復活させること、そこにいる一人ひとりを組み込むような形での連帯をつくり出していくことだと思います。この問題には様々な側面があると思います。例えば、報酬をどのように分け合っていくかということもあるでしょうし、場合によっては、会社経営が厳しくなったときに、だれがその不利益を受けるのかということも問われるでしょう。「あなたはパートなんだから当然先にクビになっていい」ということで、本当によいのだろうか、ということです。このように、一人ひとりの利害状況を考えた上で、誰も排除することなく、「ひとりはみんなのため、みんなはひとりのため」という原理に基づく問題解決をめざしていくという感覚、すなわち包括的・普遍的な連帯感覚の再構築が必要ではないかと思うのです。

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こういうスタンスは、管見の限りではこれまでありそうでなかったもの

拙著『日本の雇用と労働法』へのブログ上での批評です。

http://blog.goo.ne.jp/hiroyuki-ohba/e/c55808170b8c3a9e9edd2a1a77e05d67

>日本の雇用システムと、対する労働法制の二つについて解説する新書版。必要な情報について、レベルを落とさずに241ページの中にぎっちり詰め込んであるものの、そのせいで難解になっているということはない。むしろ、明快な図式が冒頭に示されているので、労働関連法規や、事件またはそれをめぐる判例の解釈が理解しやすい。

というふうに、まず評価していただいた上で、拙著の概略を簡単に説明し、最後のところで、こういう風に仰っていただいております。

>以上のように、本書は日本で働く人すべてに勧められる内容である。経済学者のように単純化した労働市場観から現実を一刀両断することもなく、法学者のように個々の労働者の権利にこだわって労働市場の大局を見失うこともない、非常にバランスの取れた記述である。こういうスタンスは、管見の限りではこれまでありそうでなかったもので、説得力のあるものだと思える。

いやあ、「経済学者のように単純化した労働市場観から現実を一刀両断することもなく」、「法学者のように個々の労働者の権利にこだわって労働市場の大局を見失うこともない」というのは、まことにわたくしの意図するところを的確に指し示していただいており、その意図したことがちゃんと実現できているよ、というお言葉は感涙ものです。

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大瀧雅之『平成不況の本質』

S1344 世間で話題になる論点という意味では、帯にもあるデフレ論(「リフレ派」批判)が注目の的なのかも知れませんが、わたくしにとってはそういうたぐいのことよりも、とりわけ第3章で論じられていることの方が、百万倍重要な論点です。

http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1112/sin_k627.html

>失業率の悪化、労働生産性の停滞、消費の低迷―。長期にわたる日本経済の不調の原因は「デフレ」だと言われていますが、本書では理論経済学の立場からその「常識」を疑い、不況の本質を探ります。

 なぜ賃金は上がらないのか。そもそも企業は誰のものなのか。著者の理論に基づき、雇用と金融の側面から不況の原因を読み解く鍵を提供します。

 そして、大震災後のいまこそ、経済成長至上主義から脱却し、社会的共通資本としての教育を充実させることの重要性を強調します

はじめに―不況、そして東日本大震災   

第1章 「デフレ」とは何か―長期的視野から考える   
  1 不況の現実
2 インフレ率低下をどう捉えるか
    ―デフレか、ディスインフレか
3 物価は何によって決まるのか
[章末付録]貨幣の「信頼性」と「リフレ論」について

第2章 なぜ賃金が上がらないのか   
  1 対外直接投資が招いたもの
    ―産業空洞化と技術継承の困難
2 名目賃金はどう決まるか
3 基礎となる経済理論

第3章 企業は誰のものか   
  1 株主主権の限界
    ―物的資本と人的資本
2 「相互規定的」という考え方
3 派遣法緩和で喜んだのは誰か
   ―利潤最大化行動はどこまで正当化されるか

第4章 構造改革とは何だったのか   
  1 「構造改革」の時代背景
2 推し進められた「市場型間接金融」
3 投機の奨励
   ―派生証券はゼロサムゲーム
4 郵貯の民営化
5 新日銀法と市中銀行

終 章 いま、何が求められているか   
  1 どのような時代なのか
2 社会的共通資本としての教育
3 「技術」をどう継承していくか
4 公正な所得分配を求めて

あとがき

参考文献

実をいうと、ここで大瀧さんが論じている議論にはかなり問題点もあると考えています。それは、市場では熟練は分からないけれども、組織では熟練は分かる、と、わりと単純に考えておられるところで、それはそういうものではないと思いますよ。分かると思っているのは、それはむしろフォーマルな組織ではなくインフォーマルな人間関係のある共同体的集団を想定しているからで、それを想定している限り、いわゆる日本的経営の記述としては一定の妥当性はありますが、それは逆に一定以上の広がりを持てない。「お仲間」だからこそお互いの熟練がわかり合える(素直にわかり合ってもお互いに問題がない)のであって、仲間以外には及ばない。ここは、以前広田さんの科研研究会で述べた話とつながります。

逆に、仲間原理を抜きにした「組織原理」で社会を組織したら、それこそ共産主義社会に典型的にみられるように、市場以上に熟練は分からなくなる、というよりわかり合うことが損になります。多くの人が誤解しがちな点ですが、「組織」とは権力関係の束であって、ほんわかした温かい人間関係に包まれた共同体であるかのごとく描かれるからといって、多くの場合それを本気にしてはいけません。お互いに「同志」と呼び合う共産党がいかに凄惨な権力闘争の世界であったかを考えるだけで、普通の人は分かるところですが。

誰が本当にできる人なのかを素直に認めあえるためには、実はかなり微妙な社会の設定が必要なのであって、それが仲間を超えた広がりを持つことがあまりにも難しいがゆえに、仲間を超えるところは市場に委ねるか、むしろ当該組織とは切り離された国家レベルの組織原理によってフォーマルに決定してしまうしかない(ヨーロッパ型の資格社会とは、まさにそういうことではないのでしょうか)、というのが近代社会の諦念でもあるというあたりが、必ずしも理解されきっていないようにかんじました。

やや皮肉な言い方をすると、これはエリート同士がお互いの力量を認めあえる程度の狭い共同体的世界で学者としての熟練を磨いてこられたという経歴ゆえのバイアスという気もします。いや、アカデミズムの世界だって、本当の実力を必ずしも指し示さないことは重々承知の上で、「博士」という学位に敬意を払う振りをすることで成り立っているのではないでしょうかね。

普通のサラリーマン経験者の多くは、実は組織で熟練が分かるなんて、そこまで楽観的ではないのではないでしょうか。

(ちなみに、本書にはリフレ派爆殺表現が頻出してますが、よほど不愉快に感じておられるのでしょうか)

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有期労働の報告書案

昨日の労働条件分科会に出された報告(案)がアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ynzj-att/2r9852000001yo3h.pdf

結論、入口規制は「例外業務の範囲をめぐる紛争多発への懸念や、雇用機会の減少の懸念等を踏まえ、措置を講ずべきとの結論には至らなかった」。と否定。

出口規制は、「有期労働契約が、同一の労働者と使用者との間で一定年数(X年)(P)を超えて反復更新された場合には、労働者の申出により、期間の定めのない労働契約に転換させる仕組み(転換に際し期間の定めを除く労働条件は従前と同一とする)を導入することが適当」と肯定。

ここでいわゆるクーリング期間を「X年の反復継続に対してY(P)を基本とする」としています。意味が分からん。誰か解説してくれ。

雇止め法理については「これをより認識可能性の高いルールとすることにより、紛争を防止するため、その内容を制定法化し、明確化を図る」と明言。

あと、「均等」とか「均衡」という言い方はしていませんが、「有期契約労働者の公正な処遇の実現に資するため、・・・職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、期間の定めを理由とする不合理なものと認められるものであってはならない」と、踏み込んでいます。

雇止め予告義務や有期契約締結理由の明示は見送られているようです。

昨日これをめぐってどういう議論が交わされたかは今のところ分かりませんが、そう簡単に合意したというわけではないでしょうね。

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高橋賢司『解雇の研究』

4589033048 法律文化社の小西英央さんより、高橋賢司さんの近著『解雇の研究 規制緩和と解雇法理の批判的考察』をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03304-8

>失業対策と労働市場活性化を名目として唱えられた解雇法制の規制緩和論を、EU法・ドイツ法の比較研究を踏まえ批判的に考察。日本の解雇法制への規範的視座を提供する。

高橋さんはここ数年、『立正法学論集』に「甦る解雇の自由」と題して、かなり詳細なドイツ解雇法制の分析を連載しておられたので、てっきりそれを本にしたものかと思っていたのですが、ドイツ解雇法制に関するところは紀要論文に比べるとかなり圧縮されていて、その分、後半の日本法についての議論が充実されていました。

これは出版政策としてはなるほどと思うところもありますが、紀要論文の膨大なコピーもとっとかないといけないですね。

ここでは一点だけ違和感を感じたところを。高橋さんは解雇の金銭解決制度について、

>労働契約法16条を空文化させないため、今後解雇の補償制度を実定法化することには慎重でなければならない・・・

>使用者が数ヶ月の賃金相当額の補償額を覚悟すれば、労働者を解雇できるというのであれば、使用者における解雇の恣意性が増すものと思われる。・・・

>むしろ、解雇法理における労働者の権利の実現過程の問題としては、信義則に基づき、解雇訴訟継続中・訴訟後の継続・再雇用請求権を法定化すべきである

等とのべるのですが、これは正直言って、膨大な費用と機会費用をあえて掛けて裁判闘争に訴えるごくわずかな労働者にとってはそういえるかも知れませんが、そこまでやってられない圧倒的多数の労働者にとっては、金銭解決の可能性すらそう簡単なものではない状態を維持するものという面もあるように思われます。

そもそも「使用者が数ヶ月の賃金相当額の補償額を覚悟すれば」といいますが、それは弁護士を立てて(つまり一定の費用を掛けて)労働審判やったときの相場であって、自分一人で労働局のあっせんやったら、とてもそこまで行きません。半分以上は会社側不参加ですから、クビ代1万円でも取れればいい方。解雇の恣意性なんて、現にいくらでもあるものであって、判例集に載っているものだけが日本社会の現実というわけではないのですから。

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渡辺章『労働法講義 下』信山社

9784797226195 渡辺章先生より、『労働法講義 下 労使関係法・雇用関係法Ⅱ』(信山社)をお送りいただきました。いつもお心に掛けていただきありがとうございます。

労働法の単著教科書も数ありますが、上下合わせて1300頁を超えるものはそう見当たらないでしょう。上巻を頂いたときにも書きましたが、

各項目ごとにかなり詳細な判例の引用と分析がされているのが特徴です。

下巻は集団的労使関係がメインで、あと男女、非正規、安衛、労災がついています。

下に詳細目次をコピペしておきますが、最初に出てくる判例(じゃなくって労委命令ですが)は、1960年のヘップサンダル事件なんですね。この事件、家内労働者(いわゆる内職)の労働者性という観点からも面白い事件なんです。

http://www.shinzansha.co.jp/111201Roudouhoukougi2-contents.html

第15講 労働組合
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ 労働組合の組織・機能
  1 労働組合の組織形態
   (1) 職種・産業・一般・企業
  note1 製造業従事者の減少とサービス業従事者の激増・地域一般労働組合の組織化と未組織労働者支援活動
   (2) 単位労働組合とその連合団体
  2 労働組合法の規整概要
  3 労働組合の労働者代表機能
 Ⅲ 労働組合の資格要件等
  1 労働組合の法的意義
   (1) 労働者が主体となって組織されること
  case 15-1 製造部品を賃加工する家内職人の労組法上の労働者性(肯定)〔東京ヘップサンダル工組合事件〕
   (2) 労働条件その他経済的地位の向上を主たる目的とすること
  case 15-2 選挙運動資金たる臨時組合費の納入義務(否定)〔国労広島地本事件〕
  case 15-3 政治活動により不利益処分を受けた組合員救援のための臨時組合費の納入義務(肯定)〔国労広島地本事件〕

   (3) 団体またその連合団体であること
   (4) 自主的に組織された団体であること
  2 労働組合の資格要件
   (1) 労組法上の手続への参与・救済申立てのための資格
   (2) 民主性の要件(法適合規約の具備)
   (3) 管理職組合
  case 15-4 会社の総合企画・総務・人事・労務関係部署の課長等以外の役職者を組合員とする労働組合の自主性要件の具備(肯定)〔セメダイン事件〕
 Ⅳ 労働組合の組織
  1 団体としての特質
   (1) 社団的性質
   (2) 準公共的性質
   (3) 組合民主主義
  2 組合員資格
   (1) 労働組合への加入
   (2) 労働組合からの脱退
  3 労働組合の運営原則・機関
   (1) 組合規約
   (2) 労働組合の意思決定および活動のための諸機関
   (3) 法人である労働組合
  4 労働組合の財政
   (1) 組合費納入義務
   (2) 組合費の支出
   (3) 組合財産の法的性格
 Ⅴ 組織統制・組織強制
  1 統 制 権
  2 統制に服する組合員の義務
  3 組織強制
   (1) ユニオン・ショップ協定
   (2) ユ・シ協定の有効性
   (3) 有効性の限界
  case 15-5 組合脱退後他組合加入者に対するユ・シ協定の適用(否定)〔三井倉庫港運事件〕
   (4) ユ・シ協定に基づく解雇の効力
  case 15-6 無効な除名処分とユ・シ協定に基づく解雇の効力(否定)〔日本食塩事件〕
 Ⅵ 労働組合の組織変動
  1 組織変動の意義とその法的問題
  2 解  散
   (1) 解散事由
   (2) 残余財産の帰属・分配

第16講 団体交渉
 Ⅰ 団体交渉の意義
  1 意義および機能
   (1) 意  義
   (2) 機  能
  2 労使協議
  3 苦情処理手続
  4 団体交渉の形態
 Ⅱ 団体交渉権の保障および限界
  1 団体交渉権の保障
  2 団交応諾拒否と不誠実交渉
  3 団交拒否の法的救済
   (1) 労働委員会による行政救済
   (2) 司法救済
  case 16-1 特定の事項に関する労働組合の団交応諾請求権(否定)〔新聞之新聞社事件〕
  case 16-2 団交申入れ事項につき団交を求める地位の確認請求(肯定)〔国鉄(乗車証交付問題団交拒否)事件〕

   (3) 損害賠償請求
  case 16-3 事前協議協定違反の希望退職者募集の差止請求(否定)および団交拒否に対する損害賠償請求(肯定)
          〔エス・ジー・エス・フ ァースト・リミテッド事件〕

 Ⅲ 団交交渉の主体・団交交渉事項
  1 団体交渉の権限・当事者・担当者等
   (1) 交渉権限
   (2) 団体交渉の当事者
  case 16-4 上部団体の団交申入れの拒否と不法行為の成否(肯定)〔日野車体工業事件〕
   (3) 団交担当者
   (4) 労働協約の締結権者
  2 団体交渉事項
   (1) 総  説
   (2) 義務的交渉事項
   (3) 管理運営事項
   (4) 任意的団交事項

第17講 団体行動・争議行為
 Ⅰ 団体行動権の意義および保障
  1 団体行動の意義
   (1) 労働組合法における団体行動権
   (2) 争議行為の意義
   (3) 争議行為と労働契約
  2 争議権の保障
   (1) 免責の意義
   (2) 刑事免責
   (3) 民事免責
  3 争議行為に対する法律上の制限
   (1) 公 務 員
   (2) 私企業労働者
   (3) 労働関係調整法における争議行為の制限・禁止
 Ⅱ 争議行為の正当性
  1 主体・目的の正当性
   (1) 主体の正当性
   (2) 目的の正当性
  case 17-1 管理者(非組合員)の依願退社の慫慂の撤回を要求する争議行為の正当性(肯定)〔高知新聞事件〕
   (3) 平和義務・平和条項違反の争議行為
  case 17-2 平和義務違反の争議行為を理由とする組合役員の懲戒解雇の効力(否定)〔弘南バス事件〕
  2 態様・手続の正当性
   (1) 一般原則
   (2) ストライキ(同盟罷業)
   (3) 怠  業
   (4) 生産管理
  3 ピケッテイング等
   (1) ピケッテイング
   (2) 物的支配権能の侵害
  case 17-3 タクシー乗務員組合によるストライキ期間中の車両確保戦術の正当性(否定)〔御国ハイヤー事件〕
   (3) ボイコット
 Ⅲ 正当性のない争議行為と民事責任
  1 損害賠償責任
  case 17-4 争議行為により生じた凍り豆腐原料の腐敗と損害賠償請求(肯定)〔みすず豆腐事件〕
  2 懲戒処分
  case 17-5 違法争議行為参加組合員の個人責任(肯定)〔全逓東北地本事件〕
 Ⅳ 争議行為と賃金債権
  1 争議行為参加者の賃金
   (1) スト参加労働者
  case 17-6 争議行為として出張命令を拒否し内勤に従事した組合員の賃金請求権(否定)〔日本水道機工事件〕
   (2) 怠  業
   (3) 賃金カットの範囲
  2 争議行為不参加者の賃金・休業手当
   (1) 問題の所在
   (2) 部分スト・一部ストと使用者の賃金支払義務
  case 17-7 部分スト不参加組合員の賃金と休業手当請求権(否定)〔ノース・ウエスト航空事件〕
 Ⅴ 争議行為の企業外第三者に対する責任
  1 契約責任
  2 不法行為責任
 Ⅵ 使用者の争議対抗行為
  1 争議行為中の操業
  2 ロックアウト(作業所閉鎖)
   (1) ロックアウトの意義
   (2) ロックアウトの法的根拠と正当性
   (3) ロックアウトの正当性と効果
  case 17-8 就労申入れ後のロックアウトと賃金支払義務(肯定)〔第一小型ハイヤー事件〕

第18講 組合活動と便宜供与・労働委員会・争議調整
 Ⅰ 組合活動権の保障
  1 組合活動の権利
  2 組合活動権の保障
   (1) 問題の所在
   (2) 組合活動の主体・目的
   (3) 企業内組合活動と法的保護
   (4) 使用者の労働条件不利益変更法理と労働組合の労働条件維持改善法理
  case 18-1 使用者の許諾を得ない事業施設へのビラ貼り(正当性否定)〔国鉄札幌駅運転区事件〕
  case 18-2 従業員食堂の無許可使用の阻止行動と支配介入の成否(否定)〔池上通信機事件〕
  case 18-3 ホテル従業員組合の賃上げ要求のリボン闘争(正当性否定)〔大成観光事件〕

  3 情報宣伝活動
   (1) 企業内情宣活動
   (2) 企業外情宣活動
  case 18-4 有期嘱託組合員の雇止めに抗議するビラ配布(正当性肯定)〔エーアイジー・スター生命事件〕
  case 18-5 出向先門前での出向元会社の人事政策批判の文書配布および演説行為(正当性否定)〔JR東日本国労高崎地本事件〕

 Ⅱ 便宜供与
  1 経費援助および便宜供与の意義
  2 組合事務所の供与
  3 在籍専従
  4 チェック・オフ協定
 Ⅲ 労働委員会
  1 労働委員会の設置・組織・任務等
   (1) 設置・種類
   (2) 組織構成
   (3) 判定的機能
  2 強制権限
  3 中労委の特別権限
 Ⅳ 労働争議の調整
  1 労働関係調整法
  2 調整手続
   (1) 労働争議の調整
   (2) あっせん
   (3) 調  停
   (4) 仲  裁
   (5) 緊急調整
   (6) 特定独立行政法人等の労働争議の調整

第19講 不当労働行為制度
 Ⅰ 不当労働行為救済制度
  1 制度の概要
   (1) 制度の構成
   (2) 不当労働行為審査の概要
  2 不当労働行為救済制度の沿革
   (1) (旧)労働組合法・労働関係調整法
   (2) 現行制度の成立と特徴
  3 不当労働行為救済制度の趣旨
   (1) 不当労働行為はなぜ禁止されるのか
   (2) 学  説
   (3) 判  例
  4 不当労働行為と司法救済
  case 19-1 労組法7条1号に違反する組合役員等の解雇の効力(無効)〔医療法人新光会事件〕
  case 19-2 団結権侵害等と不当行為責任(肯定)〔全税関横浜支部事件〕

  5 不当労働行為の主体
   (1) 不当労働行為主体としての使用者概念について
   (2) 労働契約の当事者
   (3) 労働契約の当事者に準ずる地位にある者
  case 19-3 構内下請労働者の組合に対する発注会社の使用者性(団交応諾義務肯定)〔朝日放送事件〕
  case 19-4 事業場外作業に従事させる業務委託者の使用者性(団交応諾義務否定)〔INAXメンテナンス事件〕

   (4) 親子会社等
   (5) 不当労働行為責任の帰責
  case 19-5 別組合の組合員たる助役の脱退勧奨と支配介入の帰責(肯定)〔JR東海(新幹線科長脱退勧奨)事件〕
  6 不当労働行為意思
   (1) 不当労働行為意思の意義・要否
   (2) 動機の競合
   (3) 第三者の強要
 Ⅱ 不利益取扱い
  1 意義,内容・性質,態様
   (1) 意  義
   (2) 内容・性質
   (3) 態  様
  2 採用拒否
  case 19-6 季節労働者の再採用拒否と労組法7条1号違反の成否(肯定)〔万座硫黄事件〕
  case 19-7 譲渡法人の被用者の採用拒否と労組法7条1号違反の成否(肯定)〔医療法人青山会事件〕
  case 19-8 「不採用」と労組法7条1号前段・3号の適用関係(否定)〔JR北海道(全動労組合員不採用)事件〕

  3 黄犬契約
  4 格付け・賃金人事をめぐる集団的紛争
   (1) 大量差別事件
   (2) 不当労働行為審査における「大量観察方式」
  case 19-9 賞与支給額の所属組合間格差と不当労働行為の成否(肯定)〔紅屋商事事件〕

第20講 団交拒否・支配介入
 Ⅰ 団交拒否
  1 団体交渉の条件・態様
  2 不誠実交渉
  case 20-1 一時金支給額および考課査定基準に関する不誠実交渉(肯定)〔倉田学園大手前高松高等(中)学校事件〕
  case 20-2 便宜供与・人事異動をめぐる「不誠実交渉」の成否(肯定)〔カール・ツアイス事件〕

 Ⅱ 支配介入
  1 支配介入の意義
  2 支配介入意思
  3 態  様
  4 使用者の言論の自由と不当労働行為の成否
  case 20-3 社長の「郷土愛」演説による組合員の大量脱退と支配介入の成否(肯定)〔山岡内燃機事件〕
  5 就業時間中の組合活動
  case 20-4 組合バッヂの着用者の不利益処分と支配介入の成否(肯定)〔JR東日本(国労横浜支部等バッヂ着用)事件〕
  6 事業施設の利用
  case 20-5 就業時間に食い込む職場集会への警告と支配介入の成否(否定)〔済生会中央病院事件〕
  case 20-6 許可願不提出の会社食堂の利用拒否と支配介入の成否(否定)〔オリエンタルモーター事件〕

 Ⅲ 複数組合併存下の不当労働行為
  1 使用者の中立保持義務
  2 賃金交渉と組合間差別(差し違え条件)
  case 20-7 差し違え条件に不同意組合員への一時金不払いと支配介入の成否(肯定)〔日本メール・オーダー事件〕
  3 時間外労働と組合間差別
  case 20-8 「計画残業」に反対の少数派組合員に残業をさせないことと支配介入の成否(肯定)〔日産自動車事件〕
  4 便宜供与交渉と組合間差別
  case 20-9 複数組合併存下における便宜供与と中立保持義務違反(肯定)〔日産自動車事件〕
 Ⅳ 不当労働行為事件の審査
  1 はじめに
  2 救済の申立て
   (1) 申 立 て
   (2) 救済申立て期間および「継続する行為」
  3 審  査
   (1) 審  査
   (2) 調  査
   (3) 証拠調べ
   (4) 審  問
   (5) 申立ての却下
  4 救済命令等の発出
   (1) 合議,命令書の交付等
   (2) 救済の利益(救済命令の必要性)
  5 労働委員会の裁量
   (1) 基本的原則
   (2) バックペイ
  case 20-10 中間収入の控除と労働委員会の裁量権行使(違法)〔第二鳩タクシー事件〕
   (3) ポスト・ノーティス
  case 20-11 不当労働行為を深く反省するとの「誓約書」の掲示命令(適法)〔亮正会高津中央病院事件〕
   (4) 多様な救済命令例
  6 再審査の申立て・再審査命令
  7 和  解
  8 取消訴訟
   (1) 出  訴
   (2) 救済命令等の司法審査
   (3) 緊急命令
   (4) 新証拠の制限

第21講 男女雇用平等,母性保護・育児介護休業等法制
 Ⅰ 働く女性の保護法制
   (1) 工 場 法
   (2) 労働基準法制定当初
   (3) 高度経済成長と公序法理の形成
 Ⅱ 雇用における男女の平等
  1 男女雇用機会均等法への途
   (1) 男女雇用平等に関する諸条約等
  note2 1979年国際連合「女子に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する条約」
   (2) 男女雇用平等の意義
   (3) 男女雇用機会均等法の制定
   (4) 第1次改正雇均法
  case 21-1 男女別コース制による女性労働者の配置・昇進差別(救済)〔芝信用金庫事件〕
  case 21-2 男女別コース制による女性労働者の配置・昇進差別(一部救済)〔野村證券事件〕

  2 第2次改正雇用機会均等法
   (1) 改正の経緯など
   (2) 性差別の禁止
   (3) 間接差別の禁止
   (4) 婚姻,妊娠,出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等
   (5) ポジティブ・アクション
   (6) セクシャル・ハラスメント
   (7) 雇均法の実効性の確保等
   (8) 調停制度
 Ⅲ 母性保護,仕事と生活の調和
  1 雇用関係法の新理念・新法益
  2 女性保護・母性保護・育児支援
   (1) 生理休暇・産前産後の休業の保障
   (2) 妊産婦の就業保護
   (3) 就業中の育児時間請求権
  3 母性保護・育児支援と賃金の不利益処遇
  case 21-3 労基法,労組法上の権利の行使による不就労と賃上げ要件の「稼動率」算定(違法)〔日本シェーリング事件〕
 Ⅳ 育児休業権・介護休業権等の保障
  1 育児介護休業法
   (1) 趣  旨
   (2) 基本概念・対象労働者
  2 育児休業
   (1) 育児休業権
   (2) 育児休業の申出・申出の変更・撤回・終了
  3 介護休業
   (1) 介護休業権
   (2) 介護休業の申出・申出の変更・撤回・終了
  4 看護休暇,介護休暇
   (1) 看護休暇
   (2) 介護休暇
  5 不利益取扱いの禁止等
   (1) 不利益取扱いの禁止
   (2) 育児・介護休業期間中の所得補償等
  6 子の養育または家族の介護を支援する措置
  7 事業主が講ずべき措置
  8 紛争の予防・解決
   (1) 自主的解決の努力および調停
   (2) 調  停
   (3) 企業名の公表等

第22講 非正規雇用,労働者派遣,事業組織の変動
 Ⅰ 正規雇用,非正規雇用
 Ⅱ 有期労働契約

  1 はじめに
  2 有期労働契約の黙示的更新
  case 22-1 労働契約期間の意義,理由および雇止めの効力(否定)〔朝日放送事件〕
  3 有期雇用の更新とその拒絶
   (1) 有期雇用の更新と雇止め(更新拒絶)
   (2) 雇止めと解雇の法理の適用関係
  case 22-2 2ヵ月雇用を5~23回更新した基幹臨時工の雇止め(無効)〔東芝柳町工場事件〕
  case 22-3 有期(2ヵ月)雇用者に対する人員削減のための雇止め(有効)〔日立メディコ事件〕

 Ⅲ 短時間労働者
  1 パートタイム労働
   (1) パートタイム労働の普及と問題点
   (2) 法的規整の展開
  case 22-4 「臨時社員・正社員」,「既婚・未婚」の採用区分による「同一職務」における賃金格差と不法行為の成否(部分的肯定)〔丸子 警報機事件〕
  2 パートタイム労働法の内容
   (1) 概  要
   (2) 短時間労働者・通常の労働者
   (3) 雇用管理の改善
   (4) パートタイマーの均等・均衡待遇等
   (5) 事業主および国の責務
   (6) パートタイマーとの紛争の解決
 Ⅳ 労働者派遣
  1 労働者派遣事業法の制定
  2 労働者派遣の意義
   (1) 労働者派遣の意義
   (2) 請負との区別
  3 労働者派遣事業の規制
   (1) 労働者派遣事業の許可・届出,派遣労働者の雇入れ
   (2) 派遣対象業務・派遣期間
   (3) 労働者派遣契約の解除
  4 派遣元・派遣先事業主の責任
   (1) 労働関係法規の適用関係
   (2) 派遣元事業主の責任
   (3) 派遣先事業主の責任
  5 紹介予定派遣
  6 労働者派遣事業法の改正法律案
 Ⅴ 企業組織の変動と労働契約
  1 会社の合併,事業譲渡
   (1) 合  併
   (2) 事業譲渡
  case 22-5 資産の売却先会社による労働契約の承継(肯定)〔タジマヤ事件〕
  case 22-6 事業財産の移転と労働契約の承継(否定)〔日本大学医学部事件〕

  2 会社の分割と労働契約の承継
   (1) 会社の分割
   (2) 分割の手続
   (3) 労働契約の承継効および異議の申立て
   (4) 承継される労働条件等

第23講 公正処遇,安全衛生・安全配慮義務
 Ⅰ 賃金制度における公正処遇
  1 能力主義賃金制度
  2 人事考課
  case 23-1 昇格査定における裁量権の逸脱と不法行為の成否(肯定)〔マナック事件〕
  3 成果主義賃金制度
   (1) 意  義
   (2) 制度の概要と合理性
   (3) 年 俸 制
  case 23-2 成果主義賃金制度における「月例給」の降給措置(有効)〔エーシーニールセン・コーポレーション事件〕
 Ⅱ 労働災害の予防
  1 はじめに
   (1) 労働災害
   (2) 労働安全衛生法の制定
   (3) 労働安全衛生法付属法令
  2 安全・衛生の確保
   (1) 労働安全衛生法の概要
   (2) 危害防止基準等の法的性質
   (3) 監  督
  3 安全衛生保持義務の主体
   (1) 事 業 者
   (2) 事業主以外の者
   (3) 派遣労働者の労災防止措置義務
 Ⅲ 安全衛生義務の内容
  1 危害防止基準の遵守
  2 労災防止の責任体制の明確化
   (1) 安全衛生管理体制
   (2) 安全衛生のための労使委員会の設置
  3 安全衛生教育の実施・危険業務への無資格者の就業禁止
  4 労働者の健康の保持増進措置
   (1) 作業環境の測定・作業時間の制限
   (2) 健康診断とそのフォロー
  case 23-3 応募者の同意を得ないB型肝炎ウイルス感染検査とプライバシー権の侵害(肯定)〔金融公庫事件〕
   (3) 健康保持増進のための指針
 Ⅳ 労働災害と損害賠償
  1 損害賠償請求訴訟の背景
  2 安全配慮義務の法理
   (1) 意  義
   (2) 安全配慮義務の内容の特定と立証責任
   (3) 疾病と安全配慮義務
   (4) 労災保険法の給付と損害賠償との調整
  case 23-4 過度の長時間労働によりうつ病をり患し自殺した労働者の遺族の損害賠償請求(肯定)〔電通事件〕
   (5) 労災上積補償

第24講 労働者災害補償法制
 Ⅰ 労働者災害補償制度
  1 意義,沿革
  2 労基法・労災保険法の労災補償
   (1) 労基法の労災補償
   (2) 労働者災害補償保険法
   (3) 災害補償責任に関する労基法・労災保険法・民法の関係
  3 労働災害補償関係の成立
   (1) 労災補償関係の当事者
   (2) 保険関係・補償関係の成立
   (3) 補償給付費用の負担
 Ⅱ 業務上・外の認定
  1 業務上・外の認定の意義
  2 災害性傷病等の業務上・外の認定基準
   (1) 行政解釈
   (2) 中小企業事業主等の傷病等と業務上・外の認定
   (3) 業務上の疾病
   (4) 脳血管・虚血性心疾患
   (5) 治療機会の喪失
   (6) 精神障害・自殺について
 Ⅲ 労災補償給付
  1 給付の決定
   (1) 災害補償の請求と労基監督署長の決定
   (2) 社会復帰促進事業として行われる特別給付
   (3) 給付基礎日額
  2 給付の種類等
   (1) 療養補償給付
   (2) 休業補償給付
   (3) 障害補償給付
   (4) 傷病補償年金
   (5) 介護補償給付
   (6) 遺族補償給付
   (7) 葬 祭 料
   (8) 給付の制限・不正受給
   (9) 保険給付を受ける権利の保護
  3 保険給付受給権の消滅時効
 Ⅳ 通勤災害
  1 通勤災害と労働者災害補償保険法
  2 通勤災害の意義
   (1) 通勤の意義
   (2) 通勤災害の意義

さて、渡辺先生からは、『中央労働時報』に、ある労委命令(GABA事件)の評釈を書けという宿題を頂いておりまして、なかなか手が着いておりませんが、そろそろ本腰を入れて書かねばなりますまい。

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頭スッキリ

昨日に引き続き、アマゾンカスタマーレビューに拙著『日本の雇用と労働法』の批評が載りました。いままでのところ、6つとも5つ星をいただいております。

http://www.amazon.co.jp/review/R2HZ9W5O7O7EJQ/ref=cm_cr_pr_perm?ie=UTF8&ASIN=4532112486&nodeID=&tag=&linkCode=(頭スッキリ

>著者の本を読むのは初めて。手にした時は読みづらそうと感じたが、読んでみるとそんなことはなく、“メンバーシップ型”というキーワードで日本型雇用の全貌、特徴をすんなりと理解することができた。

歴史的変遷や法律・判例解説がくどくど書かれているわけではなく、人事・労働にかかわる人が頭を整理する上で大変有益な本である。大学の教科書を念頭に書かれたもので、シンプルで読みやすく仕上がっているが、学生にとっては少し勉強してから読むのがお薦め。

本書・著者の意図するところではないのかもしれないが、欲をいえば、少子高齢化・グローバル化が進むなか「日本型雇用システムの今後」がどうなるのか、大胆な見解が提示されているとよかった。

ありがとうございます。

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金正日総書記は過労死!?

労働党という党名の一党独裁国家のトップの死因としては、なかなか味わい深いものもありますが、

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20111219-OYT1T00582.htm?from=main2

>国営朝鮮中央テレビでは、女性アナウンサーが「金正日総書記が17日午前8時半、列車で現地指導に向かう途中、肉体的過労で死亡した」と伝えた

ここはやはり、過労死問題の先駆者であるとともに、北朝鮮拉致問題にも深く関わってこられた川人博弁護士のコメントが欲しいところですか・・・。

(追記)

やはりというか、労務屋さんも「過労死」に反応されたようです・・。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20111219#p1

>どうも死因は心筋梗塞らしいのですが、それにしても積み重なる精神、肉体的過労により虚血性心疾患で死亡というのはまさに過労死そのもの(いや首領様は労災保険法上=労基法上の労働者ではないでしょうが)の言われ方ですね。まあ朝鮮労働党ほかとしては偉大な首領様は人民のために生命まで投げ打って指導にあたられたという見解なのでしょうが、もう少し違う言い方はないものかと。

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ILOワーキングペーパー「日本の非正規労働」

IlowpILOから、ようやく私も執筆したワーキングペーパー「'Non-regular work: Trends, labour law policy, and industrial relations developments – The case of Japan」(非正規労働:趨勢、労働法政策及び労使関係の展開-日本のケース)の冊子版が届きました。

http://www.ilo.org/ifpdial/information-resources/publications/WCMS_166735/lang--en/index.htm

>This paper is one of a series of national studies on collective bargaining, social dialogue and non-standard work conducted as a pilot under the Global Product on „Supporting collective bargaining and sound industrial and employment relations‟. The national studies aim at identifying current and emerging non-standard forms of work arrangements within which workers are in need of protection; examining good practices in which those in nonstandard forms of work are organized; analyzing the role that collective bargaining and other forms of social dialogue play in improving the terms and conditions as well as the status of non-standard workers and identifying good practices in this regard.

本ペーパーは、「団体交渉と健全な労使・雇用関係の支援」というグローバルプロジェクトの下のパイロットプロジェクトとして行われた団体交渉、労使対話及び非正規労働に関する国別研究のシリーズの一巻である。この国別研究は、労働者の保護の必要のある今日の拡大しつつある非正規労働形態を明らかにし、非正規労働者が組織される好事例を検証し、団体交渉や他の形態の労使対話が非正規労働者の雇用条件や地位を改善する上で果たす役割を分析すると共にこの観点での好事例を明らかにすることが目的である。

というわけで、ワーキングペーパー自体はこちらのPDFファイルで読めます。

執筆者は、わたくしと、JILPTの荻野登さん。第1節の「Overview of recent developments in the economy and labour markets and the trends in non-regular employment」と第3節の「Non-regular employment: Industrial relations developments and good practices」が荻野さん、第2節の「Policy developments concerning non-regular employment and tripartite dialogue processes」がわたくしの担当です。

執筆に際しては、ILOに勤務されている戎居皆和さんに大変お世話になりました。

http://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---ed_dialogue/---dialogue/documents/publication/wcms_166735.pdf

冒頭のムーサ・ウマル労使・雇用関係課長による序文をコピペしておきます。

>Foreword

 This paper is one of a series of national studies on collective bargaining, social dialogue and non-standard work conducted as a pilot under the Global Product on „Supporting collective bargaining and sound industrial and employment relations‟. The national studies aim at identifying current and emerging non-standard forms of work arrangements within which workers are in need of protection; examining good practices in which those in nonstandard forms of work are organized; analyzing the role that collective bargaining and other forms of social dialogue play in improving the terms and conditions as well as the status of non-standard workers and identifying good practices in this regard.

While ample sources are available about Japan‟s long-term employment practices, there have been very few in-depth studies undertaken, other than in Japanese, which illustrate non-regular work developments and practices. In this regard, this paper provides useful knowledge and contributes to better understanding among international readers of  the complex manner in which non-regular work arrangements are organized and used in practice, together with the ways such work forms have each evolved differently in terms of their legal, historical and cultural backgrounds.

The authors underscore that Japan‟s long-term employment practices, which are often associated with employment security and a seniority-based pay rise system, have gone hand-in-hand with the use of a wide variety of non-regular work arrangements. As they indicate, the relative stability of the former has been achieved through the use of the latter. However, they also show that in Japan‟s industrial relations, which are characterized by enterprise unionism, the majority of enterprise unions have in practice limited their membership qualifications to regular workers, thereby failing to cover large numbers of non-regular workers through enterprise-level representation. This, nevertheless, has not been seen as a significant social issue until recently, since a large proportion of the nonregular workforce traditionally comprised married women, or students who voluntarily engaged in non-regular work, according to the authors. The paper notes that since the collapse of the bubble economy in the 1990s, however, the situation has changed and a growing number of people have started involuntarily engaging in non-regular work, contrary to their wish for regular work, thereby posing a number of challenges in traditional industrial and employment systems and practices.

The paper shows that lack of effective autonomous governance by the social partners, based on collective representation and negotiation in addressing these non-regular workforce issues, has resulted in a call for a number of policy measures providing adequate legal protection for such workers. In face of the growing non-regular workforce, it emphasizes that trade unions have also been adopting different strategies in order to revitalize the labour movement, striving to organize such workers and improve their situation in different ways, albeit still limited in scope and impact. The paper underlines the importance of further advancing multiple measures and actions targeting non-regular workers, which are supported by both legislative policies and the social partners.

DIALOGUE Working Papers are intended to encourage an exchange of ideas and are not final documents. The views expressed are the responsibility of the author and do not necessarily represent those of the ILO. I am grateful to Keiichiro Hamaguchi and Noboru Ogino of the Japan Institute for Labour Policy and Training (JILPT) for undertaking the study and commend it to all interested readers.

Moussa Oumarou
Director,
Industrial and Employment
Relations Department

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長年のもやもやを晴らしてくれた一冊

アマゾンカスタマーレビューの5つめは、yoss_2525さんの「長年のもやもやを晴らしてくれた一冊」という評です。

http://www.amazon.co.jp/review/RBSGTPDG0O6VM/ref=cm_cr_pr_perm?ie=UTF8&ASIN=4532112486&nodeID=&tag=&linkCode=

>私はまもなく50歳に手が届くという年代であるが、今頃になって長年の就職に対するもやもやが晴れたような気がする。そのもやもやを晴らしてくれたのが本書である。

どういうもやもやが晴れたのかというと、

>まず著者が提示するのが、他の評者が書かれているように「日本の雇用は欧米型のジョブ型ではなく、メンバーシップ型である。」ということである。この部分だけでもやもやの9割は晴れた。

 民法では『雇用契約』とは労働を提供する側とそれに対して対価を支払う側との契約である、と示している。これによると労働者と使用者は契約の当事者であるが、同じ側に立つものではない。しかし実際には会社の一員(正社員)となるというのが実態であると著者は説明する。

 よく考えれば労働力の提供に対して対価を支払うためには、その労働力を特定して、それの対価がいくらか、ということ決めないと契約なんかできないはずであるが、わが国でそのような契約をして就職している人が何人くらいいるのであろうか。

 実際には「その会社のメンバーでいる」ことに対して賃金を支払っているのであろう。

 だから、「成果主義」もうまくいかないし(そもそも成果を要求される、なすべき『ジョブ』を決めていない)、自分の望まない配置転換も感受しなければならない。

 本書では、このあたりを「なぜこうなったのか」という歴史を交えてわかりやすく書かれている。

 私のもやもやというのは、法律と現実があっていないということであった、ということが本書を読んでわかった。もやもやがどんなことに対するものかさえわからなかったという恥ずべき状況であった。

さいごのところで、

 著者は労働省で官僚として労働法制に関わってきており、いわゆる「労働法学者」とは異なるキャリアを持っている。それだけに、理論だけではなく現実に即した内容の著書を記すことができるのであろう。

 若い人、それもこれから就活に臨もうという人にぜひ読んでもらいたい本である

と、若い人、就活に臨もうとしている人々に勧めていただいております。

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宮本太郎編『弱者99%社会 日本復興のための生活保障』幻冬舎新書

300739bこれは、わたくしも参加した昨年末のBSフジの番組「提言“安心社会·日本への道”」を一冊の本にしたものです。宮本太郎さんが、毎回二人の有識者との鼎談で、社会保障のあるべき姿を論じ合っています、

http://www.gentosha.co.jp/search/book.php?ID=300739

>生活保護者数205万人、完全失業者数334万人……これらは「格差限界社会」の序章に過ぎず、もはや一刻の猶予も許されない。社会保障改革へ、有識者達による緊急提言

わたくしは、宮本太郎、湯浅誠のお二人との鼎談で、ジョブ型正社員を提言しています。

BSフジの番組に出たときのエントリはこれです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/bs-e6ef.html(BSフジプライムニュース)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/bs-9821.html(BSフジプライムニュースに出てきました)

ちなみに、我が家ではBSは見られないので、その他の回の放送は見ていなかったのですが、改めて読んでみると、やはり、藤井裕久、与謝野馨両政治家との鼎談が迫力がありますね。無責任なデマゴーグ型政治家と責任感ある真の政治家との違いがよく分かります。


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拙著へのつぶやき評

拙著『日本の雇用と労働法』への、ここ数日の短評です。

http://twitter.com/#!/kawazoemakoto/status/146537411223105536

>濱口桂一郎さんが法政大学非常勤講師として講義「雇用と法」をもっているそうだ。法政の学生がうらやましい。そういえば、昔、もぐり聴講を推奨する「ニセ学生マニュアル」という本があった。今ならネットで簡単に正確に作れる。教室と時間を掲載するだけ。誰かやりそうだけどな。大学の公共化。

河添誠さんのつぶやき。70人近くがこの講義に登録しているのですが、いつも出てきているのは20人ぐらいなので、教室は広々としています(笑)。どなたさまでも、お聴きになりたい方は歓迎いたします。

http://booklog.jp/asin/4532112486

>著者が大学の講義のためにテキストとして用意した書。「長期雇用、年功賃金制度、企業別労働組合」という特徴をもつ日本型雇用システムはどのようにして形作られてきたのか。労働法制との関係において解説されている。コンパクトだが非常によくまとめられたいつも手元においておきたいと思った一冊。(2012/12/15)           

http://twitter.com/#!/500drachmas/status/147951193044430848

>濱口桂一郎氏の「日本の雇用と労働法」非常にわかりやすかった。恐らく経済学業界人対策も考えて書かれたのだろう。現実の金融制度を知らずに日銀を罵倒したり、現実の公的年金制度や経緯も知らずに批判する経済学関係者を見るとなんだかなぁと思う。

いや、別に「経済学業界人対策」まで考えて書いたわけではなくて、素朴に社会学部の学生さんに必要な知識はこんなところかなあ、と思って書いただけなんですが・・・。

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大阪は解雇が難しいから経済が停滞したって?

経済産業研究所の研究は、立派な研究も多いのですが、これは正直申し上げて、トンデモ研究のたぐいと申せましょう。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/11e078.html(雇用保護は生産性を下げるのか-『企業活動基本調査』個票データを用いた分析)

いや、企業活動基本調査の個票データを用いた分析はけっこうですけどね。

問題は、解雇データです。

>解雇規制は労働市場だけに関わる政策と理解されることが多いかもしれない。しかし、雇用保護は労働市場以外のところにも影響を及ぼす可能性がある。たとえば、厳しい解雇規制により企業の雇用調整が抑制されると、資源配分の自由度が低下するために企業は効率的な生産水準を達成することができないかもしれない。また、解雇規制の強化により、企業は大幅な雇用削減を行うリスクを嫌い、新たなプロジェクトやイノベーションを行わない可能性もある。解雇規制の強化によって行動を変化させるのは企業だけではない。雇用保護の程度によっては、労働者自身も努力水準や特殊技能への投資水準を変化させるかもしれない。

解雇規制は本当にこうした広範囲な影響力を持つのだろうか。本研究では、この包括的な影響が企業の生産性(TFP=全要素生産性)に反映されると考えて、日本の解雇規制の程度の違いが企業の生産性に与える影響について分析した。

日本の解雇規制の程度については、整理解雇判例の判決傾向が地域によって大きく異なることを利用して分析を行った。具体的には、以下の図で示されるように、解雇有効判決の蓄積傾向が大阪府よりも東京都で非常に強い、といった地域的・時系列的な判決傾向の差を利用した。

11e078_f1

11e078_f2

分析の結果、判決による雇用保護の程度が大きい場合には企業の全要素生産性の伸び率が減少することが分かった。また、雇用保護の強化によって労働から資本への代替を促す効果は明確に観察されなかったものの、全体としては労働生産性が有意に減少することも明らかにされた。つまり、特定の労働者に対する雇用保護の影響は労働市場にとどまらず、企業の生産性への負の影響を通じて経済全体に影響を与え得る。

ここで、東京は解雇がしやすくて大阪は解雇が難しいとか言ってるのは、せいぜい年間十数件の解雇裁判のことですね。

一体、日本中で、東京や大阪で、毎年どれくらいの解雇が行われていると思っているのでしょうか。

実は、私は、労働局のあっせん事案を通じて、裁判まで行かないようなどぶ板レベルの解雇事案を山のように見てますけど、大阪が解雇しにくいなんて、一体どこの国の話やら、という感じではあります。いや、費用と機会費用をことごとくつぎ込んで裁判闘争を戦う超特別な人にぶち当たると、若干そういう傾向が出るかも知れませんけど、

それにしても、年間十数件の解雇裁判での、ほんの数件程度の裁判傾向の違いが、東京と大阪の経済の浮沈を決定するという珍説は、もし裁判にかかる事案以外に世の中に解雇なんてことがほとんどないとでもいうのなら、まだしも説得力があったかも知れないのですけど・・・。

(参考)

わたくしの研究報告書ですが、

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2010/0123.htm(個別労働関係紛争処理事案の内容分析―雇用終了、いじめ・嫌がらせ、労働条件引下げ及び三者間労務提供関係―)

>労働法学で主流の判例研究では、裁判所に訴える力や余裕のない多くの労働者に係る紛争が視野に入ってこない。また、労働経済学等の理論研究では、現実の労働社会におけるどろどろした実態を掬い取ることができない。一方で、ジャーナリストによる職場の実態の告発では、たまたま報道された事案がエピソード的に語られるにとどまる。本研究は判例研究と経済理論と告発ジャーナリズムの隙間を埋め、今日の職場で発生している紛争の全体像を示すことを目指している

それに関連したエントリ、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-fb88.html(クビ代1万円也)

>いまだに、「解雇自由が日本を救う」というたぐいの議論がネット界を横行しているようですね。

>・・・この手の議論は、(自分がいた)大企業を日本社会のすべてだと思いこんで、中小零細企業の実態が頭から欠落しているところに特徴があります。

そういう実態が一番分かるのは、実は労働行政の現場です。実際に中小零細企業の労働者がどれだけ簡単に「おまえはクビだ」といわれているかは、その中の一部(とはいえ、裁判に訴えるなどというとんでもないウルトラレアケースに比べればそれなりの数に上りますが)の人々が労働局や労働基準監督署の窓口にやってきて相談している状況を見れば分かります。

それらのうちかなり少数のケースが助言指導や斡旋に移行するのですが、それで解決にいたったケースでも、その水準というのは大企業の人々からするとびっくりするくらい低いものです。

20万円、30万円なんてのはまれなケースで、大都市あたりでも6万円、8万円といった解決金がごく普通に見られます。月給の一月分にもとうてい届きません。

一番ひどいのはクビの代金1万円というのもありました。それも何件か。

しかもそういうのに限って、クビの原因が限りなくブラックだったりするわけです。解雇規制をなくせばブラック企業が淘汰されるどころか、現実に限りなく解雇自由に近い状態が(労働者保護面における)ブラック企業をのさばらせている面もあります。

こういう実態をみてくると、やはり解雇の金銭解決問題をもう一度きちんと議論し直す必要があると痛感します。不当解雇は無効だからいつまでも地位確認で給料払えでやるべきで、金銭解決はけしからんというのは、大企業バイアスなんですね。

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阿部彩『弱者の居場所がない社会 貧困・格差と社会的包摂 』

2881352 ということで、OECD報告とぴたりタイミングが合いましたが、日本の貧困・格差問題に関心が湧いたら、この本を。

http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2881357

著者の阿部彩さんは、いうまでもなく国立社会保障・人口問題研究所で、貧困問題を研究している方で、岩波から出た『子どもの貧困』は大変話題になりました。

本書は、子どもに限らず、女性や高齢者など、貧困全般のわかりやすい解説書です。「弱者の居場所がない社会」というちょっとひねったタイトルは、編集担当の堀沢加奈さんによると、

http://twitter.com/#!/gorikichi/status/141323372373086208

>「社会的排除」と「社会的包摂」についての12月刊新書を校了中。著者は阿部彩さん。タイトルは「社会的包摂」が見慣れない硬い言葉なので苦心して、『弱者の居場所がない社会ーー貧困・格差と社会的包摂』。

だいぶ苦心されたようですね。

で、この本ですが、

>誰でも「居場所」「つながり」「役割」を持って生きていたいと願う。そのキーワードとなる「社会包摂」なしに、これからの社会保障政策は語れない。気鋭の研究者が、熱く熱く語る。

「熱く熱く」というのは伊達ではありません。どれくらい熱いかというと、ご本人自身、

>・・・そのときに私のなかから衝動的に溢れ出してきたのが、第3章、5章で書いたホームレスのおっちゃんたちのエピソードと、それに突き動かされる社会的包摂政策への切望の念だった。どちらかといえば、客観的なデータ重視で論考を進める私のスタイルとは一転する展開となった。

私も共著で参加した『自壊社会からの脱却』の「ユニバーサルデザイン社会の提案」で出てきたホームレスのかっちゃんたちが、再び登場しています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-0297.html(貧困の社会モデルまたは労働市場のユニバーサルデザイン化)

内容は次の通りですが、

>プロローグ 社会的包摂と震災
第1章 生活崩壊の実態
第2章 「最低生活」を考える
第3章 「つながり」「役割」「居場所」
第4章 本当はこわい格差の話
第5章 包摂政策を考える
第6章 インクルーシブな復興に向けて

やはり、阿部さんがかつて取り組んでいたホームレス支援時代のエピソードがいろんな意味で胸を打ちます。

最後の「インクルーシブな復興に向けて」の章から、

>・・・まだ、ボランティア活動を始めたばかりの頃、やる気満々だった私は、ある炊き出しの現場で、せっせと調理や配膳、食器洗いなどを始めた。すると、ボランティアの古顔の一人に腕をつかまれ、部屋の隅に連れて行かれ、言われたのである。「あなたが張り切っても意味がない」。

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我ら分断されて在り-なぜ格差は拡大しているのか?

49174592dwscover150812011111m OECDが先日、「Divided We Stand: Why Inequality Keeps Rising」(我ら分断されて在り-なぜ格差は拡大しているのか?)と題する報告書を公表しました。

http://www.oecd.org/document/51/0,3746,en_2649_33933_49147827_1_1_1_1,00.html

>In the three decades prior to the recent economic downturn, wage gaps widened and household income inequality increased in a large majority of OECD countries. This occurred even when countries were going through a period of sustained economic and employment growth. This report analyses the major underlying forces behind these developments:

近年の景気後退に先立つ30年にわたって、多くのOECD諸国で賃金格差は拡大し、世帯収入の不平等は増大してきた。これは各国が着実に経済成長と雇用の拡大を実現していた時期に起こったのである。本報告は、こうした事態の背後にある主たる要因を分析している

とりあえず日本語で読めるものを、という需要にお応えして、OECDが用意した日本語版プレス資料:

http://www.oecd.org/dataoecd/51/33/49177721.pdf

>日本の生産年齢人口の所得格差はOECD 平均よりやや大きい。日本の生産年齢人口の所得格差は、OECD と足並みを揃えて1980 年代半ば~2000 年に拡大した。2000 年に最大となり、その後縮小したものの、2003 年以降再び拡大に転じている。2008 年の日本の上位10%の平均所得は754 万円で、下位10%の平均所得(75 万円)の10 倍であった。これは1990 年代半ばの8 倍、1985 年の7 倍より大きい。
過去20 年間、日本政府は所得再分配の強化に大いに力を入れている。税と給付による所得格差縮小率は、1985 年には12%であったが、2006 年には21%へと上昇した。これは、OECD 平均(25%)よりは小さいが、それに近づいている

毎度同じことを言ってますが、せめてOECDがいってることぐらいはわきまえて議論する習慣を身につけたいものです。

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大嶋寧子『不安家族 働けない転落社会を克服せよ』

Book111208みずほ総研の大嶋寧子さんより、近著『不安家族 働けない転落社会を克服せよ』(日経新聞出版)をお送りいただきました。前著『雇用断層』に引き続き、今日の雇用生活問題に斬り込んだ本として、多くの方に読まれて欲しい本です。

http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/book/111208.html

>就職難にあえぐ若者、失業におびえる中高年、非正規雇用と低賃金化の増大、長時間労働の果ての過労死……。雇用の悪化が生活基盤を脅かし、結婚難・少子化と家族を持つことさえ難しい状況にあります。
豊富なデータや実証分析を紹介し、そこから見えてくる現役世代の「思い」「苦境」を浮き彫りにし、家族と雇用を同時再生する道しるべを示しています。

目次は下の通りですが、広範な領域に渉ってデータを駆使しながら、問題意識をくっきりと浮かび上がらせていく手際は見事です。

はじめに

第1章 家族の生活を脅かす雇用の不安定化

  1. 第1節男性の安定雇用が縮小する
  2. 第2節不本意型非正社員の増加

第2章 「働くこと」の内側で広がる問題

  1. 第1節正社員という働き方の不安定化
  2. 第2節女性の就業希望を生かせない日本

第3章 雇用悪化によって揺らぐ家族の生活基盤

  1. 第1節1950~1990年代前半――企業と家族の相互依存
  2. 第2節1990年代後半~現在――安定雇用縮小と揺らぐ生活基盤

第4章 家族を持つ、子どもを育てることが難しい

  1. 第1節雇用の悪化と結婚できない若者の拡大
  2. 第2節子どもを持てない
  3. 第3節企業を通じた生活保障の縮小と子どもの貧困

第5章 脆弱な現役世代への社会保障

  1. 第1節安上がりにされてきた現役世代への社会保障
  2. 第2節重い子育て費用と小さい児童手当

第6章 現役世代のリスク拡大

  1. 第1節雇用セーフティネットにあいた大きな穴
  2. 第2節ワーキング・プア――未だ議論途上の所得底上げ策
  3. 第3節ハウジング・プアの拡大

第7章 雇用と生活の不安定化は誰にとっての問題か

  1. 第1節日本経済への逆風に対抗できない労働市場
  2. 第2節今後増加が懸念される介護離職
  3. 第3節高齢者の貧困拡大と社会が負う負担

第8章 現役世代の雇用と生活を守る欧州の取り組み

  1. 第1節EU――雇用政策と社会保障の連動で「働く」を支える
  2. 第2節オランダ――働き方の多様化を実現したフレキシキュリティ政策
  3. 第3節英国――働く機会の再配分を目指して
  4. 第4節ドイツ――家族政策のコペルニクス的転換で目指すこと

第9章 現役世代の社会保障を機能強化せよ

  1. 第1節東日本大震災と「働くこと」を支える政策の重要性
  2. 第2節政策提言――現役世代と家族の生活基盤の再構築に向けて

参考文献

最後のところで現役世代のための政策提言が次のように掲げられています。

問題1 安定した雇用機会の縮小

政策提言:国内観光、環境・省エネルギー、家事・育児支援サービス、高齢者向けサービス等における内需活性化策の強化

問題2 不本意型非正社員の増加

政策提言:有期労働者の待遇改善、多様な正社員の推進策、正社員への転換支援策の強化

問題3 ワーキング・プアの増加

政策提言:給付つき税額控除の導入による低所得者の所得底上げ、内需活性化による雇用創出、良質な雇用の促進策、正社員への転換支援策との連繋

問題4 職業能力開発機会が不足する労働者の増加

政策提言:教育訓練給付制度の見直し

問題5 女性の本格就業の難しさ(女性雇用の非正規化、就業希望のある夢業者)

政策提言:保育等の育児支援サービスの抜本的拡充、有期労働者や男性の育児休業取得の促進策、多様な正社員の推進、再就職希望女性への就労支援の強化

問題6 雇用に起因する子供の持ちにくさ、子どもの貧困の拡大

政策提言:現役世代の生活基盤の強化、教育費の負担軽減(高校無償化策の維持、奨学金制度の拡充)

問題7 失業時のセーフティネットの不足

政策提言:求職者支援制度の発展的見直し、就労支援における民間・NPOとの連繋


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星新一さん・・・

Dio 連合総研の機関誌『DIO』266号は、「3.11後に何が変わったのか−さまざまな現場から」が特集ですが、その中に・・・

http://rengo-soken.or.jp/dio/dio266.pdf

震災後の生活とこれからの課題  星  新一 ……………12

星新一さん?

いや、この方、宮城県山元町磯行政区長の星新一さんです。

今号では、麻生裕子さんがイタリア映画「人生、ここにあり!」について書かれています。じわじわと流行っていますね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-7117.html(イタリア映画『人生ここにあり』)

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『季刊労働法』235号

Tm_i0eysjiznq 『季刊労働法』2011年冬号(235号)が届きました。今号の特集は「雇用・就労分野における障害者差別禁止法制の展開と課題」です。

http://www.roudou-kk.co.jp/quarterly/archives/004901.html

現在内閣府で進められている障害者差別禁止への動きがそろそろ大詰めになりつつあることもあり、各国の動向を再認識するために有用な特集です。

特集の趣旨
早稲田大学 菊池馨実

障害者差別禁止法におけるコストと合理的配慮の規範的根拠
―アメリカ法からの問題提起
北星学園大学教授 中川 純

ドイツ障害者雇用政策における合理的配慮論の展開
明治大学准教授 小西啓文

フランスにおける障害差別禁止の動向
―HALDE勧告に見る「適切な措置」概念の分析―
上智大学准教授 永野仁美

ドイツ障害者雇用における福祉的アプローチ
―障害者作業所を中心に
関西大学准教授 福島 豪

最近、若い研究者にこの分野をやる人々が増えましたね。

一方で、差別禁止で障害者のためになるのか?という疑問の声も、結構あちこちから聞こえます。

第2特集は震災関連。

小特集 東日本大震災と労働問題
東日本大震災と労働法―特に原発事故に関連して―
福島大学特任教授 今野順夫

震災後の雇用・労働施策の概要と課題
全労働省労働組合中央執行委員長 森崎 巌

今野さんの文章の最後近くに、

>・・・原子力発電所内に、労働監督が抜き打ち的に入れない問題もあり、どのように労働者の安全を確保していけるか、また原発を渡り歩く労働者の健康を生涯どのように守るか、一般企業とは異なるがゆえに、労働者の安全を確保する体制について、改めて検討を迫っていると思われる

と書かれています。

後は、わたくしの連載も含めて雑多な文章ですが、なんとそのうち3つが労組法上の労働者性の問題を取り上げています。野川忍論文、山本陽大評釈、そして竹内寿文献研究の3つです。

■論説■
労働組合法上の労働者
―労使関係法研究会報告書の検討―
明治大学教授 野川 忍

公務における勤務条件決定システムの転換
早稲田大学教授 清水 敏

ドイツの雇用調整
岡山大学教授 藤内和公

■研究論文■
看護労働における労働時間制の法的課題
――裁判例を契機に
日本赤十字九州国際看護大学教授 大橋 將

イギリスにおける職場いじめ
―ハラスメントからの保護法による救済―
中央大学大学院博士後期課程 滝原啓允

■神戸労働法研究会 第18回■
労働組合法上の労働者概念をめぐる最近の最高裁二判決の意義
同志社大学大学院博士後期課程 山本陽大

■アジアの労働法と労働問題 第12回■
中国における最低賃金制度の現状と課題
内閣府係長・行政官長期在外研究員(中国人民大学) 森下之博

■連載■
労使で読み解く労働判例(第6回)
採用内々定取消しをめぐって
―コーセーアールイー(第2)事件(福岡高判平成23年3月10日労判1020号82頁)―
東海大学准教授 渡邊絹子

労働法の立法学(第27回)
求職者支援制度の成立
労働政策研究・研修機構統括研究員 濱口桂一郎

ローヤリング労働事件(第3回)
労働審判―使用者側の立場から
弁護士 丸尾拓養

文献研究労働法学(第3回)
労働組合法上の労働者
立教大学准教授 竹内(奥野)寿

■追悼■
蓼沼謙一先生のご逝去を悼む
一橋大学大学院法学研究科教授 盛 誠吾

この中で、トピック的に興味深かったのは、大橋さんの看護労働の労働時間の話です。看護師聖職(白衣の天使)論のために、まっとうに労働条件が議論されることのなかった看護界が、国立循環器病センター過労死事件の衝撃でようやく問題意識が芽生えてきたのですね。

ちなみに、わたくしの「求職者支援制度の成立」は、制定に向けた審議の姿から、「求職者支援制度の本質は何か?」という問題を考えています。最後のところで生活保護制度に関する国と地方の協議の動向にも触れていますが、校正の関係で、中間取りまとめまでは触れられていません。ただ、どういう問題が残っているかはかなり明確に示していると思います。

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高齢者雇用たたき台

ということで、下のエントリアップ後、厚労省HPに高齢者雇用に関する基本問題部会の資料があっぷされました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001y4b9-att/2r9852000001y4cq.pdf

>直ちに法定定年年齢を65 歳に引き上げることは困難であり、賃金制度などの労務管理上の課題に関する環境整備を含めて、中長期的に引き続き検討していくべき課題

>雇用と年金を確実に接続させるため、現行の継続雇用の対象となる高年齢者に係る基準は廃止することが適当

というのは、高齢研報告の通りで、変わっていません。

注目すべきは、その後に付いているこういう記述です。

まず、

>その際、例えば長期にわたり労務提供が困難であることが明らかな者の就業規則における取扱いについて、考え方の整理が必要ではないか。

これだけでは、何のことやらよく分かりにくい文章ですが、要するに、継続雇用という局面でなくても「こいつはもう雇い続けることは難しい」ような人まで、必ず継続雇用しなくちゃいけないというわけではありませんよね、という経営側の意図を、わかりにくく表現したものなのでしょう。

下のエントリでも触れたように、わたくしが強調したいのは、

>また、継続雇用制度の基準を廃止する場合であっても、就労を希望する高齢労働者が増加していくことを考えると、同一の企業の中だけでの雇用の確保には限界があるため、事業主としての責任を果たしていると言える範囲において、継続雇用における雇用確保先の対象拡大が必要ではないか

です。

今のところ、HP上のQ&Aといういささか法令上の位置づけの不明確な形でのみ、かなり限定した範囲の転籍を認めているだけですが、もともと、高齢者の雇用を確保する義務としてどこまで含まれるかという問題意識からすれば、同一企業での継続雇用に限る必要は本来ないとも言えます。

問題はむしろ、確保先の企業における雇用の確実性の担保をどうするかなのでしょう。

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高齢者雇用のマッチポンプ?

本日の朝日新聞の1面トップは、でかでかと「65歳まで再雇用義務化 希望者対象に厚労省方針」と書いてあって、何か大変なスクープかと思いきや、

http://www.asahi.com/business/update/1213/TKY201112130695.html?ref=any(65歳まで再雇用義務化 希望者対象に厚労省方針)

>年金の支給開始年齢引き上げに合わせて60歳以上の雇用を確保するため、厚生労働省は、65歳まで希望者全員を再雇用するよう企業に義務づける方針を固めた。2013年度から実施する考えだ。

いや、「方針を固めた」って、とっくに固めてますがな。少なくとも希望者全員65歳までという高齢研報告を出した時には。

問題は、それに経営側が乗ってくれるかどうかであって、まさに労政審で、労務屋さんも参加して議論しているわけで、こういう記事を書いたすぐ後に、

http://www.asahi.com/business/update/1214/TKY201112140159.html(経団連会長、65歳まで雇用義務づけに慎重姿勢)

>経団連の米倉弘昌会長は14日、厚生労働省が65歳まで希望者全員を再雇用するよう企業に義務づける方針を固めたことについて「一律に65歳まで義務化するのではなく、働きたい人が働くような場を作っていく(ことが大事だ)」と慎重姿勢を示した。連合との懇談会後、取材に答えた

という記事を流すんですから。マッチポンプですかね。

この問題、希望者全員自社での再雇用でなければいけないのか、とか、まだ議論されるべき所はあるはずで、この米倉会長の発言も、正確なところは分かりませんが、「働きたい人が働くような場を作っていく」という言葉を熟読すると、いろいろとヒントがあるのかも知れません。

まだ今日の基本問題部会に提示された資料はアップされていませんが、出たらまたその時に。

今朝の記事でむしろ注目すべきは、

>一方、不安定な雇用が問題となっている、契約社員、期間従業員などの有期雇用については期間に上限を設け、契約満了の時期を決めない無期雇用への転換を促す。

という方でしょう。

こちらは、本日の労働条件分科会の資料がさっそくアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001y3ht-att/2r9852000001y3lo.pdf

>有期労働契約は一定年数を超えて反復更新された場合には、労働者からの申出により、期間の定めのない労働契約に転換させる仕組み(転換に際し期間の定めを除く労働条件は従前と同一とする)を導入することについては、雇用の安定や有期労働契約の濫用的利用の抑制という観点から、評価できるのではないか。

と、かなり積極的な、これで行きたい感がにじみ出る文章となっています。入口規制の方は「懸念」「慎重」という言葉が躍っていますが。

あと、「不合理な雇止めへの対応」というところで、東芝柳町と日立メディコを法文化するとした後に、「パナソニックプラズマディスプレイが参考になる」と書かれている趣旨が、いまいちわかりにくいです。

あと、均等関係では、

>「期間の定め」を理由とする差別的な(不利益な)取扱いと認められるものであってはならない

と、かなり踏み込んでいます。

やはり、出口のところが焦点でしょうね。経営側としてはどう出るか。

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非大学型高等教育

9784750334875 拙監訳『世界の若者と雇用』の完成本と一緒に、最近明石書店から出た『世界の教育改革4 OECD教育政策分析』も送られてきました。

http://www.akashi.co.jp/book/b95008.html

これ、非大学型高等教育、教育とICT、学校教育と生涯学習、租税政策と生涯学習、といった雑多なテーマが含まれていますが、このうち、第1章の「非大学型高等教育」は、アカデミックな大学イメージだけで高等教育を語りがちな知識人の偏見を破る意味で、広く読まれるべきと思います。

>今後の大学は高等教育を提供する唯一の機関としての独占的な役割を担うことはない。多くの国では、高等教育レベルの学生の3分の1以上は大学以外の高等教育機関に在籍している。またいくつかの国においてはそれは半数以上になっている。・・・

p32-33の表1.1を見ると、たとえばオランダでは高等教育全体の入学者のうち高等専門学校が62%、フィンランドではポリテクニクが42%といった状況です。

この表では、日本の高等教育入学者のうちご立派なはずの大学が75%を占め、短大が8%、高等専門学校がわずか1%、専修学校が16%となっています。それだけ。

ほほお、日本国の文部科学省がOECDに示している資料では、(まさしく高校卒業後の職業教育訓練を担当する)職業訓練(短期)大学校は、高等教育機関とは見なされていないようですね。変なのもある専修学校は高等教育なのに。まあ、学校教育法に書いてあるかどうかが境目なのでしょうけど。

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生活保護制度に関する国と地方の協議に係る中間とりまとめ

というわけで、本日、生活保護の中間とりまとめが公表されています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001xvq6-att/2r9852000001xvrn.pdf

平松前大阪市長をはじめとして、

>生活保護受給者の急増等への対応に追われる地方自治体からは、生活保護制度の抜本改革に向けた具体的な提案があった

ことから始まったこの協議、中間とりまとめとはいえ、かなりの方向性が打ち出されています。

まず「基本的な考え方」から、ワークフェア的な思想を示している部分を、

>・・・他方、多くの者(特に勤労世代の者)が長期にわたり生活保護に頼って生活することは、本人のみならず社会のあり方として望ましいことではない。そうした者に対して就労による自立を促進するとともに、できる限り生活保護に至らないための仕組みや脱却につながる仕組みを拡充することが重要である。

>また、就労による経済的自立が容易でない高齢者等についても、個人の尊厳という観点からは、より主体的に社会との繋がりをもつことが一つのあり方と考えられ、そうした意味で社会的自立の促進につながる施策を講じる必要がある。

これを前提に、具体的な方向性が打ち出されていきます。まず、本ブログとしても関心の高い「生活保護受給者に対する自立・就労支援及び第2のセーフティネットとの関係整理について」では、さまざまな就労支援策を示した上で、「求職者支援制度と生活保護制度との関係整理」として、こう書かれています。

>今般、求職者支援制度の創設に伴い、一定年齢以下で稼働能力及び一定の就労意欲を有する生活保護受給者であって、職業訓練による就職実現が期待できると判断された者について、合理的理由なく訓練の申込みをしない、又は訓練に出席しない場合には、稼働能力不活用として、保護の実施機関は事前説明や指導指示等所定の手続の上で保護の停廃止を検討することが適当であり、地方自治体の意見も踏まえつつ、国は取扱いの明確化を図る必要がある。

(今後引き続き検討を進めていくべき事項)
○ 国は、求職者支援制度以外の施策も活用するなど、生活保護に至る前の第2のセーフティネット施策を充実させ、第2のセーフティネット施策全体の機能を強化するためにどのような方策が取り得るか、早急に検討を進める必要がある。

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この業界で裁量労働を導入するのには無理がある@『情報労連REPORT』12月号

2011_12 『情報労連REPORT』12月号が届きました。情報労連のHPにも電子ブックでアップされています。

http://www.joho.or.jp/doc/report/

わたくしの連載「労働ニュースここがツボ!」は、今回は「高年齢者雇用を進めると若者の雇用は奪われるのか?」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/johororen1112.html

>前回に引き続き、今月邦訳が刊行されるOECD報告書『世界の若者と雇用』(中島ゆり訳、濱口監訳)の内容を取り上げましょう。日本ではちょうど高齢者雇用に関する議論が進みつつある時期でもあるので、本書でOECDが指摘している「労働のかたまりの誤謬」について解説しておきたいと思います。

 近年、高齢者雇用を進めることが若者の雇用機会を奪うことになるという単純な議論が盛んに行われています。特に、若者の代表と称するある種の評論家たちが、若者の利益を掲げて高齢者雇用を攻撃するという傾向が見られます。たとえば、評論家の城繁幸氏はそのブログで「支給開始年齢と定年年齢のセットの引き上げは、年金だけではなく雇用も若年層から収奪することになる」*1と説いています。

 こういった評論家とは違いますが、日本の経団連が今年7月に公表した「今後の高齢者雇用のあり方について」でも、「現下の経済環境を背景に、ただでさえ新卒者が厳しい就職環境下に置かれ、既卒者への対応も政策的に重要な課題となっている中にあって、高齢者のみが優遇されるような政策が打ち出されれば、就業機会の公平性という観点から極めて問題があると言えよう。その影響は、新卒者のみならず、より広範に若年者雇用の問題に波及しかねず、労働市場全体の新陳代謝を停滞させ、我が国の活力の低下をもたらしかねない」*2と、高齢者が多くの仕事に就くと若者の仕事が少なくなるという議論を展開しています。

 しかしながら、上記報告書のBox2.1.で明白に論証されているように、この考え方はまったく正しくありません。高齢者の就業率と若者の就業率とは正の相関関係にあり、高齢者がたくさん働いている社会では若者もたくさん働いており、働く高齢者が少ない社会では働く若者も少ないのです。そして日本は前者(高齢者も若者もたくさん働く国)の典型です。この説明は、2006年に刊行されたOECDの『世界の高齢化と雇用政策』(濱口桂一郎訳)でもまったく同じようになされていました(同訳書p146)。5年後にも繰り返さなければならないほど、ヨーロッパ諸国におけるこの「誤謬」を支持する意見の根強さが窺われます。

 その原因として上記報告書は、高齢であるほど、学歴が低いほど、そして労働市場の状況が厳しいほど、高齢者が働くために若者に仕事がなくなると信じる傾向があることを指摘しています。日本でも、就職氷河期世代など、学校卒業期に就職が困難であった人々ほど、こういった議論に惹き付けられるという傾向があるようです。

今号では、この連載のほかに、16ページから17ページにかけて、わたくしが出席した「第9回情報サービスフォーラム」の概要が載っています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-5747.html(情報サービス産業はどこへ向かうのか?)

パネルディスカッションでは、わたくしが

>濱口 情報サービス労働は、少数の専門家たちがシステムを開発してきた経緯から、裁量性が高い労働であると認識されてきた。しかし、実際には元請企業から大量の業務が発注される多重下請構造という理由のために、非自律的・非裁量的になっているのではないか。そこでは、勤務間インターバル規制といった歯止めも必要となるのではないか。

というようなことを提起したところ、

情報サービス産業協会副会長の岡本晋さんが、

>岡本 この業界で裁量労働を導入するのには無理がある。納期が決められており、ボリュームのある業務をこなす中では、自由に働いて下さいというやり方はできない

と、極めて率直に胸の内を語られたのが印象的でした。

先月紹介したこの判決とも考え合わせると、いろいろと論じるべきことがありそうです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-9c85.html(京都某IT会社事件の判決文)

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ダメな雇用創出が震災復興を妨げる?@『POSSE』13号

Hyoshi13 『POSSE』13号が届きました。いつもありがとうございます。

http://www.npoposse.jp/magazine/no13.html

さて、表紙で一番でかい文字になっているのは今をときめく大野更紗さんと古市憲寿さんの対談ですが、まあ、本田由紀さんの怒りを買ったらしい古市さんの軽さが心地よいという人も結構いるような・・・。

そこらあたりは、別に評論する人もいるでしょうから、ここではやはり、本田由紀+永松伸吾+木下武男+今野晴貴による標記討論を。

「ダメな雇用創出が震災復興を妨げる?」

規制緩和、派遣会社、住民自治……雇用創出の課題とは?
戦後雇用政策のタブー「失業対策事業」の再生に迫る!

談会「キャッシュ・フォー・ワークが日本の失業を救う?
被災者支援は失業者対策になるのか」

永松伸吾(関西大学准教授)×本田由紀(東京大学大学院教授)
×木下武男(昭和女子大学特任教授)×今野晴貴(NPO法人POSSE代表)

この討論記録、内容もなかなかスリリングですが、それ以上にわたくしはびっくりしましたよ。だって、その場にいないわたくしを持ち出して、あれこれ論じられているのですから。

>本田:みなさんは日本の過去において存在した失対事業についてはどう評価されていますか?

今野:濱口桂一郎さんは過去の失対事業について、「労働行政にとりついた夢魔」とまで酷評されていますね。

木下:濱口さんは、必ずしも失対事業はなくてもよいという立場ではないと推測しますが。

永松:固有名詞としての「失対事業」は失敗だったけど、理念としてはありうると。

より正確に言えば、この後木下さんが言われているように、

>文字通り緊急で一時的には、失業者を公的な就労につなげていけるような失業対策事業はあるべき

だが、

>緊急で一時的な措置という趣旨から外れて、失業者の滞留、定職化、既得権化していったことは否めない

というのが適切な評価でしょう。

失対事業については、ここでも引用されている『季刊労働法』233号に書いた「公的雇用創出事業の80年」で、永松さんが提唱するCFWに触れつつ、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/cfw.html

>この議論が興味深いのは、これが雇用対策の歴史では戦前から戦後まで行われた経験のある失業対策事業と通じるものでありながら、それとはいったん切れた知的世界から提唱されており、それゆえに労働専門家が陥りがちな失業対策事業への偏見からも自由に議論が展開されているというところです

と述べたことがあります。

本誌にはこのほか、

政権交代から2年…雇用創出と職業訓練は
震災後にどのようなビジョンを描けるのか

「アクティベーションの困難と震災後の就労支援モデル」
宮本太郎(北海道大学大学院教授)


誠実な取り組みが悪用される? 曖昧にされる労働者性を問う

「キャッシュ・フォー・ワークを労働法から考える」
鴨田哲郎(弁護士)


官製ワーキングプアではなく、リビングウェィジをつくる自治体へ

「被災地に公契約条例の復興特区を!」
小畑精武(自治労公共サービス民間労組評議会アドバイザー)


震災復興で漁業者にはどのような雇用対策が必要なのか

「漁業再建と被災者雇用をどう考えるか」
加瀬和俊(東京大学大学院教授)


被災者と企業の「ミスマッチ」論?浮かび上がる「地方都市」の労働市場のゆくえ
「震災は「派遣村」を繰り返すのか 仙台市ハローワーク前調査報告」
今野晴貴(NPO法人POSSE代表)


持続的な被災者支援と事業運営を
仙台市のPOSSEスタッフからの報告

「非日常から日常へ 被災地での実践的取り組み」
渡辺寛人(NPO法人POSSE事務局)


復興事業で増えた野宿者、「コールセンター」の罠、
緊急雇用創出のその後…

「失業を解決しない?震災後の雇用創出」
本誌編集部


といった記事もあって、大変読み応えがあります。

個人的には、宮本太郎さんが

>では、その後の政権交代によって、アクティベーション政策は強まったと言えるか。私は率直に言って、停滞したと考えています。・・・実際は私の言う「小沢型ベーシックインカム」が中心になってしまいました。

とまで、ある時期までの民主党政権を否定的に総括しているのが印象的でした。

上記討論でも、永松さんが田中秀臣氏の「働いた人だけお金を与えるのはけちくさい」というCFW批判に対して、

>働いてそのお金をもらうということの満足度と、ボランティアで働く満足度はどこか違うと思います。こうしたベーシックインカムで生活を保障しながらボランティアで復興するという案についてはやや違和感があるのですが、あまり整理できていません

と述べるなど、BI的政策との距離感が、さまざまな領域に顔を出してきているという感じですね。

考えてみれば、『POSSE』が論壇時評に取り上げられたのも、BIをめぐる対立軸をくっきりと出した特集だったわけで、本誌の永遠のテーマなのかも知れません。

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『弱者99%社会』 (幻冬舎新書)

アマゾンに新刊予告が載ったようですので、こちらでも宣伝。

http://www.amazon.co.jp/%E5%BC%B1%E8%80%8599%EF%BC%85%E7%A4%BE%E4%BC%9A-%E5%B9%BB%E5%86%AC%E8%88%8E%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%AE%AE%E6%9C%AC%E5%A4%AA%E9%83%8E-%EF%BC%A2%EF%BC%B3%E3%83%95%E3%82%B8%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/dp/4344982436

宮本太郎+BSフジプライムニュース (編集) 『弱者99%社会』 (幻冬舎新書)

発売日: 2011/12/22

>迫りくる格差限界社会!

BSフジ「プライムニュース」で大反響 。「“安心社会・日本”への道」完全書籍化

生活保護者数205万人、完全失業者数334万人……これらは「格差限界社会」の序章に過ぎず、もはや一刻の猶予も許されない。社会保障改革へ、12人の識者と宮本太郎による緊急提言

ということで、本ブログでも紹介した昨年のちょうど今頃のBSフジの番組の内容を新書化したものです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/bs-e6ef.html(BSフジプライムニュース)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/bs-9821.html(BSフジプライムニュースに出てきました)

番組タイトルと同じ『安心社会・日本への道』というタイトルになると聞いていたのですが、もう少し客引き的に『弱者99%社会』というタイトルになったようですね。

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生活保護見直しへ…資産調査・求職支援の厳格化

読売の記事ですが、いよいよ生活保護が求職者支援制度と連動する方向になりそうです。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111209-OYT1T01280.htm?from=tw

>生活保護制度の見直し作業を進めている厚生労働省は9日、保護申請者の資産調査の強化や、求職者支援制度の運用の厳格化などを柱とする見直し案を固めた。

 地方との協議で大筋合意しており、12日に公表される中間とりまとめ案に盛り込まれる。見直し案では、申請者の資産調査で、銀行などの金融機関本店に一括して預貯金残額などを照会できるよう制度の整備を進め、不正の芽を摘む。これまでは、本人申告などに基づき各福祉事務所が地域の銀行支店などに問い合わせていたが、調査の限界が指摘されていた。

 今年10月に本格スタートした「求職者支援制度」は、月10万円の給付金を受けながら、パソコンなどの職業訓練を受講する仕組みで、生活保護との併用も可能。見直し案では、受給者が理由なく訓練を中止し、福祉事務所の指導でも復帰しない場合は、保護の停止や廃止を可能にする。これまでは明確な規定がなかった

ある意味ではアクティベーション政策の具現化と言えますが、職業訓練政策側から見れば、やる気のない訓練生が生活保護を受給したいがためにますますやめずにしがみつくということでもあるわけで、なかなかトリレンマの解決にはならなさそうです。

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OECD『世界の若者と雇用』出来ました!

Oecd
ということで、本日明石書店から、わたくしが監訳したOECD編著、中島ゆり訳『世界の若者と雇用 学校から職業への移行を支援する』が届きました。

奥付けの発行日は12月19日ですが、書店には来週初め頃から並ぶことと思われます。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/oecdsekaimokuji.html

今回は、監訳者解説の最後の一節を。

>前訳書の原著が刊行されたのは日本が一気に不況の波に呑まれていった2008年12月であり、訳書が刊行されたのはそれからほぼ1年経ち、なお雇用状況の厳しいさなかの2010年1月であった。本書の原著が刊行されたのはそれからほぼ1年経過し、日本や世界の経済情勢も落ち着きを見せてきた2010年12月であり、そしてそれからほぼ1年経った今、日本は今年3月に起こった東日本大震災と福島原発事故の甚大な影響下にあり、世界はギリシャに始まった信用不安がどこまで拡大するか怯えている状況下で、本訳書を送りだそうとしている。この3年間の日本と世界の変動の大きさを考えると、その中で振り回されてきた若者たちの運命の過酷さに胸が詰まる思いがする。

 しかしそうであればこそ、若者の雇用問題は冷静で根拠に基づいた議論で進められなければならない。日本ではとかく政策論が感情論に支配されてしまう傾向にあるが、そのことの最大の被害者は、まっとうな政策により救われることができたはずの若者自身である。本書は、先進諸国共通のシンクタンクであるOECDの労働経済専門家たちが、その総力を挙げて取りまとめた報告書であり、若者の雇用問題について冷静な議論をするための素材が満載されている。

 是非、前訳書とともに、多くの研究者や実務家、とりわけ現場で若者の雇用問題に必死に取り組んでいる人々に、そして政治家や政策関係者、とりわけジャーナリストの方々に、本訳書を熟読していただき、これからの日本の若者雇用政策のあるべき方向について真剣に考えていただきたいと念じている。

   2011年12月
                                                            濱口桂一郎

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奥様、月10万円もらってネイルアート教室に通いませんか  凸撃ルポ付き 社会主義も呆れる民主党政権の保障費バラマキ@『正論』

Hyou1201最近は「りふれは」機関誌としても有名になってきた『正論』ですが、やはりこういうちょいとひねこびたサヨク批判がよく合ってます。

http://www.sankei.co.jp/seiron/wnews/1112/mokji.html

『正論』1月号が「増税と反日マネー」という特集を組んでいまして、冒頭お約束通り高橋洋一氏が登場していますが、今号の読み物はなんといっても中宮崇氏の「奥様、月10万円もらってネイルアート教室に通いませんか  凸撃ルポ付き 社会主義も呆れる民主党政権の保障費バラマキ」でしょう。

これは、はっきり言って不愉快な文章ですが、しかしある面の真実を(ひねこびた形で)付いていることも事実であって、ここで書かれていることに向かい合うことが労働関係者には必要であることもまた事実だと思われます。

この文章、いうまでもなく基金訓練とそれを引き継いだ求職者支援制度を批判しているのですが、それを書いているこの中宮崇という人、自らいうところでは、

>私は平成23年4月、三重県松阪市で、国が民間企業に委託して行う「職業訓練校」の講師を務めた。

その会社のひどさはこの文章に書かれているので立ち読みでもしていただければと思いますが、自分もそれに荷担していたわけですよね。

で、10月7日放送されたテレ朝の「モーニングバード」で、この制度が褒めちぎられていたというのですが、実はその番組にわたくしもちょっと映っていたはずです。朝の番組なので見ていないのですが、全日にテレビカメラの前で喋った映像が流れたはずですが、その中で、まさに中宮氏が鬼の首を取ったように批判しているネイルアート訓練の話題も取り上げて(というか、インタビュアが持ち出したのですが)、もともと職業訓練軽視政策のために公的職業訓練が縮小の一途をたどっていたところへ、突然訓練を受けることを条件に生活費を支給するという制度が飛び込んできたために、大あわてで訓練施設を探して制度を始めたために、ネイルアートみたいな変なのも入ってしまった、しかし、求職者支援制度の制度設計の中でそういう問題点も指摘され、訓練施設の側も訓練生の側も、かなり厳しく審査するような制度になったはずです、というようなことを喋ったのです。まあ、それがそのまま流れたのかどうかはよく分かりませんが。

このあたり、最近いくつかのメディアに「求職者支援制度のトリレンマ」ということで書いたりしているので、本ブログの読者は既にご存じでしょうけど、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo110925.html(求職者支援制度のトリレンマ(『労基旬報』2011年9月25日号))

そういうインチキ訓練施設で講師をしていた中宮氏のような方に、

>・・・ついには、就職支援をうたい、低所得層の主婦が毎月10万円をもらいながら「ネイルアート教室」に通えるという制度まで作り上げた。ここに趣味あるいは10万円ほしさだけで通われたらたまったものではない。・・・さては主婦の爪を飾り立て、水商売か風俗にでも沈めて稼がす魂胆か・・・と妄想したくもなるハチャメチャぶりである。

とまでいわれるのも哀しいものがありますが、この文章から窺い知れる中宮氏の精神の気高さは別にして、「10万円ほしさだけで通われたらたまったものではない」という彼の言葉は、まさにこの制度の急所を指していることも確かなのですね。

わたくしが上記小文で述べたように、

>もちろん、アクティベーション戦略においては、職業能力の向上が再就職の促進につながり、生活保障から脱却できることになるはずであるが、制度には常にその裏を掻こうとする者が現れる。訓練を受けている間は毎月10万円がもらえるのなら、金のために受けたくもない訓練を受ける者が出てくる。そういう者が受講者の多くを占めるようになれば、そこに起こるのは一種の「学級崩壊」である。既に基金訓練においてその弊害は指摘されていた。

のであり、

>このモラルハザードを防ごうとすれば、訓練への入口でその意欲を厳しく判定する必要がある。それは裏返して言えば、本制度のセーフティネットとしての役割を限定するということでもある

というわけなのです。

このあとは、さらに腕によりをかけた(?)相当にあくどい生活保護批判です。これまた、読めば不愉快になること間違いなしの文章ではありますが、それだからこそ、きちんと向かい合う必要があることも確かでしょう。

おそらく、『正論』1月号で、一番不愉快だけれども、一番読まれる値打ちのある文章かも知れません。

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こむずかしい。。

「社労士受験に挑戦中のサラリーマン・兼2児のパパ」の方の拙著『日本の雇用と労働法』への書評です。タイトルは「こむずかしい。。」

http://chunkpar108.jugem.jp/?eid=164

>この本は
日本独自の雇用形態と労務管理が
歴史的にどう形成されていったかについて
論じているのですが、

23年度社労士試験の選択式労一は
この本に書かれていることが
ほぼそのまま出題されています。

・・・それはともかく、
あの悪名高き労一の「ネタ元?」ということで、
twitter上で試験直後から話題になった1冊

なんだか、社労士受験生の間では、この話題で持ちきりのようですね。

>まだ途中ですが
社労士になる、なりたい、という人は
読んでいてまったく損のない本だと思います。

法令の勉強も大事ですが、
日本の労働問題を理解しておくことは
労務コンサル上重要ですし、
こういった「土台」を築くことで
労基法その他労働法制を理解するうえでも
きっと役に立つのではないでしょうか。

といっていただけて嬉しいです。

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労働者派遣法改正案修正案

昨日、衆議院で可決された労働者派遣法改正案の自民・公明・民主3党による修正案が、衆議院のHPにアップされています。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/syuuseian/9_52A6.htm

かぎかぎをかぎかぎにかいめる・・・という法制局感覚全開の文なので、これを一瞥しただけでは、何がどうなっているのかさっぱり分からないと思いますが、

>労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
第一条中労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第二十八条の改正規定を削る。
第一条のうち労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第三十五条の二の次に二条を加える改正規定のうち第三十五条の三第一項中「二月」を「三十日」に、「以外の業務については」を「について労働者派遣をする場合又は雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合その他の場合で政令で定める場合を除き」に改め、第三十五条の四中「第四十条の九第一項」を「第四十条の六第一項」に改める。
第一条のうち労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第四十条の五の次に四条を加える改正規定中「四条を」を「一条を」に改め、第四十条の六から第四十条の八までを削り、第四十条の九を第四十条の六とする。
第一条のうち労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第四十九条の二第一項の改正規定、同条第二項を削る改正規定、同条第三項の改正規定及び同項を同条第二項とする改正規定中「第四十条の九第一項」を「第四十条の六第一項」に、「改め、同条第二項を削り、同条第三項中「前二項」を「前項」に改め、同項を同条第二項とする」を「改める」に改める。
第二条を次のように改める。
(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の一部改正)
第二条 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の一部を次のように改正する。
第二十八条中「第三十一条」の下に「及び第四十条の六第一項第四号」を加える。
第三十五条の四中「第四十条の六第一項」を「第四十条の九第一項」に改める。
第四十条の六を第四十条の九とし、第四十条の五の次に次の三条を加える。
第四十条の六 労働者派遣の役務の提供を受ける者(国(特定独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第二項に規定する特定独立行政法人をいう。)を含む。次条において同じ。)及び地方公共団体(特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。)を含む。次条において同じ。)の機関を除く。以下この条において同じ。)が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、その行つた行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ、知らなかつたことにつき過失がなかつたときは、この限りでない。
一 第四条第三項の規定に違反して派遣労働者を同条第一項各号のいずれかに該当する業務に従事させること。
二 第二十四条の二の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
三 第四十条の二第一項の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
四 この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第二十六条第一項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。
2 前項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者は、当該労働契約の申込みに係る同項に規定する行為が終了した日から一年を経過する日までの間は、当該申込みを撤回することができない。
3 第一項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者が、当該申込みに対して前項に規定する期間内に承諾する旨又は承諾しない旨の意思表示を受けなかつたときは、当該申込みは、その効力を失う。
4 第一項の規定により申し込まれたものとみなされた労働契約に係る派遣労働者に係る労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から求めがあつた場合においては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、速やかに、同項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた時点における当該派遣労働者に係る労働条件の内容を通知しなければならない。
第四十条の七 労働者派遣の役務の提供を受ける者が国又は地方公共団体の機関である場合であつて、前条第一項各号のいずれかに該当する行為を行つた場合(同項ただし書に規定する場合を除く。)においては、当該行為が終了した日から一年を経過する日までの間に、当該労働者派遣に係る派遣労働者が、当該国又は地方公共団体の機関において当該労働者派遣に係る業務と同一の業務に従事することを求めるときは、当該国又は地方公共団体の機関は、同項の規定の趣旨を踏まえ、当該派遣労働者の雇用の安定を図る観点から、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号。裁判所職員臨時措置法(昭和二十六年法律第二百九十九号)において準用する場合を含む。)、国会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)又は地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)その他関係法令の規定に基づく採用その他の適切な措置を講じなければならない。
2 前項に規定する求めを行つた派遣労働者に係る労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣に係る国又は地方公共団体の機関から求めがあつた場合においては、当該国又は地方公共団体の機関に対し、速やかに、当該国又は地方公共団体の機関が前条第一項各号のいずれかに該当する行為を行つた時点における当該派遣労働者に係る労働条件の内容を通知しなければならない。
第四十条の八 厚生労働大臣は、労働者派遣の役務の提供を受ける者又は派遣労働者からの求めに応じて、労働者派遣の役務の提供を受ける者の行為が、第四十条の六第一項各号のいずれかに該当するかどうかについて必要な助言をすることができる。
2 厚生労働大臣は、第四十条の六第一項の規定により申し込まれたものとみなされた労働契約に係る派遣労働者が当該申込みを承諾した場合において、同項の規定により当該労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者が当該派遣労働者を就労させない場合には、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、当該派遣労働者の就労に関し必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
3 厚生労働大臣は、前項の規定により、当該派遣労働者を就労させるべき旨の勧告をした場合において、その勧告を受けた第四十条の六第一項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
第四十九条の二第一項中「第四十条の六第一項」を「第四十条の九第一項」に改め、同条第二項を削り、同条第三項中「前二項」を「前項」に改め、同項を同条第二項とする。
附則第一条第二号中「公布の日」を「この法律の施行の日(以下「施行日」という。)」に、「超えない範囲内において政令で定める」を「経過した」に改める。
附則第三条に次の一項を加える。
3 政府は、この法律の施行後、この法律による改正後の労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の規定の施行の状況等を勘案し、常時雇用する労働者でない者についての労働者派遣の在り方、物の製造の業務についての労働者派遣の在り方及び特定労働者派遣事業(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第二条第五号に規定する特定労働者派遣事業をいう。)の在り方について、速やかに検討を行うものとする。
附則第五条中「この法律の施行の日(以下「施行日」という。)」を「施行日」に改める。
附則第六条中「第四十条の九」を「第四十条の六」に改める。
附則第十条のうち建設労働者の雇用の改善等に関する法律第四十四条の改正規定中「、第四十条の九」を「、第四十条の六」に改める。
附則第十条のうち建設労働者の雇用の改善等に関する法律第四十四条の表第三十四条第一項第二号及び第三十九条の項の改正規定及び同項の次に次のように加える改正規定のうち「中「及び第三十九条」を「、第三十九条及び第四十条の六第一項第四号」に改め、同項」を削り、第三十五条の三第一項の項中「二月」を「三十日」に、「以外の業務については」を「について労働者派遣をする場合又は雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合その他の場合で政令で定める場合を除き」に改め、第四十条の六第一項第一号の項及び第四十条の六第一項第四号の項を削る。
附則第十条のうち建設労働者の雇用の改善等に関する法律第四十四条の表第四十八条第一項の項の次に次のように加える改正規定中「第四十条の九第一項」を「第四十条の六第一項」に改める。
附則第十一条を次のように改める。
第十一条 建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を次のように改正する。
第四十四条中「、第四十条の六」を「、第四十条の九」に改め、同条の表第三十四条第一項第二号及び第三十九条の項中「及び第三十九条」を「、第三十九条及び第四十条の六第一項第四号」に改め、同表第三十六条の項の次に次のように加える。
第四十条の六 同条第一項各号            同条第一項第一号又は第三号
第一項第一号
第四十条の六 又は次節の規定により適用される法律の 若しくは次節の規定により適用される法
第一項第四号 規定                 律の規定又は建設労働法(第六章(第四
                          十四条を除く。)の規定に限る。)の規
                          定
第四十四条の表第四十九条の二第一項の項中「第四十条の六第一項」を「第四十条の九第一項」に改める。
附則第十二条のうち港湾労働法第二十三条の改正規定及び同条の表第二十五条の項の改正規定中「、第四十条の九」を「、第四十条の六」に改め、同表第二十八条、第三十一条、第四十九条第一項及び第五十五条から第五十七条までの項の次に次のように加える改正規定中「二月」を「三十日」に、「以外の業務については」を「について労働者派遣をする場合又は雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合その他の場合で政令で定める場合を除き」に改める。
附則第十二条中港湾労働法第二十三条の表第三十六条第六号の項の次に次のように加える改正規定を削る。
附則第十二条のうち港湾労働法第二十三条の表第四十一条第一号イの項の改正規定及び同表第四十八条第一項の項の次に次のように加える改正規定のうち「第四十一条第一号イの項中「第四十一条第一号イ」を「第四十条の六第一項第四号及び第四十一条第一号イ」に改め、同表」を削り、第四十九条の二第一項の項中「第四十条の九第一項」を「第四十条の六第一項」に改める。
附則第十三条を次のように改める。
第十三条 港湾労働法の一部を次のように改正する。
第二十三条中「、第四十条の六」を「、第四十条の九」に改め、同条の表第三十六条第六号の項の次に次のように加える。
第四十条の六 同条第一項各号            同条第一項第一号(同号に規定する港湾
第一項第一号                    運送の業務に係る部分を除く。)、第二
                          号又は第三号
第二十三条の表第四十一条第一号イの項中「第四十一条第一号イ」を「第四十条の六第一項第四号及び第四十一条第一号イ」に改め、同表第四十九条の二第一項の項中「第四十条の六第一項」を「第四十条の九第一項」に改める。
附則第十四条に次の一号を加える。
十五 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成二十三年法律第七十九号)第二条第五項

これを解読するためには、まず昨年4月に政府が提出した派遣法改正案の、本文と新旧対照表を照らし合わせながら読まなくてはいけません。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/174_09c.pdf(本文)

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/174_09d.pdf(新旧対照表)

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『ディーセント・ワークと新福祉国家構想』旬報社

12395 伍賀一道+西谷 敏+鷲見賢一郎+後藤道夫+雇用のあり方研究会編『ディーセント・ワークと新福祉国家構想』(旬報社)をお送りいただきました。

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/725?osCsid=b15b7e0c486c75f23bb2c4ddaa2503f2

>雇用の劣化と貧困を放置しては福祉国家の実現はない。
安定した社会保障制度がなくては、ディーセント・ワークの実現は困難……
大震災からの復興をめざす今こそ、ディーセント・ワークの実現と福祉国家政策の確立を!

編者として名を連ねている方々のほかに、こういう方々がメンバーとして書かれているようです。

今村幸次郎(自由法曹団元事務局長)
伍賀一道(金沢大学)
木下秀雄(大阪市立大学)
後藤道夫(都留文科大学)
鷲見賢一郎(自由法曹団幹事長)
清山 玲(茨城大学)
西谷 敏(近畿大学)
根本 到(大阪市立大学)
藤田 実(桜美林大学)
松丸和夫(中央大学)
萬井隆令(龍谷大学)
脇田 滋(龍谷大学)
渡辺 治(一橋大学)

内容(目次)は下に引用しておきますが、全体を読んだ感想としては、個々の部分ごとの議論としては大変共感できるところがあるとともに、その組み合わせ方の全体戦略としてはいくつもの違和感を感じるというところです。

いや、全体戦略としての、労働のあり方をより「ディーセント」なものにしていくことと、マクロ社会的な福祉国家構想を組み合わせて考えていくという方向性は、むしろ大変共感するところなのですが、その「ディーセントワーク」の中身について、雇用の安定と人間らしい働き方をどうバランスさせていくのか、という視点が弱いように思うのです。

日本の正社員の長時間労働がその雇用の安定の対価として労働者によって受容されてきたことを考えると、どの程度の義務とどの程度の安定をバランスさせるかという観点がないと、リアルな解決策にならないのではないかということです。仕事がなくても雇用は守れ、しかし仕事は人間らしく、というのをすべての労働者に保障することができるのか、できないとすれば、公平さをものごとの基準とするのであれば、その間のバランスが取れるようにしていくことが重要でしょう。もちろん、現在はそのバランスが崩れて、義務が高いのに不安定という状況もあるわけですが。

その意味で、とりわけ「多様な正社員」構想を「解雇規制の緩和された第二正社員の創設を意図している」と批判している点には、やはり違和感を感じます。私は、本書でも言われているようにまさに「解雇規制は人格的利益を保障する」ものだと思いますが、それは逆に言えば、どういう解雇規制であれば、使用者の不当な要求からの保護具たり得るのか、という観点からの検討を要請するようにも思われます。

あと、マクロ社会的な福祉国家構想としては、本書では(部分的にコメントされていますが)正面から取り上げられていない住宅や教育、医療といった個別分野ごとの現物給付の側面がやはり重要で、そこが貧弱であるために、生活保護に矛盾が集中してしまう面もあるのではないか、と思っていて、そこは本書への違和感というのとは違うのですが、ただ生活保護を出せ!というだけでは、今盛り上がりつつあるように見えるそれへの社会的敵意(「怠け者を退治しろ!」)には多分立ち向かえないと思います。ある種のワークフェアは不可避であって、むしろそれを基礎的な社会サービスの給付がきちんと補完する仕組みが必要なのでしょう。

序章 新自由主義「構造改革」を転換しディーセント・ワークの実現を
一 東日本大震災が提起したもの
二 本書の基本的視点
1 ディーセント・ワークを必要とする雇用の現状と課題
2 福祉国家的施策を必要とする実態と課題
3 「新しい福祉国家」について
第1章 雇用の劣化と働き方の現状
一 雇用と働き方・働かせ方を把握する視点
二 雇用の劣化、働き方の貧困
1 非正規雇用・不安定就業の肥大化 
2 正規雇用の働き方の貧困 
3 正規雇用と不安定就業の融合 
三 半失業、顕在的失業、潜在的失業の相互関係
1 半失業―雇用と失業の中間形態 
2 顕在的失業者 
3 潜在的失業者 
四 経済・社会・産業の特徴と雇用・失業・半失業
1 グローバル競争下の輸出主導型経済構造、大企業の国際競争力強化支援、労働法制の規制緩和 
2 労働力とエネルギー浪費の「二四時間型社会」 
3 公共的社会サービス(介護、福祉、保育)の貧困、市場化 
4 福祉国家型の産業・就業構造と日本との対比 
第2章  ディーセント・ワーク実現の課題
一 安定した良質な雇用の実現
1 はじめに 
2 解雇規制の意義と安定的雇用の要請 
3 有期雇用の制限 
4 間接雇用(労働者派遣) 
5 同一価値労働・同一賃金、最低賃金、ジェンダー平等 
6 人間らしい働き方 
7 労働者性と個人事業主 
8 今後の政策課題―とくに非正規労働問題について 
二 日本における失業保障制度の現状と課題
1 雇用保険―カバー率は改善されたか 
2 求職者支援法―「第二のセーフティネット」といえるか 
3 生活保護―「最後のセーフティネット」として機能しているか 
4 さいごに 
三 あるべき労働市場のあり方―雇用創出・公的就労事業の再建・職業訓練
1 雇用をつくる 
2 労働市場の改革はディーセント・ワークを基礎に 
3 第二の労働市場と雇用のセーフティネット=「公的就労事業」の再興を 
第3章 福祉国家型経済産業システムの展望
一 震災前の日本経済
1 輸出主導型経済 
2 賃金抑制によるデフレの深刻化 
3 持続的な円高 
4 日本経済の化石燃料と原発依存 
二 震災後の日本経済と通商国家論
1 通商国家論での日本経済の再構築は何をもたらすか 
2 通商国家論では被災地域の産業は衰退する 
3 選択と集中による地域開発の危険性 
三 低炭素・福祉国家型経済産業システムによる日本経済の再構築
1 低炭素・福祉国家型経済産業システムとは何か 
2 低炭素・福祉国家型の経済産業システムへの展望 
第4章 健全な労働市場と福祉国家構想
一 ディーセント・ワークの条件の不足と日本型雇用
1 失業時保障の不足と雇用基準・労働基準の不足の相乗関係 
2 両者の不足の日本的背景 
二 日本型雇用に対応する小さな社会保障と勤労者への生活保障の極度の脆弱□
1 小さな社会保障・公租公課による貧困 
2 日本型雇用と開発主義国家による代替 
3 社会保障における公的責任のいっそうの縮小─構造改革 
三 福祉国家型社会体制への転換の必要とディーセント・ワーク
1 失業時保障の制度的整備 
2 最低賃金を最低生活費の数割増しに 
3 社会保険料代替拠出の必要と最低生活費非課税原則 
4 失業扶助における所得制限など受給要件の新たな考え方 
5 最低保障年金制度の必要 
6 児童手当と最低生活保障における子ども分 
7 基礎的社会サービスの現物給付と住宅補助がささえるべき失業扶助 
四 福祉国家型システム転換にかかわる諸論点
1 大きな福祉国家財政 
2 福祉国家型施策の本格的展開と新たな経済循環 
3 脱原発と福祉国家構想 
補論 裁判の現状と労働者・国民の権利
一 非正規労働者の裁判闘争の現状と課題
1 派遣切り裁判の現状と課題 
2 期間切り裁判の現状と課題 
3 個人請負労働者の労働者性 
二 労働者の諸権利をめぐる裁判闘争の現状と課題
1 解雇等 
2 男女差別 
3 労働時間 
4 過労死・過労自殺・メンタルヘルス 
5 セクハラ・パワハラ 
6 労働者の自由と権利 
7 高齢者雇用

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冷静ながらも血の通った感触のある、楽しい読本

引き続き、アマゾンカスタマーレビューで、拙著『日本の雇用と労働法』への書評です。筆者は「これでいいのだ」さん。

http://www.amazon.co.jp/review/RIWEVI4OJHB9N/ref=cm_cr_pr_perm?ie=UTF8&ASIN=4532112486&nodeID=&tag=&linkCode=

>タイトル通り、近代日本の雇用の変遷と、それをフォローかつリードしてきた労働法制についての、大変に分かりやすい入門書。法政大学非常勤講師としての授業「雇用と法」(2011年度後期)のテキストとして書かれたものらしく、授業を聴いているだろう法大生は幸福至極ではないか、と思わされた。

 評者が着目した本書の論点はおおよそ三つ。一つは、日本の雇用は共同体に入っていくメンバーシップ型で、欧米式の契約ジョブ型とは言い難く、現行の雇用制度もその視角からみていくと理解しやすいように思えたこと。二つは、明治期に始まる近代的な雇用体制とそれを牽引・誘導する、労働者保護のための労働法制は、戦前・戦中・戦後を通じてほとんど分断されておらず、特に戦後労働運動には、「産業報国会」の空気が色濃くにじみ出ていること。三つは、近年の非正規雇用をめぐる論争にまだ「落としどころ」はみえておらず、しかしそのためのタタキ台となりそうな着眼点が多数示されていることだ。

 ともあれ、日本の雇用と労働法に向けた著者の洞察と蓄積には目を見張るものがありそうだ。余計なことを言えば、日経文庫は無難な建前だけ、中立的な概略案内だけ、逐条的な法律解釈だけのカサカサした感触の本が少なくないように思うが、本書はそんな中にあって、冷静ながらも血の通った感触のある、楽しい読本となった。

「冷静ながらも血の通った感触のある、楽しい読本」という評語は、まさにわたくしがそうありたいと願っている姿であるだけに、大変嬉しいものです。

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日々派遣から日々紹介へ

小松太郎さんという方が、ちょっとエントリ違いではありますが、本日審議されているらしい派遣法の関係で、こういうコメントを書き込まれました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-8e32.html#comment-87037797

>先生のご意見を伺いたく、この場をお借りします。
「派遣法改正案」ですが、本日衆院厚生労働委員会にて審議に入り、みなさんからの情報では、各党30分程度の質疑で採決、成立の模様とのことです。この法律が施行されれば、確かに日雇派遣を悪用した派遣元もありました。しかし、今まで日雇派遣で生活してきた人たちが生活できなくなる危険があるのにたった一日の形だけの審議でこの法律を通すのであれば内容の問題以上に、委員会の在り方、議会制民主主義の根幹に触れる問題と思います。あれだけ反対をしていた社民党も出席しているとか、このような民主主義の基本にもとるような行為は許すべきではありません。弱者保護は正規社員の保護なのでしょうか?ごめんなさい。あらぬ方へ行ってしまいました。
日雇派遣でしか働けない人の存在を知りながら、ハローワークなどの十分な手が差し延べられていないことをしりながら採決しようとする民主もそうですが、野党にも問題大ありと思うのです。ご意見をお聞かせください。宜しくお願い申し上げます。

派遣法全体については、今までもいろいろな形で論じてきていますが、小松さんの言われる日雇派遣については、もともとの自公政権時代の改正案でも原則禁止となっていたこともあり、自公民の修正案でもそのままになっているようです。

日雇派遣自体についてのわたくしの見解は、これもかつて書いたり喋ったりしてきたことがありますが、ここでは、日雇派遣の原則禁止を控えて、厚労省がやろうとしている対策について、ピョンヤンじゃない方の最新の『労働新聞』12月12日号の1面の記事を紹介しておきたいと思います。

>厚生労働省は、労働者派遣法の改正を前に、日々派遣を行っている労働者派遣事業主の職業紹介事業への転換が予想されるとして、事業転換の円滑化支援や問題点の把握などに乗り出した。実際に転換済の20-30社程度を対象に調査・ヒアリングを実施すると共に、学識経験者や業界関係者からなる委員会を設置して、広く活用できる好事例集などを作成する予定である。・・・

実を言えば、拙著『新しい労働社会』で述べたように、日雇型派遣事業と日雇型紹介事業と、さらに組合労供事業というのは、法形式は異なりますが、経済的な意味でのビジネスモデルはほぼ同じものであって、日雇派遣を禁止しても日雇紹介で拾うのであれば、実質的な弊害はないという言い方もできます。

>(コラム)日雇い派遣事業は本当にいけないのか?

>なお、上記法案は日雇い派遣事業の原則禁止を定めていますが、政府は一方で物流やイベント設営などこれまで日雇い派遣事業を活用してきた分野には日雇い職業紹介事業で対応するという意向を示しています。これは、法的構成を抜きにしていえば、日雇い派遣事業に派遣先の使用者責任とマージン規制を導入してそのまま認めることと社会的実態としてはほとんど同じです。(拙著p82)

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欲張りな本です

アマゾンカスタマーレビューに、拙著『日本の雇用と労働法』の3つめの書評がアップされました。

http://www.amazon.co.jp/review/R37XYNNIAH630O/ref=cm_cr_dp_perm?ie=UTF8&ASIN=4532112486&nodeID=465392&tag=&linkCode=

評者は「ats-t」さん。

>本書は、著者が大学で講義を行うための教科書として書かれたものである。
教科書として書かれているので、法解釈などいわゆる教科書的な説明が 繰り返されていると思われがちだが本書はそうではない。

著者が冒頭で「欲張りな本です」というように「日本の雇用システム」と 「日本の労働法制」が同時に理解でき、また、両者の関係についても学ぶことができる。

歴史的な背景、企業の運用、そして、多くの判例が用いられているので、 現実社会で起きる労働問題と、その問題に対して労働法制がどのように 成り立っているのかが(変化してきたのかが)わかりやすい。

著者の大学の講義だけで使われるにはもったいない。
大学生のキャリア教育のテキストとして広く使われるべき本だと感じた。

「大学の講義だけで使われるにはもったいない」というお言葉はとてもありがたいです。

「大学生のキャリア教育のテキストとして広く使われるべき本」という評価もうれしいですね。

そういえば、前の『新しい労働社会』についても、ついった上で

http://twitter.com/#!/Y_Tochikawa/status/143726596157747200

>就活に入った人達には濱口桂一郎「新しい労働社会」(岩波新書・2009年)を一読することを是非勧めたい。別に就活に即座に役に立つことは書いてないけど、自分がいま何処に飛び込もうとしているかということを知り・考えるのにはとても良い本だと思う。

という評価をいただいています。ありがたいことです。

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経済学史学会員と武雄市民

河北新報から、

http://www.kahoku.co.jp/news/2011/12/20111206t63007.htm経済学史学会の福島開催断念「手続きに問題」会員有志が抗議

>経済学史学会(代表幹事・栗田啓子東京女子大教授)が、来年度の全国大会会場を「原発事故の収束が不透明だ」などとして福島大から北海道に変更した問題で、会員有志21人は5日、代表幹事や常任幹事に対し、決定に至る手続きの過ちを認め、辞任するよう求める抗議声明を発表した。

>5日、福島市内で記者会見した中山幹事は「科学的合理的な議論をせず、数に頼んで決めてしまう民主主義の悪い形態。多くの会員が思考停止に陥っている」と話した。

これですね。

http://jshet.net/modules/contents/index.php?content_id=68

>突然ではありますが、2012年度全国大会開催校を福島大学から小樽商科大学に変更することをお知らせいたします。

5月の幹事会で来年度全国大会を福島大学で開催することを決定いたしましたが、その後原発事故の収束までに長期間を要することがわかってきたことを受け、常任幹事会で検討した結果、7月31日開催の臨時常任幹事会で福島大学での開催を断念するという方針を決定いたしました。

その理由は、事故収束の先行きが不透明な状況で、1)全国大会を確実に開催することが最優先事項であること、2)多くの会員、とくに若手の会員が安心して参加できる大会とすること、の2点です。

>大会を準備されてきた福島大学の会員の方々、原発事故の影響下でご苦労されている福島の住民の方々に対しても申し訳ない措置であると思ってもおりますが、全国大会を無事に開催するということを第一義に考えた結果として、ご理解いただきたいと思います。

なるほど、福島では無事に開催できない、と。

震災後の5月にいったん福島に決めたのに、今になって安心できない、と。

大学の偉い先生方と言えども、やることは立派な市民の皆さまとあまり変わらないということのようです。

http://www.asahi.com/national/update/1201/SEB201112010011.html(佐賀・武雄市、がれき受け入れ撤回 「脅迫続き」と説明)

>東日本大震災で発生したがれきの処理について、佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長は1日、これまで表明していた受け入れ方針を撤回すると発表した。この日開会した12月定例市議会の冒頭、「電話などで市職員や市民への脅迫行為が続いているため」と撤回理由を説明した。

 だが、受け入れ方針が報道されると県内外から電話やメールで約千件の意見が寄せられた。大半が批判や抗議で、「受け入れたらお前たちに苦しみを与える」「市や市民主催のイベントを妨害する」「武雄市産の物品の不買運動をする」などの脅迫もあったという。

(参考)

http://blog.goo.ne.jp/rebellion_2006/e/4469d8eb6c45996cb8999a83403e05db(脅しに屈せず立ち向かおう)

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OECD編著『世界の若者と雇用』(明石書店)

Oecd

ということで、今まで何回も本ブログで広報してきたOECD編著『世界の若者と雇用』(明石書店)ですが、来週には刊行される予定です。

本日は念押し的に、本書の目次を公開しておきます。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/oecdsekaimokuji.html

序文 3
謝辞 5
要約 17
はじめに 29
 
第1 章 雇用危機を若者はどのようにくぐり抜けているか 33
第1 節 若者の雇用失業動向 34
1.1 過去25 年にわたるOECD 諸国の定型的動向 34
1.2 経済危機の間、とくに若者が手痛い打撃を受けた 38
1.3 各国別最近四半期ごとの若年失業の動向 39
1.4 若年失業の短期的見通し 42
第2 節 問題となっている主要因 44
2.1 多くの要因が若者をとくに景気後退期に危険にさらす 44
2.2  最も不利な状況にある若者は「傷痕」効果というリスクにさらされている 44
 
第2 章 若年雇用の課題 49
第1 節 人口学的課題の重大さ 50
1.1  過去、若者人口が少ないからといって若者の雇用機会が生み出されてきたわけではない 50
2.2 労働年齢人口における若者の急激な減少は止まった 51
第2 節 各国間の若年労働市場の結果の多様性 56
2.1 雇用と失業 56
2.2 代替指標:NEET(雇用されておらず教育も訓練もしていない者) 57
2.3 平均を超えて:性別、年齢、民族、教育の役割 60
2.4  若者の不利な状況は繰り返し累積していき、雇用や賃金の劣悪化をもたらす 66
第3 節 若年労働市場のスコアボードに向けて 66
 
第3 章 若者の学校から職業への移行における経路と障壁 71
第1 節 統計的指標 72
1.1  教育を離れる年齢の中央値は各国間でかなり異なるが、これは部分的には学習と労働の間の区別が曖昧なことを反映している 73
2.2  男女間の不均衡は労働市場への参入後数年間見られるが、各国間の若年労働市場のパフォーマンスを説明する上での主要な要因ではない 78
1.3 国内において教育は学校から職業への移行の質に大きく影響する 82
第2 節 多様な経路 84
2.1 学校と職業の間の多様な経路を明らかにする必要性 84
2.2  OECD 諸国における学校から職業へのさまざまな移行の比較:困難な課題 85
2.3  中等教育を離れた学生の学校から職業への経路は欧州よりもアメリカのほうがダイナミックである 88
2.4 労働市場でうまく結果を出せないリスクのある 90
 
第4 章 職業への移行を改善するよりよい教育訓練 97
第1 節 初期教育と職場学習の主要な課題 98
1.1 15 歳という重要な年齢における成績 98
1.2 学校中退という現象 103
1.3 高等教育 105
1.4 学習と労働の組み合わせ 107
1.5 若年労働者に対する職業関連訓練 115
第2 節  労働市場で求められる技能を持って若者が教育を離れるよう保証すること 116
2.1 近年の経済危機における傾向と問題点 118
2.2 近年の政策方向 119
 
第5 章 若年雇用に対する需要側の障壁を取り除く 139
第1 節 主な労働需要側の機会と障壁 140
1.1 若者の仕事はどこにあるのか 141
1.2 賃金と労働コスト 143
1.3 雇用保護 150
第2 節 若年雇用に対する需要側の障壁に取り組むこと 163
2.1 新しい仕事のための新しい技能を促進する基金への投資 163
2.2 低技能の若者を雇用するコストを減らす 163
2.3 労働市場の二重構造を減らすための努力を続ける 169
 
第6 章 若者に対する雇用危機の長期間の影響を最小限にする 173
第1 節 若者が雇用危機を乗り越える手助けをする 175
1.1 主要な指標 175
1.2 主要な課題 176
1.3  若者にとって仕事を豊富に生み出すような景気回復を保証するための主要な課題 178
第2 節 若者に有効な施策 179
第3 節 近年の離学者世代に対する「傷痕」効果を防ぐ 183
3.1 主な指標と課題 184
3.2 若年求職者とのつながりを維持する有望で革新的な施策 186
第4 節 若年労働者のセーフティ・ネットと雇用・訓練経路の確保 191
4.1 主な指標と課題 192
4.2 若年労働者に対するセーフティ・ネットを保証する政策 194
第5 節  最も就業能力に欠ける若者向けの積極的労働市場政策をより効果的にし、最も不利な状況にある若者のための社会保護を強化する 196
5.1 最も不利な状況にある若者を手助けするさらに突っ込んだ選択肢 196
5.2  若年失業者向けの長続きする雇用実績を達成するための総合的なプログラムが必要とされている 199
5.3  近年の経済危機において、多くの諸国が不利な状況にある若者向けの有効な既存のプログラムへの助成を改善している 201
 
第7 章 結論:若者のための雇用政策を実行する 207
第1 節 近年の経済状況において、機会を広げ、能力を開発する 209
第2 節 長期的観点:早期に障害に取り組み、定期的に再評価する 213
2.1 質の高い早期の幼児教育への恒常的な参加を増やす 213
2.2 持続的な介入と定期的な再評価を確保する 215
2.3 就労していない時期の給付は一時的であるべきである 216
第3 節 協調的見解:すべての関係者を巻き込む 217
 
参考文献 223
監訳者解説 233
訳者あとがき 243

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マシナリさんの「働かないアリ」論

84013661 この本はベストセラーになっているようなので、今さら紹介する必要もないでしょう。書かれていることは、生物学ファンにとってはわりと常識みたいな話ですが、むしろその現代社会へのインプリケーションみたいな所に結構深い意義があったりします。

被災地の地方公務員として奮闘するマシナリさんが現場で見たのも、まさにこの「働かないアリに意義がある」現象でした。

http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-487.html

>・・・被災地の避難所で見た光景を思い出しました。その被災地では、震災直後から役場の職員がそれぞれの避難所に数名ずつ配置されて、役場の災害対策本部と無線でやりとりしながら避難所の運営に当たっていたのですが、主に運営を仕切っていたのが課長クラスの職員で、もう一人年配ではあるものの役職の高くない職員が配置されていました。後者の職員は、昔でいう「窓際族」というか池○先生いうところの「ノンワーキングリッチ」というか、身もふたもなくいってしまえば「無能なコームイン」を絵に描いたような職員に見えましたが、実はその方が見かけによらず(?)避難所に大量に押し寄せる食料品や物資の配給をそれなりに取り仕切っていて、ああ見えてやればできる人なんだなと思ったものです。

ところが、このいざというときに活躍した「働かないアリ」さん、それが過ぎると・・・

>ところが、震災から数か月後にその役場に行ってみると、物資の配給を取り仕切っていた職員がいかにもヒマそうにぶらぶらと役場の中を歩いているではありませんか。・・・

こういう「ムダ」(かっこよく言うと「リダンダンシー」)の効用に目がいかない

>教科書に書いてあることを金科玉条のごとく持ち出す研究者とか、現代社会が永年の試行錯誤の中で作り出してきた社会的規範を「キセーカンワしろ」などと叫ぶ研究者

もいらっしゃいますね。

最後のこの一節は、いつものことながらぴりりと締めています。

>本書で取り上げられている社会性昆虫よりも高い知性を持つとはいえ、ヒトも社会性を持つ生物であることに変わりありません。数式で表される美しい理論体系で経済政策を語り、教科書に書かれていない現象を現実にまみれながら理解しようとする立場を侮蔑し、教科書に書いてあることでは理解できない現実は政府などの公的セクターの陰謀論と決めつけ、政府・日銀の陰謀論に飽き足らず一般人まで「御用」呼ばわりするような専門家にとっては、ヒトという生物の社会は苦手なのかもしれませんね。

この一節が、またもや誰かさんの苦情で「見え消し」にならないことを願っておりますが。

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dongfang99さんのポピュリズム論

鋭い切れ味でファンの多いdongfang99さんですが、1ヶ月以上間をおいてようやく更新です。

http://d.hatena.ne.jp/dongfang99/20111205「ポピュリズム」とは何を指すのか

まずは、民主主義の二つの類型の解説から、

>民主主義の考え方は、大きく二つに分けることができる。一つは、様々な利害や価値観をもった個人や集団の間の対立や話し合い妥協のプロセスであると考えるものと、もう一つは住民や国民全体が共有すると想定できる利害や価値観を可能な限り実現していくものであると考えるものである。前者における政治家の役割が、個別の理念や利害を組織化して議会において代表していくことにあるのに対して、後者における政治家は「国益」などの全体的な利害の観点から、それに反する価値観や勢力の存在を取り除いていくことが重要な役割になる。つまり、前者における「民意」があくまで多様な価値・利害の交渉と妥協の結果であるのに対して、後者は全体としての「民意」の存在をあらかじめ前提とし、その「民意」の名の下に個別の利害や価値観を偏ったものとして否定あるいは軽視するものである。前者を「多元主義」的な民主主義、後者を「一元主義」的な民主主義と呼ぶことができるが、「ポピュリズム」は言うまでもなく後者の一元主義的な民主主義に属するものである。

多元主義と一元主義は、言い方を変えれば「利害調整の民主主義」と「正義の民主主義」と言い換えられるでしょう。

そして、戦後日本においては、保守勢力がもっぱら前者の利害調整の民主主義を体現し、革新側や「市民」勢力が、利害調整の「汚さ」を糾弾し、まさに一元主義的な「正義」を振り回していました。

そういう一元主義的な「正義」派の議論においては、だいたいにおいて官僚が悪役として登場していたことも、当時の「進歩的」な評論を一瞥するとよく分かります。

もちろん、表舞台では「正義」を振りかざす勢力も、その形而下的な部分においてはまさに利害調整の世界で生きていたわけですが、そこはそれ、かっこつける世界とかっこつけない世界では使い分けをしていたのでしょう。

そういう「お約束」の猿芝居が続けられている間は、その限りで問題はなかったのかも知れません。

しかし、1990年代以来、日本社会の布置構造は大きく転換し、かつて「正義」を振りかざしていた勢力の下部構造の利害調整のあり方が、さらにいっそう磨きをかけた空疎な「正義」を振りかざす新興勢力によってめったやたらに攻撃されるようになります。

もちろん、その攻撃が空疎であるのは、かつての「正義」派の空疎に輪をかけた空疎さであることはいうまでもありませんが、

>当然ながら今の日本には、こうした一元的な民主主義が当てはまる現実的な条件は存在しない。・・・

問題は、それにも関わらず、2000年代以降になって「国益」「民意」の名の下に官僚・公務員の些細な「特権」「既得権」が攻撃されるという一元主義的な形の民主主義が、ますます強まっていることであろう。官僚・公務員に関する問題の一つ一つは確かに不愉快なものであるが、たとえば「天下り」を全廃したところで、デフレ脱却や社会保障の再建・強化、過労・貧困問題の解消にとって一体何が前進するのかを真面目に考えはじめると、今の官僚批判の盛り上がりはやはり何かを間違えているとしか言いようがない 。それは、護送船団方式や財政投融資の仕組みが強固に生き残っていた90年代までならともかく、それらが明らかに解体もしくは弱体化している現在になって、そうした官僚批判がかえってエスカレートし、しかもその批判の焦点も給与水準や年金格差といった(つまり解決したところで効果も薄い)小さな問題に当てられていることにも象徴されている*4。おそらく「ポピュリズム」という言い方が登場するようになるのは、こうした政治が盛り上がるような局面である。つまり、一義的な「民意」の存在を事前に想定する形の民主主義が、現実には不可能あるいは困難になっているはずなのにも関わらず、軍事・外交あるいは財政上における「国家的危機」が過剰に喧伝されたり、あるいは一部の特権勢力とそれに抑圧される国民という対立図式で政治問題が語られたりして、それがなぜか世論の広範な支持を得てしまうような現象が、「ポピュリズム」と呼ばれているのだろうと思う。

その空疎さを生み出したのが、下半身では利害調整の政治をしているくせに、それを正面から認めようとせず、上っ面では利害調整をなにやら汚らしいものであるかのように描き出し、空疎な「正義」に浸っていたかつての「進歩的」な人々であったこともまた確かであるように思うのです。

まことに、

>その意味で失望したのが、山口氏ら「反橋下」派の知識人たちが、生活関心の組織化という地道で泥臭い課題に取り組むのとは全く逆に、愚にもつかない頭でっかちの「独裁」「ハシズム」批判に堕して、真面目な有権者をかえって遠ざけてしまったことである。橋下を「ポピュリズム」と批判する側こそが、それに輪をかけたポピュリズムに陥っていたとしか言いようがない。

政治を損得の言葉で語ることから逃げ回っていて、いまの惨状をどうにかできるのだろうか、というところから出発しなければならないのでしょう。

わたくしが『新しい労働社会』の最後のところで述べたステークホルダー民主主義とは、何よりも、空疎な正義の民主主義ではなく、生々しい利害の対立、調整、交渉、その上での合意といった「泥臭い」民主主義を志向するものです。

綺麗事で政治を語る人々に、独裁を批判する資格はないのです。

>大衆社会においては、個人たる市民が中間集団抜きにマクロな国家政策の選択を迫られると、ややもするとわかりやすく威勢のよい議論になびきがちです。1990年代以来の構造改革への熱狂は、そういうポピュリズムの危険性を浮き彫りにしてきたのではないでしょうか。社会システムが動揺して国民の不安が高まってくると、一見具体的な利害関係から超然としているように見える空虚なポピュリズムが人気を集めがちになります。これに対して利害関係者がその代表を通じて政策の決定に関与していくことこそが、暴走しがちなポピュリズムに対する防波堤になりうるでしょう。重要なのは具体的な利害です。利害関係を抜きにした観念的抽象的な「熟議」は、ポピュリズムを防ぐどころか、かえってイデオロギーの空中戦を招くだけでしょう。

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勝ち組からの労働人事の提言?

150402 海老原嗣生・荻野進介『名著で読み解く 日本人はどのように仕事をしてきたか』(中公新書ラクレ)は、各方面で大変評判が高いようですが、アマゾンカスタマーレビューを見ていたら、いささか見当外れではないかと思えるレビューが書かれていました。

http://www.amazon.co.jp/review/R2V66G3QQB7U2I/ref=cm_cr_pr_viewpnt#R2V66G3QQB7U2I

Goriさんという方のこのレビューでは、

>本書は基本的に「勝ち組からの労働人事の提言である著作」に対して 現在の視点から質問をぶつけその回答を得るという構造を持った本である。

日本人の「働き方」「企業マネジメント」に大きな影響を与えたと著者が認定するのは、 以下の13冊であるが、私はこれらの本の重点は資本家経営者側の「企業マネジメント」にあり、 労働者側はすすんで「働き方」を変えたというより変えざるを得なかったと思うのである。

>・・・著者には労働者側から書かれた同種の本についての本書と同じ構造を持つ本の執筆を望むものである。

正直申し上げて、拙著も含めて、そこで言われていることを「勝ち組からの提言」としか見えない視座こそが問題なのではないかと、わたくしは思います。

表層をなでただけの口先だけ「労働者側から書かれた」上滑り本よりも、遥かに本質的に職場で働く者の実存に立脚していると思いますよ。

もっとも、この評者には拙著など眼中にないのかも知れませんが。

>1958年『日本の経営』ジェームス・アベグレン
1969年『能力主義管理』日本経営者団体連盟
1974年『職能資格制度』楠田丘
1981年『日本の熟練』小池和男
1987年『人本主義』伊丹敬之
1993年『心理学的経営』大沢武志
1994年『日本の雇用』島田晴雄
1996年『知的創造企業』野中郁次郎・竹内弘高
1998年『人材マネジメント論』高橋俊介
1999年『雇用改革の時代』八代尚宏
2000年『コンピテンシー人事』太田隆次
2000年『定年破壊』清家篤
2009年『新しい労働者社会』

題名も違っているし、著者名もないし・・・。

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グローバル経済のもとで「分厚い中間層」を復活するために

Wcms_151271本日から、京都において、第15回ILOアジア太平洋地域会議が開催されています。

ILOのホームページでは、関係の資料等がアップされていますので、、見ていただければと思いますが、

http://www.ilo.org/global/meetings-and-events/regional-meetings/asia/aprm-15/lang--en/index.htm(15th Asia and the Pacific Regional Meeting, Kyoto, Japan, 4-7 December 2011 )

>The 15th Asia and the Pacific Regional Meeting of the International Labour Organization originally planned for April this year and postponed following the devastating earthquake and tsunami that struck Japan, will now be held from Sunday, 4 to Wednesday, 7 December 2011 in Kyoto, Japan at the Kyoto International Conference Center (ICC Kyoto).

そのオープニングセッションで、ソマヴィアILO事務局長に続いて演説した野田首相の演説内容が、首相官邸HPにアップされていますので、両者ともリンクを張って、若干引用しておきましょう。

まずソマヴィアさんですが、

http://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---asia/---ro-bangkok/documents/statement/wcms_169455.pdf

>Ways forward for inclusive growth

Let me focus on a few of the key policy challenges covered in the report to the
Conference that you will address along with the steps needed to shape a model of
growth that is more socially and economically efficient.

First, a more efficient, more equitable, job rich growth pattern

Second, building and strengthening social protection floors, to protect in particular
the most vulnerable and poorest

Third, unlocking the potential of SMEs

Fourth, supporting the development of Green Jobs and a just transition to a low
carbon economy.

Fifth, establishing more inclusive and fairer labour markets which uphold
international labour standards and rights at work with social dialogue at the core.

Sixth, supporting regional cooperation and integration - And I am happy that Surin
Pitsuwan, Secretary General of ASEAN will be joining us tomorrow.

And finally, promoting decent employment opportunities for youth

みんなを包み込む成長への道、

それは、より能率的でより公正な仕事に満ちた成長、

もっとも弱い立場で貧しい人々のための社会保障、

中小企業のポテンシャルを生かし、

環境に優しい仕事を産みだし、

国際労働基準と職場の権利を守り労使の対話を核とする公正な職場、

そして、若者のまともな(decent)雇用機会を促進することだ

野田首相の演説はこちらです。

http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/201112/04ilo.html

>我が国では、古くから、働くことは単に賃金を得るためだけではなく、何かを成し遂げる達成感、あるいは社会に役立つことの喜びをもたらすものと考えられてきました。

 これは「ディーセント・ワーク」の考え方と底流で通じるものがあると考えます。働きがいのある人間らしい仕事に自分の居場所を見いだし、活躍の出番に誇りを持つ。これは皆様の母国でも同じように求められていることだと思います。

 雇用には、人々の生活を支え、豊かにするという経済的な側面と共に、働くことを通じて人々に「居場所」と「誇り」を提供するという社会的な意義があります。「分厚い中間層」を復活させることは、一人ひとりがその能力を発揮できる場を作るという意味合いを含んでいます。

  グローバル経済の下で、「中間層」は様々な試練に直面しています。しかし、その厚みを増していく経済社会を構想し、その実現を図ることは決して不可能ではありません。その実現のためには、雇用の質を守り、セーフティネットを拡げ、人への投資を大切にすること、すなわちディーセント・ワークを基盤とすることが欠かせません。そして、成長によるパイの拡大を目指しながらも、それを自己目的化せず、格差を固定化せず、貧困を生まない社会を目指し、社会参加の機会と経済成長の果実がすべての人にいきわたる社会を実現させることにあります。

 日本は、国内の「分厚い中間層」の復活を端緒として、世界へと広げるための貢献を続けていきます。将来の世代へも持続可能な未来へ向けて、すべての人が希望と誇りを抱くことのできるアジア太平洋の地域づくりに共に取り組んでいこうではありませんか。

(参考)

Ilowp本エントリとあまり関係ありませんが、ILOのホームページへご訪問の際は、ついでにわたくしと荻野登さん(@JILPT)とで書いたワーキングペーパー「Non-regular work: Trends, labour law policy,and industrial relations developments –The case of Japan」をご笑覧いただければ、望外の幸いです。

http://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---ed_dialogue/---dialogue/documents/publication/wcms_166735.pdf

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悲しむべきニュース

悲しむべきニュースです。

「トップハテナー」の部門別ランキング、労働部門で、当ブログが2位になってしまいました。

http://tophatenar.com/tag/%E5%8A%B4%E5%83%8D

1 位  はてな匿名ダイアリー はてな匿名ダイアリー 4209 595 968077
2 位    ココログ hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳) 2418 345 20899
2 位    FC2 ブログ FC2ブログ - 無料でブログ、デザインは5000種類以上!! 2418 2 15966

長らく、不動の2位であったクソ仕事さんの「ニートの海外就職日記」が、卑劣な身バレ攻撃を受けて、閉鎖に追い込まれたのが今年の8月。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-47d5.html(クソ仕事さん閉鎖)

>はてなの部門別ランキングで、労働部門3位の本ブログよりもさらに上位にあり、単独著者によるブログとしては1位であった「クソ仕事」さんの「ニートの海外就職日記」が、

>>ブログ終了のお知らせ。ブログが起因で身の危険を感じる出来事があったため、閉鎖に至りました。更新を楽しみに待って頂いていた方々、ごめんなさい。コンテンツは全て消しました。 

というメッセージを残してブログを閉鎖してしまいました。

以来、当然更新もないため、本ブログが2位に追いついてしまいました。

もし、クソ仕事さんが引き続き刺激的なエントリを書き続けていれば、本ブログが追いつくことなどなかったでしょうに。

改めて、こういう卑劣な攻撃に怒りを覚えます。

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松下良平『道徳教育はホントに道徳的か?』

9784284304474日本図書センターより、松下良平『道徳教育はホントに道徳的か?「生きづらさ」の背景を探る』をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.nihontosho.co.jp/2011/10/post-233.html

さて、この本。イエローカバーの教育関係書のシリーズの一冊で、広田、児美川、矢野といった方々の本を既にここでも紹介してきましたが、いずれも労働の世界と深く関わる領域だったので、エントリも書きやすかったのですが、今回は道徳教育ですよ。

オビの文句に曰く:

>これって 道徳的 ですか?

◆ルールを守るのは当然だ!
◆悪は追放しなければならない!
◆自分を犠牲にする精神は素晴らしい!
◆ひとに迷惑をかけてはいけない!
◆命の大切さは教えなければならない!

これって誰もが正しいって思っているけど、本当に「道徳的」ですか?
これまで私たちが考えてきた道徳の枠組みを超え、
これからの道徳のあり方について刺激的な考え方を提案!
3.11以降、私たちのモラルは変わるの?
現代社会のルールは正しいの?
さぁ、道徳ワンダーランドへようこそ!!

冒頭出てくるのが、私は読んだことはなかったのですが、その道では有名らしい「手品師」という道徳教材です。

あらすじはこういうものですが、

http://www.mitsumura-tosho.co.jp/kyokasyo/doutoku/sakusha/sakusha02/tejinasi_01.asp

>あるところに、腕はいいのですがあまり売れない手品師がいました。その日のパンを買うのもやっとでしたが、大劇場のステージに立てる日を夢見て、腕を磨いていました。

 ある日、手品師は小さな男の子がしょんぼりと道にしゃがみこんでいるのに出会いました。男の子はお父さんが死んだ後、お母さんが働きに出て、ずっと帰ってこないというのです。手品師が手品を見せると、男の子はすっかり元気になり、手品師は明日もまた手品を見せてあげることを約束しました。

 その日の夜、友人から電話があり、大劇場に出演のチャンスがあるから今晩すぐに出発して欲しいというのです。手品師は、大劇場のステージに立つ自分の姿と男の子とした約束を代わる代わるに思い浮かべ、迷いました。そして手品師は、明日は大切な約束があるからと友人の誘いをきっぱりと断りました。

 翌日、手品師はたった一人のお客様である男の子の前で、次々と素晴らしい手品を演じてみせました。

をいをい。

ここから、道徳教育のいう道徳が反利己主義でしかなく、それは容易に利己主義に転化してしまう。他者に拡張していく自己愛という契機が欠落していると批判し、そこはよく分かるのですが、そこからさらに、共同体道徳と市場モラルという話に展開していくのですが、実はそのあたりの論理展開が、今ひとつついていけないところがありました。

この本で著者のいう「市場モラル」って、松尾匡さんやジェイン・ジェイコブスにいわせれば、たぶん「市場モラル」じゃないじゃないか、というような気がします。

はじめに―道徳教育ってつまらない?

第1章 読み物資料の奇妙な世界
[1]誠実な「手品師」の不誠実
   教材「手品師」/これでよかったのか/「手品師」と「友人」の不誠実
[2]誠実ってどういうこと?
   もっといい選択肢を考える/奇妙なロジックがまかり通るのはなぜ?

第2章 道徳教育の道徳度を問う
[1]思いやりの光と影
   反利己主義・利他主義としての思いやり/自己愛の他者への拡張としての思いやり/
   思いやりは危ない/利己主義が否定すべきものになるとき/「反利己主義としての思いやり」
   に満ちた社会で起こること/どのような思いやりが必要か
[2]道徳的とはいえない道徳教育
   教材「手品師」の非情でよそよそしい世界/「手品師」とはだれのことか/
   「手品師」を誠実とみなすことの皮肉な結果/「道徳」の授業のどこが問題なのか

第3章 歴史は語る―学校の道徳教育の非情さ
[1]戦前と戦後の違い
   天皇制下の道徳教育/民主制下の道徳教育
[2]戦前と戦後をつらぬくもの(1)―愛国心
   愛国心を植えつけるための教育/戦後の“愛国心”教育/今日の“愛国心教育”
[3]戦前と戦後をつらぬくもの(2)―利己主義と利他主義の共犯関係
   利他主義によって「奴隷」になる/利己主義の世界を支える利他主義の道徳/
   私利私欲の社会を取り繕う道徳教育

第4章 別の道徳教育へ
[1]自己愛にもとづく自己犠牲
   ケアや贈与によって支えられる日常生活/自己犠牲は強制できない
[2]これまでの道徳教育はうまくいったのか
   道徳教育の失敗?/道徳教育の成功?/市民教育の基礎としての道徳教育

第5章 学校の外に広がる道徳ワンダーランド
[1]道徳はどのようにして生まれてくるのか
   もう一つのルール、そして学び方/人は価値づけをする生き物である/
[2]「人間生命の尊重」のあいまいな根拠

第6章 学校がなくても道徳は学べる―共同体道徳を学ぶということ
[1]共同体道徳とは何か
   生活の中から自生してくる道徳/共同体道徳の多様性/共同体道徳のウチとソト
   かたい道徳とやわらかい道徳
[2]あいさつの学びかた
   生活の中で学ぶ/学校の教室で学ぶ
[3]生命尊重の学びかた
   学校での学習とどこか違うのか/環境から学ぶ?/楽しいだけが人生じゃない!?/
   役立つ人でなくてもいい/他者から贈られた私の命の尊厳/共感は要らない?
[4]他者の思いを受けとめること、共感すること
   他者の思いを受けとめることがもたらす悲劇/思いを受けとめることのできない〈他者〉/
   傲慢で危険な共感/呼びかけ―応えながら共感すること

第7章 生命尊重をめぐる危機?
[1]生命尊重はどのように学ばれるのか
   祝福のまなざしの網目/声の交歓としての遊び
[2]学校の道徳的危機
   何が危機なのか/〈呼びかけ―応える〉対話の欠如/いじめ/大切なのに見失われているもの
[3]家庭の道徳的危機
   要求し誘導する親/コミュニケーションや団らんが必要なのか/親がわるいのか
[4]なぜ人を殺してはいけないのか
   理由がわからない/〈呼びかけ―応える関係〉の欠如がもたらす暴力/理由はいえない

第8章 迷走する道徳教育―市場モラルがもたらす分裂
[1]なぜ今ルールの徹底や規範意識の強化なのか
   もう一つのルール/まなざしの変化がもたらす不安/市場への信頼を確保するためのルール/
   虐げられた人びとを管理するためのルール
[2]市場モラルとは何か
   対立する二つの顔/他人の気分を害しかねないことをするな/
   自己表現の入念なコントロールはむずかしい
[3]これでも道徳教育?
   自己管理のための道徳教育/心よりもカタチ/多様な仕掛けを用いて成果をあげる/
   結果を出せば何でもいい
[4]市場モラルの教育
   いつの時代も同じ/道徳教育の本質をとらえなおす
[5]市場モラルと共同体道徳はどう違うのか
   せめぎあう二つの道徳/二つの道徳に引き裂かれて

第9章 ルールに、ご用心
[1]市場モラルの光と影
   「善玉―悪玉」図式を超える/表と裏がひっくり返る
[2]ルールにうるさい社会の非情や無慈悲
   情けは人のためならず?/善と悪のグレーゾーン/悪を飼い慣らす
[3]ルール遵守を優先する社会の悲劇
   ルールさえ守れば本当に大切なものはどうでもいい/無責任な事なかれ主義/
   フクシマ原発事故の逆説
[4]ルールだらけの社会に潜む暴力と閉塞感
   バッシングし合う人びと/深く潜行する暴力/大胆な構想が求められる社会/
   停滞して行く社会

おわりに―これまでの道徳教育に別れを告げよう
 二つの道徳と道徳教育/近代日本と道徳教育/市場モラルを飼い慣らす

ブックガイド
 道徳・倫理をめぐって/日本の道徳教育をめぐって/ブックではなく、読み方のガイド

あとがき

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ガラスの床

yeuxquiさんのつぶやきから、大変重要な指摘と思われることを。

http://twitter.com/#!/yeuxqui/status/142084788772286464

>福祉国家とはその意味で、差異を平準化という意味での平等ではなく、むしろ社会階層毎の差を最小化し、連続することで階層移動を容易ならしめ、あらゆる領域で競争を促進する過酷かつ熾烈な仕組みであると考えた方がよいと思う。

http://twitter.com/#!/yeuxqui/status/142085717529608192

>(上にせよ下にせよ)階層移動しても、移動したその先でまたあらたな競争が存在する。相続税の強化などは典型的にそうであり、これに耐えられない場合、社会の上層における競争からの回避が、いわゆる「新自由主義的」と呼ばれる思想となって現れる。

http://twitter.com/#!/yeuxqui/status/142086067305193473

>学歴重視や、相続税や累進課税の強化もそのような観点から考えられるのであり、いわゆる「新自由主義」と称される人びとのこうした政策への忌避感、とくに相続税にたいするそれは、やはり世界観においてある種の一貫性を欠くものとなって現れている。

http://twitter.com/#!/yeuxqui/status/142086318518841345

>ガラスの天井は、逆から見ればガラスの床であり、それをどのように維持するかという態度が存在するのではないかとわたくしはつねに邪推している。

福祉国家こそ、ほんとうにイコールフッティングで熾烈な競争をさせるための仕組みなのであり、一見競争を賛美しているように見える(自称する)新自由主義は、そういう競争を忌避する「ガラスの床」のイデオロギーである、と。

その通りだと思うのですが、最大の問題は、福祉国家の味方と自称する人々が、そういう公正な競争のためのイコールフッティングの意義を主張するどころか、かえってあらゆる競争を敵視するような態度をとりがちなところでしょう。

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名古屋市民税減税:職員の残業手当削減で財源捻出

毎日の記事から、

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111202k0000m010130000c.html

>名古屋市の河村たかし市長が条例成立を目指す市民税減税の財源捻出案として、市長率いる「減税日本」市議団が市職員の超過勤務手当(残業手当)などを3割程度減らす人件費削減の提案を検討していることが1日明らかになった。

>減税日本関係者によると、削減を検討しているのは超過勤務手当と管理職手当。今年度当初予算で超過勤務手当は約74億3000万円、管理職手当は約11億8000万円が計上されている。両手当を3割削減すると約25億8500万円が捻出でき、来年度に7%の市民税減税を実施した場合の収支不足額29億円のほとんどをカバーできる。

いや、もちろん、残業の削減は極めて重要です。

本当に、市長の指導のよろしきを得て、市職員の残業が3割も減らせるのであれば、まことに慶賀すべきことであり、他の地方自治体もよろしくこれを見習うべきでありましょう。

ただ、わが国の法制度について遺漏のあるはずのない減税日本のことですから、万が一にもあり得ないと思いますが、これが残業はそのままに、残業代だけを3割減するという趣旨であるとするならば、それは労働基準法違反を政策として遂行するということになりかねないことだけは、(もちろん重々承知の上ではありましょうが)念頭に置いておく必要はあろうかと思います。

今さら言うまでもなきことながら、国家公務員と異なり、非現業の地方公務員には労働基準法が原則として適用されます。

適用される法律で言うと、県立病院と変わりません。

ただ、県立病院の場合、労働基準監督署が監督するのに対し、「その他の官公署」の場合は、人事委員会がその職権を行使する義務があるというだけです。

この場合、労働基準法という国家の法律を施行するのであって、一名古屋市の条例や規則を施行するのではありません。

言うまでもない当たり前のことばかりで申し訳ないですね。

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第2回生活保護制度に関する国と地方の協議

12月12日に、第2回生活保護制度に関する国と地方の協議が開かれるようです。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001wvix.html

この問題については、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-0bb2.html(求職支援拒否なら保護費打ち切り)

など累次のエントリで取り上げてきましたが、こういう動きを先頭に立って進めてきたのが、先の選挙で落選してしまった平松前大阪市長であることはご案内の通りです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-e342.html(大阪市と生活保護)

平松路線で進んできたこの生活保護制度の見直しが、これからどういう方向に向かうのか、その影響を不可避的に受けるさまざまな制度の動向とともに、注目して見ていく必要がありますね。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/hamachans-remar.html(hamachan's remarks on 生活保護)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-d31d.html(「最近の生活保護急増の主因は、景気低迷ではない」というのはそれ自体は正しいが)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-c2b6.html(暴力団と生活保護)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-0b0c.html(生活保護提言型仕分けのインプリケーション)

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労働安全衛生法改正案閣議決定

まだ厚労省のHPには出ていませんが、最後の関門で難産気味だった労働安全衛生法の改正案が、ようやく閣議決定に至ったようです。

http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E2E0E2E2978DE2E0E3E0E0E2E3E39790E3E2E2E2?n_cid=TW001職場の分煙義務化 労働安全衛生法案を閣議決定

>政府は2日、職場での受動喫煙の防止を目的に全面禁煙か、喫煙室設置による分煙を事業主に義務付けることを柱とする労働安全衛生法案を閣議決定した。従業員の健康診断でストレスに関するチェック項目を設け、医師などに検査してもらうことも義務付ける。

こういう風に、マスコミにかかるとどうしてもタバコ規制問題が中心になるのですが、もちろん、それも一つの柱ですが、労働政策的に見てより重要なのは、メンタルヘルス関係の規定です。

これについては、震災で法案提出が延期される直前に、『季刊労働法』にこういう解説を書きましたが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/mentalhealth.html(メンタルヘルスの労働法政策)

この文章の冒頭に、

>今国会に提出される労働安全衛生法改正案には、世間で注目度の高い職場における受動喫煙防止対策とともに、職場におけるメンタルヘルス対策が含まれています。・・・

と書いちゃってるんですね。これはもう、神様でもなければやむをえない間違いだと思いますが、

それが今臨時国会に出すべく、法案要綱の諮問答申も済ませたのですが、そのタバコ規制が、オヤジ狩りじゃないかという反発を招いたらしく、なかなか閣議決定に至らなかったのですが、

http://kitasharo.blogspot.com/2011/11/blog-post_12.html(改正労働安全衛生法案の提出見送り)

http://kitasharo.blogspot.com/2011/11/blog-post_18.html(改正労働安全衛生法案の提出あるのかないのか? )

なんとか、卓袱台は元に戻ったようです。

労政審諮問バージョンの改正法案要綱はこちらです。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001slpa-att/2r9852000001slqr.pdf

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パワハラは原則合法?

経営法曹会議から、『経営法曹研究会報』69号をお送りいただきました。

今号は、「パワハラリスクへの実務対応」という特集で、

1.最近のパワーハラスメント訴訟とその傾向  男澤才樹

2.精神疾患等の労災認定基準の見直しとその影響について  深野和男

3.パワハラか否かの判断が困難な場合とその対応  尾畑亜紀子

4.退職勧奨とハラスメント  丸尾拓養

という4つの報告とそれをもとにした討議が収録されています。

いずれも、近年の裁判例などを駆使して、大変勉強になりますが、ここでは、おなじみ丸尾弁護士の、「そもそも論」が興味深いので、ちょっと長めですが引用しておきます。

>そもそも、ハラスメントというものは何かと考えたとき、実は、セクハラとパワハラでは、まったくベクトルが違っていると考えています。

セクハラは、セクシュアルな行為、つまり性的な言動ですから、会社に持ち込まれるべき者ではありません。だから、会社としては、徹底的に禁圧していくことになります。

しかし、パワハラの“パワー”というのは、そもそも上司の権限です。上司として、その権限を行使していくのは責務です。それは、組織を維持していく上で、経営としては当然に必要なものであり、会社としては、現場の上司にむしろ行使してもらいたいものです。そして、上司というのは嫌なものであり、ハラスメントというのが「嫌がられる」という意味であるならば、パワハラは必然的であると思います。

ですから、私は、セクハラとパワハラはまったくベクトルが逆で、セクハラは原則違法であるが、パワハラはもしかしたら原則は合法、許されるものではないかと考えています。

つまり、許されるパワハラと許されないパワハラがあって、そして、許されないパワハラが、先ほど申し上げたような「ひどい嫌がらせ、ひどいいじめ」というものではないかという感覚を持っています。

“パワー”というものが上司としての権限の行使である以上、「パワハラ」をあまり騒いで萎縮的効果、つまり、chilling effectみたいなものを与えて、上司が権限を行使できなくなってしまうことは、少なくとも経営として避けるべきであると思います。

ですから、厚労省はいろいろやられているようですが、パワハラについては少し冷静に見ていく必要があると思っています。・・・

いかにも丸尾さんらしい、結構刺激的な表現ですが、ある面で真実を言い当てていることも確かなのでしょう。

実は、まったく逆の立場からですが、似たような議論を読んだことがあります。

Work,employment and society』というイギリスの労働社会学の雑誌に載ったDavid BealeとHeige Hoelさんの「Workplace bullying and the employment relationship: exploring questions of prevention, control and context」という論文ですが、イギリス政府や労組が結構この職場のいじめ問題に取り組んでいることについて、いじめはむしろ資本主義社会における労働者統制の効果的な手段なんじゃないのかとマルクスやブレイヴァマンの労働過程論などを引きながら論じていて、興味深いものがありました。

>「パワハラをなくそう」というのは、ある意味で“お花畑”な話・・・

という認識で多分両者一致しているのでしょうが、根っこはだいぶ違っていそうです。

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経営資源としての労使コミュニケーション@JILPTフォーラム

労働政策研究・研修機構が定期的に開催している労働政策フォーラムですが、次回は来年1月24日(火曜日)に、「経営資源としての労使コミュニケーション」というテーマで行います。

http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20120124/info/index.htm

良好な労使関係を築くことは、企業の発展、労働条件の向上にとって重要です。企業を危機から救うにも、さらなる発展に導くにも、労使が一体感と共通の方向性を持つことが不可欠です。信頼関係と良き緊張感のある労使コミュニケーションは大きな「経営資源」となります。

本フォーラムでは、わが国の労使関係の現状を明らかにするとともに、これからの労使関係はどうあるべきかを研究者、労働組合、経営者の視点から議論します。

日時 2012年1月24日(火曜)13時30分~17時00分(開場13時) 会場 浜離宮朝日ホール 小ホール

プログラムは次の通りです。

基調報告
我が国の労使関係の過去・現在・未来 濱口桂一郎 労働政策研究・研修機構統括研究員

研究報告
労使関係のフロンティア―労働組合の羅針盤 呉 学殊 労働政策研究・研修機構主任研究員

事例報告
資生堂労働組合の取り組み~イキイキと活力ある職場づくり~ 赤塚 一 資生堂労働組合中央執行委員長

連結経営下、個別最適から全体最適へ~グループでシンフォニーを奏でよう~ 恩田 茂 ケンウッドグループユニオン中央執行委員長

好ましい企業風土づくりは、経営者の経営姿勢の確立からはじまる 山田 茂 株式会社山田製作所代表取締役社長

パネルディスカッション

パネリスト:
赤塚 一 資生堂労働組合中央執行委員長
恩田 茂 ケンウッドグループユニオン中央執行委員長
山田 茂 株式会社山田製作所代表取締役社長
呉 学殊 労働政策研究・研修機構主任研究員

コーディネーター:
濱口桂一郎 労働政策研究・研修機構統括研究員

ということで、一応わたくしが基調報告とパネルのコーディネーターを務めますが、事例報告のお三方を見れば分かるように、メイン報告者の呉学殊さんが調査してきた資生堂、ケンウッド、山田製作所の労使関係、労使コミュニケーションの姿から、これからのあるべき労使関係、労使コミュニケーションを考えるというのがメインテーマです。

Frontiers 資生堂と山田製作所の事例については、先日刊行され、本日増刷したらしい、呉さんの『労使関係のフロンティア』に収録されていますし、

ケンウッドのグループユニオンの事例は、『ビジネス・レーバートレンド』の201111 先月号に載っています(既にPDFファイルで読めるようになっています)。

これらはいずれも、「信頼関係と良き緊張感のある労使コミュニケーション」のグッド・プラクティスといえましょう。

http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2011/11/index.htm

集団的労使関係の再構築という課題に関心をお持ちの皆さまの参加をお待ちしております。

申込みは、このリンク先からできます。

https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/info/form120124.htm

Forum

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森岡孝二『就職とは何か』

S1338 森岡孝二さんより、新著『就職とは何か』(岩波新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1111/sin_k620.html

9月の水町さんの『労働法入門』から息も継がずに労働関係の本を出すとは、岩波もリキが入ってますね。

>就職新氷河期」のなかで、「就活」に振り回される学生たち。大学3年生の中頃から走り回っても、5人に1人は定職に就けないまま卒業しています。採用内定が出ても、待ち受けているのは働きすぎで、正社員から逃げ出せば非正規の仕事しかありません。

 本書では、こうした就職前と就職後をつないで、〈まともな働き方〉の条件を問い直します。学生と若者に焦点を絞りつつも、働き盛りの世代にも、また、親や教員、採用側の企業関係者にもぜひ手に取っていただきたい一冊です。

就活の話から入って、「まともな働き方」の重要性を説くなど、共感できるところの多い本です。

ただ、冒頭の「はじめに」の記述で、ちょっと気になったのが、厚生労働省の「就業形態の多様化に関する総合実態調査」を引いて、こう述べているところです。

>同調査の中の個人調査の結果に目を転ずると、驚くべき事実が浮かび上がる。非正社員比率は、全年齢の男女計で見ると、38.4%であるが、なんと、15~19歳では男性91.6%、女性95.8%、20~24歳では男性46.7%、女性44.2%となっている。これらの数字から、高校新卒者は大多数が非正社員であること、短期大学及び大学の新卒者を含む年齢層は男女とも非正社員比率が45%前後であること、・・・などがわかる。(iiページ)

この年齢階層別正規非正規比率の数字は

http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/5-22b.html

の附属統計表に載っていますが、これを「高校新卒者」「短期大学及び大学の新卒者」における正規非正規比率と解釈するのは違うように思われます。高卒者の9割以上が非正規で就職とすると、まさに「驚くべき事実」ですが、これはむしろ、在学中の者も含めた10代後半の若者の雇用形態が9割以上非正規と解すべきで、彼らの大部分がいわゆる「アルバイト」就労者であることを考えれば、わりと自然な数字であろうと思われます。20代前半についても、ある部分はやはり大学生のアルバイトが含まれているでしょう。実際、生活を賄う主な収入源を見ると、15-19歳男性の95.4%、同じく女性の95.7%が「親の収入」と言っていますし、現在の就業形態を選んだ理由は「自分で自由に使えるお金」がほとんどで、「正社員として働ける会社がなかったから」は男性3.4%、女性14.3%で、むしろ「古き良き時代」の家計補助的非正規とあまり変わらないように見えます(女性については必ずしもそうでない面もありますが)。

ただ、20-24歳層では(こちらにむしろ最近の高卒者が多数含まれていると思いますが)、「親の収入」が男性52.9%、女性51.9%と、半数は家計補助的ではなく家計維持的労働者であるのに、「正社員として働ける会社がなかったから」が男性22.3%、女性19.2%となっていて、高校新卒者が非正規で自活しなければならない状況が存在することを示しているように思います。

問題はむしろさらに、それより年齢層が上がっても、非正規比率が結構高いまま残っている点で、20代後半から50代まで「正社員として働ける会社がなかったから」非正規というのが分厚く存在していて、まさに大きな問題なのですが、上で引用したデータの使い方は、学卒就職問題の冒頭のネタとしてはちょっとずれがあるように感じました。

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学校基本調査の改正

『労基旬報』1月25日号に寄稿した「学校基本調査の改正」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo111125.html

>文部科学省が、学校基本調査の調査票を来年度(平成24年度)から改正しようとしているということである。学校基本調査は言うまでもなく、終戦直後から実施されている教育関係の中心的な統計調査であり、学校数,在学者数,教職員数,学校施設,学校経費,卒業後の進路状況等について、毎年5月1日現在で全数調査を行っている。

 改正しようとしているのは、そのうち大学等の高等教育機関用の卒業後の状況調査に関するところである。今年度までの調査票では、卒業後何らかの仕事に就いた者については、「就職者」という項と「一時的な仕事に就いた者」が用意されていた。解説によると、「就職者」とは「給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を目的とする仕事に就いた者をいう」のに対して、「一時的な仕事に就いた者」とは「臨時的な収入を目的とする仕事に就いた者をいう。例えば、アルバイト、パート等で一時的な仕事に就いた者を記入する」とある。この二分法が、「経常的な収入を目的」として働く者、つまり家計維持的に働く者はすべて正社員となり、パート、アルバイトなど非正規労働者になる者はすべて「臨時的な収入を目的」とする家計補助的就労者であるというかつて一般的であった社会認識をそのまま取り入れていることは見やすい。今日、経常的な収入を求めても正社員として就職できず、やむなく有期契約の更新を繰り返して生活している非正規労働者が多く見られるようになっていることを考えれば、調査票の改正は遅きに失した感もある。

 しかしながら、来年度以降用いられる予定の調査票案を見ると、労働市場の現実をどの程度認識した上で設計しているのか、いささか疑問も感じられる。それによると、「就職者」を「正規の職員・従業員、自営業主等」と「正規の職員等でない者」にわけ、これと別に「一時的な仕事に就いた者」を設けることになっている。解説によると、「正規の職員・従業員」とは「雇用の期間の定めのない者として就職した者」であり、「正規の職員等でない者」は「雇用の期間が1年以上で期間の定めのある者であり、かつ1週間の所定の労働時間が概ね40~30時間程度の者」であり、これに対して「一時的な仕事に就いた者」とは「臨時的な収入を目的とする仕事に就いた者であり、雇用の期間が1年未満又は雇用期間の長さにかかわらず短時間勤務の者。一般的に、パート、アルバイトとして雇用される者が該当すると考えられる」となっている。

 雇用契約が(更新を繰り返した後の実態としての勤続期間ではなく)1年以上であるか1年未満であるかというところで、「就職者」かそうでないかの線引きすることにどういう意味があるのであろうか。2009年改正以前の雇用保険法が、まさにそのような適用基準を設けていて、それが多くの非正規切りによって矛盾を露呈したため、同年の改正で6か月、2010年改正で1か月という基準に変更したことは記憶に新しい。雇用契約は数ヶ月であっても、それを「経常的な収入」として働いている非正規労働者がこれだけ増加している中で、彼らを一律に「臨時的な収入」目的の労働者と見なすような調査票案には、再考の余地があるように思われる。

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行方不明原発作業員の探索

産経から、

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111130/dst11113022400012-n1.htm(行方不明の原発作業員 民間調査会社に調査依頼へ)

>厚生労働省は30日、東京電力福島第1原発事故後に同原発で新規に作業を始めた後、行方が分からなくなっている作業員16人について、東電に対し、民間調査会社などに依頼して行方を捜し出し、連絡を取るよう指導したことを明らかにした。東電側も指導を了承、12月末までに調査結果を厚労省に報告する。

 厚労省によると、同原発では事故後から10月末日までに約1万7700人が作業に従事。ほとんどは身元確認が行われ、内部被(ひ)曝(ばく)線量を計測するなどしているが、16人については、被曝線量計の貸し出し名簿に名前が記されているものの、内部被曝線量を測定しないまま行方が分からなくなっている。

 うち6人は所属事業所などで身元が確認されたが現在の行方が分かっておらず、残る10人は、作業員が所属先として記していた事業所でも「そうした社員はいない」などとされ、存在自体が確認できていない。

 厚労省は「東電による調査を待っていたが、限界がある。東電が専門の調査会社に依頼するしかないのではないか、と判断した」と話している。

「存在自体が確認できていない」とはいえ、非実在作業員というわけではなく、確かにあのとき福島第1原発で作業していた誰かは現存しているはずなのだけれども。

闇に隠れてしまった原発作業員を、探偵会社に探してもらおうと。

これだけ騒ぎになっても出てこないというのは、やはりなにか曰く因縁があるのでしょうか。

なんだか、ミステリっぽくなってきました。

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