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2011年12月12日 (月)

この業界で裁量労働を導入するのには無理がある@『情報労連REPORT』12月号

2011_12 『情報労連REPORT』12月号が届きました。情報労連のHPにも電子ブックでアップされています。

http://www.joho.or.jp/doc/report/

わたくしの連載「労働ニュースここがツボ!」は、今回は「高年齢者雇用を進めると若者の雇用は奪われるのか?」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/johororen1112.html

>前回に引き続き、今月邦訳が刊行されるOECD報告書『世界の若者と雇用』(中島ゆり訳、濱口監訳)の内容を取り上げましょう。日本ではちょうど高齢者雇用に関する議論が進みつつある時期でもあるので、本書でOECDが指摘している「労働のかたまりの誤謬」について解説しておきたいと思います。

 近年、高齢者雇用を進めることが若者の雇用機会を奪うことになるという単純な議論が盛んに行われています。特に、若者の代表と称するある種の評論家たちが、若者の利益を掲げて高齢者雇用を攻撃するという傾向が見られます。たとえば、評論家の城繁幸氏はそのブログで「支給開始年齢と定年年齢のセットの引き上げは、年金だけではなく雇用も若年層から収奪することになる」*1と説いています。

 こういった評論家とは違いますが、日本の経団連が今年7月に公表した「今後の高齢者雇用のあり方について」でも、「現下の経済環境を背景に、ただでさえ新卒者が厳しい就職環境下に置かれ、既卒者への対応も政策的に重要な課題となっている中にあって、高齢者のみが優遇されるような政策が打ち出されれば、就業機会の公平性という観点から極めて問題があると言えよう。その影響は、新卒者のみならず、より広範に若年者雇用の問題に波及しかねず、労働市場全体の新陳代謝を停滞させ、我が国の活力の低下をもたらしかねない」*2と、高齢者が多くの仕事に就くと若者の仕事が少なくなるという議論を展開しています。

 しかしながら、上記報告書のBox2.1.で明白に論証されているように、この考え方はまったく正しくありません。高齢者の就業率と若者の就業率とは正の相関関係にあり、高齢者がたくさん働いている社会では若者もたくさん働いており、働く高齢者が少ない社会では働く若者も少ないのです。そして日本は前者(高齢者も若者もたくさん働く国)の典型です。この説明は、2006年に刊行されたOECDの『世界の高齢化と雇用政策』(濱口桂一郎訳)でもまったく同じようになされていました(同訳書p146)。5年後にも繰り返さなければならないほど、ヨーロッパ諸国におけるこの「誤謬」を支持する意見の根強さが窺われます。

 その原因として上記報告書は、高齢であるほど、学歴が低いほど、そして労働市場の状況が厳しいほど、高齢者が働くために若者に仕事がなくなると信じる傾向があることを指摘しています。日本でも、就職氷河期世代など、学校卒業期に就職が困難であった人々ほど、こういった議論に惹き付けられるという傾向があるようです。

今号では、この連載のほかに、16ページから17ページにかけて、わたくしが出席した「第9回情報サービスフォーラム」の概要が載っています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-5747.html(情報サービス産業はどこへ向かうのか?)

パネルディスカッションでは、わたくしが

>濱口 情報サービス労働は、少数の専門家たちがシステムを開発してきた経緯から、裁量性が高い労働であると認識されてきた。しかし、実際には元請企業から大量の業務が発注される多重下請構造という理由のために、非自律的・非裁量的になっているのではないか。そこでは、勤務間インターバル規制といった歯止めも必要となるのではないか。

というようなことを提起したところ、

情報サービス産業協会副会長の岡本晋さんが、

>岡本 この業界で裁量労働を導入するのには無理がある。納期が決められており、ボリュームのある業務をこなす中では、自由に働いて下さいというやり方はできない

と、極めて率直に胸の内を語られたのが印象的でした。

先月紹介したこの判決とも考え合わせると、いろいろと論じるべきことがありそうです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-9c85.html(京都某IT会社事件の判決文)

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