『障害者の福祉的就労の現状と課題』
松井亮輔・岩田克彦編著『障害者の福祉的就労の現状と課題 働く権利と機会の拡大に向けて』(中央法規)を、著者の一人である岩田さんからお送りいただきました。
http://www.chuohoki.jp/ebooks/commodity_param/shc/0/cmc/3535
本書は、以前に本ブログで取り上げた
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-7b4c.html(福祉的就労分野における労働法適用に関する研究会報告書)
をベースに、全面的に書き直されたもので、現在大詰めを迎えている障害者の福祉的就労のあり方の検討に有用な一冊です。
>障害者の福祉的就労については、労働法が適用されるのは一握りであり、大多数が労働者と扱われず、最低賃金の保障もされず、自立生活が困難な状況である。本書は、障害者の福祉的就労の現状について、海外・日本からの報告を踏まえ、今後の展望について検証し提言する。
目次は以下の通りですが、
序論 福祉的就労障害者の働く権利と機会の拡大を目指して
第1編 海外諸国における障害者就労の現状と労働法適用状況
はじめに
第1章 アメリカ
第2章 イギリス
第3章 フランス
第4章 ドイツ
第5章 オランダ
第6章 デンマーク
第7章 障害者雇用・就労に関するEU法政策と保護雇用下の「労働者保護」
第8章 海外諸国における一般雇用と保護雇用(就労)
第2編 日本における障害者就労の現状と課題
はじめに
第1章 福祉的就労支援現場の現状と課題
第2章 福祉的就労見直し提案の経緯
第3章 経済政策的観点からの検証
第4章 福祉的就労の多様な実態に応じた労働保護法上の課題
第5章 福祉的就労者の労働者性と個別的労働関係法の適用
第6章 障害者就労で福祉政策と労働政策の一体的展開をいかに実現するか
第7章 国際的動向からみる今後の課題と方向
前の報告書とはかなり構成が変わっていますね。国も、スウェーデンとオーストラリアが消えてデンマークが入っています。
岩田さんは、松井さんとともに総論的な部分を書くとともに、デンマークの章と、「福祉政策と労働政策の一体的展開」云々の章を書いています。ここでは、後者から、岩田さんの考えを要約した部分を。
>筆者は、労働施策担当領域の拡大を図るとともに、当面は、最低賃金法の減額特例制度の積極的活用や労働と福祉にまたがる中間領域での就労拡大により、将来的には、長期的賃金補填制度の導入により、図2-7の左側の雇用・労働施策対応部分を右側(障害の重い人の方向)に大きくシフトさせるべきであると考えている。
なお、EUのところで引馬さんが指摘し、岩田さんも上記章で指摘しているように、エンプロイメントってのは必ずしも雇用じゃないんですよね。シェルタード・エンプロイメントを保護雇用と訳してしまうと、若干ミスリーディングになるという話。
これは障害者問題だけではなく、広く雇用と非雇用就労にまたがる領域を議論するときに注意しなければならないことです。
« なるほど問題は、メンバーシップだったのだ。 | トップページ | スマイル0円が「ホスピタリティの生産性」? »
コメント