仕事漬け「社長 島耕作」のホンネ
日経のサイトに、漫画家弘兼憲史さんのインタビューが。
>「ワーク・ライフ・バランス」なんて言葉がありますが、島も私も、この言葉とは正反対の人生を歩んできました。人それぞれの考え方がありますが、仕事漬けだから不幸、なんてことはない。僕はそう、思います。
>漫画家の日常には、オンもオフもありません。土曜も日曜もありません。1年365日、完全な仕事漬けです。なぜこんなことができるのか。それは漫画家という仕事が好きだからです。とにかく漫画を描くのが楽しくてたまらない。毎日描いても飽きません。仕事を面白いと感じることができれば、働くことは苦痛ではないのです。
いや、それはそうでしょう。漫画家は人に雇われ、指揮命令を受けて働いているわけではないですからね。
1日24時間、1年365日、ひたすら書き続けて倒れても、それは本望でしょうし、別に誰かが安全配慮義務を問われるわけではない。
でもね、これは違いますよ。
>私は漫画家になる前、3年ほど大手家電メーカーでサラリーマンを経験しました。宣伝の仕事をしていたのですが、これが面白かった。それまでだらだらした大学生活を送っていた反動もありましたが、休みの日にも仕事をしていた記憶があります。オンとオフの切り替えなんてあまり意識したことはありません。
ヒラ社員弘兼憲史氏が、たまたま主観的にそう感じていたからといって、それを一般化してはいけない。
でも、それを一般化するのが、日本型正社員モデルの理想型でもあるのです。
前に、あるところで講演したときに、日本の正社員というのは「島耕作モデル」なんだと語ったことがあります。
島耕作は最後は「社長島耕作」になります。社長島耕作はいうまでもなく労働者ではありません。専務島耕作もやはり労働者ではありません。
部長島耕作は一応労働者ではありますが、間違いなく管理監督者であり、使用者の利益を代表する者ですから、気分は経営者でしょう。
課長島耕作は、法律的に厳密にいうと管理監督者に当たるかどうかは怪しいところもありますが、社会学的には立派な管理職であり、やはり相当程度気分は経営者です。
で、このシリーズの一番始めは、(あまり知られていませんが)実は「係長島耕作」だったのですが、これはもう絶対に管理監督者ではないはずですが、それでも相当程度に経営者的気分が入っています。
そして、その前の「ヤング島耕作」こと係員島耕作も、客観的には100%労働者のはずですが、多分やはり相当程度は経営者気分であったことは、上述の通り作者弘兼憲史氏自身が自らがそうであったと語っていますね。
ヒラ社員の時から将来社長になることを前提に経営者気分でものごとを考える、こういうあるべき「正社員」モデルを理想的に描くと、島耕作になるわけですね。
したがって、日本的正社員の辞書にワークライフバランスなどという腑抜けた文字がないのは当然といえましょう。
>僕がこれまで見てきた限り、仕事でうまくいっている人は、家庭がうまくいっていないケースが多い。会社で出世して社会的に高い地位を得るのか、出世とか社会的な地位など考えず、家庭の中で尊敬される存在になるのか。両方できれば理想ですが、どちらかを目指すというのが現実ではないでしょうか。
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» [日記]hamachan先生 [労務屋ブログ(旧「吐息の日々」)]
(11月10日追記)hamachan先生が同じ記事を取り上げておられました(ご教示いただいた方ありがとうございます)。http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-b3d0.html もちろん通底するものはあるのですが、立場や主義主張の違いで展開がずいぶん異なること... [続きを読む]
労働時間の規制を組合が懐中電灯持って見回りに来るシーンがあり、隠れるんだったか、なシーンを記憶しております。課長かヤングか。2011年の秘密結社・鷹の爪団のパロディ「週刊シマコー」でもこのあたりは扱われませんでしたね。
投稿: 藤原正樹 | 2023年11月 2日 (木) 09時09分