解雇と解任
世間で話題のあの話ですが、いうまでもなく清武氏は労働者ではなく、経営者でありますから、契約も雇用契約ではなく委任契約であり、その解除も解雇じゃなく解任であるわけです。
http://www.asahi.com/sports/bb/TKY201111180326.html(巨人、清武代表を解任 渡辺球団会長と対立)
>解任を受け、清武氏は「私は全く間違ったことはしていないので、後悔も反省もありません。処分は極めて不当だと思っている。権力者が誤ったとき、きちんとものを言うのが取締役の務めだと思う」と話し、法的措置を検討していることを明らかにした。
もちろん、委任契約の解除も原因が不当であれば当然争えますね。オリンパスみたいなとんでもない不正の例もあるわけです。とはいえ、コーチ人事で意見が対立して解任されたというので、どこまで法的措置が可能なのか、よく分からないところがあります。
これが解雇なら不当解雇として弁護士もやりやすいでしょうけど、代表兼ゼネラルマネージャーが会長にケンカを売っての解任では、何か違法行為を糾弾して解任されたとでもいうのでないと。
ただ、清武氏の感覚はある意味でよく分かるところがあります。
氏は読売新聞社に入社後、社会部で活躍し、同社部長から関連会社の巨人軍の役員としてやってきたわけで、雇用契約時代と委任契約時代とで大きく変わったという意識はたぶんないのでしょう。
でも、法律的には、雇用契約と委任契約は全然違うのです。そこのところがちょびっと露呈した事件なのかな?という気もしました。
(参考)
ちなみに、清武氏は立派に経営者側ですが、中には名ばかり役員というのもあります。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-f175.html(「名ばかり役員」労組加入OK 佐賀地裁「解雇は無効」)
>この記事、「解雇」って書いてますけど、承諾もない名ばかりとはいえ「取締役」は「解任」できても「解雇」はできないような。そもそも、取締役を誰が解任したの?と会社法的には疑問が湧いたりしますが、まあ、そういう法学部的感覚の通用する世界ではないということなのでしょう。
労働者が労働者としての権利を主張できなくするために取締役にしてしまうというのは、六法全書的にはなかなかシュールな世界ですが、まあ民俗労働法(フォーク・レイバーロー)的にはそれほど違和感のない世界なのかも知れません。
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というわけで、清武さんが雇用契約ではなく委任契約であり、解雇権濫用法理が適用されない「解任」されたという、一応なりとも弁護士であれば理解しておかなければならない肝心要のことが、必ずしもよく理解されていないのではないかと思われる司法試験合格者が、大阪方面にもおられたようです。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/111125/waf11112514000012-n1.htm">http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/111125/waf11112514000012-n1.htm(「あーだこーだいったら解任!」橋下氏が仰天プラン 公務員は読売グループで研修せよ?!)
>橋下氏はこの日の演説で公務員の身分保障について言及。知事時代に職員から「あんたのやってることはおかしい、あんたはバカだ」とメールが来たエピソードを披露。「公務員はね、一度読売グループにいったらいいんですよ。渡辺恒雄さんのもとにいって、あーだこーだ言ったら解任になるんだと。そういう厳しい民間企業にいっぺん勤めないと」と語り、公務員研修に読売グループを使わせてほしいと述べた。
それとも、もしかして、公務員を読売グループの従業員としてではなく「役員」として研修させるつもりか知らん。
投稿: hamachan | 2011年11月26日 (土) 12時07分