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2011年11月11日 (金)

産業医が法廷で裁かれた日実録編

先日、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-24e0.html(産業医が法廷で裁かれた日)

で紹介した事件の判決文が、さっそく最高裁のHPにアップされています。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111110110946.pdf

それだけ世の中の関心が高い事件だと判断されたと云うことなのでしょうね。

ここには、当該産業医が語ったと原告側が主張している言い回しをそのまま引用してみます。

>本件面談において,被告は,原告が封筒に入れて差し出した診断書を見ることもなく,「君,何の病気やねん。」などと詰問し,「君の症状は誰にでもあることや。それは病気とは言えへん。薬では治れへん。病気を作り出してるんは君自身や。それは甘え,いうこっちゃ。」と畳み掛けた。

>また,原告が,自身の病状について,何の前触れもなく急に不安になるなどと述べたところ,被告は,「そんな立派な体して,体力がないはずないやん。」と決め付け,原告が妻や友人といるときも同じような症状が出ると説明しても,それを信じようとせず,同席していたC係長に対し,「確認せなあかんな。」などと,被疑者に対する取調べのような口調で述べた。

>さらに,被告は,涙を流して泣いている原告に対し,追い討ちをかけるように,「頑張って自分で治さなあかんで,薬に頼らずに。」と述べ,「そんな状態が続いとったら,生きとってもおもんないやろが。」と言い放ち,面談の最後には「頑張りや,ほんまに頑張るんやで。」と言い残した。

これに対して被告側は、

>被告が,本件面談において,「薬だけで治すことは難しい」と述べたり,できる範囲で前向きな生活が送れるよう,原告に励ましの言葉をかけることはあったものの,詐病であるかのように原告を詰問したり,原告の人格を否定するような発言をした事実はない。
また,原告が,本件面談中に涙を流すようなことはなかった。原告は,ずっと下を向いており,被告の言葉に対して特に反応を示すことはなかった。

と主張しています。

これについて、裁判所は、

>被告は,原告を見た印象で,原告の状態は悪くなく,もう一歩で職場復帰できると感じていたため,可能な部分から前向きな生活をするよう励ませばよいと考えて,「それは病気やない,それは甘えなんや。」,「薬を飲まずに頑張れ。」,「こんな状態が続いとったら生きとってもおもんないやろが。」などと力を込めて言った(原告本人,被告本人)。
また,原告が,いつ急に不安になるか自分でも予測がつかず,妻や知り合いと話をしていても不安になることがあると言うのに対し,被告は,C係長に,事実確認をしなければならない旨を告げた(原告本人)。
原告は,面談途中から,嗚咽が漏れないようハンカチを噛み,下を向いて体を震わせながら涙を流していた(原告本人)。

と認定しています。

そして、その行動を次のように評価しています。

>ところで,被告は,産業医として勤務している勤務先から,自律神経失調症により休職中の職員との面談を依頼されたのであるから,面談に際し,主治医と同等の注意義務までは負わないものの,産業医として合理的に期待される一般的知見を踏まえて,面談相手である原告の病状の概略を把握し,面談においてその病状を悪化させるような言動を差し控えるべき注意義務を負っていたものと言える。
そして,産業医は,大局的な見地から労働衛生管理を行う統括管理に尽きるものではなく,メンタルヘルスケア,職場復帰の支援,健康相談などを通じて,個別の労働者の健康管理を行うことをも職務としており,産業医になるための学科研修・実習にも,独立の科目としてメンタルヘルスが掲げられていること(甲12)に照らせば,産業医には,メンタルヘルスにつき一通りの医学的知識を有することが合理的に期待されるものというべきである。
してみると,たしかに自律神経失調症という診断名自体,交感神経と副交感神経のバランスが崩れたことによる心身の不調を総称するものであって,特定の疾患を指すものではないが,一般に,うつ病や,ストレスによる適応障害などとの関連性は容易に想起できるのであるから,自律神経失調症の患者に面談する産業医としては,安易な激励や,圧迫的な言動,患者を突き放して自助努力を促すような言動により,患者の病状が悪化する危険性が高いことを知り,そのような言動を避けることが合理的に期待されるものと認められる。
してみると,原告との面談における被告の前記(1)の言動は,被告があらかじめ原告の病状について詳細な情報を与えられていなかったことを考慮してもなお,上記の注意義務に反するものということができる。

と、産業医としての注意義務違反と認定しています。

いまや「産業医には,メンタルヘルスにつき一通りの医学的知識を有することが合理的に期待される」というのが、全国の産業医のみなさんが銘記しておかなければならない時代になったということなのでしょう。

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