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2011年10月30日 (日)

金属労協のTPP早期参加論

世間ではTPPが話題になっているようですが、どうしても論点は農業中心になっているようなので、本ブログでは労働問題の観点からいくつか情報をまとめておきたいと思います。この問題にもっとも熱心に取り組んでいるのは金属労協(IMF-JC)ですが、最近立て続けにいくつかの文書を発表し、また国民会議のシンポジウムでも意見を述べていますので、それらを紹介するところから。

まず10月12日に公表した「政策レポート」が「TPPに早期参加表明を」という特集を組み、次のような記事を載せています。

TPP とは何か~その概要と意義         亜細亜大学教授     石川幸一 … 2
TPP への早期参加表明は日本再生にとって不可欠 金属労協政策企画局次長 浅井茂利 … 8
TPP と農業                  元農林水産事務次官   髙木勇樹 … 15
TPP への早期参加表明を求める金属労協見解                    … 23
地方議会におけるTPP 反対の動きなどに対する金属労協組織内の対応について    … 23

このうち、浅井さんの文章が金属労協の考えをよく示していますので、いくつか引用しておきましょう。

>東日本大震災によって、被災地の工場が損壊するとともに、素材や部品の供給が損なわれ、電力をはじめとするエネルギー不足と相まって、日本のものづくり産業は、操業停止、操業短縮に追い込まれたところが少なくない。ここ数年、国内生産重視の傾向があったが、大震災をきっかけに、再び海外展開が加速し、国内の生産拠点と雇用が失われることが強く懸念されている。国内投資を促進し、加工貿易立国、ものづくり立国であり続けるための事業環境整備に力を注いでいかなくてはならないが、TPP参加は、その重要なファクターである。日本企業だけでなく、外国企業が生産拠点を設けようとする場合にも、TPP参加国か否かは、重要な判断基準になってくるだろう。

>わが国では、農産物の市場開放を進めることができないため、経済援助や看護・介護人材の受け入れを代償にEPAを締結してきたが、こうしたやり方は行き詰まっている。

>現行のTPPでは、労働に関する覚書が締結されている。ILOの中核的労働基準(結社の自由・団体交渉権、強制労働の禁止、児童労働の廃止、差別の排除)を確認し、加盟国にこれに則した労働法や労働政策を求めるとともに、貿易や投資奨励のための労働規制緩和は不適切であることを規定している。
 TPPは、新興国・発展途上国の勤労者にとって、経済成長に見合った生活水準の向上を実現する上で、きわめて重要な役割を果たすことになる。
 金属労協の所属するIMF(国際金属労連)では8月、「TPP交渉に関するIMF声明」を発表したが、この中ではTPP交渉を、従来の2 国間FTAではなし得なかった「雇用拡大支援、社会的保護の改善、そして労働者の基本的権利、環境基準、人権、民主主義の推進を通じた生活水準の引き上げ」を目的とする貿易を実現するための「新たなフレームワークを築くべき好機」であると位置づけている。

10月20日には、「TPPへの早期参加表明を求める金属労協緊急アピール」を、参加5単産の代表である議長、副議長の連名で公表しています。

http://www.imf-jc.or.jp/top_img/tpp_appeal20111020.pdf

>11月のAPECを目前に、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加表明の是非が焦点となっている。金属労協は、TPP参加が日本再生にとって不可欠との考えに立ち、一刻も早く参加表明を行うよう、ここに緊急アピールを行う。

東日本大震災からの復興にとり、日本経済の再生、成長がきわめて重要である。しかしながらわが国経済は、超円高、デフレ、FTA・EPA締結の遅れ、電力不足などによって、大打撃を受けている。ものづくり事業拠点の海外移転、素材・部品の海外調達がさらに加速しつつあり、国内雇用環境は悪化している。わが国再生のためには、ものづくり産業の事業環境整備によって、国内産業基盤を強化し、雇用を確保していくことが決定的に重要である。

資源の乏しいわが国は、戦後の自由貿易体制によって多大な恩恵を受けてきた。わが国はFTA締結の遅れにより、国際競争上、著しく不利な状況に陥っているが、TPP参加により、EUなどTPP以外の国々とのFTAも促進される。また、日本企業のサプライチェーンが、TPPというひとつのFTAの傘下に集う意義も大きい。加えて、中核的労働基準や環境基準が盛り込まれる方向となっており、環太平洋地域全体の持続的かつ公正な成長実現にとって、大きな前進である。

なお、農業の強化が重要であることは言うまでもない。TPP参加を契機に、自立した強い農業、環境にやさしく安全な食品を供給する産業としての農業の確立を図るべきである。

TPPに関する情報が限られているため、国内の議論には混乱が見られる。政府は、正確な情報に基づき、日本経済の空洞化阻止、長期的な成長の実現という観点に立った国民的議論を促し、もって早急にTPP交渉参加を決断すべきである。

10月26日には、若松事務局長が「TPP交渉への早期参加を求める国民会議」シンポジウムにパネリストとして参加し、次のように述べています。

http://www.imf-jc.or.jp/top_img/tpp_sympokiji.pdf

>パネリスト:若松英幸(金属労協事務局長)

IMF-JC(日本語略称:金属労協、以降JCと略)は自動車や電機、鉄鋼、造船重機、機械産業などで働く労働者200万人で構成されています。JCでは、昨年の4月に、日本のTPP交渉への早期参加を政府に求めていくことを決定し、当時の直嶋経済産業大臣に直接要請も行って参りました。その後、この議論が本格化するに従い、お手元に配布してある政策レポートのように、JCに加盟する5つの産業別組合の意思結集を図り、また地方組織に対しても、地域での理解を深めるよう働きかけてきました。TPPについては、不正確な情報が蔓延しておりましたので、資料集を発行し、先週10月20日にも、改めて「TPP早期参加表明を求める緊急アピール」を発表したところであります。

われわれが、なぜ他に先駆けてTPP参加を主張したのか。それは2つの観点、国際労働運動の側面と国内雇用の問題とがあると考えております。国内雇用については、またのちほど発言させていただくとして、まず国際労働運動のお話しをさせていただきます。

私どもの組織IMF-JCの「IMF」とは、国際金属労働組合連盟の略称であります。世界で2,500万人の組織人員を数え、私どももその主要なメンバーであります。IMFは、ILO(国際労働機関)加盟国に義務づけられている中核的労働基準、すなわち結社の自由・団体交渉権、強制労働の禁止、児童労働の廃止、差別の排除という4つの項目を、世界であまねく確立する運動にとくに力を入れておりまして、私どもも積極的に参画しております。

グローバル化に対応し、日本企業の生産拠点の海外展開も急激に拡大しておりますが、それと同時に、そのような海外拠点での労使紛争が頻発しております。労使交渉がこじれてストに入る例などは多々ありますが、組合役員を解雇したり、組合活動を妨害したりという事例も尐なくありません。こうなってしまうと、中核的労働基準違反とみなされ、国際的な非難の対象となってしまいます。JCは日系企業の母国の労働組合として、現地の組合の皆さん(仲間)はもとより、企業にとってもよい解決が図れるよう、日々、対応に追われています。また労使紛争を未然に防止し、話し合い重視の、健全な労使関係が構築されるよう、日本国内と進出先の相手国で、労使を対象としたセミナーやワークショップを開催しているところであります。

中核的労働基準に関する労使紛争が勃発する原因・背景は、いくつもありますが、進出先の労働法制が中核的労働基準を満たしていない、あるいはその運用に不備がある、といった場合には、労使紛争が起きやすいと言えます。

また、私はかつて北米自由貿易協定(NAFTA)で注目を集めるメキシコのマキラドーラを訪問したことがあります。そのような輸出加工区(EPZ)や特区では、税などの優遇だけでなく、団結権が制限されていたり、労働基準や環境基準が他の地域よりも弱められていて、そうしたことで外国企業を誘致しようという例が尐なくありません。そうした特区では、経済活動は盛んになるものの、従業員の賃金は低いまま、職場の環境、安全衛生面は劣悪、従ってその国の経済全体を底上げすることにもならない、という場合があります。企業にとっても、目先の利益になるかもしれませんが、決して長期的な利益にはならないだろうと思います。

とくに、健全な経済活動をする企業が、賃金・労働条件が低く、環境意識も低い企業と、競争しなくてはならないという点で、健全な市場競争、公正競争にも反すると言えます。自由放任というのはウィン・ウィンの関係を約束するものではなく、貿易のルールを慎重に運用しなければ様々な問題を内包していることも承知しております。

TPPでは、貿易・投資の促進を目的とした労働基準や環境基準の緩和の禁止、中核的労働基準の遵守、国際的環境基準の遵守などが盛り込まれる方向と認識しております。TPP参加国の長期的かつ持続的な発展、社会的な公正が確保された成長、健全な市場経済を実現するのに、大きな前進と言えるのではないかと考えております。

従来、国際労働運動の世界では、自由貿易やFTAに対し、どちらかというと消極的な姿勢が見られたことは事実です。しかしながら、EU・韓国FTAの合意以降、そうした雰囲気は大きく変化しております。IMF(国際金属労連)では、この8月にTPPに関する声明を発表しておりますが、この中でも、TPPは、貿易を通じて雇用を拡大し、社会的保護を改善し、生活水準を引き上げるための「新たなフレームワーク」である、と評価しております。

以上、国際労働運動の面から見たTPPの意義について、まずお話しをさせていただきまし
た。

>パネリスト:若松英幸(金属労協事務局長)

いま、日本のものづくり産業が、大変厳しい状況に追い込まれているのは、みなさんご承知のとおりです。経済の実力を大きく超える1ドル=75円という超円高、デフレの継続、電力の供給不安と料金引き上げ、そしてFTA締結の遅れ、これらが輸出産業を直撃しており、それがひいては、日本経済全体に打撃を与え、空洞化が現実のものとなりつつあります。ものづくり産業では、海外向けの生産拠点のみならず、マザー工場や開発拠点までもが、海外に移転する動きが見られ、国内雇用は危機に瀕しています。東日本大震災からの復興を図り、日本再生を果たすためには、ものづくり産業の事業環境整備によって、国内産業基盤を強化し、雇用を確保していくことが決定的に重要だと思います。

資源の乏しいわが国は、戦後の自由貿易体制によって多大な恩恵を受けてきました。2010年の金属産業の輸出は49兆円と日本の輸出額の73%を占め、貿易黒字は30.2兆円(日本全体は6.6兆円)で、燃料や資源、食糧などの輸入に寄与しています。

わが国はFTA締結の遅れにより、国際競争上、著しく不利な状況に陥っています。この点については、みなさん十分にご承知ですので、これ以上申し上げませんが、TPP参加によって、TPP域内に対する競争条件が改善するのはもちろん、EUなどTPP以外の国々とのFTA締結も、促進されることになると思います。

グローバル経済の中で、日本のものづくり産業はどのような方向で生きていくか、われわれとしては、海外の消費地生産、あるいは消費地の近くの拠点国での生産が、一層進んでいくことを踏まえつつ、やはり国内としては、研究・開発拠点、マザー工場、最先端・高機能・高品質製品の生産拠点、高度素材・部品の供給拠点としての役割を、引き続き果たしていきたいと思っております。そうした場合、日本企業のサプライチェーンが、TPPというひとつのFTAの傘下に集うということの意義は、非常に大きいと考えます。東日本大震災によって、日本からの素材・部品供給がいかに重要かということが再認識されました。リスク分散の観点から、見直しの動きもあるようですが、われわれとしては、何とかその地位を保持していきたい。TPP参加は、そのための重要な環境整備であります。

TPPへの参加に際しては、農業問題がやはり焦点となります。農地の集約化・大規模化、生産者の創意工夫が生かされる仕組みが不可欠だと言われて久しく、またそうした政策も行われてきましたが、実効が上がってきませんでした。日本の農業強化のためには、やはり専業農家を強化していく農政が必要不可欠です。高齢化や、消費の減尐で耕作放棄地が広がっていく現状を見ているだけではなく、若者に魅力ある産業としての農業を強化していくことも必要ではないでしょうか。

本日はこの場に、おおぜいの経営者の方がおられると思います。国内拠点を維持するかどうかは、結局は企業の経営判断です。日本企業の強みの源泉は、たとえどのような時代になっても、国内拠点の「現場」、「人」にあると思います。国内拠点なしで、韓国企業、中国企業と伍していくことは難しいのではないかと思います。

私たちは小さい時から「資源の乏しい日本は、原材料を輸入し、付加価値の高い製品に加工して輸出することで経済が発展する」と教えられ、今でも、そして将来も、貿易・ものづくり立国であると信じています。グローバル化がますます進展する時代に、貿易の門戸を閉ざして生きていける時代でないことは、多くの人が実感していると思います。

IMF-JCとしては、TPP参加を機に国内の産業を活性化し、新たな産業の振興を図り、長期安定雇用の場を維持・拡大したいと願っています。ぜひ、ご理解・ご協力を頂きたく、よろしくお願い致します。

金属労協の立場が非常に明確に打ち出されているといってよいでしょう。

上で引用されている国際金属労連(IMF)のTPPに関する声明というのは、こちらにありますが、

http://www.imfmetal.org/index.cfm?c=27413&l=2

IMF unions demand fair trade in Trans-Pacific agreement

IMF労組はTPP協定における公正貿易を要求する

>IMF affiliates from countries in Asia-Pacific and the Americas met in Geneva on August 29 to discuss the ongoing negotiations for a Trans-Pacific Partnership Agreement. A joint trade union strategy was defined to make the creation of quality jobs and the promotion of fundamental labour standards an explicit goal of the agreement.

アジア太平洋アメリカ地域のIMF参加労組は8月29日にジュネーブで会合し、TPP協定に向けた交渉について議論した。労働組合の共同戦略は、上質の雇用の創出と労働基本権の促進を協定の明示の目標とすることである。

この声明で注目しておきたいのは、公共サービスへの言及でしょう。

>Furthermore the TPP must not include provisions on any essential public services;  rules that can limit the governments’ sovereign right to legislate in the interest of their citizens or prevent access to affordable medicines; and commitments on financial services and investment liberalization that can limit the countries’ ability to control capital flows and undermine effective financial regulation.

さらに、TPPは重要な公共サービスに関する規定、市民の利益のための立法する政府の主権を制限したり、医療へのアクセスを妨害するするようなルール、各国の金融規制を掘り崩すような金融サービスへのコミットメントや投資の自由化を含めるべきではない。

この部分は、金属産業労働者としても重要な点だということなのでしょう。

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コメント

>http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20111102.pdf

日本医師会等は、米韓FTAでは医薬品、医療機器の償還価格にまで踏み込んだ内容になっていることなどから、混合診療の全面解禁、薬価算定ルール等への干渉、営利目的の病院の参入などが今後要求される可能性があるとして、TPPに慎重な対応を求めています。
TPPは利益を得る製造業vs弱体化する農業という二項対立で語られがちです。しかし、関税の撤廃以外での規制の平準化の方向性がどのようなるかが最も重要なことでしょう。加盟国に労働法や労働政策を平準化させる方向に促す、すなわち公正な経済成長のための規制の強化に資するのか、自由化の名の下に新自由主義的な価値観を押し付けられることになるのか。この点、新自由主義者のTPP賛成論は後者の価値観を無条件に肯定しているため注意が必要だと考えます。
もうひとつの問題点は税と社会保障の問題同様、政党によって選択肢を選べないことでしょう。菅前首相の言葉を借りるなら、政治家は3種類に分けられます。第一の道、つまり自民党田中派流の利益誘導政治志向の者、第二の道、つまり新自由主義的な歳出削減志向の者、第三の道、つまり社会保障重視のため政府を大きくする志向の者。
税と社会保障の問題では、増税反対と増税賛成(社会保障重視)の論議が政党をまたがって第一、第二の道の政治家と第三の道の政治家との間でなされている。TPPの問題では、反対と賛成の論議がやはり政党をまたがっているが、第一の道の政治家と第二、第三の道の政治家との間でなされている。世論を左右する重要事項に関して、政党内の権力争いで物事が決定されてしまい、政界再編しようにも重要事項ごとに再編方法が異なってくるのが問題だと考えます。

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