暴力団の社会的意味
昨日、今日と産経新聞が山口組の組長の独占インタビューを載せていて、ネット上でも注目を集めているようです。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111001/crm11100112010000-n1.htm(【山口組組長 一問一答】(上)全国で暴排条例施行「異様な時代が来た)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111002/crm11100212000002-n1.htm((下)芸能界との関係「恩恵受けること一つもない」)
暴力団という存在は、公法的ないし政治学的にいえば、国家という(定義上一地域においては唯一の)暴力装置の下にない別の暴力装置をどこまで許すのかという問題ですし、(ちなみに、このホッブス的問題がわからないりばたりあんな人々もいるようですが)
私法的ないし経済学的にいえば、国家の暴力装置(司法機構)が円滑に作動しない(と感じる)場合に、自らの権利を正当に行使するために(適当な報酬を払って)用いる別個の暴力装置ということになりますが、
もう一つ、労働法的ないし社会政策的観点からの社会的意味論というのもあります。今回の産経新聞のインタビューでは、組長自ら、この観点をかなり前面に出して主張している点が、特に注目されます。
>--身分政策というのは?
われわれの子供は今、みんないじめにあい、差別の対象になっている。われわれに人権がないといわれているのは知っているが、家族は別ではないか。若い者たちの各家庭では子供たちが学校でいじめにあっていると聞いているが、子を持つ親としてふびんに思う。このままでは将来的に第2の同和問題になると思っている。一般の人はそういう実態を全く知らない。
>・・・ちりやほこりは風が吹けば隅に集まるのと一緒で、必ずどんな世界でも落後者というと語弊があるが、落ちこぼれ、世間になじめない人間もいる。われわれの組織はそういう人のよりどころになっている。しかし、うちの枠を外れると規律がなく、処罰もされないから自由にやる。そうしたら何をするかというと、すぐに金になることに走る。強盗や窃盗といった粗悪犯が増える。大半の人たちはわれわれを犯罪者集団と突き放していることはわかっている。その一因が私たちの側にあるのも事実で、そうした批判は謙虚に受け止める。しかし、やくざやその予備軍が生まれるのは社会的な理由がある。
>これだけ締め付けられ、しかもこの不況下でぜい沢ができるわけがない。そもそもやくざをしていて得なことはない。懲役とは隣り合わせだし、ときには生命の危険もある。それでも人が集まってくる。昔から言われることだが、この世界で救われる者がいるからだと思う。山口組には家庭環境に恵まれず、いわゆる落ちこぼれが多く、在日韓国、朝鮮人や被差別部落出身者も少なくない。こうした者に社会は冷たく、差別もなくなっていない。心構えがしっかりしていればやくざにならないというのは正論だが、残念ながら人は必ずしも強くはない。こうした者たちが寄り添い合うのはどこの国でも同じだ。それはどこかに理由がある。社会から落ちこぼれた若者たちが無軌道になって、かたぎに迷惑をかけないように目を光らせることもわれわれの務めだと思っている。
この主張そのものの正当性をここではあえて論じることはしませんが、ここで言われていることが社会政策でいうところの社会的排除、社会的包摂の問題構造であることは明確に指摘されていると言えましょう。近年、政府関係でも言われてきた「居場所」の問題です。その意味では、暴力団と同じ問題の地平にあるのは湯浅誠さんたちのNPO活動という面もあるのかも知れません。
そして、暴力団の「生業」という視点からは、問題は労働の世界につながってきます。
>--それでは組の資金源はどういうものなのか
基本は正業だ。揺すりたかりや薬物では断じてない。もともと、山口組の出発点は今でいう港湾荷役の人材派遣業だった。その後、芸能などの興業に進出した。昔から世の中に褒められない業種もある。遊興ビジネスなどがそうだが、そういう業種は確実な利潤が見込めないし、複雑なもめごとがつきものだから、大手の資本はリスクを嫌って進出しない。そうした隙間産業にやくざは伝統的に生息してきた。今も基本的には変わらない。建設関係などまっとうな仕事もあるが、今は暴力団と関係があるというだけでそうした仕事はできない。人材派遣も、飲食業もできない。どういう方法で正業が立つかと検討している。不良外国人は飲食店とかいろんなことやっているが、許可は得ていない。次から次へと変えていく。われわれもそうなっていくのかな、と思っている。悪に走ろうと思ったら、明日からでもできるが、任侠を標榜している以上、人の道に反することはしない。
-犯罪収益が資金源になっているのではないか
われわれは泥棒や詐欺師ではない。オレオレ詐欺なんてとんでもない話だ。年老いた親の世代をだましたり、貧困ビジネスという食えない身寄りのない路上生活者をむしるようなことは断じて許されない。少なくとも山口組にそうした者がいれば厳しく処分する。そもそも山口組は下部組織からの上納金で毎月多額のお金を集めていると思っているのではないか。そんなことはありえない。山口組は経費として、全員でその月その月の頭割りで個人負担しているだけで、上納金なんて一切ない。
ここでも、ここで言われていること自体の正当性如何は論じませんが、港湾荷役や建設業の人材派遣が山口組の本来の業務であったことは、本ブログでも何回か触れてきたことです。この観点からは、日本社会の企業のメンバーシップから排除された人々に、どういうメンバーシップを与えることができるのか、という根本問題が、ここに凝縮されているということもできるのかも知れません。
もちろん、山口組の発祥元である港湾荷役の世界は、「組」ならぬ「組合」のメンバーシップという観点からは、全港湾などの労働組合の歴史でもあるわけです。
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本気で社会正義・日本を思う方々は,http://blog.yahoo.co.jp/ansund59 の真相究明を!
長年、政府・言論・キチガイ公務員、
あらゆる所で特恵・恩恵を受けてる人達が一致団結し
独裁・犯罪国家にしてます。
表では愛国・国家保安の名を借りて、
裏では官民が共謀して巧妙な手口で他人の財産を強奪
投稿: 安淳徳 | 2011年10月 4日 (火) 14時21分