そーゆーことは法社会学でやってくれ(意訳)@金子良事
金子さんからの一連の拙著書評の最後のメッセージ。
http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-220.html(労働法規範理論と社会科学としての法)
一言でいうと、これですね。
>濱口さんは今回の本を労働法と労使関係論を繋ぎ合わせる必要があるという問題意識で書かれたわけですが、以上のような前提を踏まえて言えば、それも全部トータルで法学でやってください、と思わなくもない。
実をいえば、それができるような状況ではないから、労使関係論や社会政策の蓄積をそのまま流用するような形でしか、この分野が書けないのです。
>法社会学をベースにした労働法をしっかり確立させるということでしょう(もちろん、末弘厳太郎以下、これが豊富な研究蓄積を残しているわけですが)。ただ、労働に関する法社会学が独立した成果を持っているかどうかというと、私の知る限りでは少し心許ないという気もするんです。
「心許ない」どころの話ではない。ある意味では驚くべきことですが、日本の法社会学というそれなりに確立した学問分野において、労働の世界はほとんどその対象として取り上げられておらず、事実上欠落してしまっているのです。
末弘厳太郞が日本の労働法の元祖であるとともに法社会学の開祖でもあるという位置にいるだけに、この乖離は信じがたいものですらありますが、しかし事実です。
前に本ブログで紹介した磯田進氏の論文などがその萌芽的なものでありえたのでしょうが、この流れは完全に途絶してしまっています。
ある時期、法社会学方面(渡辺洋三氏)から、法解釈学に熱中する労働法学に対する批判が寄せられ、一種の「論争」のようなものがあったこともありましたが、実は中身の「論」になっておらず、言い合ったまま終わった感があります。
一方、社研の藤田若雄氏は、まさに社研の労使関係論や社会政策の流れの中で社会科学的観点からの労働法研究を進めましたが(ですから「法社会学」とは言い難いのですが)、こちらもその後受け継ぐ人はいません(と、少なくとも私は認識しています)。
その意味で、金子さんの「そーゆーことは法社会学でやってくれ(意訳)」という言葉は、まことに厳しいものであるとともに、この分野の者がこれから何をやらなければならないかを指し示してくれるものでもあります。
で、ここでさりげに、話をPOSSEの川村君に振ってしまおう。
http://twitter.com/#!/kwmr_posse/status/126816816923295744
>職工事情は前に手を出したときは正直長くてちゃんと読まなかったから、冬に腰を据えて読もうかな。と呟こうとしたら野川先生が先回りしていた。笑 hamachanブログで紹介されていた磯田進さんのような法社会学の文献も紹介していただきたいです…。
それはむしろ、あなた方が、これからやるべき課題なのですよ。
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