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2011年10月 3日 (月)

辻勝次『トヨタ人事方式の戦後史』

87067 索引まで含めると679ページ。定価9000円。物理的にも大著ですが、内容も大著です。

http://www.minervashobo.co.jp/book/b87067.html

労働研究に詳しい人に説明するとすれば、かつてJILPTの今田幸子さんと平田周一さんが『ホワイトカラーの昇進構造』でやった人事分析を、大トヨタを対象にやった本、ということになりますが、こちらはトヨタ本社からは一切資料をもらわず、1940年から2000年までのトヨタの社内報に報じられた6万人/25万人の人事異動の記事を、ことごとくコンピュータに入れ、それを縦横に分析することで、トヨタ人事の凄さを浮き彫りにした本です。

今田・平田本が対象にしたOLL社が、ある意味で典型的な日本型人事であるのに対し、外国からは日本的雇用の代表格みたいに見られている(「トヨティズム」なんて言い方はそうでしょう)トヨタが、そういう日本的な生ぬるさとは対極的であることが、データそのものによって雄弁に示されていくところが、ぞくぞくします。

一番わかりやすいのがキャリアツリー。(よくいわれる日本型に沿って)若いうちはほとんど差がつかないOLL社に比べ、トヨタは平から係長にするところでも露骨に差をつける。それも、トップから順々に差をつけ、大きな塊が過ぎても、まだ少しづつ差をつけながらラストに至るまで出世させていく。つまり、できる奴も初めから目の色変えて競争させる。できない奴もいつまでも諦めさせずに競争させる。社内総競争量の極大化のために良く考えられています。しかも、トップはそのままトップを走るわけじゃない抜きつ抜かれつのデッドヒートが係長昇進、課長昇進、次長昇進、部長昇進、役員昇進、と続いていく。このあたり、こんな紹介では全然分からないので、是非本書自体に当たって見てください。

その他にも、いろいろと興味深いトピックが山のように載っている本でした。

序 章 問題意識と本書の構成――企業社会研究の意義
 1 研究の焦点と分析方法
 2 研究経過とデータ
 3 本書の構成

 第1部 人事空間概念とその適用
第1章 人事空間の構成要素――人事構造と人事意識の矛盾
 1 基礎概念
 2 空間規模の変容
 3 人事空間の調整
 4 人事年輪
 5 人事空間の階層的,機能的構成
 小括 トヨタ人事空間の構成

第2章 トヨタ人事データの構造と構成――戦後トヨタの人事発生動向
 1 TWCDの種類とレコード数
 2 新入社TWCD
 3 昇格TWCD
 4 異動TWCD
 5 勤続表彰TWCD
 6 排出TWCD
 7 死亡退出TWCD
 8 TWCDの信頼性
 9 TWCDの留意点
 小括 TWCD各ファイルの要点

 第2部 昇格異動と部署異動――数量分析
第3章 キャリアツリーの3時点比較――チューブの中のアミダクジ
 1 トヨタの職位体系とコード化
 2 3時点キャリアツリーの比較
 3 キャリアツリーの留意点
 小括 トヨタ人事空間の50年

第4章 昇格空間の変容と昇格管理――昇進構造と昇進意識
 1 昇格数の年度別変化
 2 地位供給状況の推移
 3 昇進率と選抜率――3コーホート比較
 4 昇格率と社員構成の変化
 小括 最近の競争状況と人事意識

第5章 トヨタ人事方式の諸原則――厳選主義と年功制の同時存在
 1 トヨタ人事方式
 2 駅伝レースとマラソンレース
 3 1985年同期課長昇進集団――事例分析
 4 社員集団編成の基本形
 5 同期昇進集団の構造と機能
 小括 最近の趨勢

第6章 トヨタ人事と他社人事――トヨタと他社の人事諸指標
 1 先行研究
 2 トヨタと他社の競争諸指標の比較
 小括 トヨタの競争強度

第7章 部署・分野編成と部署異動――スペシャリストとジェネラリスト
 1 TWCD部署異動ファイル
 2 先行研究と本章の課題
 3 部署異動現象の全体像
 4 部署異動の構造と主体
 5 キャリア主体とキャリアの核
 小括 トヨタ人事の特性

第8章 部署異動とキャリア格差――社内地位とキャリア
 1 社内地位と異動
 2 キャリア4類型
 3 到達地位とキャリア格差
 4 専門職経験と昇進
 5 兼務とキャリア
 6 キャリア核とエリート分野
 7 採用区分のキャリア格差
 8 トヨタ人事とOLL社人事
 小括 トヨタ人事の特徴

第9章 長期勤続制度――終身雇用の運用実態
 1 終身雇用と長期勤続
 2 平均勤続年数
 3 入社年別生存率
 4 TWCDによる勤続分析
 5 1956~1959年コーホートの生存状態
 6 採用区分と排出理由
 小括 企業社会と長期勤続

 第3部 社会格差と企業内格差――事例分析
第10章 企業社会と女子社員――結婚退職とジェンダー体制
 1 女子社員の定年退職状態
 2 女子社員排除の歴史
 3 事例に見る1960年代の定年退職者
 4 結婚退職制度確立後の女子社員
 5 TWCD女子ファイル
 小括 企業社会と女子社員

第11章 個別人事空間の動態――個人,上司,人事部の3者ゲーム
 1 課題の設定とデータの性格
 2 内部労働市場と企業社会
 3 個別人事空間の構成要因
 4 異動主体関連要因
 5 上司関連要因
 6 人事部関連要因
 小括 企業社会の人事原則

第12章 賃金と家計――トヨタ技能員の給与明細分析
 1 予備考察
 2 1980年代の賃金体系
 3 Kさんの給与項目の時系列変化
 4 1990年の賃金体系改訂
 小括 1993年改訂と問題の所在

第13章 出身階層と社内格差――誕生からキャリア中期まで
 1 昇進格差の計量分析
 2 昇進格差の平均像
 3 面接記録に見る企業内人生の多様性
 4 キャリア初期
 5 結婚と家族形成
 6 キャリア中期の仕事
 小括 世代・職種類型別プロファイル

第14章 社内格差と人生行路――キャリア中期から引退まで
 1 最高地位への到達
 2 最高地位前後の仕事ぶり
 3 退出前後の状態
 4 トヨタ社員生活の総括
 小括 トヨタマンの人生総括

第15章 企業社会と3世代社会移動――企業内格差と一般社会格差
 1 本章の課題と方法
 2 親世代から本人世代へ
 3 企業内格差
 4 子の学歴と職業
 5 3世代の地位の継承と限界
 6 格差の拡大再生産
 小括 企業社会の3つの担い手,社会層

第16章 役員会の構成と昇進ルール――企業トップの内部構成
 1 予備考察
 2 玉突き連鎖
 3 役員のプロファイル
 4 生え抜き役員のキャリア
 5 出身大学,学部,分野
 6 年功と制限時間ルール
 小括 トヨタ役員会の人事ルール

第17章 企業戦士の死亡退出――宗教集団の死亡者処遇
 1 企業社会の「戦死」者の意味
 2 亡数
 3 死亡者属性の年次変化
 4 死亡率とその推移
 5 死因
 6 死亡退出者と昇進速度
 小括 死亡退職者の現在

終 章 企業社会の誕生と終焉――企業社会体制の光と影
 1 トヨタの企業社会変容史
 2 自動車他社との共通性と差異
 3 OLL社との比較
 4 企業社会の功罪

あとがき
文献
人名索引
事項索引

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