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2011年10月10日 (月)

本日の拙著書評

本日、マシナリさんとラスカルさん、さらには労働弁護士の水口洋介さんから拙著『日本の雇用と労働法』への書評のエントリがアップされました。

http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-478.html集団的労使関係の未来とは

マシナリさんは、長引く風邪の中で「布団の中で熱にうなされながら」拙著と水町著を読まれたとのことで、

>hamachan先生本が金属を写実主義的に切り出したオブジェのような重量感があるのに対して、水町先生本はラフなスケッチという感じでこんがらがった頭を整理するのに重宝するような感じがしました。

はぁ、金属のオブジェ・・・。自分としては、あまり重量感のないチャート式に頭を整理できる本にしたかったつもりなんですが。

マシナリさんの関心は集団的労使関係にあり、拙著と水町著から適宜引用しつつ、その議論の難点も指摘しています。

一方ラスカルさんは、

http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20111010/1318211052

>本来、新書として著すには広大な領域をもつ日本の雇用システムの全体像を、本書は、統一的な視点のもとで描き、その結果、おおくの記述を必要とする個々の部分システムについては、焦点の絞った記述としている。

焦点の絞った記述と言いますか、やや凝縮した書き方になってしまって、かえってわかりにくくなっている面があるのかも知れません。

ラスカルさんの批評の焦点は、拙著の記述に書かれていることよりも、書かれていないことにむしろ向けられています。

>日本の雇用システムの「二重構造」は、いかにして解決されるか――本書には、その回答は記載されていない。「二重構造」の解決は、制度的補完性のもとに形成されたシステム全体の見直しを必要とする。現実をみると、新規学卒者の定期採用制、ジョブ・カード制度やそれを進化させた日本版NVQといった職業認定システム、今年から始まる求職者支援制度を含む広義の公共職業訓練などは、いままさに変化の過程にあることを示すものであるようにもみえる。しかし、これらを端緒とすることになるかもしれないシステム全体の見直しは、日本の雇用システムがこれまで可能にしてきた合理化のための柔軟性をもまた、同時に失わせることになるだろう。実際には、このようにして始まった雇用対策のパラダイム変化は成功せず、結果的には、雇用対策の中心は引き続き企業の雇用維持(雇用調整助成金など)に頼ることになるものと思われる。

 おそらく、本書のような制度的視点(いいかえれば「内省」的視点)から、この問題に根本的な回答をあたえることはできない。しかし、視点を「転回」させることで、暫定的な処方箋をあたえることは可能である。つまり、景気の振幅を可能な限り小さなものとし、労働市場がある程度タイト化することが、「二重構造」にともなう格差の問題を是正することになる

この考え方に対しては、さまざまな立場からさまざまな見解があるところでしょう。

さらに、労働弁護士の水口洋介さんは、

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2011/10/post-f201.html

>実態である「日本の雇用システム」と、法規範である「日本の労働法」の乖離と交錯を真正面から取り上げた意欲的な書物です。読んでいてワクワク観がありました。

「読んでいてワクワク」というのは、最高の褒め言葉です。著者冥利に尽きます。ありがとうございます。

>濱口氏は、日本型雇用システムの実態をメンバーシップ型雇用契約を本質として、その形成プロセスについても、イデオロギッシュな色分けをせずに、戦前から戦後までの歴史的現実を踏まえて手際よく整理されます。

これも、わたくしの意図を的確につかんでいただいています。メンバーシップ型システムが、労使それぞれの意図による「合作」であり、それゆえに、イデオロギー的な裁断が必ず的を失する所以を説明するというのが、わたくしの意図したところでした。

なお、最後に疑問を提起されている

>ところで、ジョブ型雇用契約が欧米では一般的でも、「職務を特定しない雇用契約」という類型は一つの雇用契約(労働契約)としてあり得るのではないでしょうか。

は、さりげにコラムで取り上げていますが、ローマ法的な労務賃貸借とゲルマン法的な忠勤契約の二つの流れにつながる論点で、比較法的にはとても重要なところです、

近代日本に焦点を絞った本書では、意識的に取り上げていませんが。

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コメント

ご紹介いただきありがとうございます。

重量感について補足させていただきますと、hamachan先生の著書の重量感というより、そこで描かれる日本の雇用システムそのものが公労使の先人たちによるせめぎ合いのなかで形成されたという「歴史の重み」を有していて、それが端々に読み取れるくらいの趣旨でした。そうした「歴史の重み」を無視して、軽薄浮薄な論説を吹聴する方々にこそ読まれるべき本だと思います。

なお、水町先生の著書では、日本の戦前戦後というスパンを遙かに超えて聖書の中から労働の話を始められていて、また違った意味での「歴史の重み」を感じました。

マシナリさん、ありがとうございます。
その「重み」のある話を、学生向けにできるだけチャート式にまとめたつもりなのですが、それでも「これも言っとかなきゃ」がごちゃごちゃくっつき過ぎかも知れません。

こういうスタイルのものはあまり前例がないので、玄人筋には一つの実験として笑覧いただければ有り難いところです。

水町先生のは、これまた他の人には真似のできない独自の作品になってます。もちろん、入門書なので、入口で匂いを嗅がせるだけになっている感もありますが。

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