あまりにも正直すぎる藤沢数希氏
藤沢数希氏は、その辛辣な毒舌ととりわけ奇矯なまでの女性蔑視思想で有名ですが、自己を語るとここまで正直になるのだなあ、と改めて感じました。
http://agora-web.jp/archives/1389281.html(高額所得者と高収益企業に対する大減税をするだけで日本はアジアで圧勝できる)
>民主党税調は13兆円程度の復興財源として、個人所得税と法人税の増税でまかなう方針を決定した。これは極めて愚かな選択をしたという他ない。筆者は、なにも増税に反対しているわけではない。しかし日本において、所得税の累進性をさらに強めるような増税や、法人税率の引き上げは自殺行為の他なく、結局、税収も減り、国民負担が増大してしまう結果になるだろう。高額所得者や大企業からさらに税金を取ることは、政治的には支持率のアップにつながる可能性もあるが、日本の将来のことを考えるなら愚策としかいいようがない。
>ところが年収が数千万円以上の高額所得者や、利益を上げている法人に対しては世界最高レベルの極めて重い税金が課せられている。とりわけアジア諸国との租税競争は深刻で、近年は高額所得者や、多国籍企業の中枢機能の流出を招いている。
>・・・このような状況で、高額所得者に対する累進性を引き上げ、企業利益に対する税金を引き上げれば何が起こるかは火を見るより明らかだろう。日本から富を生み出す人材や会社の流出が加速し、その結果、さらに税収は落ち込むことになる。
俺たちのような金持ちを敵に回すと怖いぞ!というわけですが、さて、その藤沢氏のような「富を生み出す人材」がやってきたことは何か?
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51861648.html(僕はスティーブ・ジョブズが嫌いだ)
>僕は実はスティーブ・ジョブズが嫌いだ。・・・僕のやり方と彼のやり方がとても似ているのだ。それが僕が、スティーブ・ジョブズと彼が作ったAppleという世界一価値のある会社が嫌いな理由だ。そのやり方は、あざとくて、狡賢く、そしてとても強欲だ。
彼は人のアイデアを合法的に盗み出す天才だった。そして何よりアイデアを金に変えるビジネスの最後の部分に異常にこだわった。一言でいえば、彼と、そしてAppleは美味しいところだけをもっていく天才たちなのだ。 僕が自分自身のことを好きになれない、尊敬できないのと同じ理由で、スティーブ・ジョブズやAppleが嫌いなのである。
>この原稿の大部分は会社の帰宅途中でiPhoneを使って書いたのだが、このiPhoneを見ると、Appleが開発した技術というのは何も無いことが歴然とする。デジタルカメラの部分のCMOSセンサー、リチウム・イオン電池、液晶パネル、CPU、メモリー、各種の高度な導電性フィルムを利用するタッチパネルなど、こういった根源的な基礎技術に関するAppleの貢献は何もない。僕自身、研究者をやっていたからわかるのだが、こういった基礎技術の確立には、世界中の公的な研究機関や、大企業の基礎研究所の名もなき技術者や科学者たちによる膨大な作業が必要になる。こういった研究開発には信じられないほど莫大な時間と金がかかっている。
Appleは極めて高収益の大企業、というよりも世界一の企業だが、こういったすぐには金にならない基礎研究はほとんど手を出していない。それはビジネスとしては正しいことかもしれない。しかし僕はだからこそ、名声とうなるような金を手にしたAppleの幹部連中ではなく、CMOSセンサーの解像度を上げるために日々創意工夫を重ねている無名のエンジニアたちや、リチウム・イオン電池の寿命を少しでも伸ばすために地道な努力を続けている中小の材料メーカー、液晶材料やトランジスタなどを発明した大学の研究者たちに光を照らし、彼らに心から敬意を表したいのだ。彼らのほとんどはAppleの幹部が手にする金の数百分の一も手にすることはなかった。
まことに、彼が前のエントリで口を極めて罵っている税金で賄われた基礎研究を、何のコストもかけずにうまいこと利用して大儲けに儲けたその結果にこれっぽっちでも税金をかけられることには、断固として嫌だ!外国に逃げてやるぞ!と脅すわけですね。
前のエントリは10月5日付。あとのエントリは10月6日付。
かくも近接した日時に、前者の政論の根拠をあからさまに露呈するような告白を書けてしまう藤沢氏の正直さに、私は言葉を失います。
ちなみに、藤沢氏の正直さは、さらに続きます。
>僕が最初に書いた本はなんのオリジナリティもなかった。他社が莫大な研究開発費を投じて確立した技術をAppleがつまみ食いするように、アカデミックな他人の研究成果や、すでに出版されている本の内容をうまく再構成して読みやすくしただけのものだった。それでも売れた。僕は経済学の研究をしているわけではないのに、世間で売れている経済学の教科書をつまみ食いして再構成し、時事ネタをからめてわかりやすい経済の本をまた書いた。この本も、まじめに経済学を何十年も研究している教授が書く本よりも、おそらく売れてしまうだろう。とても悲しいことに。僕もAppleと同じように、美味しいところを持っていくことにとりわけ熱心な、いけ好かない野郎だ。だから自分が嫌になる。
(参考)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-b9d7.html(キキを見てこういう感想を持つたぐいの人々)
>>魔女の宅急便のキキは、労働組合も作らないし、首になっても割増退職金も要求しない。セクハラだパワハラだと訴えない。今の労働者も見習うべき。
藤沢氏やその周辺のあごらな方々の理想とする労働者像がどのようなものであるかがよく窺われる大変正直なつぶやきです。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-7a12.html(進化論生かじりの反福祉国家論)
>その筋で有名な藤沢数希氏ですが、また奇妙なことをいっています。どうも、福祉国家が必ず滅びるということを進化論で(!)証明したつもりのようです。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-451b.html(ネオリベ派規制緩和による成長戦略)
>ここに、わたしの思うところでは、リバタリアン的思考と、ネオリベ的思考との違いがあるように思います。藤沢氏にとっては、売春の規制緩和は「日本のGDPを成長させ、税収を増やし、きたるべき少子高齢化社会にそなえる」ための産業振興政策にすぎないのです。売春者の売春する自由が問題なのではなく、売春産業が大いに稼ぐ機会が奪われていることが問題なのです。
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当ブログ上で藤沢氏の主張を読ませていただいて、別人が同じペンネームを使って書いているのかと思われました。
投稿: yi | 2011年10月 9日 (日) 10時28分
こんな釣り針にhamachan先生がわざわざ反応することもないかと思いますが。彼、単なる愉快犯ですよ。
投稿: Dursan | 2011年10月10日 (月) 11時32分
だから『藤沢数希』は、いつになったら日本を捨てて税金の安い国に出ていくのかね?
人や会社が日本を捨てて税金の安い国に出ていくのは真に愛国的な行動である - 藤沢数希ttp://agora-web.jp/archives/1060906.html
投稿: あいうえお | 2011年10月13日 (木) 09時58分
正直すぎて、原子力推進者が喜びそうなことを言っていると見られてもなんら差し支えがないことを論じている本が登場いている。これに対して、私から一言。
「エネルギー政策の不都合な真実」~楽してエネルギーは手に入らない~
投稿: ニセバンクル&エセバンクル2 | 2012年3月 9日 (金) 22時29分