内田貴『民法改正』
東大法学部で学生相手に民法教えているよりも法務省で民法改正やる方がいいと、法務省参与として民法改正に携わっておられる内田貴氏の解説書。
今月後半には、岩波新書から大村敦志氏の『民法改正を考える』が出るので、時ならぬ民法改正プチブームですね。
非常にわかりやすく書かれていますが、それにしても個別的な項目については、なかなかついていけない読者もいるかも知れません。おそらく、一番にいたいことは、解釈でまわっているから改正の必要なんかないという法律実務家たちへの批判なのでしょう。最終章の「市民のための民法を目指して」から、
>充実した法務部を持つ大企業は、民法にルールが書かれていない現状で別に困っていないと言います。しかし、日本の企業の大部分は中小企業であり、法務部など持たない企業が中心を占めます。そのような中小企業にとって、現状では、基本的な民法のルールを知るためにも、お金を払って弁護士などの専門家に尋ねるか、または体系書などの書物を苦労して読まなければなりません。本来条文の中に書かれているべきルールを知るために、それだけのコストがかかるのです。
まあ、今は口語化したので少しは読みやすくなったとはいえ、ほとんど暗号かと思えるような意味不明の記号体系ですからね。
内田氏の言うように、法律家が庶民の読めないラテン語聖書を解説できることで飯を食っている聖職者みたいでは好ましいとは言えないのでしょう。
それにしても、条文だけではまったく何も分からないと言うことでは、労働契約法以前の労働法制がまさにその状況でしたが、今でも労働法の教科書なしに六法全書だけでは何がどうなっているか全貌が分かりかねるという意味では似たような状況とも言えます。
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