この点は、鈴木亘氏に賛成
何回も言うようですが、私は言ってる人で判断するのではなく、言ってる物事で判断します。
この鈴木亘氏の議論は、議論としては私は概ね妥当だと思います。
http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/35489886.html(懸念される被災地の人口流出と福祉依存化 )
>・・・もう一つは、東北地域の未来を支えるべき現役労働層の人口流出と福祉依存化が、今後急速に進むことが予想されることである。東北地域の求人倍率低迷が続く中、現在、現役労働層を支えているのは、失業手当や雇用調整助成金(既存の会社が休業している場合でも、形式上、労働者を雇いつづけ、賃金が支払えるようにするために政府が出す補助金)である。しかしながら、これらは最大でも1年の給付期間であるため、今後、急ピッチで期限を迎えて行くことになる。また、雇用保険の恩恵に浴さない自営業、農林水産業、非正規労働者などは、貯蓄を取り崩しての生活が続いているが、これもそろそろ限界に達する。
こうした人々が、民主党政権下で現役労働層も受給できるように大幅に基準が緩和された生活保護制度にかかるようになれば、我が国の生活保護制度は「貧困の罠」と言われる自立を阻害する仕組みとなっているため、福祉依存が長期化する可能性が高い。また、失業手当や雇用調整助成金の給付期間を延長するにせよ、長期の失業状態は、就労意欲と人的資本(職業能力)を失わせるために、将来的にやはり福祉依存が進むであろう。
>・・・また、失業給付や雇用調整助成金といった単なる止血措置に、いつまでも多額の復興財源が流出することをなるべく早期に止め、雇用保険の教育訓練や職業訓練、求職者支援制度などの「積極的雇用政策」を活用して、将来展望のある産業への人材転換を進めるべきである。止血措置の長期化は依存性を高め、結局「死に金」になるだけであるし、不良債権問題と同様、先送りは最終的にその被害額を増やしてしまう。
「まったく妥当」ではなく「概ね妥当」というのは、そもそも生活保護法上現役労働層も受給できるはずのものを(法に基づかずに)入口で追い返していたのを(自民党政権末期からであって、政権交代後ではなく)法に基づいて対応するようになったものを「民主党政権下で・・・大幅に基準が緩和された」といえてしまう感覚(適法性感覚の欠如と施策変化をすべて政局的要因に帰着させる傾向)のゆえですが、それを抜きにすれば、ここで言っていることは、EUやOECDがここ十数年にわたって言ってきた消極的労働市場政策から積極的労働市場政策にシフトすべきという議論そのものであり、政策の方向性としては妥当なものです。
問題は、この点ではそこまで妥当なことを言いながら、いざ「雇用保険の教育訓練や職業訓練、求職者支援制度などの「積極的雇用政策」を活用」するような政策をやろうとして、そういう風に頭がまだ進んでいない頑迷固陋な人々が職業訓練など無駄だ無駄だとやたらめったら仕分けしたがるときに、鈴木亘氏のような「分かっている」はずの人々が、仕分け症候群の旧弊な人々にくっついて、まさにその「積極的雇用政策」を潰しに掛かる一翼を担う傾向にあるという現象なのですね。
実は、昨日テレビ朝日のモーニングバードという番組の取材を受けまして、求職者支援制度についていろいろ喋ったのですが、なんというか、「訓練さえ受ければ月10万円もらえるぜ」という2ちゃんねる感覚で、いかに無駄があるかみたいなことを聞きたがるんですね。
いや確かに、特に基金訓練はどたばたでとにかく始めたこともあり、「なんでこんなのが」みたいな現象も結構あったわけですが、それにしても、ただお金を配るよりも職業訓練によって労働市場とのつながりをつけながら生活保障していくことが大事なんだ、それがアクティベーションでことなんだと力説したわけですが(いつ放送されるかは聞いてないのですが)、私がいうより、それこそ鈴木亘氏みたいな人がちゃんと言ってくれた方がいいと思うのですよ。ちょっと見当外れの役所批判するよりも、世の中のためになると思います。
(追記)
金曜日の朝に放送されていたようです。
http://tv.yahoo.co.jp/meta/12268/?date=20111007&s=11(2011年10月7日(金)の番組の流れ)
><ニュースアップ>求職者支援制度スタート
求職者支援制度の受給条件を満たすと無料で職業訓練を受けられ、月10万円の生活費を貰える。様々な職業訓練を紹介。デクルールが行っている「アロマセラピスト養成科」、ファインモードインターナショナルが行っている「ブティック販売員育成科」、「食育指導員養成科」、池袋福祉カレッジが行っている「介護ホームヘルパー2級科」を紹介。
CM
<ニュースアップ>求職者支援制度スタート
求職者支援制度の受給条件を満たすと無料で職業訓練を受けられ、月10万円の生活費を貰える。支援の対象、受給資格を紹介。【コメント】濱口桂一郎(労働政策研究研修機構・労働関係労働コミュニケーション部門)【解説・コメンテーター】長嶋一茂、藤巻幸夫
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鈴木亘さんという方は直接存じ上げませんので、鈴木さんの話ではなく、経済学者の一般的傾向として申し上げたいと思いますが、経済学者にとっては、学界向け、マスコミ向け、論壇向け、労働組合向け、経営者向け、官僚向け等々、相手に応じて「空気を読んで」言うことを変える「思考の柔軟性」=「コミュニケーション能力」が大切だと思います。世の中、できるだけ多くの人を自分の味方につけた者が勝ちです。「経済学はツブシがきく」というのはまさにそういうことではないでしょうか。
相手の立場に配慮せず、どんな相手に対しても同じことを言っているのは、頭が固い。そんなことでは今の世の中をうまく渡っていかれないでしょう。
投稿: CramClam | 2011年10月 8日 (土) 06時30分
求職者支援制度ノ問題点って、訓練のシステムそのものよりも実際就職に繋がらないところにあるんですよね。いっても、いや、いった人って企業が取りたがっらない。
また、ハローワーク煮出される求人自体も労働関連の法律を逸脱したものが結構あり、これも傍から見ると結構大きな問題かと思います。
投稿: Dursan | 2011年10月 9日 (日) 05時44分
マスコミに使ってもらおうと思ったら、役人のやることは全て無駄、役人の私服を肥やすだけだから仕分けしろ、と言わなければ使ってもらえませんからね。「役人のやってることにも国民の役に立つこともある」なっていったら、「官僚擁護の守旧派」のレッテルを貼られて終わりです。
マスコミに使ってもらえない経済学者なんて惨めなものですよ。学者同士の間でも、ろくに学術論文書かずにマスコミに出まくってるタイプの人が評価が高い。
結局、経済学者自身が、経済学を研究していることに誇りを持ててないんじゃないですかねえ。誇りがあれば、「マスコミは変なことを言っているが、学問的にはこれが正しい」と自信を持って言えると思うのですがね。
投稿: CramClam | 2011年10月 9日 (日) 13時10分
Dursanさんの主張には全く同意します。たとえば、ハローワークの話ですが、たしかに、ハローワークの求人は偏ってまして、結構ブラックであり、ある程度以上の待遇の求人はハローワークには来ません。そういった場合に頼りになるのはインターネットや民間の人事コンサルタント企業であり、ハローワークは失業給付をもらう以上の場所ではありません。たぶん現在の枠組みでは、職員が個人的に頑張ったところでどうしようもない問題なのだと思われます。つまり、ハローワークの「目的」そのものはとても重要なのですが、それを提供する「手段」が不十分なため、効率的に機能していないのです。
似たような話として、事業仕分けが思い出されます。事業仕分けというのは、(「目的」が正しかろうと)「手段」に問題があって成果が上がっていない事業を是正・廃止して税金の投資効率を向上させるのが目的だったと思います。そういう意味ではスパコン事業の仕分けでは、少なくとも科学振興の「手段」としての問題点が指摘されましたが、スパコン事業を擁護する人たちが挙げる理由は、科学振興がどうだとか「目的」の正当性ばかりでした。これに限らずですが、仕分け擁護派は「手段」の不当性を唱え、反対派は「目的」の正当性を唱え、両者の議論はすれ違うばかりでした。スパコンに限らず、おそらく役所の仕事というのはそういったものが多いのではないかと思われます。
hamachanさんの主張にも同様の問題が感じられまして、この職業訓練の話に限らず、「目的」の正当性ばかり説かれてます。いくら「目的」の正当性を強調したところで、事業仕分けの話と同じく、両者ですれ違いが生じるだけであり、それよりは「手段」の妥当性を議論する方が生産的ではないかと、常々感じております。
投稿: くまさん | 2011年10月 9日 (日) 21時32分
ハローワークに関しては、なんかノルマみたいなもの
(つきあいで出してるとか、頼み込まれて出してるとか)
があってのことと聞いてます。
弾が揃わなくてもそういうのは置いとくべきではないし
追跡調査はすべきだと思います。
民間に関しても、
媒体社にある程度の責任をもって
もらうというのも手かと。
投稿: Dursan | 2011年10月10日 (月) 11時23分