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2011年10月 2日 (日)

若者支援とキャリア形成@BLT

201110『ビジネス・レーバー・トレンド』10月号が、「若者支援とキャリア形成」という特集を組んでいます。

http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2011/10/index.htm

中身は、7月9日に開かれた労働政策フォーラム「若者問題への接近」です。中身は以下の通りですが、

労働政策フォーラム 「若者問題への接近―若者政策のフォローアップと新たな展開」

<講演>
高校中退者の中退後支援の課題―ライフコース形成空間に着目して
宮崎隆志 北海道大学大学院教育学研究院教授

高校生の現実を踏まえたャリア教育・労働法教育とキャリア支援センター
吉田美穂 神奈川県立田奈高等学校教諭

自治体は若者支援をどう展開してきたか―実践と課題
関口昌幸 横浜市こども青少年局青少年部青少年育成課担当係長

「若者統合型社会的企業」の可能性と課題
堀 有喜衣 JILPT 副主任研究員

<パネルディスカッション>
コメンテーター
宮本みち子 放送大学教養学部教授 コーディネーター
小杉礼子 JILPT 統括研究員

ここでは、本ブログでも今まで何回か紹介してきた吉田美穂さんのお話を、改めていくつか引用しておきましょう。

>本校の生徒の多くはアルバイトに従事しており、・・・掘り下げて聞いていくと、「お小遣いをもらっていない」とか「高校生なんだから、もう自分でそれぐらいは稼ぎなさい」という事情が非常に多いように感じています。

>ほかにも、「お昼ご飯」を自分のアルバイト代で買っている生徒が3割います。・・・それから「家に入れる」生徒も2割弱います。学校に納めるお金も自分で出している生徒もいます。・・・

と、生活費稼得型アルバイトが多く、まさに「学習する勤労青少年」なのですが、労働者としての待遇はいかなるものかというと、

>それから、レジのお金が最終的に会わないと、その日のアルバイトが割り勘で払うといったことも10%ぐらいの生徒がそういう経験があると答えています。非常におかしいことですが、多く聞きます。また、「遅刻すると罰金を取られる」こともあります。賃金についても聞いていますが、278人中20人が最低賃金以下でした。・・・

そこで、吉田美穂先生は、こう考えます。

>卒業後もあるバイトを続けて行かざるを得ない生徒は多くいます。そういう中、法律違反のまま気づかずに、「そんなもんなんだ」と諦めて生きていくというのではとても困る。生徒は労働者としての側面を持っています。そして卒業後のことを考えると、結果的に高校時代からすでに非正規雇用への移行が始まっている状況があるわけです。そのことを踏まえて、彼らに身を守る情報を伝えていかなければならないし、働くことについてアルバイトの現実を踏まえながら、一緒に考えていく必要があると考えています。

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http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/oecd-4ec4.html(『よいスタートを切れる? OECD若者雇用統合報告書』)

現在翻訳中のOECD報告書『世界の若者と雇用』では、学習と労働の組み合わせ方によって、先進諸国を次の4類型に分けています。

第1グループは学校を離れる年齢が高く、働いている学生が多いタイプで「働きながら年長まで勉強」モデルです。概ね北欧諸国がこれに含まれます。

第2グループは学校を離れる年齢が低く、働いている学生が多いタイプで「働きながら勉強」モデルです。概ねアングロサクソン諸国がこれに含まれます。

第3グループは学校を離れる年齢が低く、働いている学生働いている学生が少ないタイプで「まず勉強、それから仕事」モデルです。フランスをはじめとする多くのヨーロッパ諸国と韓国、そして(データが不十分なため正式には位置づけられていませんが)日本もここに含まれると考えられています。

第4グループは学校を離れる年齢が高く、実習生として働いている学生が多い「実習制度」モデルです。ドイツ語圏の諸国がこれに含まれます。

 ざっくり言って、雇用のパフォーマンスがいいのは学習と労働を組み合わせている第1、第2、第4グループの諸国で、第3グループは若者の就業率が低く、NEET率が高いとされています。働きながら学ぶことが学校から職業への移行を促し、社会とのつながりを失った若者の出現を防ぐというメカニズムがあるからだとされています。

 この報告書の大きなメッセージは、「まず勉強、それから仕事」という第3グループの諸国が学習と労働を組み合わせる方向に進むべきという点です。そのモデルとして、北米諸国で普及しているサマー・ジョブ、第3グループ諸国で近年推進されてきたインターンシップやセカンド・チャンス・スクール、さらにはドイツ型の実習制度などが詳しく紹介、分析されているのですが、特にインターンシップの問題点なども指摘されています。

 ここで、さきほどの吉田美穂先生の話を考え合わせると、日本は本当に「まず勉強、それから仕事」タイプなのだろうかという疑問が浮かんできませんか。日本の学生・生徒たちは、現実には相当程度「働きながら勉強」しているのではないのでしょうか。ところが、教育界も産業界もそれが存在しないかのごとく振る舞い、あたかも仕事をしてこなかった若者を初めて仕事の世界に送り出すかのように演じて見せているのではないでしょうか。本当は既に相当程度学習と労働が学生自身において組み合わされているにもかかわらず、社会がそれを認知しようとしていないだけではないのでしょうか。

学生アルバイトという存在が教育行政からも労働行政からも継子扱いされている日本の政策情報をもとにしたOECDの報告書で、この問題が取り上げられていないことは当然ということもできますが、むしろ、その像が真に日本の姿を映したものであるのかを考えるべき責務は、我々の側にあるのではないかと思われるのです。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-6f0e.html(神奈川県立田奈高校の労働教育)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-5e38.html(第4回今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会議事録)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-da89.html(バイトの悩み 学校お助け)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-eb6d.html(『現代の理論』特集記事から)

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コメント

日本の大学の、文系特に経済学部の4年間は、「主に(受験)勉強」の高校生活から、社会人へと生まれ変わっていくための時間として機能していたんですよね。
勉強から解放された条件のもとで、バイトやサークル活動などに取り組み、他人と社会的関係を結ぶスキルを身につけるための時間が与えられる。
日本の企業にとっては大学でのお勉強なんかより、そちらの方がよっぽど大切だったんですよね。

どうしてこういう体制がうまく動かなくなってしまったんでしょうね。

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