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2011年9月25日 (日)

求職者支援制度のトリレンマ

「構想日本」という団体のメールニュース9月22日号に、「求職者支援制度のトリレンマ」という小論を寄稿しました。

http://www.kosonippon.org/mail/bk110922.php

>第二のセーフティネットという触れ込みのいわゆる「求職者支援法」が10月1日から施行される。この制度は、雇用保険制度のセーフティネットとしての不完全性(カバレッジの狭さ)が主たる動因となって創設された。施行を目前に控え、この制度自体が抱える本質的なトリレンマ(三重の矛盾)について指摘しておきたい。

まず、そもそも労働市場のセーフティネット(=雇用保険制度)には本質的なジレンマ(二つの目標が両立しがたいこと)がある。一方では生活保障制度として、労働者が失業によって失う所得の補償を目標としており、同時に、他方では雇用政策手段として、失業者ができるだけ速やかに再就職できるよう援助することを目標としている。この二つの目標は必ずしも整合的ではない。なぜなら、お金がもらえる間は就職したがらないなど、セーフティネットとしての性格が却って再就職促進を阻害するモラルハザードとして逆機能することが多いからである。

今回の求職者支援制度の最大の特徴は、セーフティネットを広げることによるモラルハザードの懸念を、職業訓練の受講を条件とするというアクティベーション型政策(雇用訓練施策や制裁措置によって、給付への依存から就労自立に向けて促進すること)によって解消しようという制度設計になっている点である。さもなければ、この制度は、窓口が福祉事務所から公共職業安定所に代わっただけの、第二の生活保護となってしまうからだ。

ところが、この職業訓練の受講という条件は、制度に(生活保障と再就職促進に加えて)職業能力の向上という三つ目の目標を持ち込むことでもある。もちろん、アクティベーション戦略においては、職業能力の向上が再就職の促進につながり、生活保障から脱却できることになるはずであるが、制度には常にその裏をかこうとする者が現れる。訓練を受けている間は毎月10万円がもらえるのなら、お金のために受けたくもない訓練を受ける者が出てくる。そういう者が受講者の多くを占めるようになれば、そこに起こるのは一種の「学級崩壊」である。

このモラルハザードを防ごうとすれば、訓練への入口でその意欲を厳しく判定する必要がある。しかし、それは裏返して言えば、本制度のセーフティネットとしての役割を限定するということでもある。ここに、生活保障と就職促進と職業能力向上という本制度の三つの目標がお互いに矛盾し合うトリレンマが存在するのである。

このトリレンマを完全に解消することは本質的に不可能である。しかし、あえていえば、生活保障という目標のために存在する第三のセーフティネット(生活保護)がしっかりしていることで、訓練意欲のない者を生活保障のためにこの制度で引き受ける必要性は最小限のものになるだろう。

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