『季刊労働法』234号
http://www.roudou-kk.co.jp/quarterly/archives/004803.html
>ブラック企業という言葉がかなり浸透しています。労働法が職場のルールになるはずなのに、なぜルール違反が横行しているのかという視点から、今号では、労働法のエンフォースメントを検討します。
ということで、まず
特集
労働法のエンフォースメントを考える
鼎談 問題提起・労働法のエンフォースメント
明治大学教授・司会 野川 忍 早稲田大学教授 島田陽一
慶應義塾大学教授 山川隆一
労働安全衛生関連法の実施(エンフォースメント)に関する諸外国の事例
中央労働災害防止協会国際センター所長 田口晶子
企業側実務家から見たエンフォースメントと労働法─労基署を中心に─
社会保険労務士(元労働基準監督官) 北岡大介
このうち、鼎談でも触れられていますが、北岡さんの論文で書かれていることが、大変重要です。
>近年、使用者側から見ても、労基署による労基法のエンフォースメントの在り方に対し、疑問の声が強まっているように思われる。それは二つの方向からの批判であり、まず第1は、労務管理が整っている大企業を中心に過度の行政指導が行われているとの批判である。また第2として、いわゆるブラック企業と称されるような同業者から見ても悪質な事業主に対して、実効性のある指導が展開されておらず、その結果、「正直者が馬鹿を見る」と称するが如き競争上不均等な取扱いを受けることに対する批判である。
北岡さんが最後に述べている私論を交えての今後の展望については、いろいろと意見のあるところでしょう。労働法教育の必要性は私も唱えているところですし、経済団体等による労基法等エンフォースメントの支援はもちろん大事ですが、それこそ昨年東京経協の方とお話ししたときに出たように、そういうのに来る会社はまともな会社で、ハナから守らないような会社はそもそもそういうところに来ないのですよね。
各業界の監督官庁等との連携は大事で、トラック等の長時間運転などはまさにやってますが、たとえば経産省が小売店の営業時間短縮に協力するかなあ・・・・とか。
>第2特集では、ISO26000の発効、OECD多国籍企業ガイドラインの改定、日本経団連企業行動憲章の改定といった動きを見ながら、環境分野などに比べ進んでいないといわれる労働分野におけるCSRを今一度検討してみます。
ということで、
第2特集 労働CSRに関する新動向
CSR─法としての機能とその限界
九州大学教授 吾郷眞一
労働に関するCSRの進展とその課題
株式会社日本総合研究所理事 足達英一郎 ISO26000(組織の社会的責任)の動向と課題
国際労働財団副事務長(前ISOSR起草委員) 熊谷謙一
CSR報告書と「労働」情報の最近の状況
弁護士 山田靖典
サプライチェーンと人権のCSR
─ラギー報告,ISO26000,OECD多国籍企業ガイドラインの改定から見えてくるCSRの新しい時代と日本─
特定非営利活動法人ACE代表 岩附由香
ここで熊谷謙一さんが書かれているISO26000については、熊谷さん自身が今年解説書を出されています。
http://bookstore.jpc-net.jp/detail/lrw/goods003549.html
>グローバル社会の中で、「組織の社会的責任」のあり方もスタンダード化が求められている。
ISO 26000発行によってそれが示された。ISO 26000とはどのような規格なのか?
5年間起草委員会に携わった筆者が、その背景、内容のポイント、策定のエピソード、活用に向けてのヒントなど経験を踏まえてまとめ上げた一冊。
併せてご紹介しておきます。
その他の論文は、
■研究論文■
経済的従属的就労者と労組法上の労働者
―今回の最高裁二判決を契機として―
青森中央学院大学教授 小俣勝治
■筑波大学労働判例研究会 第32回■
国・中労委(INAXメンテナンス)事件
最三小判・平成23年4月12日・労経速2105号3頁
筑波大学労働判例研究会 中澤文彦
■北海道大学労働判例研究会 第25回■
経歴詐称を理由とする懲戒解雇
メッセ事件(東京地判平成22.11.10労働判例1019号13頁)
放送大学教授 道幸哲也
■神戸労働法研究会 第17回■
豊橋労基署長(マツヤデンキ)事件
名古屋高判平22.4.16労判1006号5頁
神戸大学大学院博士前期課程高度専門職業人コース・社会保険労務士 高橋聡子
■同志社大学労働法研究会 第6回■
民事訴訟法23条1項6号にいう「前審の裁判」と訴訟に先立って行われた労働審判との関係
─小野リース事件(最高裁第三小法廷平成21年(オ)第1727号・平成21年(受)第2059号,損害賠償請求上告事件,平成22年5月25日判決,労働経済判例速報2078号3頁,原審=仙台高裁第2民事部平成21年(ネ)第54号,平成21年7月30日判決,労働経済判例速報2078号9頁)
同志社大学大学院博士後期課程 山本陽大
■アジアの労働法と労働問題 第11回■
台湾団体的労働法の大改正
弁護士・台湾労工委員会法規委員 劉志鵬
■イギリス労働法研究会 第14回■
労働契約における黙示義務の創設
久留米大学准教授 龔敏
■連載■
労働法の立法学(第26回)
OL型女性労働モデルの形成と衰退
労働政策研究・研修機構統括研究員 濱口桂一郎
ローヤリング労働事件(第2回)
訴訟・仮処分─労働者側の立場から
弁護士・専修大学法科大学院客員教授 井上幸夫
文献研究労働法学(第2回)
非典型労働者の均等待遇をめぐる法理論
姫路獨協大学専任講師 大木正俊
というラインナップです。
このうち、特に読んでおいていただきたいのは、劉志鵬さんの台湾の団体的労働法大改正についての論文です。わたくしは昨年、ソーシャル・アジア・フォーラムで台湾に行き、そこでちょうど成立したばかりの労働組合関係立法について説明を受けて、大変興味をそそられたことは本ブログでも書きましたが、劉さんの論文は、台湾労工委員会法規委員という立法の立場にある立場からわかりやすく解説していて、とても勉強になります。
なお、わたくしの「OL型女性労働モデルの形成と衰退」は、読む人が読めば面白いと思います。
« 年功賃金を生産性で正当化した議論の心外な帰結 | トップページ | X運輸事件 高年齢者継続雇用と労働条件の不利益変更、同一労働同一賃金原則 »
« 年功賃金を生産性で正当化した議論の心外な帰結 | トップページ | X運輸事件 高年齢者継続雇用と労働条件の不利益変更、同一労働同一賃金原則 »
コメント