呉学殊『労使関係のフロンティア 労働組合の羅針盤』
労働政策研究・研修機構(JILPT)きっての労使関係研究者である呉学殊さんの大著『労使関係のフロンティア 労働組合の羅針盤』が刊行されました。
http://www.jil.go.jp/institute/sosho/frontiers.htm
>バブル崩壊以降、労使関係を取り巻く環境は激変しています。本書は、パートタイマーの組織化、CSRに取り組む先進的な労働組合、持株会社化に伴う労務管理・労働組合の動き、個別労働紛争解決に向けたコミュニティ・ユニオンの対応、地域労働運動の展開――などを取り上げて分析しています。危機の時代に対し、労使の高い対応能力が期待されている現在、その羅針盤の役目を果たすべく、労働組合関係者はもちろん、人事労務担当者にもご一読いただきたい内容となっています。
労働関係者のみなさんには今さらですが、呉さんは今から20年前に日本に来て、東大の大学院で学び、新日鐵と韓国のポスコの雇用慣行と労使関係の比較研究をし(これは残念ながら出版されていませんが)、その後日本労働研究機構に入って、労使関係一筋で研究してきました。
その業績はこちらのページにありますが、
http://www.jil.go.jp/profile/ohhs.html
今回の本は、いままで雑誌や報告書、書籍などに書いてきた彼の論文の集大成になっています。
序章 本書の研究背景と狙い
第1部 労働組合組織化と労使関係の深化
第2部 企業グループ経営と労使関係の拡大
第3部 中小企業の労使関係と労使コミュニケーション
第4部 個別労働紛争の解決・予防と労働組合
第5部 地方労働運動の展開・強化
終章 労働組合運動のさらなる活性化と労使関係の新たな深化に向けて
いずれも、今日の日本の労使関係にとって重要な事項ばかりですが、とりわけ近年は第4部の個別労働紛争との関係でコミュニティ・ユニオンや合同労組と呼ばれる労働運動をフォローしてきたことは、ご存じの通りです。しかし、呉さんのレパートリーはもっとずっと広く、最近では連合総研の地域協議会の活動の研究の中軸として、第5部にあるような研究をしてきています。さらに今は、しばらく前にやっていた第3部にあるような中小企業の労使コミュニケーションの実態研究も進めています。
組織的には、一応、わたくしが上司ということになりますが、もちろん研究者としての呉さんのレパートリーに追いつけるわけでもないので、「期日までに報告書をまとめろ」というのが唯一の仕事です(笑)。
若干、楽屋ネタですが、この本の装丁については、呉さんのなみなみならぬ思いがなみなみと詰まっていますので(電話口で相当大音声でやりとりしていたのを隣で聴いていたので)、そういう目で見てください。
なお、先ネタですが、来月末に出る『ビジネス・レーバー・トレンド』の11月号は「今、労使関係に問われているもの(仮題)」という特集で、次のようなラインナップの予定です。ご期待下さい(何を)。
・労使関係とは誰のどういう関係か?-個人請負就業者の『労働者性』をめぐって・・・濱口桂一郎・JILPT統括研究員
・企業グループ労使関係の望ましい姿-ケンウッドグループユニオンの事例・・・呉学殊・JILPT主任研究員
・スウェーデンの労使関係の新たな動向・・・西村純・JILPT研究員
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