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2011年9月25日 (日)

労働組合と原発

Img_month『生活経済政策』10月号をお送りいただきました。

特集は、「震災・原発事故と民主主義」で、とりわけその中の杉田敦さんの文章の中の、次の記述は、この「失われた20年」の原因がどこにあるのかをよく示していると思われます。

>ふりかえれば、「何をするか」よりも「誰がするか」を重視する傾向は、1990年代のいわゆる政治改革以来、一貫してみられるものといえる。しかしながら、被災地で苦しんでいる人々、避難を余儀なくされている人々、そして有権者一般にとって関心があるのは、何よりも政策の中身である。誰がその政策を作ったか、どのようなプロセスで作られたかは、二の次である。・・・

>政治主導もまた政治改革との関連で浮上した、「誰がするか」に重きを置く論点である。「官僚支配」から脱却し、政治家が主導権を確立することが大切とされたが、これは具体的な政策内容よりも権力の所在を問題にする議論である。・・・しかし、官僚を外した挙げ句、これまで官僚がやってきた仕事を全て政治家が引き受けざるを得なくなるというのでは、却って政策を練る時間がなくなってしまう。・・・

現実に(少なくとも一部の役所で)起こったのは、政策の中身には何の関心もない(もてないand/or持つ能力のない)政治家が、にもかかわらず「政治主導」で一生懸命やっているような振りを国民(マスコミ)に見せるため、政策論的にはナンセンスないし逆効果でしかないような事柄をやたらめったら打ち出し、官僚たちはその対応に追われてへとへとになり、結果的に政治主導であれ何であれやらなければならなかったはずのほんとうの政策課題への対応がすっぽり抜け落ち、残業時間だけが山のように増える中で政策が全然進まないという異常な事態であったわけです。

そういう事態を褒め讃えたのがどういう手合いであったのか、まともに社会保障や雇用問題を考える人々はちゃんと分かっているはずですが、皆さん紳士なのであんまり言いませんけど。

と言うような話を続けると終わらなくなりますが、ここではちょっと視点を変えて、田端博邦さんの「震災・原発事故と労働組合の民主主義」という文章を紹介したいと思います。

これは、『POSSE』11号の木下武男さんの論文に対して感じた違和感を、うまく言語化してくれたという感じです。木下さんは、企業主義的統合と原発賛成を直結させているのですが、それは労働組合というもののとらえ方としていかがなものか、というのは、たぶん労働関係者は共通して抱いたところではないかとおもうのです。

>「原子力の平和利用」として原子力発電が国の政策として導入されたときから、電力産業の労働組合はこれを支持する立場に立ってきた。・・・

>この時期の労働組合電労連のそうした立場は、おそらく、一般に批判されるような企業主義的な路線だけによっては説明しきれないであろう。当時の政治的な文脈においては、原子力の平和利用の可能性について、これを否定するだけの条件はまだ備わっていなかったと思われる。・・・

>もし、このような政治的状況に労働組合が置かれていたとするなら、おそらく企業主義的でない労働組合であっても、「原子力の平和利用」を支持した可能性は十分にあるのである。産業別の組織を採るアメリカの労働組合が、今日でもなお原子力発電を支持していると言われるのは、その証左である。労使協調の企業別組合という日本の労働組合の性質は、労働組合の原発推進政策を説明する唯一の理由ではない。

>また、こうした状況を理解する上では、今日の事故後の原発に関する認識を前提として、後知恵的な分析をしてはならないであろう。・・・

>さらに、このような条件(安全性を確保できるという観念)を前提として考えるなら、労働組合の原発支持は、労働組合一般の論理としても説明可能な面がある。すなわち、安全で、かつ「平和利用」の原発が、国の電力供給と電力産業の収益や発展に視するとすれば、それを支持することは、労働組合として当然であると言いうる面があるからである。労働者が働く産業の盛衰は、雇用や賃金に関わりを持つ。組合員の利益を守る労働組合が、産業の発展をめざすのは、おそらく古典的な労働運動の時代からまったく自然なことなのである。・・・ここにも、企業別組合の特性に集約しきれない要素が存在している。

>さらにより一般的に言えば、労働組合は、組合員の雇用の維持を重要な課題とする。原発支持とは、原発職場を守るという意味を含んでいるのである。

欧米の産業別組合も決して反原発ではなく、むしろ原発支持の傾向を持っていたのは、労働組合の本質からして自然だ、という労使関係論的な常識は、残念ながらこの半年間、原発が政治的空中戦の素材になる中で、やや軽視されてきたように思われます。

さらに言えば、じつはここに、労働組合が自分たちの切実な労働問題そのものよりも「反戦平和」等の政治的空中戦に動員されがちであった戦後労働運動の欠点の再現すら見受けられるように感じられます。

労働組合がほんとうに労働組合であるためには、何を言うべきであったのか?を考察するのが、田端さんのそれに続く記述です。1975年の電労連の原子力第5次提言が、

>「経済的メリットの追求よりも将来の運転・保守のための労働環境保持と被曝軽減のための原子炉建屋の拡大、機器配置など設計段階から労働組合と協議決定すべき・・・」

>「不慣れなために無用な被曝をするという例が特に下請従業員の場合に多い」ので、「電力並びにメーカーは共同して訓練施設を作り、あらかじめ訓練を十分行った上で現場に配する」こと

>「下請業者従業員の発電所間の移動による管理の不行き届きや抽象企業者の管理能力」に対処するため、「被曝線量の評価、健康管理、記録を一元的に管理する公立の健康・被曝センターを設立すること」

といった、極めて労働組合的な発想に立っていることを強調し、「組合民主主義の機能がここでは生きている」と評価しています。

この最後の提言など、まさにいま厚生労働省が始めようとしている話ですね。

この第5次提言の方向性が否定された後の電労連の運動に対しては、「ほとんど電力業界の方針と一体」と述べています。

味噌も糞も一緒にした外在的批判は、労働運動それ自体のためにも決してよろしくない、というのは、戦後労働運動がいやというほど思い知らされてきたことではないでしょうか。

(追記)

http://twitter.com/#!/magazine_posse/status/117811213144031232

>・・・木下さんも反原発というか下請化に東電の企業別組合批判の重点を置いていたように思うのですけれど。

いや、木下論文の一つの軸が、「自分たちが被曝したくないから請負化しろ」というような企業主義的発想への批判であることは十分分かっていますし、その点では田端さんと共通の認識だと思うのですが、それでもやはり原発そのものに断固反対しなかったこと自体が問題という感覚がベースにあるような印象を受けます。そして、それがなにがしか「後知恵で叩く」印象を与えてしまうのではないかと思うのです。

電産中国が原発反対であったことがその背景にあるとすると、田端論文の上で引用しなかった部分にこういう記述があります。

>・・・電産中国の原発政策反対も、「体制的合理化」独占利潤追求の政策であるから、というのがその理由であった。原子力発電そのものの危険性を根拠にするものでは必ずしもなかった。・・・

(再追記)

ちなみに、世界一の原発大国フランスでも、現場作業は大部分が下請化されているようで、この原発下請労働者の労働環境について、フランス労働総同盟(CGT)が全国的な示威運動をしたというニュースがル・モンドに報じられています。

http://www.lemonde.fr/planete/article/2011/09/22/nucleaire-la-cgt-reclame-un-vrai-statut-pour-les-salaries-de-la-sous-traitance_1576156_3244.html(Nucléaire : la CGT réclame un vrai statut pour les salariés de la sous-traitance)

>La CGT a organisé jeudi 22 septembre une journée nationale d'action demandant un "statut social de haut niveau" pour les 35 000 salariés de la sous-traitance du nucléaire. Des rassemblements ont été organisés devant la plupart des sites nucléaires. Une pétition, intitulée "Prestataires, pas esclaves" et exigeant un statut basé sur celui des salariés d'EDF ou d'Areva, a recueilli près de 20 000 signatures, et une délégation doit par ailleurs être reçue dans la journée au ministère de l'industrie.

CGTは9月22日(木)、原発で働く35000人の下請労働者の「ハイレベルの社会的規制」を求める全国行動を行い、20000人の署名を提出した。

>Pour la CGT, "l'accès à ce statut doit être un tremplin pour la réinternalisation des activités abusivement sous-traitées tel que le préconise le pré-rapport parlementaire français suite à la catastrophe de Fukushima". Près de 80 % de la maintenance des centrales d'EDF, d'Areva et du Commissariat à l'énergie atomique est effectuée par du personnel de sous-traitance, selon le syndicat.

原発の維持労働の80%は下請労働者によって行われている。

>"Nous refusons que les 35 000 salariés sous-traitants qui subissent aussi 80 % des risques professionnels (rayonnements ionisants, produits chimiques, accidents de travail et de trajets) disposent de contrats de travail si mauvais", dit la pétition de la CGT. Le syndicat a également réclamé "une table ronde de la sous-traitance dans le nucléaire avec entreprises, Etat et organisations syndicales pour examiner la réinternalisation des activités sensibles et faire avancer les droits des salariés".

35000人の下請労働者が電離放射線や化学物質などの職業的リスクの80%を負っている。企業、政府、労働組合との間の下請労働の円卓会議を開いて、機微な業務の再内部化と労働者の権利の向上を検討すべきだ。

>Dans le cadre des évaluations complémentaires de sûreté consécutives à la catastrophe de Fukushima, EDF a décidé de limiter à trois le nombre d'entreprises sous-traitantes. La proposition figure dans le rapport qu'elle a remis le 16 septembre à l'Autorité de sûreté nucléaire.

福島原発の破局を見て、フランス電力公社は重層下請を3層までに制限することを決めた。

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コメント

>福島原発の破局を見て、フランス電力公社は重層下請を3層までに制限することを決めた。

すごいオチ。笑った。
3層まで行ったら何も変わらない。
結局、お偉いさんは痛みを伴わなければ問題を直視しないんだろうな。

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