力士の労働者性が労働判例に
本ブログで、(いささか趣味に任せて)いろいろと論じたことのある大相撲の力士の労働者性が、まさに裁判になっていましたよ。
『労働判例』10月1日号(1029号)の後ろの方の判例ダイジェストというコーナーですが、
>日本相撲協会(力士登録抹消等事件)東京地裁平23,2,25決定
てのが載っています。
この力士はモンゴル出身の幕下(最高位は東幕下10枚目)だったようですが、親方が勝手に廃業届を出したので力士登録を抹消されたのですが、日本相撲協会との間に雇用契約関係、仮にそうでないとしても準委任類似の契約関係が存在するとして、地位確認または報酬の支払いを求めた事案です。
判決は労働者性についていろいろと検討していて、そこも面白いのですが、結論を先にいうと、労働契約には当たらないけれども、有償の準委任類似の契約関係が成立しているとし、そしてこの無名契約についても、その解約は
>当事者間に当該契約関係の基礎にある信頼関係を根本から破壊するなど、もはやこれを継続することが困難であると認められるような「特段の事情」がある場合に限って許される
と述べ、本件ではそのような特段の事情はないから、この力士の有償の準委任契約は未だ終了しておらず、報酬を払え、という結論です。
なんというか、名を与えて実を取るというか、労働契約じゃないと言いながら、法的効果からすると、ほとんど労働者だと認めたに等しいような判決ですね。
いろんな意味で面白い。
(参考)
力士の労働者性関連エントリ
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_c64e.html(力士の労働者性)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_fd03.html(時津風親方の労働者性)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_bbf0.html(幕下以下は労働者か?)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-d31a.html(力士の解雇訴訟)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-b776.html(朝青龍と労働法)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/by-916f.html(力士をめぐる労働法 by 水町勇一郎)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-4251.html(力士会は労組として八百長の必要性主張を@水谷研次さん)
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