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2011年9月27日 (火)

日本とスペインの違い

New 『日本労働研究雑誌』10月号は、「均等法のインパクト」が特集です。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2011/10/

特集論文は以下の通り。

提言均等法の25年  (136KB)
浜田 冨士郎(弁護士・神戸大学名誉教授)

解題均等法のインパクト  (181KB)
編集委員会

論文四半世紀を迎えた男女雇用機会均等法
山田 省三(中央大学大学院法務研究科教授)

男女雇用機会均等法の長期的効果
安部 由起子(北海道大学大学院経済学研究科教授)

均等法とワーク・ライフ・バランス――両立支援政策は均等化に寄与しているか
川口 章(同志社大学政策学部教授)

均等法後の企業における女性の雇用管理の変遷
脇坂 明(学習院大学経済学部教授)

男女雇用均等の制度的要件の国際比較――日本の男女間格差はなぜ根強いのか
マルガリータ・エステベス-アベ(シラキュース大学マックスウェル政策大学院准教授)

雇用均等時代と大卒女性の雇用に関する研究
李 尚波(桜美林大学リベラルアーツ学群准教授)

いずれも男女均等の観点からは重要な論文ではありますが、私はあまのじゃくなので(笑)、あえて違った観点から。

上のマルガリータ・エステベス・アベさんは、4年前に連合総研の20周年記念シンポジウムでご一緒した方ですが、

http://rengo-soken.or.jp/report_db/file/1245640669_a.pdf

今回の論文は、ジェンダー視点ではない部分に、大変興味が惹かれる記述がありました。

この「男女雇用均等の制度的要件の国際比較――日本の男女間格差はなぜ根強いのか」の概要は、次の通りですが、

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2011/10/sum5.htm

>男女機会均等法の導入から四半世紀が過ぎるが、日本の労働市場における男女間格差は今だ根強い。男女機会均等法の導入は重要だが、これのみをしては男女の経済的平等は成し得ない。本稿では、先進国の国際比較を通して、男女平等を促進する制度的条件を再考する。

一般的に、男女平等を促進する制度というと北欧諸国が参考にされる。そして、北欧諸国が行ったように、社会政策を通して女性の保育・介護負担の低減という制度条件の役割が強調される。しかしながら、男女平等とは社会政策的介入で解決できる問題ではない。米国のように、社会政策的介入が一切なくても男女の機会均等化が進んだ国もある。また、日本と同じように女性の地位が低かったスペインのような国でも、近年目覚しく女性の社会参加が進行した。

本稿では、差別禁止法令の整備と集団訴訟というムチによる企業の行動様式の変革、女性の社会進出により効果のある教育制度の在り方、女性の家事時間の削減をもたらすような家事の外部化をもたらす市場条件、女性自身のアイデンティティの変化をもたらす避妊方法の普及など、通常必ずしも論じられていない制度条件を射程にいれることで、日本女性の立場がなぜ先進国と比較すると際立って遅れているのかを説明する。

北欧もアメリカも、出羽の守がいっぱい居ますが、スペインについては、大好き!というファンは居ても、日本はスペインを見習うべきだと主張する出羽の守というのは見たことがありません。

実際、エステベス・アベさんのいうように、

>スペインでは日本と同じように家族主義が強く、女性の労働参加が遅れている。・・・社会保険制度と労働市場の在り方が女性に不利な点で両国は共通しており、正規労働市場の硬直性、労働時間の長さ、男性の家事参加率の低さ、公的保育の整備率の低さなども類似していた。ところが、スペインの研究職に占める女性の割合は日本と比較にならないほど高く、政治家や管理職に占める女性割合も日本の3倍である。男女の賃金格差も日本よりずっと低く、日本とは反対に高賃金層での男女格差が非常に小さい。

ダメっぷりでは日本といい勝負のはずなのに、なぜそこだけいいの?という疑問に、エステベス・アベさんが示す回答とは?

>先に見たスペインと日本の女性の地位の違いもこの辺にある。スペインの大学の学部はさながらプロフェッショナル・スクールのように専門特化しており、学部の選択イコール将来の職業選択につながっている。大学の学部教育に高い専門性があるため、生涯仕事をしたい女性のみがキャリアプランの上で学部選択をする。このため、高学歴女性は「○○の専門家」という意識を持つ。しかも、子供を産んでも仕事が続けられそうな専門分野を選ぶことが可能だ。

これはなかなか皮肉な話で、戦後日本は社会全体としての画一的平等化を進めたがゆえに、却ってこういう専門的エリート化による女性進出の芽を摘んでしまったということなのでしょう。

社会全体としてどっちがよいかという価値判断は、それこそ同時代的価値観を抜きに超越的にできるようなものではありませんが、とはいえ、男性も女性も会社員とその妻という一般枠組みで幸せになれる仕組みをうまく作りすぎてしまったため、それ以外の道が大変困難になってしまったことの収支決算は、なかなか判断しがたいところではあるのでしょう。

2011book01 あと、労働関係図書優秀賞の発表が載っています。太田聰一さんの『若年者就業の経済学』はいうまでもなく受賞に値する名著ですが、最終審査対象を見ると、菅山真次さんの『「就社」社会の誕生』もあったんですね。こちらも、十分受賞に値する名著だと思われますが、外れてしまったのはなぜなのでしょうか。以前、苅谷さんらとの共著『学校・職安と労働市場』が受賞していて、その中身がこちらにも入っているから、という理由だとすればやや残念です。

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コメント

原文に当たらずに発言して恐縮ですが、このエステベス・アベさんの説明には理解できないところがあります。この説明では、大卒エリート女性に関して男女平等が進展したことは説明できても、圧倒的多数の非大卒の女性の地位については何の説明にもなっていないと思います。
プロフェッショナル(専門家)だけに限定すれば、男女平等に近いのはある意味当たり前のことではないでしょうか。日本で言えば、小中学校の先生だけを取り上げて、「日本では男女平等が実現している」というようなものです。

日本では、

>プロフェッショナル(専門家)だけに限定すれば、男女平等に近いのはある意味当たり前のことではないでしょうか

になっていないという事実認識が彼女の出発点です。

エリート女性が相対的に男女平等である一方、ノンエリート女性は階級格差の下にあるというのが、欧米でもアジア諸国でも一般的な姿であるのに対し、男女が違うという大前提の下で、男も女も相対的に少ない階級格差の下にあったのが戦後日本の社会モデルなので、そこが論点の中心になるわけです。

逆に言えば、小中学校の先生「だけ」が外部世界とは切り離された形で男女平等に近かったというのが、戦後日本の特色でもあります。

あるいは、もしかしたらエステベス・アベさんのいう「○○の専門家」を、特殊日本的な(フツーじゃない)「専門職」と理解されているための誤解かとも思われますが、いうまでもなく、これは通常の上級ホワイトカラー労働者に相当するような人々を主として含みます。

なお、さらに疑念があれば、エステベス・アベさんの論考を読まれた上でされることをお薦めします。

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