仕事をしたつもリーマン@海老原嗣生
海老原嗣生さんから、今度はまたちょいと趣を変えた『仕事をしたつもり』(星海社新書)をお送りいただきました。
>いつも忙しいのに成果が出ない。なぜだ!
「仕事をしたつもり」とは、以下のような状態を指します。
・けっこう一生懸命、仕事をしている
・まわりもそれを認めていて、非難する人はいない
・本人はその行為にまったく疑問を持っていない
・しかし、成果はほとんど出ない
「社会人としてお金をもらっているんだから、そんなことやっちゃいないよ」と思うかもしれませんが、私たちは毎日、それも大量に、やってしまっているのです。中身の薄い仕事に追われているだけなのに、つい「バタバタしていて……」と言ってしまう。
そういった時間と労力の無駄は、もう終わりにしませんか?
次から次に繰り出されるその実例があまりにも我らが日本人の職場をリアルに描き出していて、なかなか。
章立ては、
第1章 何十枚も資料を作って、それで仕事をしたつもり?
第2章 流行のビジネスモデルを学んで、それで仕事をしたつもり?
第3章 みんなで一緒に考えて、それで仕事をしたつもり?
第4章 業界トップの真似をして、それで仕事をしたつもり?
第5章 「お客様は神様です」とへりくだって、それで仕事をしたつもり?
第6章 新しいことにチャレンジしないで、それで仕事をしたつもり?
終章 「仕事をしたつもり」からの抜け出し方
みなさん、山のように思い当たる「つもり」が積もり積もっていません?
でですね、これって軽めのビジネス本のように見えて、確かにそうであると同時に、実は労働の在り方という側面から現代日本を見事に文明批評した本になっているのですよ。
山のような業務量に押しつぶされてへとへとになって、わがままなお客様に振り回されてへとへとになって、それでどれだけの生産性を上げているの?
実をいうと、ホワイトカラーの生産性問題というのは、今から20年前からその種の業界ではずっとペットテーマなんですが、こういう根っこの話はどこかに行ってしまって、裁量制とかホワイトカラーエグゼンプションの話になってきたという歴史があったりします。
積もり積もった「つもり」を捨てる。
20年前にちょっと流行ってすぐに忘れられた「業革」なんて言葉もありましたっけ。
(追記)
間接部門を社内サービス部門と考えれば、これらはすべてサービス業の生産性問題という、あのとんでもなくとんちんかんな方向に逝ってる話の応用問題でもあるわけです。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-107c.html(スマイル0円が諸悪の根源)
>日本のサービス業の生産性が低いというのは、つまりサービスそれ自体である労務の値段が低いということであって、製造業的に頑張れば頑張るほど、生産性は下がる一方です。
>生産性を上げるには、もっと少ないサービス労務投入量に対して、もっと高額の料金を頂くようにするしかありません。ところが、そういう議論はとても少ないのですね。
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いつもすみません。
前著(就職、絶望期)もこの本も、公務員叩き的な内容が入っていて、おゆるしください。マシナリー・ブログにて、私の書き方こそ、「都市伝説の連鎖」とお叱りを受けました。ある面、そのとおりと反省しております。
さて、日本の雇用と労働法、今読んでます。こういうの、作れるのが濱口さんですね。やはり。近場の人事部長皆と感嘆しておりました。
いろいろ話したいことが山積ですが、詳細はまたメールにて、ご連絡させていただきます。よろしくお願申し上げます。
投稿: 海老原嗣生 | 2011年9月29日 (木) 20時24分
いやあ、公務員の世界というのは、この手の80%くらい無駄な「つもり」の仕事で埋め尽くされていますからね。
ただ、それが課長が心を入れ替えたくらいではなかなかどうしようもないくらいシステム化されてしまっているわけで、国会答弁などはその典型なわけです。大臣が紙一枚ですらすらとやれればいいのですが。
さらに、それを変えると大見得を切って政権に就いたはずの政治家が大臣に来たら、仕事のうち世の中の役に立たないムダ率が、一気に95%くらいに上がったりするわけですから(かつ、お馬鹿なマスコミがそういうのに限って褒め讃えたりするものですから)、本人すらやってる「つもり」にすらなれないような無意味労働に埋め尽くされたりするわけですね。
そういうところは、もっともっときちんと批判していただいた方がいいと思いますよ。「公務員叩き」とは思いません。
投稿: hamachan | 2011年9月29日 (木) 21時36分
横レスで恐縮です。
拙ブログでは海老原さんの前著『就職、絶望期』を「お叱り」などしていないつもりですが・・・(汗)その後のエントリで補足いたしましたとおり、私自身も役所の施策には「仕事をしたつもり」のものが多いことは事実と考えています。
役所に特殊な点といえば、hamachan先生ご指摘のとおり、政治家がその立場から仕事を要求してくると、ほぼ間違いなく「仕事をしたつもり」の仕事が増えてしまうところではないかと思います。もちろん、「役所仕事」といわれるようなムダな仕事も中にはありますし、『仕事をしたつもり』は大いに考えさせられながら拝読したところです。私もご多分に漏れず「奇策」との付き合い方が下手なもので・・・
投稿: マシナリ | 2011年9月30日 (金) 22時06分