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2011年8月 4日 (木)

「今の労働行政では、若い人たちに充分に働いてもらうことができなくなっている」のか?

トヨタの伊地知専務が、標題のようなことを語ったと報じられているようです。

http://response.jp/article/2011/08/03/160391.html

>トヨタ自動車の伊地知隆彦取締役専務役員は2日、2011年度第1四半期決算会見で日本の六重苦について触れ、「今の労働行政では、若い人たちに充分に働いてもらうことができなくなっている」と述べた。

伊地知専務によると、ヒュンダイとトヨタの技術者を比べた場合、個人差はあるものの年間の労働時間がヒュンダイのほうが1000時間も多いそうだ。ということは、10年で1万時間も違ってしまう勘定になる。

「私は若い人たちに時間を気にしないで働いてもらう制度を入れてもらえないと、日本のモノづくりは10年後とんでもないことになるのではないかと思う」と伊地知専務は危惧する。

もちろん心身の健康が第一であるが、日本の技術力を守っていくためには若いうちから働く時間を十分に与え、さまざまな経験を積ませる必要があるというわけだ。

記事がどこまで専務の発言を忠実に伝えているのか、必ずしも明らかではありませんので、あくまでもこの「レスポンス」というメディアの伝えた記事を前提にコメントしますが、それが伊地知専務なりトヨタ自動車の真意と異なっている可能性はあるかも知れないことを留保しておきます。

さて、「今の労働行政では、若い人たちに充分に働いてもらうことができなくなっている」という言い方からすると、あたかも現在の日本の労働法制は、労働時間に絶対的な上限を設定し、それ以上働かせることを禁止しているかのように読めます。

実をいえば、私はまさにそのようにすべきだと考えているのですが、そのようにすべきだと考えているということは、現実の法制はそのようになっていないということであり、つまり、現代日本の労働時間法制は、36協定を結んで法定労働時間を超えて働かせたら残業割増を払えということについては厳格に規定してありますが、物理的労働時間についてそれ以上働かせたらアウトという法律上の上限は存在しません。

つまり、残業代を潤沢に払い続ける限り、「若い人たちに充分に働いてもらうことができなくなっている」という事実は存在しないはずです。貧乏な中小零細企業ならともかく、天下のトヨタが心配することではないでしょう。

さらに言えば、ここでは「技術者」という言葉が使われており、現場労働者を技術者と呼ぶ言い方もないわけではありませんが、おそらくは技術開発に関わる裁量労働制の対象となる人々を指しているのではないかと思われ、そうすると、36協定上の上限というのもなく、健康福祉措置への配慮を除けば、それを制約する何らの基準も存在しませんから、そもそも「今の労働行政では、若い人たちに充分に働いてもらうことができなくなっている」という認識がかなり不適当な感じがします。

この点については、実のところ労働時間規制においては何ら規制はありませんが、過労死問題から生じてきた労災認定基準において、上記のような技術者であっても一定以上の過重労働が認められれば労災と認定されるという枠組みがあり、そこから派生して安全衛生規制において医師の面接等の規定が設けられていますが、労働時間に上限がないという点には何らの変わりもないというのが、現段階の日本の法制の特徴です。

そうすると、伊地知専務が「若い人たちに時間を気にしないで働いてもらう制度を入れてもらえないと、日本のモノづくりは10年後とんでもないことになるのではないか」といわれるのが、具体的に一体いかなる制度のどこをどう改めろと言われているのか、よく分からないところがあります。

おそらく、労働法制のことがよく分かっていない業界紙の記者が、専務の語った重要なところをすっ飛ばして、自分の理解できることだけをつなぎ合わせて書いた記事であるがゆえに生じた現象ではないかと推察しますが、妙な誤解を招くことのないようにした方がよいようにも思われます。

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コメント

これまでの日本の労働慣行、長時間労働に対して厳しくなってきた労働行政、ホワイトカラーエクゼンプションを唱えてきた経団連の姿勢、韓国との国際競争などを考えると、トヨタの伊地知専務の発言も理解できるような気がします。

トヨタはアメリカにもフランスにも事業を展開している世界企業です。これら地域におけるトヨタ社員の働き方はどうでしょう?日本もワールドスタンダードで考えるのが筋でしょう。

世界でもトップクラスの技術力あるいは財務力に恵まれながら、ワールドスタンダードで事業展開ができないというなら、日本の事業環境に問題があるといわざるをえません。

20年以上にもわたってデフレを続けている国は日本以外にないでしょう。国家の財政赤字は累積で増え続け、円高は勢いを増しています。日銀は国債金利の上昇抑制を第一義的な役割として、デフレ金融政策を続けています。これだけ、デフレが続き、円高になれば日本企業の国際競争力は低下し、国内産業の空洞化が進むのは道理でしょう。

OECDの購買力平価で比べても、超円高は明らかでしょう。円高が生産性向上圧力をかけ、これがデフレ圧力となり、さらなる円高が進むというスパイラルです。

国際競争力の低下を労働行政が云々というのは筋違いというものです。

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