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2011年8月 5日 (金)

OECD対日経済審査報告書2011年版

93569明石書店より『OECD対日経済審査報告書2011年版』の邦訳をお送りいただきました。

http://www.akashi.co.jp/book/b93569.html

本書については、原報告書が発表された今年4月に、本ブログでも取り上げておりました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/oecd2011-0475.html(OECD対日審査報告書2011年版)

目次は次の通りですが、

第1章 日本経済の回復:自律的で持続的な景気拡大とデフレの終焉を目指して
 はじめに
 第1節 2008年の世界的経済危機からの日本経済の回復
  1.1 輸出の急増:中国の貢献
  1.2 強力で敏速な政策的対応
  1.3 労働市場の好転と国内需要の増加
 第2節 日本の短期経済見通し
 第3節 金融・為替政策
  3.1 日本銀行による物価安定達成のための最近の措置
  3.2 金融政策の枠組みの改革
  3.3 為替政策
 第4節 日本の中期経済見通し:成長を持続させ財政問題に取り組む

第2章 日本の財政政策:持続可能性のために
 はじめに
 第1節 2010年までの財政の動向
  1.1 新政権の財政政策
  1.2 2010年度予算
 第2節 2010年「財政運営戦略」
  2.1 2011年度予算
  2.2 「財政運営戦略」の暫定的評価
  2.3 赤字削減が失敗する可能性
 第3節 構造財政赤字の克服と財政の持続可能性の確保
  3.1 適切な財政目標
  3.2 急速な人口高齢化の下での社会保障支出のコントロール
  3.3 他の分野での支出削減の達成
  3.4 政府収入の増加
  3.5 増税の適切なタイミング
 第4節 財政政策の制度基盤の改革
 第5節 結論

第3章 日本の新成長戦略:需要と雇用を創造するために
 はじめに
 第1節 新成長戦略の概要
  1.1 7つの成長のエンジンと21の戦略的プロジェクト
  1.2 新成長戦略と規制改革
 第2節 新成長戦略の分野ごとの政策
  2.1 グリーン成長とイノベーション
  2.2 医療改革
  2.3 アジア経済戦略
  2.4 地域開発
  2.5 金融部門の改革
 第3節 結論

第4章 日本の教育改革
 はじめに
 第1節 日本の教育制度の概観
  1.1 教育支出
  1.2 日本の教育制度の仕組み
 第2節 教育の成果を改善するための政策
  2.1 幼児教育・保育により多く投資すること
  2.2 初等教育と中等教育の学校の質を改善する
  2.3 高等教育の質を高めること
 第3節 教育支出の効率性の向上:教育におけるバリュー・フォー・マネー
  3.1 コストを削減するために保育所と幼稚園を統合する
  3.2 学校を統合する
  3.3 教員が教育により専念できるようにし、教員をより有効に使うこと
  3.4 高等教育機関に関する規制を自由化すること
 第4節 家計に対する負担の軽減
  4.1 幼児教育・保育の費用における公的支出の割合を増加させること
  4.2 塾への依存を減らすこと
  4.3 高等教育の費用における家計の負担を軽減すること
 第5節 教育における不平等の是正
 第6節 職業教育・訓練の強化
 第7節 イノベーションにおける教育制度の役割の向上
 第8節 結論

第5章 日本の労働市場改革:成長と公平性の改善のために
 はじめに
 第1節 労働市場の二極化
  1.1 正規労働者と非正規労働者との比較
  1.2 非正規労働者の増加を説明できる要因
  1.3 非正規労働者の割合の上昇に関連した課題
  1.4 労働市場の分断化:非正規雇用と正規雇用との間の移行の欠如
  1.5 進行する労働市場の二極化の解決に向けた政策
 第2節 労働市場への参加促進
  2.1 女性の労働参加率の引き上げ
  2.2 高齢労働者の効率的活用の促進
  2.3 若者の労働参加とニートの問題
 第3節 結論

本ブログ的に関心が高いのは第4章の教育訓練と、第5章の労働市場改革です。

が、その前に、上記エントリでも

>先進国のコモンセンスが穏やかな表現で書かれています。金融政策は緩和的に、不可欠な公的支出は「人々の連帯感に訴えかけ、歳入の短期的な増加」つまり、増税で賄いましょうという、火事場ドロボーじゃない人々であれば当たり前の話です。リフレさえあれば他のすべては無駄と思いこんであらゆる税金を憎悪するというのが日本の一部に生息する特殊な人々なわけですが

と述べた点に関わる第2章も必読でしょう。

黒川滋さんが、

http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2011/07/729-021a.html(パンドラの箱)

>復興計画がようやくまとまったものの、財源については民主党の困った議員たちの圧力で骨抜きにされた。結局復興計画については、財源の見通しが立たないまま国や自治体の借金を増やすだけのものになりそうだ。

>金子洋一だとか松野頼久だとか、財政問題に楽天的な政治家が跳梁跋扈した背景には、民主党結党期に、新しい公共が劇的に政府支出を減らして効率的で民主主義が進化した社会がやってくるんだ、というちちんぷい神話を、菅直人氏も含めた今の民主党指導層がまきちらした結果だと思う。しかしこうしたノリの原型は「もう日本は待ったなし」みたいな財政危機を必要以上に煽った議論から始まっていたりして、今彼らが言っていることがそもそも間違っていたと認めるべき話なのだが、過去を忘れることのできる議員と、そういう議員が何言ったか忘れて選んでしまう有権者の問題なのかなぁと思う。

と嘆くような現実の政治の惨状もあるわけですが。

ま、しかし、そういう財政経済の話はおいといて、ここでは本ブログの本来のフィールドについてのOECDの分析を、「評価と勧告」の部分から引用しておきます。

まず教育機会の問題。

>日本では授業料が高いにもかかわらず、高等教育向けの公的奨学金は現在のところ3分の1程度の学生のみが利用できるに過ぎず、その利用機会を拡大することは重要である。・・・もう一つの公平性に関する懸念は、塾の大きな存在である。・・・塾通いは学業の成績を著しく高めるが、家計所得が高いほど塾通いは増えるので、塾への依存を減らすことは結果として生じる教育成果の不平等を減らすことになるであろう。試験による高い成績は学生がより一流の大学に入学することを許し、それは正規雇用と著しく高い生涯所得をもたらすため、こうした不平等は長く尾を引くことになりがちである。・・・

日本の空中浮遊的理想主義の教育界の方々は、そもそも教育の理念とやらから説き起こして受験教育の塾がけしからぬけしからぬと誰もまじめに聞かないようなお題目を唱え続けることによって、現実社会において塾という名の高価だが効率的な教育機関がはびこることを手助けし、結果的にOECDが指摘するような社会的不平等を、それが不平等であるという理由でまじめに戦おうという気持ちを誰にも持たせないまま、ますます増幅させるという劣悪な社会的機能を果たしていたと言ってもいいのかも知れません。例によって、毒のある言い方ですけど。

的はずれの理想主義ほど、世の中に害悪を流す代物はない、ということの一つのいい例証でしょうか。

次は職業教育訓練について

>企業が長期雇用のために新卒者を雇い、企業の中で社員を訓練するといった伝統的なパターンは、固有の技能を有する労働者を雇う方へシフトしつつある。新しいパターンは、効果的な職業教育の重要性を高める。その一方で、大学に通う学生の割合の増加は、伝統的に職業教育の分野で重要な役割を果たしてきた短期大学や専門学校の閉鎖を強いている。・・・企業ベースの訓練を受ける機会がほとんど無い非正規労働者・・・の割合が高まっていることを踏まえると、より一層の職業教育・訓練に対するニーズに応えることが特に重要となる

ここでもまた、大学ってのは高邁なる学術の奥義を究めるところじゃ、職業などという汚らわしいモノは入れるなという空中浮遊的理想主義のなれの果てが、新聞も見たことがない、文庫本も新書本も分からないような大学生たち相手に、ただ経済学大学院修了者にもっともらしい雇用機会を創出するという目的のためだけに、四則演算だけで経済学を教えるような現実を日々生み出し続けているわけですね。

そういう理想主義の徒輩とともに、OECDが要請する公的職業教育訓練をひたすら攻撃してやまないのが、上でOECDが指摘する(これまで公的職業教育訓練の必要性を抑制してきた)長期雇用慣行を攻撃する人々でもあるという皮肉も、まことに日本的な現象といえましょう。いや、下層階級は無技能のままおいておいた方がいいという判断からであればまことに整合的な主張ではありますが。

のこりの、労働市場の二極化問題と女性や高齢者の活用については、また明日。

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コメント

うおー、さすがOECE、日本の公教育分野における最大のタブーである「塾」に言及してきましたか!

日本の公教育分野に関わる人々から、「教育予算の少なさにも関わらず日本は高い教育水準を維持している」的な話を聞くにつれ、「難関大学に合格するには、私立のエリート校に通うか、塾に通うかがほとんど必要条件になってるのに、何を言ってるんだ?それはお前らじゃなくて塾の功績だろ?」と思い続けていたんですが、ちゃんと分かってる人が見ればやはりそう判断するんだなあ。

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