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2011年7月14日 (木)

雇用形態による均等処遇についての研究会報告書

本日、「雇用形態による均等処遇についての研究会報告書」が公表されました。

http://www.jil.go.jp/press/documents/20110714_00.pdf

不肖わたくしも参加した研究会ですので、ご覧いただければ幸いです。

荒木尚志 東京大学大学院法学政治学研究科教授(座長)
有田謙司 西南学院大学法学部教授
奥田香子 近畿大学法科大学院教授
川口大司 一橋大学大学院経済学研究科准教授
濱口桂一郎 (独)労働政策研究・研修機構労使関係・労使コミュニケーション部門統括研究員
皆川宏之 千葉大学法経学部法学科准教授
守島基博 一橋大学大学院商学研究科教授
両角道代 明治学院大学法学部教授

<詳細リンク>
雇用形態による均等処遇についての研究会報告書の概要(PDF:37KB)

http://www.jil.go.jp/press/documents/20110714_01.pdf

雇用形態による均等処遇についての研究会報告書(PDF:1.1MB)
http://www.jil.go.jp/press/documents/20110714_02.pdf

○ 日本においては、正規・非正規労働者間の処遇格差是正の文脈で「同一(価値)労働同一賃金原則」に言及されることもあるが、EU諸国における同原則は、人権保障の観点から、性別など個人の意思や努力によって変えることのできない属性等を理由とする賃金差別を禁止する法原則として位置付けられていると理解することができる。

他方、当事者の合意により決定することが可能な雇用形態の違いを理由とする賃金の異別取扱いについては、上記の人権保障に係る差別禁止事由について認められる「同一(価値)労働同一賃金原則」は、(EUやイギリスにおいて、男性正規労働者と女性パートタイム労働者間の賃金格差につき、性別を理由とする間接差別禁止としては適用されることがあるものの)特段の立法がない限り、直ちに適用可能なものではないと解されている。

○ EU諸国では、正規・非正規労働者間の賃金を含む処遇格差の是正については、雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則の枠組みの中で対処されている。

同原則は、非正規労働者の処遇改善の観点から、正規労働者と比べて、客観的(合理的)理由なく、非正規労働者を不利に取り扱うことを禁止し、かつ、非正規労働者を有利に取り扱うことも許容するものであり、有利にも不利にも両面的に異別取扱いを禁止するいわゆる均等待遇原則(差別的取扱い禁止原則)とは異なる類型に属するものである。

○ そして、雇用形態による異別取扱いが違法となるかどうかは、客観的(合理的)理由の有無により決せられるが、その判断は、人権保障に係る差別的取扱い禁止原則(特に直接差別)におけるよりも柔軟な解釈が行われている。

○ このような雇用形態に係る不利益取扱い禁止原則は、雇用形態の違いを理由とする異別取扱いについて、その客観的(合理的)理由につき使用者に説明責任を負わせることで、正規・非正規労働者間の処遇格差の是正を図るとともに、当該処遇の差が妥当公正なものであるのか否かの検証を迫る仕組みと解することができる。

このような仕組みは、正規・非正規労働者間の不合理な処遇格差の是正及び納得性の向上が課題とされている日本において、示唆に富むものと考えられる。

○ また、EUでは、差別禁止法一般について法違反による事後的救済のみでは十分に効果が上がらないことから、当事者自らによる改善に向けた取組を促すアプローチも導入されていることを参考に、日本においても、個別企業による正規・非正規労働者間の処遇の差の実態把握や、当該処遇格差が不合理な場合の是正に向けた労使の取組を進めることは、非正規労働者の処遇の改善及び納得性の向上に資すると考えられる。

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