節電の夏 しわ寄せ@朝日
本日の朝日新聞の6面に「大震災と経済 復興に向けて」の一環の記事として、「節電の夏 しわ寄せ」がかなり大きく載っています。
今のところ、HPには出ていませんが、派遣労働者が契約を打ち切られたり、複数の取引先の休日がバラバラなため中小企業がほとんど休めなくなっていることなどが報じられています。
そこに、わたくしのコメントも載っていますので、そこだけこちらに転載しておきます。
>独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の濱口桂一郎統括研究員は、「国は見切り発車で節電を進めるのでなく、弱い立場の人々に負担が集中しないよう警告すべきだった。震災が発端なだけに、節電をけしからんと言いにくい雰囲気も手伝い、声なき声が埋没している」と強調する。
>「節電の夏」は来年以降も続く可能性がある。濱口さんは「大企業の論理が増長しないよう、労働現場で何が起きているのか、社会的に確認する作業が不可欠だ」と指摘する。
先日、武蔵嵐山で労働科学研究所のシンポジウムで質問いただいた問題ともつながります。
(追記)
記事の本文は次の通りです。
>「『節電の夏』の犠牲になりました・・・」と、東京都内の30代の独身女性は嘆く。6月末、派遣社員として5年間勤めた会社から契約を打ち切られた。休みを平日にずらし、土・日曜を出勤とする7月以降の勤務変更に従えないから、という理由だった。
女性は正社員に転身しようと、土日に英会話など三つの習い事をしていた。収入は月20万円足らず。一人暮らしで、蓄えもなく、生活に余裕はない。節電期間だけ平日3日の勤務を認めてもらえないか、会社に願い出たが、「特例はない」と突き放されたという。
退職後、腑(ふ)に落ちない話を聞いた。正社員は申請すれば従来通りの勤務も認められたというのだ。一方、同じように会社を追われた派遣社員は2ケタ。「節電を口実に派遣切りを進めたのでは」。疑念が消えないまま、次の職探しを続ける。
在宅勤務や勤務時間の前倒し(サマータイム)といった節電の取り組みが、大企業を中心に広がる。従来の働き方を見直す契機と評価する向きもあるが、その陰では立場の弱い労働者にしわ寄せが及んでいる・
関東のサービス業で契約社員として働く40代の女性は、「サマータイムと夏休みの長期化がうらめしい」。8月は始業時間が1時間半早まるが、長男を小学校に、次男を幼稚園に送ってから出社するため間に合わない。残業も禁止だ。夏休みも例年より5日延(の)びるが、正社員と違い、日給制の契約社員にとっては「無給の日が増えるだけ」。8月の収入は前年より15万円近く減りそうだ。
「土日出勤」の広がりで需要が増す保育士も振り回される。東海地方の自動車部品会社の託児所に努める30代女性は、4歳の男児を育てるシングルマザー。7月からキ木金に休み、土日の出勤を求められたが、自分の子供を預ける保育園が確保できず、日曜は欠勤せざるを得なくなった。収入減を避けようと、木曜は別の託児所で働き始めた。夏の間、休みは金・日曜になる。「子どもとゆっくり過ごせず、疲れも取れない。本当につらい」。
大企業の節電の「都合」に苦しむのは、下請け仕事が多い中小企業だ。日立製作所のグループ会社が集積する茨城県日立市。7月は3日。8月は2日。9月はゼロ。ある部品加工会社の社長はカレンダーに休日の印をつけながら、ため息をついた。日立は、事業部門ごとに休日を月曜から金曜に割り振り、土日に稼働する「輪番休業」の体制を9月末までとる。この加工会社はグループの5社前後と取引があるが、休日は各社でバラバラなため、それしか休めなくなりそうだという。売り上げ全体の8割を日立との取引に頼る。「もっと休ませて、とは口が裂けても言えない」。
別の部品加工会社は、従業員には交代で休みを取らせ、人手が足りない仕事には役員が入ることで「無休の夏」を乗り切る考えだ。「非常時体制が3カ月近く続く。体が持つかどうか」と役員はこぼす。
あえて休日を設けたところでは、別の不安も生じている。ある部品会社は取引の大きい日立グループの企業に合わせ、木金を休みとしたが、材料の仕入れ先は従来通り土日が休みだ。仮に、日立から土曜に仕事を受注しても、材料の調達は月曜以降。1週間以内に納品を迫られるような急ぎの仕事も少なくなく、そのロスが致命傷になりかねない。とはいえ、「下請けの立場で日立に発注を前倒ししてくれとも言えない」。
影響は、下請け以外にも広がる。ある弁当製造会社の社長は「輪番制は大打撃」と憤(いきどお)る。毎日どこかのグループ会社から注文が入るため休めないが、売り上げは伸びない。反面、人件費や光熱費のコストは1割以上かさむ見通しという。「日立は節電できても、割りを食う我々には『増電』の夏だ」。
浜松商工会議所が会員企業に夏季の休日変更の影響を聞いたら、下記の声が多かった。
1. 子育て中の従業員が多く、土日の出勤率の低下が予想される。
2. 共働きの社員が多く、土日の保育の対応に苦慮。
3. 複数の取引先を抱える加工会社は状況次第で休日がなくなる。
4. 輸送機器以外の業界とも取引があり、完全には休日変更できない。
5. 休日変更すると、原材料の納入に心配がある。
6. 結局、毎日どこかの部門が動いている状態で、経費節約にならない。
「負担増の現場 検証を」(=本田靖明、石山英明朝日新聞記者)
自動車と二輪車の関連企業が多い浜松市。浜松商工会議所が6月、会員企業に夏季の休日変更の有無を尋ねたところ、小規模な企業ほど実施できない傾向が分かった。大企業からの要請に振り回される中小企業の姿が浮かぶ。
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