野川忍『Q&A 震災と雇用問題』
野川忍先生より、『Q&A 震災と雇用問題』(商事法務)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://bizlawbook.shojihomu.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?CID=&ISBN=4-7857-1885-5
>労働者と企業のそれぞれが震災時に直面する雇用上の問題の解決策を検討し、中・長期的に行われる雇用条件変更・新制度導入等に必要な法的知識についても、明解にわかりやすく紹介。
ですので、まさにもっとも役に立つ実用書ではありますが、最後の「あとがきに代えて――大震災後の雇用政策」には、野川先生流の政策論もちらりとかいま見せていますので、目次を紹介した上で、そのあとがきの一節を引用しておきたいと思います。
第1章 今回の震災と各種給付等の特例
Q1-1 東日本大震災と雇用保険
Q1-2 東日本大震災と労災保険
Q1-3 東日本大震災と未払賃金の立替払い
Q1-4 東日本大震災と雇用調整助成金
Q1-5 東日本大震災と生活保護
第2章 今回の震災で直面した問題
Q2-1 従業員の行方不明
Q2-2 震災直後避難中の勤怠関係
Q2-3 社屋の倒壊とケガ
Q2-4 社宅の倒壊と居住不能
Q2-5 タクシー帰宅・ホテル宿泊と費用請求
第3章 給料と休業手当
Q3-1 震災の直接的被害による休業と休業手当
Q3-2 液状化による操業不能と休業手当
Q3-3 原材料の供給途絶による休業と休業手当
Q3-4 避難勧告・避難指示による休業と休業手当
Q3-5 大型商業施設の休業とテナントの休業
Q3-6 計画停電による休業と休業手当
Q3-7 休業とその間のアルバイト
第4章 従業員の解雇
Q4-1 予告手当の支払い
Q4-2 遠方に避難した従業員の解雇
Q4-3 精神的疾患を受けた従業員の解雇
Q4-4 震災によるケガの治療と欠勤
Q4-5 産前休業中の従業員の解雇
Q4-6 帰国した外国人従業員への対応
Q4-7 震災と退職勧奨
第5章 従業員の震災対応と不利益処分
Q5-1 安全性確認未了のオフィスと就労拒否
Q5-2 自宅液状化始末のための欠勤と懲戒処分
Q5-3 深夜の社内待機命令拒否と懲戒処分
第6章 事業継続とリストラ
Q6-1 有期雇用の雇い止め
Q6-2 有期雇用への切替え
Q6-3 震災後のリストラの一環としての整理解雇
Q6-4 転勤命令の有効性
Q6-5 出向先の被災と出向元の責任
Q6-6 出向元の被災と出向従業員
第7章 時間外労働と休日労働
Q7-1 残業・休日労働を命じたい
Q7-2 子会社被災の応援と事業外労働
Q7-3 三六協定のない職場での時間外労働
Q7-4 休日労働の連続とその問題点
Q7-5 深夜割増手当の不払い
Q7-6 自主的な残業と残業代
Q7-7 労働時間の自己申告制
第8章 自宅待機命令
Q8-1 自宅勤務命令と給料
Q8-2 自宅待機命令と給料
Q8-3 会社で仕事がしたい
第9章 有給休暇取得の問題
Q9-1 被災地でのボランティアと有休取得
Q9-2 時季変更権の行使の可否
Q9-3 業務命令の錯綜と有休取得
Q9-4 会社による有休消化の要請
Q9-5 休業日決定後になされた有休取得
Q9-6 有休取得後の兼職
Q9-7 兼職を予定した有休取得
第10章 採用と内定,試用期間
Q10-1 被災地の雇用① 企業への支援
Q10-2 被災地の雇用② 求職者への支援
Q10-3 採用時の風評問題
Q10-4 震災による採用内定の取消し
Q10-5 震災と内定者の入社日の変更
Q10-6 震災による内定取消しへの対応
Q10-7 学生からの内定辞退
Q10-8 子会社への内定先切替えの可否
Q10-9 業況悪化と試用期間中の解雇
Q10-10 実家が被害を受けた従業員の試用期間中の解雇
Q10-11 試用期間満了後の本採用拒否
Q10-12 「不公平を避けるため」の本採用拒否
第11章 労働災害 139
Q11-1 仕事中の避難によるケガと労災
Q11-2 出張中のケガと労災
Q11-3 休憩中のケガと労災
Q11-4 外回り営業中の死亡と労災
Q11-5 従業員の行方不明と労災
Q11-6 船員の死亡と労災
Q11-7 理容店でのケガと通勤災害
Q11-8 通勤途上か明らかでない場合
Q11-9 通勤途上の避難と通勤災害
Q11-10 時間的余裕をみた通勤と通勤災害
Q11-11 通常と異なる方法による通勤と通勤災害
Q11-12 震災当日の帰宅困難と通勤災害
Q11-13 避難所からの通勤と通勤災害
Q11-14 ホテルから出社した場合とケガ
Q11-15 妻の入院先からの通勤と通勤災害
第12章 派遣社員が遭遇する問題
Q12-1 震災と派遣先からの中途解約
Q12-2 震災と派遣元の責任
Q12-3 震災と派遣社員の業務内容変更
Q12-4 災害対策マニュアルの策定と派遣社員の個人情報の収集
第13章 震災時の労働組合と会社
Q13-1 緊急共同体制と情宣活動の継続
Q13-2 震災による団体交渉打ち切り
Q13-3 事情変更の原則による労働協約の一方的解約
Q13-4 不利益変更された労働協約の反対者への適用
第14章 震災後の事業継続と制度導入・変更
Q14-1 災害時の業務命令の内容と幅の拡大
Q14-2 緊急時にいつでも出社させる義務
Q14-3 始終業時刻の変更と給料の減額
Q14-4 計画停電予定と出社時間の変更
Q14-5 震災と輪番休業の実施
Q14-6 震災と休憩時間の短縮
Q14-7 震災と交代制の導入
Q14-8 震災と裁量労働制の導入
Q14-9 震災と変形労働時間制の変更
Q14-10 震災とフレックスタイム制の導入
Q14-11 震災と三六協定の改定
Q14-12 震災と育児介護休業復帰後制度の変更
Q14-13 震災と再雇用制度の見直し
Q14-14 震災と残業命令可能時間の上限引上げ
Q14-15 震災と英会話学校の授業料の自己負担化
あとがきに代えて――大震災後の雇用政策
この最後の「あとがきに代えて」から、
>・・・今回の大震災のように無視できない大きな外的要因によって瞬時に雇用システムが大打撃を受けるという状況を考えると、そうした突発的事態にも一定の耐性を持った雇用システムが必要となることはいうまでもありません。
>それでは、どのような雇用労働政策が考えられるべきなのか。まず前提となるのは、大規模な不測の事態への対応は二重三重のショックアブソーバー、つまりは衝撃の緩衝装置が不可欠だということです。たとえば、それぞれの企業において可能な限り雇用を維持することを促す長期雇用保護システムは、企業活動それ自体が極めて短期のうちに連鎖的に崩壊してしまうような場合には機能しません。一挙に放り出された大量の失業者の多くが、それまで就労していた企業固有のキャリアしか身につけていなければ、就業転換をスムーズに進めることが出来ないのは明らかだからです。
>このような場合に必要なのは、労働者が速やかに転職先を見つけることが出来るような普遍的職業能力を普段から身につけることを促進・助成すること、及び転職市場の拡充、そして不安定雇用に定着してしまわないように常にキャリアアップの道を開いておくこと、さらにはNPOや労働者協同組合、マイクロビジネス組織など、多彩な就労機会を助成したり、独立自営業者による協同組合など非雇用就労機会をも拡充することなどでしょう。・・・
>そして、こうした環境整備が整えば、解雇の金銭解決制度や兼職の原則的自由化なども射程に入ってくるでしょう。・・・
>新しい雇用社会の法制度が具体的にどのように展開されるべきか、それはまた次の機会に詳述したいと思います。
うむむ、「次の機会」なのだそうです。おそらく、商事法務の次の出版計画に載っているのではないでしょうか。期待して待ちましょう。
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