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2011年7月25日 (月)

原発の「協力会社」と偽装請負

『労基旬報』7月25日号に掲載した「原発の「協力会社」と偽装請負」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo110725.html

>去る3月11日に、東北地方太平洋沖でマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、これが作り出した数十メートルの高さに達する大津波が三陸海岸から福島浜通りに至る太平洋岸を次々と襲い、沿岸諸地域に壊滅的な打撃を与えた。この津波により福島第一原子力発電所では炉心溶融を来たし、周辺への放射能汚染や電力不足による計画停電など大きな影響を与えた。

 それ以来、東京電力とその協力会社の労働者たちが、高い放射線量の中で必死に事態の解決に邁進していることは報道されているとおりである。しかし、その多くを占める協力会社の労働者たちは、労働法上実に奇妙な立場におかれているのだ。

 職業安定法や労働者派遣法といった労働市場法制では、請負と労働者派遣(労働者供給)は峻別されている。正しい請負であるためには、元請側は下請会社の労働者に対して指揮監督をしてはならず、もし指揮監督をすればもはや請負ではなく労働者派遣(労働者供給)とみなされることになっている。数年前に一部マスコミが火を付けて大騒ぎになったいわゆる「偽装請負」とは、詰まるところこの点に集約される。工場の中で構内請負をしていると称していながら、工場側の指揮監督を受けているではないか、というのがその非難の根拠であった。

 ところが、労働基準法や労働安全衛生法といった労働条件法制では、戦前から全く異なる発想の政策が行われてきている。建設業のように伝統的に重層請負で作業が行われる業種では、元請会社が下請以下の会社の安全衛生には責任を持って管理することが義務づけられるとともに、労災補償も元請の責任とされている。その理由は労働省自身の解説によれば「実際には元請負業者が下請負業者の労働者に指揮監督を行うのが普通」だからである。労働市場法制では「偽装請負」とされる状況を「普通」として施策を講じてきたのである。

 原発も建設現場と同様、重層請負で特徴づけられる職場である。報道では「協力会社」と呼んでいるが、実体はまさに労働市場法制のいう「偽装請負」に他ならない。しかしながら、電離放射線が飛び交う危険きわまりない福島原発において、「偽装請負はけしからんから、正しい請負にせよ」というような命令が降りてきたらどういうことになるであろうか。正しい請負とは、東電は関電工の労働者に指示ができず、関電工はその下請の労働者に指示ができず・・・ということを意味する。安全衛生法上からすれば、とんでもない危険な事態を招くことになろう。しかし、数年前の「偽装請負」叩きのロジックからすれば、それこそが正義なのである。

 現時点では、まだおおっぴらに原発構内の偽装請負を糾弾する声は上がっていない。しかし、それはいつでも火が付けられる状態にあるのである

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コメント

偽装請負の実態に合わせて、
「労働者派遣」に是正するのが妥当ではないですか?
なせ、「正しい請負」に是正すると考えるのでしょうか?

>なせ、「正しい請負」に是正すると考えるのでしょうか?

建設・土木・荷役など危険作業を伴う業務は、派遣法のネガティブリストで労働者派遣が禁止されているからだと思いますよ。あと清掃・警備業務も禁止だったと思います。
立法理由としては、事業場における労働者の危険負担が大きく、事業者の雇用責任と安全衛生責任が不可分だと考えられているのだろうと思います。

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